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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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44.善人、子どもたちとプールに入る

いつもお世話になってます!




 子どもたちと森を散歩した翌朝。


 夏も中盤にさしかかった頃、孤児院に来訪者があった。


「ねーちゃんでっけーです!」


「だいじょうぶ? うなじちゃんとまもらないと」


「はわわ、おっきーです!」


「アカネちゃん、大丈夫そうだよー……ぉ。優しそうなお姉ちゃんだよー……ぉ」


「そ、そうかよ……。うん、そうだな……」


 子どもたちが1階ホールでわいわいと騒いでいる。


 そこには……見上げるほどの大きさの、少女がたっていた。


「どもっす。ジロさん。おひさしぶりっす」

「フンッ! 呼んだらさっさと出てこんか! このエリートスーパー山小人ドワーフを待たせるとはな!」


 そこにいたのは巨人族の少女、ユミル。


 そして山小人の少女ワドだった。


 ふたりともクゥが元締めの銀鳳商会ぎんおうしょうかいの下部組織、銀鳳の鎚の従業員である。


 というかワドが頭領ボスで、ユミルが副頭領らしい。


「ねーちゃんでっけーです! どうやったらそんなにでけーくなれるんです?」


 キャニスがきらきらした目でユミルの足にしがみついてる。

 

 ユミルの身長は3mほど。普通の人間の倍くらいの大きさを持つ。


 キャニスからみたら、さらに大きく見えてることだろう。


「んー、そっすね。好き嫌いしないでなんでもたべることっすかね。あとは牛乳、これ大事」


「「「おー!」」」


 子どもたちが感心したように吐息を漏らす。


「これからはぎゅーにゅーのこさねーです!」


「みーもでっかくなってきょじんをくちくしたいですゆえな」


「ラビはぎうにゅーだいすきなのです!」


 きゃあきゃあと獣人たちがユミルを取り囲む。


「ふへへ、あたし子どもって大好きっす。ちっちゃくってかわいいっすよね。ボス。あたしらも子どもはやくほしーっす」


「フンッ! 女同士でどう子作りするんだこのたわけが!」


 この巨人族と山小人、実は夫婦だったりする。もっともどっちも女なのだが。


「それでワド、ユミル。いったい何のようだ?」


「あー、頼まれてたもんが完成したっす」


「なるほど。良かった、夏が終わる前に作れて」


「フンッ! もっと時間がかかるところだったが、貴様の貸してくれた魔道具のおかげで工事が予定より早く終わったぞ。感謝してやる!」


 腕を組んで、ワドが俺を見上げていう。


「あー、旦那はジロさんにめっちゃ感謝してるっていってるっす」


 ワドの言葉をユミルが翻訳する。


「貴様に見せてやる。このエリート山小人の作ったものをな」


「あー、完成したのみせるからついてこいっていってるっす」


 ということで、俺はワドたちについていくことにした。


 ワドたちに注文していた物は、孤児院からちょっと離れた場所にある。


 森を抜けていくと、そこには大きめの水槽があった。


「おー、良い感じだな」


 周囲は整地されており、木の伐採はすんでいる。


 地面は木材に【固定化プロテクション】がかけられて、腐食防止と防水加工がされている。


 また水槽にも同様の加工がほどこされており、これなら安心して水がはれそうだ。


「さんきゅう。とっても良い感じだぞ、このプール」


 俺が銀鳳の鎚に依頼したのは、プールの作成だ。


 最近めっきり暑くなってきたからな。銀鳳商会から振り込まれてきた金を使って、プールを作ったのである。


 プールは今のところ2種類。


 まずはノーマルなサイズの10mほどのプールだ。円形をしており、子どもたちがたっても溺れないよう、サイズを調整している子どもプール。


 大人が入ると全然だが、子どもが入る分にはちょうどいい。


 次に作ったのは、子供用プールのそばに、ぐるりと一周するようにつくった、楕円形のプールだ。


 ドーナツのように中央が空洞になっており、上から見えれば陸上のトラックのようにも見えるだろう。


「ジロさん、真ん中の浅いプールの用途はわかるんすけど、この周囲のプールはなんなんすか?」


「こっちはまあ実験みたいなもんだ」


 子供用プールに比べて、この周囲をぐるりと囲んでいるプールは、深さがそこそこある。


 いちおう先輩とワドと協議して、実現可能かを話し合って作ったので、上手くいく……とは思う。

 

「しかし貴様もつくづく面白い発想をするものだな」


 ワドが腕を組んで、俺を見上げていう。


「こんなものを発想するとは、さすがはわが銀鳳の社長」


「いや、関係ないよ。俺がしたのは、元いた世界の技術をパクってるだけだ。最初に考えついたやつが1番スゲえよ」


 とりあえず準備は整った。


 あとは水を張って、子どもたちに遊んでもらうだけだ。



    ☆


 

 完成したプールを見に行ってから、2時間後。


 朝食を取り、しっかりと準備運動をした後で、俺たちはプールへとやってきた。


 プールを見て子どもたちが、ひと言。


「「「うみだー!!」」」


 違う……が、そうだよな。


 プールなんて知らないよな。


「おうぷーるがあるんやん」


 異世界人ちきゅうじんであるコンだけが、プールを知っていた。


「! コンはかせっ、プールってなにでやがるです?」


 キャニスがコンに尋ねる。他の子らもきつね娘の周りに集まる。


 コンはしっぽでおひげを作ると、


「うみとちがって、みずをはってつくった、じんこーてきなうみ」


「「「おー……?」」」


 といまいちよくわかってない様子の子どもたち。


「おふろあるじゃん。あれにみずいれたかんじのやつ」


「「「なるほどー!」」」


 子どもたちがわかってくれたみたいだ。


 更衣室を近くに作ってあるので、そこで子どもたちに着替えてもらい、プールサイドへとやってきた。


 ちなみに水着は銀鳳商会から買った。


 この世界にも水着や水泳という概念はあるらしい。


 子供用の競泳水着をみにつけて、子どもたちが出てくる。


 ただ獣人たち(キャニス、コン、レイア)はしっぽが出るようなデザインになっている。


 し、キャップも獣人用の耳が出るものを作ってもらった。


「みなのしゅー、これがぷーるです」


 コンが子供用プールを指して言う。


「はいるまえはねんいりにじゅんびうんどうを」


 サングラスに浮き輪を装着したコンが、プールの解説役を買って出てくれる。


「はいはいはーい! コンはかせー!」


「なんだねキャニスくん」


 コンがまたしっぽでおひげを作って、キャニスに尋ねる。


「おめーが持ってるその、ドーナツみたいなやつはなんでやがるです?」


「これは、うきわ。こうかはみればわかる」


「そう言うこった。けどその前に準備体操だ。キャニス」


「まかされたー!」


 キャニス主導で準備体操をする。


 ややあって、体操を終えて、


「ではゆこう。みーにつづけ、しょくんっ」


 コンは浮き輪をはめたまま、ぴょん、っと子供用のプールに入る。

 

 すると……。


「こ、コンッ!? おめー……。おめー……! からだがういてやがるー!」


「「「わー!」」」


 コンの所業に、みんなびっくり仰天している。


「ふふふのふ」


「ま、まほーのたぐいでがやるです?」


「ちがうよ。これはうきわ。うくからうきわ」


 キャニスたちがこぞってプールに入る。


 そしてコンの周りに集まる。


「コンちゃんすごいすごいっ! みずにういてるのですー!」


「ふふふふ、ふしぎやろ?」


「とってもふしぎなのですー! いいなー」


 ラビがキラキラした目をコンに向けてくる。


「そう言うと思ってたくさん用意してるぞ」


 山積みになっている子供用の浮き輪をおいてやる。

  

 子どもたちはこぞって浮き輪を手にして、プールへ飛び込んでいく。


「からだがうくー!」「ぷかぷかー!」「アカネちゃん、怖くないよー……ぉ。ほらおいでー……ぇ」「う、うん……」


 子供用のプールに、浮き輪が6つ浮かぶ。

 全員が楽しそうに、体が浮く感覚を喜んでいた。


「からだがつめたくってきもちえーです……」


 浮き輪に浮かびながら、キャニスがとろんと目をとろかせる。


「みなのしゅー、うきわのおーぎをおしえてあげるぞよ」


 コンの周りに、さーっと子どもたちが集まる。


「おーぎっ!? なにそれおしえろや!」


「せいせい。まずはうきわをぬぐ」


「「「ふんふん」」」


「このあなのところに、おしりをすぽんといれてる。そふぁにすわるようにね」


 ぴょんっ、とコンが浮き輪の穴に後ろ向きにダイブする。


「すると……そふぁのようにぷかぷかがかのう」


「「「おー!」」」


 さっそく子どもたちが、コンのマネをして、浮き輪に座る。


「すげー! みずのうえでかんぜんにういてやがるですー!」


「おふねのうえみたいできもちーのです!」


 ぷかぷか浮きながら、子どもたちがわいわい楽しそうにしていた。


 と、そのときだった。


「ジロー。やってるね」


 そう言ってあってきたのは、大賢者ピクシーこと、先輩だった。


 一見すると子供の様な見た目の少女だが、彼女は数百年を生きる大賢者。


 妖小人ハーフリングという種族であり、長命で、しかも全員が子供用な見た目をするという特別な種族。


 先輩はメガネをかけて、セパレートの水着を着ていた。


 色はマゼンダ。


「先輩。みんなは?」


「今着替え室でどっちがジローに先に水着を見せるかで揉めてるよ」


 ああ、目に浮かぶ……。


「しかし……ふむ、プールか。異世界でプールを導入するとはね」


 ちゃぷ……と先輩が子供用のプールに足をつける。


「ちょっと水温が高くないかい?」


「いや、子供用だからな。あんまり水温が低いとアレだし」


 子どもたちが入る2時間前に水を張っておいた。太陽に照らされて、ちょっとぬるいかな程度まで水温が上がっている。


「まさか光魔法・【消毒滅菌オートクレーブ】が塩素消毒のかわりになるなんてね」


 プールを作る際に、1番頭を悩ませたのは塩素消毒だ。


 プールの概念のないこの異世界だ。塩素剤などあるはずもない。


 じゃあどうするかとなったとき、先輩が【消毒滅菌】はどうかと提案してきた。


 これはダンジョン内とかで、毒トラップにかかったとき、毒を打ち消す効果のある光り魔法だ。


打消毒アンチトード】とはまた異なる。あれは毒にかかった人間から、毒を取り除く魔法だ。


 こっちはすでにある毒を消毒する魔法である。


抵抗レジスト】と魔法を合成させて給水管を作り、捻ると消毒された水が出るように、俺が複製合成してつくったのだ。


 これにより塩素消毒をしたのと同じ効果を発揮しているため、安心して子どもをプールに入れることができる。


「ところジロ-。さっきから気になってたんだが、子供用プールに浸かっている、あの巨人族の少女はだれだ?」


 子供用のプールに三角座りしているのは、巨人族のユミルだ。


「ゆみるー、すべりだいすっからうごくんじゃねーぞーです!」


「うーす。いいっすよー」


 ユミルはプールにヒザを立てて、そこを滑り台にして、子どもたちがぴゅーっと降りてる。


「きゃはー♡ めっちゃすげーです!」


「みーもやるっ」「らびもー!」「れいあもー!」


 わあわあとユミルの周りに子どもたちが集まっている。


「きみはおいらたちとおなじなのー……ぉ?」


「フンッ! ガキが。オレ様はエリート山小人ドワーフだ。貴様らと違って大人だ!」


「あらー……ぁ。そーだったんだー……ぁ。ごみんね、身長近かったからさー……ぁ」


「フンッ! まあ素直に謝ったからな。許してやらんこともない」


 ワドもなぜか子どもたちに混じって、ユミル滑り台に興じている。


「彼女たちは銀鳳の鎚。クゥんところの従業員だよ」


「ふむ……それがなぜここに?」


 銀鳳の鎚の頭領と副頭領が子どもたちと遊んでいる姿を見て、俺が答える。


「彼女たちに、このソルティップの森の管理を任してるんだよ」


 あれはだいぶ前。


 新校舎が完成したあとくらいだ。


 銀鳳商会から、管理人として、銀鳳の鎚のメンバーが派遣されてきたのだ。


 もともと管理人の選別はクゥが行っていたところ、そこにワドたちが名乗りを上げたのだという。


 そして銀鳳の鎚のメンバー(全員ではない)が、このソルティップの森へと引っ越してきた。


 森の管理を行いつつ、大工としても働いている。


「なぜ彼らはここに来たんだ?」


「俺の作る魔道具に興味があるんだってさ。それと俺といれば、今まで作ったことのないものを作れるようになる、可能性が広がるんだと」


 俺たちの仕事を優先的に受けてくれるかわりに、俺に協力してくれとワドが申し出てきた。


 ようするにワドたち鎚のメンバーが俺たち孤児院のお抱え大工衆になってくれたのだ。


 かわりに俺は技術を道具(魔道具。魔法ペン)を貸すことにした。


 ワドたちは技術を向上させられ、俺たちはこうして、建物や施設を作ってもらえる。


 どちらもが得する関係である。


「なるほど……そうだったんだね」


「ああ。どうしても俺はこういう大がかりなものはひとりでは作れないからな。彼女たちがいてくれて、ほんと助かってるよ」


 さいわいソルティップの森は広い。

 

 土地は腐るほど余っているのだ。いろいろと今後も施設を作ってもらうことになるだろう。


 ちなみに建設にかかる費用はきちんと払っている。さすがにタダでやってもらうわけにはいかないからな。



    ☆



 子どもプールで遊ぶこと数分。


 コンがじぃっと、子どもプールの外に設置された、ドーナツ型プールを見ていた。


「へい、にぃ」


 浮き輪をかかえながら、コンがちょこちょこと歩いてきて、俺に尋ねてくる。


「これは、もしやあれか? ながれてきなぷーるてきな?」


「お、さすがコン。気づいたか」


 他の子らもどうしたどうした、とコンの周りに集まってくる。


「に、にーさんこのプールはなんなのです?」


 ラビがドーナツ型のプールを見て、俺に尋ねてくる。


「まあ説明するより見た方が早いな。コン」


「おまかせあれ。しゅわっち」


 コンが浮き輪に体を通すと、そのままぴょんとプールにダイブ。


 すると……。


 すぃー……っとコンが動く。


 コンはコースを沿うように、流れていく。

「!!」


 子どもたちのしっぽが、ぴーんと立つ。


「すげー! コンがっ! ながれてやがるです!」


 物怖じしないキャニスは、浮き輪をセットすると、そのままプールに飛び込む。


 すぃー……っとキャニスが流れていく。


「おめーらすげーっぞ! なにもしてなくっても、からだがながれてきやがるです!」


 子どもたちがキャニスの後に続く。


「アカネちゃん。だいじょうぶだってー……ぇ。おいらがついてるからねー……ぇ」


「う、うん。えいっ」


 アカネが浮き輪ごと飛び込む。あやねも一緒に飛び込んで、ふたりで手をつないですいっと流れていく。


 ラビとレイアもその後に続いた。


 その頃にはコンが一周して戻ってきた。


「どんな感じだ?」


「ぐあい、よし」


 ぐっ、とコンが親指を立てる。


「そっか」


「もういっしゅーしてくる」


 すいーっとコンが2周目に突入。


「コン、まちやがれですっ!」


「いやーん、つかまえてごらーん」


 バタ足でキャニスがコンに追いつこうとするが、コンもバタ足で逃げていく。


「すごいのですっ! にーさんっ! たのしすぎるのです!」


 ラビが流れに身を任せながらいう。


「あしぱたぱたしなくてもー……ぉ、からだがしぜんにうごくー……ぅ。ふしぎだー……ぁね」


 あやねが浮き輪にお尻を入れて、すいーっと流れていく。アカネもそれを真似ていた。ただ姉の右手を決して話そうとしていない。


 コンが2周目を終えて、ぴょんっとプールサイドにたつ。


「にぃ、たのしすぐる。このながれるぷーる、さいのこー」


 両手を挙げてコンが喜びを表現する。


「そっか。ほら、もっと流れてこい。これ使ってな」


 俺はそう言うと、子供用のプールに足をツッコむ。


 そして……【複製】を開始する。


 俺が作ったのは、水鉄砲やビーチボールといった、遊具だ。


「おーすげえ。ぶきしょーにんだ。へくまてぃあるだ」


 コンは水鉄砲を持って、流れるプールへと飛び込む。


「きゃにす、くらえい」


 ぴゅーっと水鉄砲で、コンがキャニスを攻撃する。


「! なんだコンっ! それなんだ!」


「にぃよりぶきをしいれるがよい」


「おにーちゃーんっ!」


 俺はキャニスのそばに近寄り、水鉄砲を渡してやる。


「あやねー。ほらっ」


 俺はあやねにビーチボールを投げてやる。


「おー、ボールだぁ……ね。ラビちゃん、アカネちゃん、とんとんしてあそぼー……ぉ」


 わあわあ、とあやねたちがトスしあっている。


 俺はプールサイドに座って、子どもたちの楽しむ様子を眺める。


「なるほど……」


 先輩は子供用のプールに足をつけて、感心したようにつぶやいた。


「そうか……竜がこのプールに入ったことで、擬似的な竜の湯と同じ効果をもたらすんだ。だからジロー、きみがさっき複製をできたわけだね」


 そういうこと。


 俺の複製には大量の魔力を消費する。特に地球にあったような、複雑な構造を持つ物には、作るのに尋常じゃない魔力を必要とする。


 だから俺は、完全回復能力を持つ竜の湯に浸かっていないと、複製のチカラを十全に発揮できないでいた。


 そもそも竜の湯が完全回復能力を持つのは、レイアというドラゴンの体液が、温泉に浸かることで混じるからだ。


 ドラゴンの体液、つまり汗に、回復能力があるゆえ、竜の湯は効果を発揮していた。


 しかしよく考えなくても、別に竜の湯に限定した話しではない。


 こうしてプールにレイアが入ることで、汗がプールの水に混ざり、こうして擬似的な竜の湯を作ることができる。


 なので水鉄砲も、ビーチボールも作れるというわけだ。


「流れるプールはどうやって作ってるんだ?」


「水の中に吸水口と排水口を作って、吸水口から水魔法で水が永続的にでることで、流れを作ってるんだ」


 吸水口の中には、大きめの魔法蛇口が設置されており、【抵抗レジスト】で威力調整された水流が出ている。


 水を出しっぱなしだと水があふれかえってしまうので、排水溝を設置。


 排水溝は管を通って森の中の樹木に水が撒かれるような構造を取っている。


「設計は銀鳳の鎚で調整はジロー、きみがやったのか?」


「そんなところだ」


 俺はプールサイドに座って、子どもたちが流れていく様を見る。


「アカネちゃぁー……ん、いくぜー……。トース」


「よっと。ラビちゃんっ!」


「えいっ。あやねちゃんっ!」


 いつの間にか、インドア派の子どもたちは、子供用のプールへと移動していた。


 流れるプールには階段とスロープを設置しており、子どもたちが上がれるようになっている。


 ラビたちは浅いプールでビーチボールをトスし合って遊んでいる。


 一方で、


「おらくらえコンっ! みずてっぽう5れんしゃですー!」


「あめえ。あめえよ。ひぎ、せんすいのじゅつ……ぶくぶくぶく……」


「! コンが消えたわっ! どこに……へぶっ!」


 浮き輪から水の中に体を沈めたコンが、レイアの正面に出現して、水鉄砲を食らわせる。


「コンっ、おめーおよげるんです!?」


「ふふふ、みなのものもれんしゅうすれば、すぐにおよげるようになるよ」


 アウトドア派はぐるぐると流れるプールで遊んでいた。


 楽しそうに水遊びに興じる子どもたちをみて、ほっと安堵する。


 夏が終わる前にお披露目できて良かった。


「にーさーんっ! いっしょにぼーるであそぼーなのですー!」


 子どもプールから、ラビが俺を呼ぶ。


「おにーちゃんっ! ぼくらとみずてっぽうでばきゅんばきゅんしようですー!」


 流れるプールからキャニスが。


 そして……。


「じゃーんっ! ジロくんおまたせー♡」


「ジロさんっ、ど、どうですかっ。み、みずぎでのーさつ、されましたかっ!」


 コレットやマチルダたちが、更衣室から出てくる。


 この日の午後は、みんなでプールで遊んだ。


 プールを上がった後は、隣接されたシャワー室で体をよく洗い、目薬を差して、プール熱対策をきちんとする。


 限界までプールで遊んだ子どもたちは、午後のおやつを食べるまもなく、2階の子ども部屋でお昼寝してしまった。


 おやつ大好きな子どもたちが、体力が尽きるまではしゃいでくれた。


 それだけで、俺は十分に嬉しかった。作ったかいがあったなと、俺は思ったのだった。



お疲れさまです!そんな感じでプール回でした。


次回は花火回の予定です。


ではまた!

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