67.善人、鬼の母とキノコ拾いする
いつもお世話になってます!
山登りを続ける俺たち。
子供たちは木の実を拾っては、リュックサックの中へと放り込んでいく。
「コン、ぼくすげーこと気づいたです」
「ほう、きこーかきゃにす」
ちょこちょこ……と俺の前を歩く犬娘ときつねっこが、会話している。
「たくさんあつめたきのみ……あれがもしおかねだったら、いまごろぼくら……大金持ちです!」
「…………」
コンはぴたり、とたちどまる。むむむ、とうなったあと、
「てんさいか」
ぴっ、と両手でピストルを作りキャニスを指さす。
「えへへっ♡ だろー?」
「するとみーたちみんなおおがねもち」
ちょこちょこ、と子供たちがコンの元へ集まる。
「ら、らびもお金持ちっ」
「そー。おかねあったらなにする?」
コンの問いに、ラビはうーんうーんと考えたあと、
「にーさんやママ、おーかおねーさんにあむねーさんや、まちるだおねーちゃんに、プレゼントを買うのです!」
にぱーっと笑ってラビが言う。子供たちは「「「おー!」」」と感心したようにつつぶやくと、ラビに拍手を送る。
ラビは照れ照れと頭をかいた。しかしなんとも嬉しいな。
「しかしおしー。じつにおしーです」
うーむ……とキャニスが腕を組む。
「どしたー……ぁの?」
「きのみはしょせんきのみでやがるです。お金にはならない」
「「「それなー」」」
はふん、と子供たちが吐息をもらす。
「せっかくらびのないすあいでああったのに」
「いや、気持ちだけで十分嬉しいぞ」
俺はしゃがみ込んで、ラビのあたまを撫でる。
「ありがとなラビ。すげーうれしかった」
「えへへっ♡ えへへへっ♡」
ラビのうさ耳がぴょこぴょこっと動く。そのあとモジモジとしだし、ちら……とラビが俺に視線を向けてくる。
俺はラビの小さな体をよいしょっと抱っこする。この子は結構内気なので、自分から抱っこしてくれと言えないのだ。
「にぃ、ずるい。みーもだくべく」
しゅるるるん、とコンが器用に俺の体を登って、肩に腰を下ろす。
「ずりーぞおめーら! ぼくは……ぼくは……おねーちゃん!」
だだだ、とキャニスがコレットの元へ行く。コレットはしゃがみ込んで、よいしょと持ち上げる。
「へへん、どーだおめーら。こっちはでっけーふかふかおっぱいついてやがるです!」
勝ったな! とキャニスが勝ち誇る。
「それならおいらたちも-……ぉ。おかーちゃー……ぁん」
鬼姉妹が桜華の元へ行く。桜華はニコニコ笑いながら、あやねとアカネをひょいっと軽々と持ち上げる。
桜華は胸とか尻とかに肉がのっているが、腕やら腰やらは、驚くほどほそい。
だのに彼女は、子供2人を軽々と持ち上げていた。
「おかーちゃんのほー……ぉが、おっぱいでっかいよー……ぉ」
「むー、おねーちゃん! でっかくなってほしーです!」
「んー、急には無理かなー」
苦笑するコレットに、キャニスが「ちぇー」と唇をとがらす。
コンはそれを目撃し、俺を見上げて、「にーはでっかくならないの?」と聞いてくる。
「俺は男だから」
「せーてんかんすればわんちゃんある」
「ワンちゃん-? 犬のことー?」
「ラビはもっとしょーじんするんだね」
「はいなのですー!」
「まぶしい。じゅんすいむくなひかりかがやき。みーにはないじゅんすいさ……」
ひゃあ、とコンが目をつむってコロコロと転がる。「あうん」コンが堕ちそうになったので、俺が抱き留める。
「すてき……たくましいおかた……ぽっ」
「はいはいありがとな」
俺はコンとラビを下ろそうとする。だがふたりとも俺の体にきゅっとしがみついて、いやいやと首を振るった。
「さすがにふたり担いで山登りはきついよ」
「ではみーがおりる。ラビは抱っこしてもらいな」
「ら、らびがおりるのですっ。コンちゃんはにーさんに抱っこされて良いのです!」
いやラビが、いやコンちゃんが、と互いに譲り合う。結局ふたりで降りて歩くことになったようだ。
「おかーちゃー……ぁん。おいらたちもあるくー……ぅ」
「……はい、わかりました」
よいしょと鬼姉妹を下ろす桜華。
「よーし、おめーらやまのぼっぞー!」
「あ、そうだ。キャニスたんま」
俺はキャニスをひょいっと後から抱き上げる。
「んだよー、いいところだったのにー」
といいながら、キャニスは俺の頭の上へと移動し、満足げに吐息をはく。
「ここから少し移動したところにキノコがいっぱい生えてるところがある。そこでキノコを拾って、お昼はキノコご飯だ」
子供たちが「「「おー!」」」と目をきらきらさせて、ヨダレをじゅるり……と垂らす。
「異論は?」「「「ねー!」」」「よし、じゃあ行くぞみんな」「「「しゃー!」」」
俺は子供たちを連れて、森が深くなっている方へと移動するのだった。
☆
少し歩いたところに、森の木々が密集している場所があった。日差しがさえぎられており、じめっとしている。
子供たちはとりあえず目についたキノコを拾ってこいと言ってある。
ただし直接手で触るのがあぶないので、防御魔法の付与された軍手を手渡していた。
「おー! キノコはっけん! おーかー! おーかおねーちゃーん!」
俺の隣でキノコ拾いをしていたキャニスが、桜華を呼ぶ。
ちなみに俺がキャニス、鬼姉妹を、コレットがラビとコンとレイアを、それぞれ見ている。
呼ばれた桜華は、こちらに来る。
「……どうですか? 見つかりましたか?」
桜華はしゃがみ込んで、微笑みながら、キャニスに言う。子供が相手であっても、彼女の言葉遣いは丁寧なままであった。
「これはっ? これはくえやがるです?」
ぴっ、と桜華に差し出す。それは先っぽが栗のように丸くなった小さなキノコだった。
桜華はうん、とうなづく。
「……これはクリタケ、です。おうどんに入れるととってもおいしいです」
「おー! そうなんです? あっちにたくさんはえてやがったです!」
「……じゃあ、一緒に拾いにいきましょう」
キャニスと桜華が、その場から離れる。
「ねー、にーちゃー……あん」
「ん? どうしたあやね?」
あやねが俺にキノコをつきだしてくる。さっきのクリタケと同じような見た目のキノコだった。
「これはどうかなー……ぁ?」
「んー……。そうだなぁ」
俺は【探知】の魔法を使う。
初級無属性魔法【探知】。対象となる物体が安全かどうかを調べる魔法だ。
これはダンジョンなどにおいて、宝箱にトラップが仕掛けられているかどうかを判断するときに使われる魔法だ。
また、野生に生えているキノコや山菜などにも使える。
俺は【探知】を使うと、魔法がこれは危険だと知らしてくる。
「食わない方がいいと思うぞ」
「そうかー……ぁ」
すると桜華とキャニスが、俺たちの元へ戻ってくる。
「おかーちー……ゃん。これくえないのーー……ぉ?」
桜華はあやねから受け取ったクリタケもどきをじっとみて、「……だめよ」と首を振るう。
「……これは、ニガクリタケ。クリタケによくにてるから、注意しましょう。……たべるとお腹がいたくなります」
「だってさ。聞いたかみんなー?」
俺は子供たちに注意を促す。子供たちが「「「りょっ!」」」と答えた。
「なんだよりょって」
「ぼくらのなかでいまぶーむのへんじのしかたです。なっ、あやね」
「そだよー……ぉ。かわいいよねー……ぇ」
子供の感性は大人にはわからなかった。
その後も桜華は「これはたべれない」 「これはおっけー」と、子供たちのもってきたキノコを判別していく。
「詳しいんだな、桜華は」
俺が桜華に言うと、「……いえ」と控えめに笑って言う。
「……母が、山に詳しい人だったんです」
「なるほど。お母さんの知恵袋ってやつか」
はい……と微笑む桜華。その顔は本当に楽しそうだった。きっと母親が大好きだったんだろう。
「……子供の頃、よく母と、母の友達と一緒に山に入ってキノコ取りしました。たくさんキノコとって、秋にはみんなでたべたんです」
昔を思い出して懐かしんでいる桜華。目を細めて、感じ入っている。
「そっか。……しかし意外と食えないキノコって多いんだな」
俺はホコリタケという、さわるとぽふっ……となるキノコを摘まんで言う。
「……この時期ですと、先に山の動物たちが食用のキノコを食べてしまうんだと思います」
「なるほど……」
だから食用のキノコは探してもあんまり見つからないと。
キノコご飯を食べようって思ったんだが、難しいかな……と思ったそのときだった。
「にぃ、ぱない。ぱない」
ぶんぶんぶん、とコンがシッポを振り乱して、俺と桜華を呼ぶ。
俺はコンたちの元へ行く。
「どうした?」
「こんなすばらしきものがあるなんて……」
コンがシッポを♡にしてくねくねする。
「なにがあった?」
「ジロくん。なんかコンちゃんが見たことの無いキノコを見つけたのよ」
コレットに尋ねると、彼女はそれを何かわかってないようだ。
俺と桜華は、コンの持っているキノコを見て……驚愕する。
「おいコン、それって……」
「ふふふ、にぃもきづきました?」
茶色いキノコだ。傘の部分が焦げ茶色で、においを嗅ぐと、とてつもなく香ばしいにおいがただよってくる。
「これ……松茸じゃないか」
なぜ異世界に松茸があるのかはさておいて。
「コン、スゴいな。よく見つけたな」
「みーははながいいからね」
ふふんどやー、と得意げなコン。
「……すごいです、コンちゃん。とってもおはながいいんですね」
「びじんにいわれるとうれしくなるね」
ひゃあ、とと言ってコンがシッポを抱いて顔を隠す。
「しかしざんねんなおしらせ。このあたりじゃ、これしかない」
コンが2本の松茸を持って言う。
この2本以外は動物に食われてしまったみたいだ。
「せっかくみんなに松茸ご飯くわせてあげられるかとおもったのに……。しょぼーん」
ぺちょ、とコンのきつねシッポが垂れる。
「いや、コン。よくやった。あとは俺に任せろ」
「……? ……! そうか、にぃにはあれがあるもんねっ」
コンはひゃあ! と両手を広げる。
「みなのしゅー、やばい。すごいおしらせ」
なんだなんだ、と子供たちがコンに集まる。
「とってもうまいきのこごはんたべれるかもかも。すごいよやばいよ、おいしいよ」
「「「まじかー!」」」
じゅるぅり、と子供たちが涎を垂らす。
「にぃ、おねがい」
「任せな」
俺は【複製】スキルを使用する。
2本持っていた松茸を、4本に。4本を8本に。8本を16本に増やす。
これで上限いっぱいまでスキルを使ったわけだが、回復手段は持ってきているので、あとで回復しよう。
「ほらみんな。ちょっとにおいかいでみな」
俺は複製した松茸を、子供たちに配る。
「べつにふつーのきのこです?」
好奇心の強いキャニスが、まっさきにキノコを手に取り、すんすんとにおいをかぐ。
「!!!」
ぴーん! とキャニスの犬しっぽが立つ。
「おめーらやべー。これ、やべー!」
キャニスが喜色満面で言う。
子供たちがいっせいににおいをかいで、ほう……とうっとりとした表情でといきを履く。
「すごいよー……ぉ♡ とぉってもいいにおいだぁよー……ぉ」
「こんないいにおいのキノコ、はじめてなのですぅ……♡」
ぽわー、と子供たちが夢見心地な表情を浮かべる。
「お昼はこれをたっぷりつかったキノコご飯だ。河原で飯ごう炊さんするぞ」
「「「わー!」」」
ということで、期せずして松茸を手に入れたので、お昼はこれで松茸ご飯を作ることになったのだった。
お疲れ様です!次回は河原で飯ごう炊さんです。川で魚とか釣ったりします。
ではまた!




