60.善人、休日をエルフ嫁とまったり過ごす
いつもお世話になってます!
子供たちが衣替えをした翌日。
朝。俺は自然に目を覚ます。
普段は6時に起きられるよう、目覚まし時計でアラームをかけている。
なのだが、この日は目覚まし時計をかけていなかった。無論サボりではない。
「ジロくん♡ おめざめかね?」
目を覚ましてすぐに飛び込んできたのは、俺の真横いる、美しい金髪の少女だった。
寝間着姿のコレットが、うつぶせになって、ぱたぱた……とバタ足をしている。
「コレット。おはよ……」
くわっ、とあくびが出る。
「久しぶりにぐっすり寝た気がする。今何時だ?」
「今はなんと6時です」
俺は目覚まし時計を見やる。短針は6時を示していた。
「休日なのにいつもと同じ時間に起きちゃったね」
「だな。ついくせで起きちゃうんだよな」
うんうん、と俺とコレットが頷き合う。
「ん~~~~~」
コレットはころん、と仰向けになると、ぐいーっと背伸びする。
「お休みだけどちょっとお仕事しちゃいましょうか」
「だな。早く起きて暇だもんな」
俺とコレットは起き上がって、それぞれが動き出そうとした、そのときだった。
「だめですよっ!」「だめよ」
と、隣から少女たちの声がした。
隣で眠っていた猫耳少女のアムと、元受付嬢のマチルダ。
ふたりが目を覚ましていた。
「ジロさん、今日はお休みの日なんですから、しっかり体を休めてくださいっ!」
「昨日アタシたち休んだんだから、今日はジロたちが休む番でしょ」
マチルダは半身を起こして、俺にそう言う。アムも起き上がってぐいっと背伸びしながら言う。
「いやでも暇だし……なぁコレット」「ね、ジロくん」
するとアムがはぁ……と深くため息をつく。
「またあんた風邪引いてぶっ倒れたいの?」
「うっ……」
以前コレットと桜華が外出して3日間、家を空けたことがあった。そのとき俺は張り切りすぎて、風邪を引いて倒れたことがあった。
「その節はご迷惑をおかけしました」
俺はアムに頭を下げる。
「べ、別にいいわよ。すんだことじゃない」
ただ……とアムが心配そうに眉をひそめる。
「またあんたが辛い目に、あってほしくないの。倒れる前に休んで。……ね?」
アムの言葉には真摯さがあった。本気で俺のみを案じてる様子だ。
「……わかった。ちゃんと体を休めるよ」
俺が頷くと、アムは控えめに微笑んだ。
「そうですよっ! ジロさん。休んでくださいっ」
ふんっ、とマチルダが気合いを入れる。
「こっちのことはお気になさらず! アムちゃんと桜華さんと頑張って回しますので! ね、アムちゃんっ」
「そうね、マチルダ」
アムにマチルダががばっ、と後から抱きつく。
「だからコレット。あんたもちゃんと休んでよね」
「はーい、アム先生」
コレットが子供用に手を上げて、くすりと笑う。
「アムもすっかり先生ね」
「……子供扱いしないでよ、もう」
くすくす、とコレットとアムが笑い合う。
一方でマチルダは、
「うう……ジロさんとふたりきりの休日。羨ましいよぅ……。ええい、落ちこんじゃだめだっ。来週はジロさんと過ごせるんだ。ふぁいとだわたしっ」
むんっ、と自分を鼓舞していた。
「ほらマチルダ。子供たち起こしに行くわよ」
アムがベッドから降りて、ぱさ……っとパジャマを脱ぐ。
「はーい」
マチルダもパジャマのボタンをぷち……ぷち……と脱ぐ。
ベッド近くにあるタンスからブラを取り出し、見つけて、シャツとズボンに着替える。
エプロンに着替えると、「それじゃ、行ってくるわ」「行ってきます!」
脱いだパジャマを持って、部屋を出て行く。
あとには俺とコレットだけが残された。
「それじゃジロくん。どうする? 二度寝する?」
ふたりきりになったあと、コレットがベッドの上で聞く。
「それとも……する?」
コレットがパジャマの胸元をはだけて、俺にちらちらと期待のまなざしを向けてくる。
「朝っぱらからやる元気はないよ。それにいくら俺たちが休日でも、みんなが働いているんだ。自重するように」
「はーい先生」
そう言って結局、俺たちは二度寝することにした。
俺がベッドに横になると、コレットがすかさず、俺の体に抱きついてくる。
「……こうして休日をのんびり過ごせる日が来るなんて、ちょっと前までは考えられなかったなー」
きゅーっ、とコレットが強く抱きついてくる。甘い髪のにおいが鼻腔をくすぐる。
「ほんと、ジロくんのおかげだよ。ジロくんがわたしたちの元へ来てくれたおかげだ。ありがたいことだ」
うんうん、とコレットが頷く。
「どういたしまして、先生」
「あ、だめだめ。もう、ジロくん。昔と違って今先生は先生じゃなくて奥さんなんだよ。ちゃんとコレット愛してるって言わないとだめなんだぜ」
んー、とコレットが唇を突き出してくる。ぷりっとした唇に軽くキスをした後、コレットは嬉しそうに、胸板に頬ずりしてくる。
そうして俺たちは二度寝した。
☆
起きたら9時頃だった。
俺とコレットは腹を空かせて、1階食堂へと向かう。
ホールの向こうでは、マチルダが子供たちとサッカーをしていた。
「あー! おにーちゃーん!」
ぶうんぶうんっ、とキャニスが俺に気づいて、手を振ってくる。
「ねぼーとはかんしんしないね」「コンちゃん、きょうはにーさんお休みの日なのです」「おうそーだった。ちぃ、にぃとあそべぬぐぬぬぬう」
子供たちも俺とコレットが今日休みであることを知っている。
「飯食ったら一緒にサッカーしようか」「ジロさん! 休みの日! 休んでください-!」
とマチルダに叱られてしまった。
「ジロくん、仕事熱心なのはとってもいいことよ。けど今は休日。しっかり休むことも仕事のうちよ」
「……了解」
俺はコレットともに食堂へ赴く。朝食の時間はすっかり過ぎてるため、中には誰もいない。
調理場にも誰もいないので、飯を食う場合は各自で用意する。
と言っても冷蔵庫の中に朝食が入っているので、それをレンジで温めて、コレットともに朝食を取る。
「はいジロくん。あーん♡」
コレットがオムレツをお箸でつまんで、俺に食べさせようとする。
「いいって、自分で食えるから」
「おっとジロくん、今はさっきの先生モードじゃないんだぜ。今は奥さんモードなんだぜ。いちゃいちゃしたいんだぜ」
そういうことか。
俺はコレットからあーんしてもらって、オムレツを食う。
「さてジロくん。あーん♡」
コレットがニコニコ笑いながら、口を控えめに開けて、ついっと俺に向けてくる。
どうやらあーんしてもらいたいらしい。
「ジロくん、何を恥ずかしがることがあるの? 周り誰もいないんだぜっ。さぁっ、恥ずかしがらずにっ」
「わかったわかった」
俺はオムレツをとって、コレットにハシをのばす。
「あ~♡」
コレットが嬉しそうに目を閉じて口を開く。食べて、咀嚼し、飲み込む。
「んー♡ とってもおいしい♡ さすが桜華さん。プロレベル~」
喜色満面のコレット。確かにオムレツは美味い。
しばらくふたりで朝ご飯を食べあせ合ったあと、俺は食堂のテーブルをふき、コレットは空いた食器を洗う。
ご飯を食ったあと、俺とコレットは裏庭に出る。
「オー! おにーちゃんおっせーぞです!」
「みーたちまちきれぬ。はやくさっかーこぞうになろう」
ててて、っとキャニスとコンが俺たちに近寄ってくる。
「はわわ、だ、だからふたりとも、にーさんたちはお休みなのですっ」
ラビが止めるが、
「いや、休みだからこそみんなと遊びに来たんだ」
「そうよー♡ さあみんな、一緒にボールをおっかけよう!」
キャニスが蹴るボールを、コレットが後を追う。
俺はマチルダの方を見やる。彼女はぷくっとほおを膨らませて、「おやすみなんですからっ」とちょっぴり怒ってた。
「別に働くわけじゃないって。子供たちと遊んでるだけだ」
「でもぉ……ジロさん……」
「俺がしたくてやってんだ。ついでに子供たちの面倒見てくるから、アムと一緒に掃除を手伝ってこい」
「…………」
マチルダが申し訳なさそうな顔になる。うんっ、と意を決したように頷くと、俺に近づいてくる。
「働き者なジロさんも、大好きですっ!」
ちゅっ、と俺にキスしたあと、ぺこっ、と頭を下げて、建物の中に入っていった。
「おにーちゃん! ぱーす!」
キャニスが俺にボールを蹴ってくる。
俺は受け取って、裏庭に設置されたゴールへと向かってドリブルする。
「にぃ、あまい。みーのかれいなすらいでぃんぐ」
しゅっ、とコンが横から飛び込んできて、ボールをかすめ取ろうとする。
が、ボールに足が引っかからず、「あうん」と膝小僧をすりむく。
俺はコンのそばに近寄り、コレットから【複製】した治癒魔法を使う。
擦り傷はすぐになおった。
「いつもすまないねぇ」とコンがおばあさん口調で言う。
「それは言わない約束だろ」
よしよし、とコンのあたまを撫でる。
「やすみのひなのにはたらくなんて。にぃははたらきもの。でもかろーでしんじゃやーよ?」
「気をつけるよ。忠告サンキュー」
おれはコンとともにボールを追うのだった。
☆
子供たちと午前中遊んだあと、俺とコレットは、竜の湯へと向かった。
脱衣所で服を脱いだあと、俺とコレットはブラシで、竜の湯の床を掃除する。
「おや、兄ちゃんたちさね」
「あ~。おにーさんとおねーさんだ~」
そう言ってブラシを持ってやってきたのは、桜華の娘の一花と弐鳥だった。
「兄ちゃんなにやってんさね。ウチらの仕事だろう?」
「そうだよ~。おにーさんたちお休みじゃん。働き過ぎは良くないよ~」
マチルダ同様、彼女たちからも注意されてしまう。
「いや、別に働いてないって。ちょっと床をこすっただけだから」
「む~。その割にはぴっかぴかに掃除されてるよ~?」
やれやれ、と一花たちが首を振るう。
「アタシらバイトは金もらってんのに、そのバイトから仕事を取り上げないでほしいさね」
「いや、ちゃんと時給は払うって」
「そこはわかってるさ。ただ仕事せずに時給をもらうのが、申し訳ないっていってるんさね」
そう……。
つい最近、俺は桜華たちの娘にも、孤児院の仕事を手伝ってもらうことにしたのだ。
もともと桜華の娘たちは、鬼孤児院の幼児たちの世話を自ら買って出てくれていた。職員でもないのに、給料が発生するわけでもないのに。
だから俺は、彼女たちをアルバイトとして、雇うことにした。
俺たち職員は5人で回している。ただ1日には食事係2人+掃除係2人+子供について様子を見るひとが1人、合計で5人はいないと、職場が回らない。
ただそうなると全員がフルで仕事しないといけなくなり、これでは休みが取れない。
そこで桜華たちの娘にも、アルバイトとして、俺たちのシフトには言ってもらうことにしたのだ。
正規職員は朝から夜まで通しで。アルバイトの鬼娘たちは朝から昼とか、昼から夕方など、時間単位で働いている。
そうやってアルバイトもシフトに組むことで、正規職員に休日を作れるようになった次第だ。
ちなみに彼女たちアルバイトの給料、そして正規職員たちの給料は、俺のクゥから支給されている社長としての月給から出されている。
まあ月に1000万円もらうので、人を雇っても全然手元に金が残るのだが。
「竜の湯の掃除はいいから、一花たちは他のところの掃除を頼む」
俺が言うと、一花たちはにやり、と笑った。
「そっかなるほどな」
「奥さんとふたりきりでお風呂はいるの、じゃましちゃだめだもんね~」
うんうん、と鬼たちが得心顔で頷いている。
「んじゃ兄ちゃん。あと頼むわ」
「じゃあね~おねーさん~」
そう言って、鬼たちが手を振って、俺たちの元を離れる。
コレットと少し掃除して、温泉に浸かる。
「ふぅ……。良いお湯だね~」
隣に座るコレット。
「昼間からお風呂は入れるの……うん、ぜーたくだなぁ」
「そうだなぁ」
「…………。えいえい」
コレットが手で水てっぽを作り、ぴゅぴょっ、とお湯を飛ばしてくる。
「子供かよ」
「まさか。この立派なお胸が見えないのかね?」
コレットが胸を張るとばるん、とその巨乳が躍動した。
「ただジロくんといちゃつきたかったんだ。だめ?」
「…………。えい」
俺はコレットがしたように、水鉄砲でコレットを狙撃する。
「きゃっ♡ やったなー」
その後お湯にのぼせるまで、俺たちは浸かったのだった。
☆
風呂から上がったあとは、子供たちの様子を見つつ、子供たちと一階ホールでゲームをする。
「おにーちゃんっ、つえー! でも、ぼくはまけねーぞです!」
テレビの前に座り、俺はキャニスと、レースゲームに興じる。
「にーさんがんばなのですー!」「さぁにぃときゃにすとのしょーぶだ。どっちがかつかにかけたかけた」
ラビが俺の応援をし、コンは鬼姉妹とレイアに相手にばくちを打っていた。
「にーちゃんがかつかなー……ぁ」「アタシも姉貴と一緒」「れいあはキャニスね。ライバルだもの」「みー」
ややってレース終盤になる。
キャニスはアイテムを使い俺を追い越す。
「かった! ぼくのかちです!」
「あかんきゃにす。それはふらぐ」
俺もアイテムを取る。連続でダッシュできるキノコだった。
「な、なに~!」
キャニスが驚くのをよそ、俺は連続ダッシュを使用する。あっという間にキャニスを追い越して、俺がゴールした。
「あ゛-! まけたー!」
でーん、とキャニスが後に倒れる。
「やっぱおにーちゃんはつえーです」
「おまえも十分強いよ。今回は俺が運が良かった」
最後にレアなアイテムが出たからな。
後ではコンが鬼姉妹たちに配当金(お菓子のガム)を配っていた。
「キャニス、次は先生と勝負しましょう?」
するとキャニスは「おう! まけねーぞ!です」
キャニスとコレットとの勝負になった。
「コレット。おまえゲームなんてできるのか?」
「バカにしないでジロくん。隠れてこっそり練習してたんだから」
「「「おー」」」
子供たちがやんややんやと拍手する。
「これはきょうてきのよかんがしやがるです……」
「さあつぎのしあい。だれにかける? みーはまみーにばいぷっしゅだ」
コンがまたガムでかけている。
「さあキャニス! 先生の勝利する様を見なさい」5分後。「負ーけーたー」「おねーちゃんクソよええです……」
ホントびっくりするくらい、コレットは弱かった。
「うう……キャニス強いわね」
「おねーちゃんはもっとしょーじんしたほーがいいです」
子供たちがコレットをよしよし、と慰めている。
その後は子供たちとコレットを交えて、パーティゲームをしたり、漫画を読んだりとして、まったりと過ごした。
そして夜になりみんなでご飯と風呂には行って、その日は終了。
こんなふうに、休日は過ごしたのだった。」
お疲れ様です!幕間の2話目でした。
幕間はもう1話投稿します。次はアムちゃんと休日の様子を描く予定です。
ではまた!




