53.夏終了。新たな季節を迎える子どもたち
いつもお世話になってます!
夏が終わり、新しい季節へと移行し出している時期の、ある日の午後。
今朝からつづく長雨のせいで、子どもたちは外に出れないでいた。
「またあめですやがるです……」
1階の大きな窓に、顔をぶにっとくっつけているのは、犬娘のキャニスだ。
ピンと三角に尖った犬耳と、ふわふわとした茶髪。活発そうな大きな瞳は、今はしっぽと一緒で、垂れ下がっていた。
「あめふりすぎ。みーのじまんのきつねしっぽ。しっけでしんなりしてる」
キャニスの隣で、こちらも窓にぶにっとくっついているのは、きつね娘のコンだ。
銀髪にきつね耳。ちょっと眠たげに閉じられている黄金の瞳に、ふわふわとしたきつねシッポ。
「そうか? しっぽはいつも通りだと思うがな」
ソファに座る俺がコンに言う。
「にぃ、わかってない。こんなにもしっぽはしんなりしている」
窓に張り付いた状態で、コンがしっぽをぶんぶんと振るう。キャニスもマネしてぶんぶんする。
「うーん……いつも通りにしか見えないんだが」
「じょしのこころわからぬか。そんなんじゃりっぱなじょしにはなれないよ」
「そもそも俺は男なんだがな……」
コンたちは窓にくっついて、「あめー」「やめー」と念を送っている。
窓の外を見やると、ざあああ…………と音が聞こえてくるほど、激しい雨が降り注いでいる。
先週から秋の長雨がつづいているのだ。びゅうびゅうごうごう、と雨風が孤児院の窓を叩いている。
ときおりピカッ……! と雷がまたたくと、そのあとに腹の奥底から響くような雷鳴がとどろく。
「ひゃぅっ! にーさぁ……ん……」
雷に1番敏感に反応するのは、ラビだ。
ラビは近くのソファで、鬼姉妹と本を読んでいた。雷が落ちると、ぴーん! と耳を立たせて、俺のもとへとやってくる。
ぶるぶる……と震えるうさ耳少女が、ラビだ。
ちょっと垂れたロップイヤーと、垂れ下がった気弱そうな瞳が特徴的の少女だ。
「雷怖いのです……ごろごろが怖いのです……」
ただでさえ垂れ下がってるうさ耳が、極限まで垂れる。ぶるぶるぶるぶる、と激しく体を震わせていた。
「大丈夫だぞ。家の中なら安全だ」
俺はそう言いながら、コレットから【複製】した光魔法を使う。
初級光魔法【癒】
これはHPやケガ病気を治す魔法ではない。不安や恐怖といったマイナスの感情を和らげる魔法だ。
張り詰めた自律神経を魔法の光がいやして解きほぐす。恐怖に乱れた心音や呼吸が正常に戻っていく。
お湯に入れたとろろ昆布のように、ラビの表情がとろける。その顔は恐怖から解き放たれた、穏やかなものになっていた。
「ままのまほーなのです……。ぽかぽかしてふわふわするのです……」
ラビの言うとおり、本来この魔法は、俺の嫁であるエルフのコレットが使う魔法だ。
それをなぜ俺が使えるかというと、俺には【複製】という、特殊な能力があるからだ。
俺は転生者と呼ばれる、もともとはこの世界とは違う世界からやってきた人間だ。
転生者は【特殊技能】と呼ばれる、特別なチカラを持っている。
俺はあらゆる物体、あらゆる魔法をコピーして再現できるという能力だ。
これを使って俺は、元々はボロかったこの孤児院を立て直していったのだ。
そこから地球の便利グッズなどを使って孤児院の設備をどんどんとグレードアップしていった。
やがてクゥという、この孤児院出身の商人と出会い、彼女が働くギルド・銀鳳商会の社長に就任する俺。
そこのつてをつかって、ボロかった孤児院の修繕を行い、今では2階建てのしっかりとしたレンガ造りとなっている。
「ラビ。あんしんしやがれです」
とことこ……とキャニスとコンが、ラビの元へとやってくる。
「まえのおんぼろとちがって、ここはとってもがんじょーでやがるです」
「あめがふってもかぜがふいても、ひゃくにんのってもだいじょうぶだよ」
キャニスとコンが、ラビを慰めようとしている。
「そう、かなぁ……?」
不安そうにラビが獣人たちを見やる。
「いざとなったらぼくがまもってやるです!」
びしっ! とキャニスがカッコいいポーズを取る。
「ひゅー、きゃにすかっこいい、ひゅーひゅー」
コンがキャニスをはやしたてる。犬娘は「やめろや~♡ はずかしいでやがるです~♡」と照れていた。
「キャニスちゃん……コンちゃん……」
じわ……とラビが目に涙を浮かべる。
ぴょん、と俺からラビが降りると、とことこと2人の元へ行く。
「ありがとー♡ ふたりともだいすきなのです!」
がばっ、とラビが、キャニスとコンに抱きつく。
「やめろやー、あつくるしーです♡」
「らびはこどもだね。すぐにだきついてくる。きらいではないが」
ふたりとも気持ち良さそうにしっぽが垂れている。
「うつくしー……ぃ、ゆーじょだー……ぁね」
獣人たちが抱き合うのを、ちょっと離れたソファから見ているのは、鬼の少女、あやねとアカネだ。
あやねは短い髪にぽわぽわとした表情。
アカネは長い髪にちょっとつり目。
「…………」
アカネはラビたちがハグしたあと、わっせわっせ、と手をつないでくるくる回っているのを見ている。
ぷく……っとちょっと頬を膨らませていた。
「おー……ぉい、らびちゃー……ぁん」
あやねがアカネをちらりと見たあと、ラビに声をかける。
「おいらの妹がー……ぁ、アタシもラビちゃん大好きだよー……ぉ、だってー……ぇ」
「は、はぁ!? んなこと……」
「いったよねー……ぇ?」
「ま、まぁ……」
もにょもにょ、とアカネが口ごもる。
ラビはアカネに気づくと、ととと、と
「アカネちゃん! らびもアカネちゃんだいすきー!」
きゅーっ、とラビがアカネをハグする。
「ば、ばかぁ……♡ んな恥ずかしいことすんじゃあねえよぉ♡」
「まんざらでもなさそうだ-……ぁね」
妹が友達と楽しそうにしているのを、姉はにこにこーと笑ってみている。
「あやねちゃんもっ! ぎゅっ!」
「おやー……ぁ、うれしー……ぃねえ♡」
ラビが鬼姉妹をハグする。
夏前に鬼族とよばれる、人食いとして怖がられる種族が、俺たち獣人孤児院にやってきた。
あやねもアカネも鬼だ。人間から見れば恐怖の対象だろうが、獣人の子どもたちは、あっさりふたりを仲間に受け入れた。
それから季節が変わるまで共同生活をしていくうち、みんな仲よしになったわけだ。
「? おやー……ぁ。そういえばー……ぁ」
あやねがきょろきょろ、と辺りを見回す。
「れいあちゃんがー……ぁ、いないねー……ぇ」
姉鬼が周りを見回して言う。
「レイアは2階で昼寝してるよ」
孤児院は新しくなって、2階建てになった。2階の東ブロックは、子どもたちの部屋になっている。
みんな1階で暇を潰すなか、マイペースなレイアは、そこで昼寝しているのだ。
「でもー……ぉ」
とあやねが窓の外を見て言う。
「あそこにいるよー……ぉ」
「えっ……? なっ……!!」
窓の外は、台風が来ているため雨風で荒れに荒れまくっている。
森の木がゆれているなか、レイアがしゃがみ込んで、何かをしていた。
「あいつ……!!!」
俺は立ちあがって、窓を開けてすぐにしめ、レイアの元へと駆け寄る。
「レイアっ!!!」
顔や体に大量の雨粒を受けながら、俺は彼女の隣へ到着。
「おまえなにやってんだ! こんな雨の中あぶねえぞ!」
俺はレイアを持ちあげる。
レイアは丸まった状態のまま微動だにしない。
服がスゴい速度、で雨水に浸透していく。俺はレイアを連れて孤児院へと引き返す。
子どもたちが窓際に立って、俺たちを心配そうに見ていた。
俺はレイアを抱えたまま、窓を開けて、孤児院のなかへと戻ってくる。
「っとに、なにやってんだよ、おまえ……」
俺はタオルを複製して、レイアの長い銀髪をふく。
ぎざぎざの髪の毛。褐色の肌が特徴的なこの子の名前はレイア。
いっけんすると人間の子どもに見えるが、側頭部からのびるそれは、人間にあるまじき【ツノ】。
彼女は白輝聖銀竜と呼ばれる、超レアモンスターなのだ。
そのため絶滅危惧種とされていた。うちの裏にある温泉によく来ていた関係から、レイアをこの孤児院で保護することになったのだ。
「れいあ、おめーだいじょうぶです?」
「かぜひーたらたいへん。まみーにつききりでかんびょしてもらえる。あれそれごほーびでは?」
心配そうにキャニスとコンがレイアを見やる。その間も、レイアは丸まって、じっとしていた。
「レイア?」
「れいあはだいじょーぶよっ!」
レイアが丸まったままそう言う。
「れいあはおふろはいってくるわ!」
そう言うと、レイアは丸まった状態を解除する。
びしょ濡れの服の……お腹の部分が、ちょっとだけこんもりしていた。
「レイア? なんか服に入ってるのか?」
「べつにっ、なにもはいってないわ!」
レイアはそう言うと、内風呂へ向かって、走って行ったのだった。
「ふしぎなやつだね、にぃ」「おまえが言うなよ、コン……」
☆
レイアが雨の中につったってた事件があったその数分後。
レイアを俺は風呂に入れようとしたが、なんと向こうから拒否してきた。
「れいあがやるっ。これは、れいあのしごとっ」
とか、なんとか。
「でてって!」とぐいぐいと押されたので、俺は風呂を出て外に出た。
「レイアの仕事……ねえ」
俺はレイアの服がちょっと膨らんでいたのが少し気になった。あとで確かめるか。
風呂を出たあと、俺が1階ホールへ行くと、子どもたちがいなかった。
「食堂かな?」
ちょうど午後のおやつの時間だからな。
孤児院1階は東側に大きな食堂がある。なにせ俺たちは21人の大所帯だ。自然と食堂も大きく作る必要があった。
食堂は長いテーブルが2列出されている。
手前のテーブルの前には、足の長いイスが子どもの人数分出ている。
子どもたちは律儀にイスに座って、おやつが出てくるのを待っていた。
「ジロくん、レイアちゃんは?」
調理場へ行くと、エルフ嫁のコレットが、そこに立っていた。
女性にしてはやや大きめの身長。そして大きな乳房にお尻。
腰はきゅっとくびれている……金髪青目の美しい少女だ。
コレットが俺に気づくと、ととと、と近づいていてレイアのことを聞いてきた。
「別になんともなかった。タダちょっと様子が変なだけ」
「そう……良かった……」
ほっ、とコレットが安堵の吐息をつく。エルフの長い耳が、ぴこぴこっと動いて愛らしい。
俺は彼女の長い耳をスッ……と手で触る。人間にしては長く、かといってエルフにしては短い耳。
彼女は、半分だけエルフの血が入った、ハーフエルフなのだ。
海にいたときは薬を飲んで長くしていた耳が、今では元の、半分サイズに戻っている。人の目を気にしなくて良いからだろう。
「ジロくん?」
「あ、わるい。ぼうっとして」
「ふふ、寝不足なのかな? お昼寝は必要ですか-?」
「いらないよ。子ども扱いしないでくれって」
コレットは若く見えるが180歳の長寿だ。と言っても人間で言うと18歳なのだが。
俺は昔、コレットに勉強を教えてもらっていたことがある。故郷の村で、コレットは教師や医者の仕事をしていたのだ。
だがハーフエルフであることがバレて村を追放。それ以降、俺は彼女と長く会ってなかった。
十何年ぶりに再会したあと、俺はコレットが孤児院をやっていることを知り、こうして彼女と一緒に働くことになったのである。
それはさておき。
コレットに昔先生として教わっていたからだろう、ときどきこうして、子ども扱いされてしまうのだ。
コレットは年上だが人間で言うと年下。なんとも複雑な関係性だったりする。
「それよりジロくんや。子どもたちのおやつんなんだけど、またアイスで良いかな?」
「そうだなぁ……。雨降っててもまだ暑いしなぁ。ううむ……」
かといってアイスだと、子どもたちも「あいすー!」「あいすのとうちゃくがきたいされまーす」「にーさん! あいすくりーむがいいのですー!」
「あいつらアイス好きすぎだろ……」
ちょっと考えて、俺は食堂を出て、地下の作業場へと向かう。
地下1階には竜の湯から引っ張ってきた、足湯がある。
竜の湯。
これは、竜の体液が含まれた特別な温泉だ。
竜の体液には完全回復能力がある。浸かっているだけで体力や魔力を全回復させる能力があるのだ。
俺は足湯に素足をつけて、【複製】を行う。
俺のこのスキル、1度使ったことがあるものなら、何でも作れるというものだ。
条件はあるけど、前世で使ったことのあるたとえばテレビとか、ゲーム機だって作れる。チートスキルだったりする。
ただ作るものの構造が複雑であればあるほど、必要とされる魔力量は多くなる。
俺の持つ魔力量は並。本来ならたいしたものは作れないのだが、この竜の湯の魔力完全回復能力があるおかげで、俺はあらゆるものを作ることができるのである。
作業場で【それ】を作ったあと、1階ホールへと戻る。
子どもたちのいるテーブルの前に、どん、とそれを置いた。
「おう、ごりごりごーりやん」
コンがまっさきに、俺の持ってきたものの正体に気づく。
それはペンギン型をした、プラスチックのおもちゃだ。頭の部分にハンドルがついており、お腹の部分は空洞になっている。
「かきごーりね。なついあつにぴったりよ」
「暑い夏な」
「みーはぶるーはわいきぼう。それいがいはいらぬ」
「はいはい」
俺たちの会話を、そばで聞いてた子どもたちが、首をかしげる。
「にーさん、この動物さんはなんなのです?」
はてと首をかしげるラビ。
俺が答える前に、コンがしっぽでおひげをつくって、みんなに知識を明かす。
「これはかきごーりまっすぃーん、という」
「「「かきごーり?」」」
なにそれ、とみないちように、頭の上に疑問符を浮かべていた。
「こおりをがりがりしておかしをつくるやーつ」
「「「?」」」
「これがぎゃっぷというものか。じぇねれーしょんのかべをかんじるね」
ふっ……とコンが哀愁漂う雰囲気を醸し出す。
「時代というか世界だろ」
コンは俺と一緒で、前世が地球人……つまりこの子も転生者なのだ。
なので俺の作る地球のものを、まっさきに、抵抗なく受け入れてくれるのである。
「まあ言葉で説明するより見た方がいいな」
俺は調理場の冷蔵庫から、トレーに入った氷をいくつか取り出して、食堂へと戻っていく。
テーブルの上のペンギン型かき氷機を、キャニスたちが興味深そうに見ていた。
「おめー、なにもんです?」
「あのあの、あなたはなんてどーぶつなのです?」
「ふふふ、ぼくはてぃらのさうるす。きみかわいいね。たべちゃうぞ」
キャニスとラビがかき氷機にたずね、コンが吹き替えをやっていた。ラビがぶるぶると震えだし「みーがこえをあててた。しーぶい、みー」
と種明かししてラビがもうっ! と笑った。
氷を持ってきて、俺はペンギンの頭の部分に氷を入れる。ふたを閉じて、腹の部分にガラスの器を入れてセット終了。
「ジロくんジロくん、それなーに?」
いつの間にか子どもたちに混じって、コレットがそこにいた。
「このハンドルを、こう……回すとだな……」
ごりごりごり、とハンドルを回す。
「あ、姉貴っ! 皿のところになんかでたー!」
「おー……ぉ、きらきらできれー……ぇだー……ぁね」
鬼姉妹も食い入るように、ペンギンのお腹を見入る。ガラスの器に、削られた氷がたまっていく。
やがて氷がいっぱいになった器に、俺はマジック袋(【無限収納】という無属性魔法が付与された、何でも入る袋)からシロップを取り出す。
「ますたー、いつものぷりーぞ」
コンがかっこつけて、テーブルに肘をつけて、指をぱちっ、とならす。
「おっけー、お客さん。あと肘をテーブルに着いたらだめだろ」
「まなーいはんだった。はんせい」
俺はさっき注文のあったブルーハワイのシロップを、氷の上から注ぐ。
真っ青な液体が削られてふわふわの氷の上にかけられて、溶ける。
「すごいふわふわ。しはんのかきごーりとはおもえぬね」
器に入ったかき氷を見てコンがひと言。
「ああ。氷を削る刃のところに、【武器切断強化】の魔法を付与したんだ」
切れ味を良くする魔法をかけたことで、氷はしゃりしゃり、と容易く削れるようになったのだ。
「さあコン。食ってくれ」
「おけまーる。ではかきごおりをたべていこう。れりごー、れりごー」
手からびゃっ、と何かを出すジェスチャーをして、コンがスプーンを手に取る。
氷の山にスプーンを差し込む、取って、口に運ぶ。
「……きーん。きーんて、きーんてきた」
コンが気持ち良さそうに目を閉じて、頭を手で押さえる。
「これがたまらぬ。なつのふーぶつしだね」
「もう夏終わったけどな」
「ざんしょがきびしーざんしょ」
しゃくしゃく、とコンがかき氷を食べていく。そのたびに目を細めて、きーん、とする。
「おにーちゃん!」
「はいよ」
2杯目はキャニスに渡す。こういうときに物怖じしないのが、この犬娘のすごいところである。
イチゴシロップをのせて、俺はキャニスに器に入った氷を出す。
「きゃにす、しゃくっ、きーん、だよ」
コンの説明に、ふんふん、とうなずく。
「しゃく……。…………。…………!」
キャニスの犬しっぽが、ぴーん! と立つ。
「どうかねきーんてきーんてきたかね?」
「きーんてっ! きーんてきたです!」
キャニスが目を><にして、嬉しそうに笑いながら、頭を手で押さえる。
「ら、らびもやりたいのですっ!」「おらたちもー……ぉ」
ラビと鬼姉妹に氷を出してやる。3人とも食べて、「きーん!」「きーんてきたー……ぁね」「姉貴ぃ~。これ死なない? ねえこれ死なない? 大丈夫なヤツかなぁ~」
ラビとあやねは楽しそうだ。妹鬼を姉が「だいじょうぶだよー……ぉ。たぶん」とフォローを入れる。
子どもたちが一斉にしゃくしゃくと氷を食べていく。
「みなのもの。くったあと、んべー、ってしてみるべし」
一足先に食べ終わったコンが、みんなにそう言う。
「またもったいぶって! コンっ、おめーはいつももったいぶるでやがるです!」
「ふふ、たんてーはいつももったいつけるものよ……」
しっぽでおひげをつくって渋くそう言う。
「また博士か?」「こんどはこなんくん」
今度は探偵っていいたいらしい。
全員が一通り氷を食い終わったあと、キャニスがんべっ、と舌を出す。
「ほーなっへる?」
と俺に聞いてくる。キャニスの舌は……ピンク色に染まっていた。
「いろがついてるのですっ! おもしろいのですー!」
ラビがあやねの舌をみて驚く。あやねはメロン味を食っていたのだ。
ちなみにアカネは姉の舌を見て「きゅぅ……」と軽く気を失った。姉が病気だと勘違いしたらしい。
コレットが光魔法をかけてやり意識を回復。俺はアカネに人体に無害だと伝えると、姉の体に抱きついた。
「みーはあお。いんべーだー」
「おー! コンっ、おめーのしたおかしなことになってやがるですー!」
けらけら、とキャニスがコンの舌を見て笑う。
「ぼくもそのいろのべろになりてーです! おにーちゃん!」
「はいよっと」
俺はそうやって、キャニスに2杯目を用意してやる。子どもたちはかき氷という、新しい食い物を、喜んで食べてくれたのだった。
お疲れ様です。そんな感じで9章スタートです。
内容ときては秋に入ってもまだ少し夏が残っている時期。レイアちゃんが見つけたその子が、孤児院にまた新しい風を吹き込む、みたいなそんな感じになってます。
9章もよろしくお願いします!
また新連載やってます。まだの方は是非一度読んでいただけると嬉しいです!
ではまた!




