勝てるわけがない
ウェンディ家の庭は広い
あんまり手入れとかはしていないらしく腰くらいまでの草が茂っている
きれいに刈ってしまいたい 俺はいい仕事を見つけてしまった気分になった
「基本誰もが魔法を使って来ると思ったほうが良いんだ。特に襲撃者となると武装してるよ。」
なにその世紀末感…
「やっぱバイクに乗りながら火炎放射機をヒャッハーするのが普通なのですか?」
「いやこの国はそこまで治安が悪くないよ。魔道具…まぁ携帯アーティファクトで魔弾を乱射される事件はあるかな?」
なにそれ怖い
「だから少なくとも魔弾乱射事件で死んでしまうレベルじゃボディーガードとは言えないね。」
「襲撃者が魔術師だと色のついた魔力で攻撃してくるのが普通だね。戦争だとそうなる。」
「色ですか?」
「マナを使った魔術には色がつくんだ。5色あってそれぞれに奥義があるよ。奥義を収めると一端の魔術師と認められるレベルかな。」
「赤とか青とかですかねぇ?」
仮面の女が庭に生えている木をポンポンと叩きながらこっちを見る
「そう、赤の奥義は稲妻で青の奥義は思考加速みたいなね。」
他の3色はきっと白と黒と緑だなこりゃ
「例えば稲妻はこんな感じ」
仮面の女は手を伸ばし指先を光らせた
光が空中に魔法陣を描き出してから徐々に魔法陣が輝き出す
「ここは赤のマナが薄いからチョット待ってね」
その言葉の2秒後に魔法陣から光が立ち上り落雷が木を唐竹割りにしてしまった
死ぬわオレ
てかウェンディが爆風で盛大に吹っ飛んでいったあとに走って帰ってきた
仮面が取れてる
「次は私を殴ってみてほしい」
爆風で吹っ飛んで頭がおかしくなったらしい
というかVRみたいな精神世界の外で仮面が取れているのは初めてじゃないだろうか
「さっき吹っ飛んでましたけど大丈夫なんですか?(頭とか)」
「吹っ飛んだことでのダメージはないよ。だから問題ない。」
「でも仮面取れてますよ?」
仮面がダメージを軽減するアイテムだったら大変なことになるのでは
「仮面はタダの飾りだよ」
仮面がなければ死んでいたって訳ではないのか…まぁいいや
190cmの長身をひねり力を溜め 容赦ない一撃をウェンディに向ける
カァァァンという甲高い音とともに俺の拳が破壊された
見ればウェンディの胸元に魔法陣が浮かび光る壁ができている
「これが白の奥義の防護壁だよ。魔法陣を書かずに瞬時に発動できるか、寝ていても発動させられるかでさらに難易度は高まっていくんだけどね。」
俺は腕を再生させながら聞く
「ウェンディさんは赤と白の2つも奥義が使えるんですね。」
「2つも使える魔術師は少ないんだけど、私は5つ全部の奥義が使えるよ。」
さらっと自慢された
「かと言って奥義ってのは言い方がちょっと問題でね、最低限1つは使えないと学校も卒業できないよ。最高の魔術ってわけでもない。騎士になるなら白の奥義が必須だとかそんな使われ方が普通だよ。ただ生活の役にも立たないものばっかりで…そういうものはアーティファクトを使ったり魔術によらない道具を使う。野菜を掘ったり野菜の革を剥くのにわざわざ魔術なんて使わないさ。」
奥義とは一種の就職に必要な資格のようなものらしい
俺はその後半年間ボコボコにされつつ庭の手入れをしていった