85.善人、子供とエルフ嫁と写真を共有する【前編】
いつもお世話になってます!
アムと一緒に音楽を聴いた、2日後。
この日は朝から大雨が降っていた。
子供たちは、孤児院の中で過ごしているようだ。
俺とコレットはこの日、非番だった。
やることもなかったので、1階のホールで、子供たちとのんびり時間を過ごしていた。
「なーなーおねーちゃん! ぼくのスマホけーす、みやがれや、です!」
ソファに座るコレット。
コレットの膝の上に、犬娘のキャニスがのっかり、スマホを見せている。
「あらかっこいい。真っ赤なケースね」
キャニスのスマホケースは、彼女の要望通りメタリックのレッド。
中央にはドーベルマンをイメージして作った、シルエット状のステッカーが貼ってある。
「えへへっ! だろー? おにーちゃんが作ってくれたです!」
「良かったわねキャニス。とってもいかしてるわ」
コレットがキャニスの頭を撫でると、いぬっこは嬉しそうにしっぽをぶんぶんと振るう。
「へいまみー。みーのケースもみてほしー」
にゅっ、と今度はキツネ娘のコンが、コレットに後から抱きついて言う。
「まぁ、すごいわこれ。ケースの上から、お耳が生えてるわね」
コンのケースは形を少しいじっている。
ケース上の部分が、キツネの耳のようににゅっ、と三角の突起がでている。
色は水色で、ケースの中央にはキツネの顔が印字されている。
「みーをいめーじして、にぃにつくってもらったの。ごいすー?」
「そうね、ごいすーごいすー」
コレットは微笑むと、コンの頭を撫でる。
いつも平坦な顔をしているコンだが、ふわふわのキツネ尻尾が、ぐるんぐるんと、ヘリコプターのように回っていた。
「あのあのっ、えと……まま。らびのも、みてほしーのです!」
ラビがコレットの隣に座ると、自分のスマホを見せる。
ラビのスマホケースは、ピンクにハートという実にファンシーなデザインである。
「おー、ラビ。おめーのやっぱりかわえーなーです」
「ラビはがーりーなデザインがすきだよね。とってもきゅーと」
「ね、みんなもそう思うわよね~。とってもかわいらしいと思うわ」
うんうん、とエルフ嫁+獣人たちがうなずく。
ラビはにぱーっと笑って、頭をかく。
「あのねあのね、にーさんがラビのよーぼー、ぜんぶきいてくれたのです。イメージ通り、つくってくれたにーさんは、すごいのですっ!」
おおー、と子供たちとコレットが、俺を見て拍手する。
「喜んでくれて何よりだよ。ありがとうな」
スマホケースを作ったのは、スマホの台数が増えたからだ。
どれもスマホのデザインは、どれも一緒(俺が地球で使っていた物を複製したから)
それだと、どれが誰のスマホなのか、わからなくなる。
ということで、スマホケースを作り、所有者をわかりやすくした。
子供たちの要望を聞いて、俺がスマホケースを【成形】の魔法で、その通りに形を変えて作った。
無属性魔法【成形】
これは無機物の形を自在に変えることのできる魔法である。
「なぁおねーちゃんは、どんなスマホケースつかってやがるです?」
キャニスがコレットを見上げながら言う。
ほかのふたりも、興味深そうに、目を輝かせた。
「ん? 聞きたいですかね、みなさん」
コレットが子供たちを見回す。
「「「ききたーい!」」」
「ではお見せしましょう。自慢じゃないけど、先生のスマホケースはすごいわよ」
「おー!」「きたいたかまる」「どんなのだろ~……」
わくわく、と獣人たちがしっぽをぱたぱたさせる。
コレットはポケットからスマホケースを取り出す。
「じゃじゃあーん。どう?」
コレットのは……ライムグリーンのケースだ。
ラメが入っており、キラキラとしている。
「あー……」「んー……」
ぺちょん、とキャニスとコンの耳が垂れる。
「かわいいのですー!」
ラビだけが、笑顔でそういった。
キャニスとコンは、顔をつきあわせて言う。
「おりじなりてー、かんじないね」
「なぁ。それなー」
くる、とキャニスとコンが、エルフ嫁を見やる。
「まみー、こせーをだしてかないと」
「おにーちゃんにたのんで、もっとかっけーやつにしてもらうといいです!」
コレットが、キャニスたちにだめ出しを食らっていた。
「そ、そうかしら。ジロくんジロくん」
「あとでいじってあげるよ」
「ふふっ、ありがとっ。ジロくん優しい。さすが私の優しい旦那様っ」
輝く笑顔を向けるコレット。
「ひゅー! あちーな、です!」
「ひゅーひゅー。おあついねー」
「にーさんもままも、なかよしさんなのですー!」
ニコニコと笑う子供たち。
俺はその姿を見て、幸せな気持ちになる。
嫁と子供が笑っている、この日常を、俺は心から愛しているのだ。
「てか、おにーちゃんはさっきからなにやってんだ、です?」
キャニスがふと、俺の手元を見て言う。
「ん。写真の整理してたんだよ」
俺はコレットたちの正面に座っている。
膝の上には、この間作ってみた【それ】が載っていた。
子供たちが俺の元に寄ってくる。
体をくっつけてきて、膝の上のそれを見やる。
「おにーちゃん、この箱なんでやがるです?」
「うぃいいいんっていってるのです。いきもの?」
すると……。
「ふ、みんなまだまだ、こどもだね」
きらーん、とコンがドヤ顔になる。
「お! でるのかっ!」「はくしきこんちゃんの、でばんなのです!」
パチパチパチ! とキャニス、ラビが拍手する。
「せいせい。おしずかに。ではみーがおしえてあげましょう」
コンがビシッ……! と、箱を指さす。
「これは、のーとぱそこん」
「「のー……そん?」」
「そんな田舎の村みたいななまえじゃない」
コンが腕でバッテンを作る。
「のーとぱそこん。ノーパソともいうね。いろいろと作業するときに、つかう道具」
「「おおー!」」
「ふふん、ものしりコンちゃん」
「「ものしりー!」」
わー! とキャニスたちにほめられて、コンが嬉しそうにしっぽをクルクルさせていた。
「にぃ、いつノーパソなんてつくったの?」
コンが俺を見上げて言う。
「結構前から作ってはいたんだぞ」
「ほー。ねっとがつかえぬのに?」
「まあ家計簿とかつけてたんだよ。今は別のことに使ってるけどな」
俺はパソコンのフォルダーを立ち上がる。
するとそこには、写真のjpg画像が、たくさん並んでいた。
「お? お? おー! これ、このあいだの、やまにぴくにっくいったときの写真でやがるです!」
画面上の写真に、いちはやく、キャニスが気付く。
「ほんとなのです! おーかさんと、ままと、らびたちがうつってるー!」
わあわあ、とキャニスたちが興奮する。
コンは、ふむ……と考え込むと、
「スマホでとった写真。転写したん?」
「さすがコン。ご明察だ」
スマホで撮った画像を、このノートパソコンに転送できるよう、スマホとパソコンに【転写】と【動作入力】で調整したのだ。
「みんなのスマホからも、ここへ送ることができるし、逆にこのパソコンにアクセスして、写真をダウンロードできるんだぞ」
「! にぃ、それ【くらうど】。くらうどってやつでしょっ?」
「おお、よく知ってるな。物知りだな、コンは」
「某ぐーぐるさんのどらいぶ、つかいがっていいよね。あーいくらうどもいいけど」
「色々怒られそうだから実名は出さないでな」
「こんぷら?」「違う。配慮」「ん、おっけぐーぐる」
本当にわかってるのだろうか……。
それはさておき。
「なー、コン。おめーらなにむずかしーはなしてやがるです?」
「らびたち、まったくはなしについていけないのです~」
現地人ふたりには、今の話を理解できないようだった。
俺が説明しようとすると、コンがふぁさ……っとしっぽで俺を遮る。
「にぃ、ここはみーが」
「いいのか?」
「かいせつはみーのしごと。にぃ、しごととっちゃいやーん」
「そうか。じゃあ頼むよ」
「おまかせり」
コンが子供たち、そしていつの間にか移動してきたコレットを見て言う。
「これは、みんなのスマホのしゃしんを、みんなできょーゆーできる」
「「きょーゆー?」」
「ようするに、アルバムだね。撮った写真を、この箱につめることができるの」
「「なるほどー!」」
子供たちも理解してくれたみたいだ。
「さすがコンだな。わかりやすい説明だ。すごいぞ」
「ふふ、にぃにほめられてうちょーてんほてる」
コンがしっぽで顔を隠して、照れていた。
それはさておき。
「じゃ、みなのしゅー。しゃしんをあっぷろーどしていこうじゃないか」




