表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/189

81.善人、商人から接待される【前編】

いつもお世話になってます!



 携帯電話が、通話面でのみ完成した2日後。


 俺たち孤児院のメンバーたちは、王都にある高級レストランにいた。


 レストラン入り口の、エントランスにて


「おいコン……やべーです。そとからのながめ……やべーです……」


 ぶにっ、とキャニスが窓ガラスにほっぺをつけてつぶやく。


「ひゃくまんどるのこーけいってやつだね」


 ぶにっ、とコンがキャニスと同様、ほっぺをつけて言う。


「に、にーさん。こわいよぉ……。たかいところ、こわいよぉ……」


 ちょこちょこ……とラビが俺の方にやってくる。


 俺はラビを抱き上げて、よしよしと頭を撫でる。


「確かに高いよな。怖かったな」

「うん……。でも、にーさんのおと、きいてたら、おちついてきたのです……」


 ラビが俺の心臓に耳を当てていた。


 目を閉じて、ぴくん……ぴくん……とうさ耳を動かす。


 顔色が元に戻っていた。良かった良かった。


「あんちゃー……ん。こんなたかそー……ぉなおみせ、ほんとうにいいのー……ぉ」


 キャニスたちと同じく、窓ガラスに張り付いていた赤鬼の姉、あやねが、俺に尋ねてくる。


「ああ。クゥが食事代全部出してくれるってさ」


 ここは王都シェアノにある一番高い(値段的にも)ホテル、その最上階にある展望レストラン。


 俺たちのような庶民が来て良いレストランじゃない。

 

 だが今日は、クゥに招待されて、ここにいるのだ。


「クゥねーちゃんは、ふとっぱらでやがるす!」


「へいキャニス。それをゆーならふともも、だよ」


「ふ、ふとっぱらであってるのです」


 俺はラビを下ろしてあげる。


 ちょこちょこと歩いて、窓際にいる子供たちのもとへと行く。


 今日の子供たちは、ちょっとおしゃれをしていた。


 みんなよそ行き用の可愛らしい、かつフォーマルな衣装に身を包んでいる。


 かくいう俺もスーツを着ていた。

 

「ねー……ぇコンちゃん。どー……ぉしておいらたち、こんなきれー……ぇなおべべ、きてるのー……ぉ?」


 姉鬼がコンに尋ねる。


 青色のドレスという、大人っぽさのある格好のコンが、しっぽでおひげを作って言う。


「ではせんえつながら、みーがせつめーしよう。みんな、よくきくようにね」


 子供たちが、ちょこちょこと、コンの前に集まる。


「こーゆーたかそーなみせでは、ドレスコードとゆーものがあるのだよ」


「「「ドレスコードぉ?」」」


 何それ、と首をかしげる子供たち。


「ふさわしいふくそーとでもいうのかね。たかいおみせでは、ラフなかっこうはげんきん。それなりのかっこうでいかないと、みせにいれてくれないのだよ」


 ちら……っとコンが俺を見てくる。


「ああ。あってるよ。完璧な解説だ」


「ふふん、みーのはくしきさがしょーめーされてしもうた」


 ぶんぶんぶん、とコンがキツネしっぽを、ヘリコプターのように回して喜ぶ。


「にぃ、ほめじょーず」


「ありがとうな。コンも説明上手だよ」


「てれますな」


 コンが自分のしっぽを抱きかかえて、顔をひゃあっと隠す。照れてる照れてる。


「とにかく、今コンが説明したとおりだ。わかってくれたか、あやね」


「うん、よー……ぉくわかったー……ぁ」


 ふへっとあやねが笑う。


「なーなーおにーちゃぁん」


 くいくい、とキャニスが俺のズボンを引っ張ってきた。


「どうしたキャニス?」


「はらへったー」


 ぐぅ~~~~~~…………っと、キャニスが大きな腹の音を立てる。


「みーもはらへりんぐ」「あの、あの、にーさん。ラビもぉ……」


 子供たちがお腹を押さえていた。


「もうちょっと待ってな。クゥがまだ来てないから」


 今日はクゥに招待されているのである。


 クゥより先にレストランの中に入るわけには行かなかった。 


 待ってる間暇だったのか、子供たちが集まって雑談している。


「いったいどんなうめーめしがでてくるんだろうなぁ~……」


「きっとゆめのよーなおいしさのりょーりがでてくる」


「「「おおー!」」」 


「そしてうまさで、ふくがやぶける」


「「「なんでー?」」」


「グルメまんがのおやくそくですよ」


 きらん、とコンが目を光らせて、どや顔になる。


「「「なるほどー!」」」


「コン。間違った知識を教えちゃダメだぞ」


「まちがえじゃない。せいかいじゃないだけ」


「それを間違えって言うんだよ」


「なんと。はつみみ」


 にやりと笑って、コンがキツネ耳をぴくぴくと動かす。


「さてはわざとだな。まったくいたずら好きなキツネ娘め」


 俺はコンの側によって、額をつんとつつく。


 コンは嬉しそうに笑うと、俺に抱きついてきた。


 よいしょと抱っこしてあげると、コンが俺の首筋に鼻を押しつけて、すんすんとにおいをかぐ。


「きょうはいつもいじょうに、よきかおり。こーすいでもつけてるの?」


「いや、特に何もつけてないが」


「しかしこのいつもいじょうのよきかおりのしょうたいは……。は、わかった。かみのけになにかつけてるんだ」


 びしっ、とコンが俺の髪の毛をさして言う。


「そうだな。整髪料をつけてるよ。香り付きのやつだったんだが、いやだったか?」


「のん。とてもよいかんじ」


「ありがとな」


 俺はキツネ娘の頭をよしよしと撫でる。

 

「いいなー! おいコン! そこかわれやです!」


「のん。いまはみーが、にぃをひとりじめ」


 きゅーっとコンが俺の体に抱きついて離さない。


「あう……コンちゃん、いいなぁ」

「あとでラビもだいてもらうといいよ」

「うん!」


「……コン。言葉。言葉選べって」

「おっとそーりー。こどもにはしげきがつよいことばだったね」


 きらん、とまたどや顔になるコン。


 そのときである。


「社長。お待たせしてもーしわけあらへん」


 魔法エレベーター(魔法を動力にしたエレベーター)を使って、クゥが最上階へと到着する。


 小柄な体躯。


 黒髪に、キツネのような細い目つき。


 白いスーツと、それと対照的な真っ黒な翼が特徴的な女性。


 名前をクゥと良い、商業ギルド【銀鳳商会】の実質的なリーダーを務める女傑だ。


 クゥは俺の前々でやってくると、ぺこっと頭を下げる。


「今日はわざわざ来てもらってすまんな」


「いや、こっちこそ。まさか孤児院全員を招待してくれるとは思わなかったよ。いいのか、こんな高そうなレストランに、みんなを招いてもらって」


「かまへんよ。ジロさんは今回、それだけの利益をウチらに招いてくれたんやからな」


 そう……今日は【お礼】という形で、クゥに招待してもらったのである。


「みんなも待たせてすまんな。今からごっつうまい飯くわせたるさかい」


 クゥが子供たちに向かってそう言う。


「「「ほんとー!?」」」


「ああ。ほんまや」


「「「ほんまやー!」」」


 子供たちが喜色満面になり、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。


 クゥはほほえましいものを見るような目で、子供たちを見ながら、


「ほな、いこか」


 と、レストランの中へと向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ