37.善人、かくれんぼに付き合う
いつもお世話になってます!
マチルダたちと会って、俺は我が家へと帰ってきた。
その日の午後。
新しくなった食堂でみんなでご飯を食って、食器を洗い、さて子どもたちと遊ぼう……と子どもたちの部屋へと向かった。
食堂は1階にあり、階段を上って東へ向かう。廊下を渡って2階の子ども部屋へと行くと、誰もいなかった。
「あん? 誰もいない……」
今のところ子ども部屋は4つある。
その4つのどこにも、キャニスたちの姿はなかった。
東の端の子ども部屋のベッド。
その上に、こんな書き置きがあった。
『われら、こじいんのなかにいる』
『はたして、みつけられるかね?』
「……なるほど、かくれんぼね」
どうやら子どもたちは、俺とかくれんぼして遊びたいようだった。
「参加者はたぶんキャニスたち6人だろう。孤児院に隠れてる6人を見つけろ……ってことか」
今日は天気がいいのんだから、外で遊べばいいのに。
しかし新しい遊び場(新居)があるのだ。こどもたちはそっちに夢中なのだろう。
「しかたない。ちょっと広くて捜すの大変そうだが、頑張るか」
4つある子ども部屋。ここはそのひとつ、【子ども部屋2】
「さすがにこの部屋には誰も隠れてないだろうな」
子ども部屋は全部10畳くらいの一間になっている。
ベッドが三つおいてあって、学習机も三つある。どれも俺がかつて小学校の頃に使っていた物を複製して出したのだ。
クローゼットもあって、服をしまえるようになっている。
ドアを開けて中を見るが、クローゼットにはいないようだった。
「だよな。いるわけないか。スタート地点に……」
と思った、そのときだった。
部屋の端、3つあるベッドの一番奥のところに……銀の毛玉が転がっていた。
「…………」
俺はそこに近づく。銀の毛玉が、びくぅっ、と反応する。
「うーん、どこいったー?」
「…………」びくびく。
「さすがにスタート地点にはいないか」
「…………」うんうん。
「仕方ない、他を捜すか……」
「…………」ほっ。
俺は銀の毛玉を片手で掴んで、ひょいっと持ちがあげる。
毛玉状態が解除されて、そこには銀髪のきつね娘、コンがいた。
「はい、コン発見」
「あーん、みつかったー」
首根っ子を掴まれた状態で、コンが俺の目の前にぶらさがっている。
「にぃ、いけず。見つけてたのに見つけてないふりした」
「いや、いきなり見つけたーってやると、かわいそうかなって思ってさ」
「なさけむよー。みつけたらひと思いにつかまえて。なさけはひとのためならず」
「それ、使い方間違ってるから」
子どもたちには今まで学校教育というものを施してこなかった。
だから読み書きとか、ことわざとか何も知らない。
資金が潤沢になって、施設を新しくし、生活に余裕が出てきた。今なら、この子らに教育を受けさせてもいいかもしれない。
もっともじゃあどうするかって話しだけど。
「つーかコン、どうしてスタート地点に隠れてたんだよ。一番見つかりやすいだろ」
「いがいせーをねらってみた」
きらん、とコンがどや顔で言う。
「そっか。でも次はもっと隠れる努力をしような。クローゼットの中に入るとかな」
「それ、へーぼん。ありきたりすぎる。じだいはいがいせーをもとめてる」
「意外性を出す前にまずは基本を抑えるのも重要だと思うぞ」
俺はコンを下ろそうとした。しかしきつね娘は、そのまま器用に腕を伝うと、俺の頭の上に乗っかった。
「あと5にん。はたしてつかまえられるだろうか。みぃはにぃのあたまのうえで、みまもることにしよう」
コンを頭に乗せながら、俺は【子ども部屋2】を出たのだった。
☆
新しく作られた孤児院は、2階建てだ。
いっぺんが50メートルの正方形の形をしている。
1階はホール。2階は吹き抜けになっており、左右にある階段を上って、2階へ来れる。
【子ども部屋2】は、右(東)側の階段から上ったところにある。
2階は中央の廊下を挟んで東西にブロックがある。
東のブロックには、子ども部屋が4部屋ある。
子ども部屋2は東の端の部屋。
正面には子ども部屋4。その隣に子ども部屋3。
子ども部屋2の隣は子ども部屋1となっている。
今のところ子ども部屋は1と2しか使っておらず、3と4は空き部屋だ。
また部屋割りはまだ決まっていない。
6人を3-3でわけようって話にはなっているのだが、そこで誰と一緒になるかで現在もめてる最中だ。
それはさておき。
「子ども部屋には誰もいなかったな」
4つ全ての子ども部屋を見てきたが、コン以外にはいなかった。
「西ブロックに行ってみるか」
「ごーごーふぁいぶー」
ぺんぺん、とコンが俺の頭を叩いてくる。
この子めちゃくちゃ軽いから、乗っかっていても全然重くない。
「おまえちゃんとご飯食べて……るか。もうちょっとたくさんたべて太れよ」
「れでぃにふとれとか、にぃのでりかしーのなさにきょーがくしますな」
やれやれ、とコンが首を振るう。
そう言えばこの子も女の子だったな。
「すまんな、コン」
「なに、いーってことよ。きにすんな。ひとはまちがえる。けどまちがえをかてに、ひとはつよくなるのだ」
「何そのセリフ。めっちゃカッコいいな」
「せやろ。どやぁ」
と会話しながら、俺たちは東の廊下を歩き、中央の渡り廊下へとやってきた。
今いたのが正方形の建物の右の辺。東側。
ここは正方形の上の辺。北側には部屋が3つ連なっている。
それぞれ手前から、女子トイレ、洗面所、、洗濯場。部屋はそれぞれ、中でつながっている。
何せこの孤児院、女子20人という、圧倒的に女子の割合が多い。
なので1階にも、そして2階にもトイレを作った。
「ほわほわほわほわ、はなこさーん」
女子トイレへとやってきた俺たち。
「おまえ古いアニメ知ってるのな」
「りあたいではみてぬ」
ほんと、この子はいったい何歳なのかと時々思う。
女子トイレはタイル張りになっている。
個室が左右に5つずつある。
右側が子供用の小さなトイレ。左側が大人用。ちなみにどちらも水洗トイレであり、床には劣等スライムが埋めてある。
「うぉしゅれっとほしー」
女子トイレの個室を、外からのぞいていると、コンがそう言う。
「今模索中だから、もうちょっと待ってろ」
「なんでもゆーこときいてくれるじろちゃんやな。せーやな」
にっこりご満悦のコンさん。
「しかし女子トイレに隠れられると困るな。俺男だし、中に入れない」
するとコンが「みぃがおるよ」と言って、足下にスタっと着地。
「にぃのさーう゛ぁんと、きゃすたーのコンが、れーじゅをもってにぃのめいれいにしたがう」
「そうか。よし行け、俺のサーバント」
「べつにたおしてしまってもかまないのだろう」
そう言ってコンが、女子トイレの中に、すてててて、と入っていった。
女子トイレに隠れるとなると、なかなかの策士だな。
なにせ見つける側は男だ。女子トイレに隠れられると手が出せない。
高い確率で生き残ることができるだろう。隠れてるやつはそこそこ頭の回るやつだ。
子どもたちの中で言うなら……。
「にぃ、せかいふしぎはっけん」
トイレの中からコンの声がする。
「はうっ! 見つかったのです~……」
コンと手をつないでやってきたのは、兎娘のラビだった。
「ここなら見つからないと思ったのです……」
「いやさすがだな、ラビ。一番見つけられにくい場所に隠れてたよ」
「かかろっと、おまえがなんばーわんだ」
俺とコンで、ラビに拍手を送る。
前から思っていたのだが、ラビは結構頭が回る。書けはしないが文字を読むことをすぐに会得したし。
「すえははかせかだいじんやな」「おまえが言うのかよ、コン。それ俺のセリフ」
「そ、そんな博士とか、大臣なんて……そんな……」
てれてれ、とラビが頭をかいて照れていた。
「コン、トイレには他に誰もいなかった?」
俺の問いかけにうなずいたので、俺たちは別の場所へと向かう。
頭にコンを、そしてラビと右手を握りながら、今度はその隣、洗面所へ。
ここは歯を磨いたり、顔を洗ったりする場所だ。
金属を【成形】で洗面台を作り、表面は【固定化】という、腐食や経年劣化を防ぐ魔法を付与されている。
シンクを作りたかったのだが、方法がわからなかったので、こうやってみた。
ちなみに排泄口の中には劣等スライムが入っているので、ここで歯を磨いた後の汚水などは処理される。
洗面台も右と左でふたつある。大人用と子供用だ。
子供用は洗面台の高さが小さく作られている。
そして壁には蛇口がついており、捻ると水が出るようになっている。
「洗面所には隠れるスペースはないな」
洗面台しかないし。ということで、俺たちはそのまま、洗濯場へと向かう。
ここは子どもたちのシーツや洗濯物を洗う場所だ。
乾燥機と洗濯機が、それぞれ4台も設置されている。
部屋の端にはタオルがぎっしり入ったプラスチックの棚。下着の入った棚。そして清潔なベッドシーツや布団カバーが入った棚……とリネン室をどこか想起させる内装になっている。
また洗濯物を入れておくためのカゴがいくつもおいてあって、そこに脱いだ服が入っている。
と、そこで気がついた。
「にぃ、ふしぜんにもっこりしてる」
「はわわ……キャニスちゃん……しっぽが出てるのです……」
洗濯物カゴの中の衣類が、妙にこんもりしていた。そしてカゴからにゅっと出ているの、犬のしっぽ。
「キャニス。そこ苦しいだろ。出てこい」
しかしキャニスはぴーんっ!としっぽを立たせるが、しかし中から出てこない。
まだ見つかってない、と言い張りたいのだろう。
「るぱーん、たいほだー」
コンが頭の上で、キャニスを捕らえろと命じてくる。
「はいはい」
俺はしゃがみ込み、洗濯物の中から、小さな犬っこを抱き起こす。
「ぷはっ! ばれちまったのですー!」
ちぇー、とくやしそうにキャニスが言う。
「よくこんなとこに入ってて苦しくなかったな」
カゴには回収し終えた今日のシーツが入っており、そこにキャニスが入っていたのだ。
「ぜんぜん。おにーちゃんが洗濯すると、洗濯物はいーにおいがしやがるです♡」
「じゅーなんざい、つかってるのか?」
洗濯場には液体洗剤、柔軟剤など、洗濯に使うための道具もおいてある。
この世界には芳香剤も柔軟剤もないからな。珍しいにおいなんだろう。
「これで3人か。あとはレイアと鬼姉妹だけか」
洗濯場を出た後、俺は子どもたちとともに、2階西ブロックへと向かう。
ここは桜華たち鬼族の部屋。
作りは東ブロックの子ども部屋と一緒で、4部屋ある。
鬼娘たちの使っている3部屋に、桜華と赤ちゃんたちが寝ている部屋が1つ。
ちなみに内装は子ども部屋とほぼ一緒。ベッドのサイズが違うくらいだ。
鬼たちの部屋を見たが、子どもはここにいなかった。
「2階はこれで全部見たな」
残りは1階。そして地下室だ。
「ここでいったん、あいきゃっちをはさむ」
「おまえは誰に向かって言ってんだよ……」
コンにツッコミを入れて、俺たちは1階へと降りたのだった。
☆
孤児院の1階へとやってきた。
1階は入り口入ってすぐがホールになっており、吹き抜けになっている。
東西に階段があってそこから2階へ上り下りできるのだ。
降りてホールへとやってきた俺たち。
ホールには正方形の下の辺に出入り口。
上の辺には内風呂と、そしてトイレ。それに挟まれて、大きめのガラス戸が張られている。
そこから裏庭が見える。
「外にはいないんだよな?」
と子どもたちに確認したところ、
「おにーちゃんはアホでやがるです」
「かくれんぼ、いえのなかでやるから、おもしろい。じあまり」
と言うことなので、庭にはいないらしい。
俺はまず内風呂へと向かう。
「部屋の中にお風呂があるって不思議なのです」
そこそこ大きめの湯船に、シャワーが設置されている。民宿のお風呂場みたいな感じだ。
前々から思ってたのだ。いつも風呂に入るとき、天気がいいときはいいのだが、雨降ったときには風呂にはいれなかった。
なので浴場を作ってもらったのだ。
「ゆぶねのなかには、いませんぜ」
お湯の張られてない湯船から、コンがにゅっと顔を出す。
「うお、おまえいつの間にそこにいたんだよ」
さっきまで頭の上に乗っていたはずなのだが。
「いつでもそこにまくどなるどぅ」
要領を得ない答えを返し、コンがててて、と近づいて、俺の頭の上に乗ろうとして……止まる。
「ばかな、キャニス。そこはみぃのポジション」
「ふふふ、早い者勝ちでやがるですー!」
コンが頭から降りたあと、キャニスがすかさず、俺の頭の上に乗ってきたのだ。
「そこはみーのばしょだ」
「ちげーです。ここはぼくのばしょでやがるです」
「はわわ、にーさんの頭の上はだれのものでもないのですよ~」
やいのやいのと話し合った結果、頭にキャニスを、背中にコンを。そして……。
「にーさん、ごめんなさいなのです……」
「気にすんな。全員軽いから問題ない」
ラビも俺に乗りたいらしかったので、ラビは抱っこしてやった。
コンは背中に張り付いている。忍者かよ。
「内風呂にはいないか……」
風呂を出てガラス扉の隣、1階女子トイレへと向かう。内部構造は2階と一緒。
ここには誰もいなかったので、1階北側の探索は終了。
つづいて1階の東側へと向かう。
1階東側は大きな食堂になっている。
なにせ子ども部屋4部屋分の大きさの部屋だ。割と広い。
特注で長いテーブルを作ってもらい、合宿所の食堂みたいな感じになっている。
厨房も設置されており、中には水道や魔法コンロ、冷蔵庫など調理に必要なものが一通りそろっている。
そして何より最大の目玉は、大型の冷蔵庫だ。
これは俺が複製した物ではない。
俺が作れるのは使ったことのある冷蔵庫。
つまりひとり暮らし用の小さな冷蔵庫しか作れなかった。
が、それでは21人分の食材を入れておくには役が不足している。
なので俺は銀鳳商会と協力して、大型の冷蔵庫の開発を行った。
と言っても構造は単純で、金属を【成形】で加工し、大きめの箱を作つくる。
あとはその箱を複製し、同時に【氷魔法】を一緒に複製合成(物体と魔法とを同時に作ること)。
すると箱の中身は低温に保たれる、巨大な冷蔵庫の完成というわけだ。
ちなみに温度の調節などは【動作入力】で行った。魔法の出力を冷蔵と冷凍で違うように調整したのである。
これによって業務用かと思うほどの大きめの冷蔵庫が開発された次第だ。
無論子どもたちが小腹が空いたときように、昔使っていた冷蔵庫も何台か残してある。
「はらへったです。アイスを食う提案をするです!」
「それはないすなてーあん。あいすだけに」
「はわわ、アイスは勝手に食べちゃダメだってままが言っていたのですぅ~」
ラビに止められて、アイスを食べるのをやめるふたり。
「しかし食堂にもいないか……。これはどこに……」
とそのときだった。
「へくちへくち。あー、くしゃみがとまらないなー……ぁ」
間延びした女の子の声が、食堂の方から聞こえてきた。
厨房から食堂へ行くと、
「おねーちゃぁ……ん。おといれいきたいよぉ~……」
と、食堂の長机の下から、妹鬼の声が聞こえてきた。
「あらー……ぁ。どぉしよー……ぉ。でていったらばれちゃうねー……ぇ」
姉鬼の声までする。まあ、アカネはお姉ちゃんにべったりなところあるからな。
隠れるなら一緒か。
「でも~、もれちゃうっ、もれちゃうよ~……」
どうやらかくれんぼの最中に、トイレに行きたくなったみたいだ。
早く見つけてあげよう。
俺は長机のとなりを歩いて、中央らへんで立ち止まる。
机の下に、赤鬼姉妹を見つけた。
「アカネ、あやね、見つけたぞ」
するとアカネが「トイレー!」と言って、ばびゅんっ、と食堂から出て行った。
「あー……みつかっちったー……ぁ」
よいしょっとあやねが、テーブルから出てくる。
「にーちゃんは見つけるのがうまいねー……ぇ」
ポワポワ笑って姉鬼あやねが言う。
「いや、あやね。おまえ自分から場所を俺たちに教えただろ」
妹のアカネは、トイレに行きたがっていた。しかしかくれんぼの最中であり、トイレには行けない。
そこであやねは、くしゃみを出して俺たちに見つけさせたのだ。妹を行かせるために。
「そんなこたー……ぁねーよー……ぅ。くしゃみがでただけだぁー……よ」
「そういうことにしておくよ。優しいな、おまえは」
あやねの頭を撫でてやると、にへらっと笑って、「おいらもトイレー」と言って、妹の元へと走って行った。
「さてのこりはレイアだけか……」
子どもたちはアイス食べたい論争で冷蔵庫の前から動こうとしない。
俺はひとりで、1階の東ブロックを後にした。
残りは1階西ブロックと地下室だ。
1階西ブロックは俺たち、大人部屋になっている。
食堂と一緒で、4部屋分の大きな部屋がある。
入って手前はリビングスペース、その隣はベッドルーム、そして奥には個室が3つあり、それぞれコレット、アム、先輩の部屋になっている。
ちなみに俺の個室はない。しいて言えばベッドルームが俺の部屋だ。
ベッドルームには特注サイズの大きなベッドがひとつだけある。用途は……まあ察してくれ。
リビングスペースにはソファや本棚があるだけで、中身はすかすかだ。これから中を拡充していくつもりだ。
「大人部屋にいない……となると、最後は地下室か」
西側の上へつづく階段、の下には、地下へ続く階段がある。
階段を降りると、部屋が2つ。
手前には作業場。そして奥が倉庫。
作業場とは、ようするに複製を使って何かを作るときに使用される。
部屋中央には木彫りの浅い湯船(足湯みたいな感じ)があり、ここへは竜の湯からお湯を引っ張ってきている。
水道を掘る作業も全て銀鳳側がやってくれた。もっとも水道管の考案は俺が行ったが。
金属を成形してパイプを作り、腐食しないよう固定化の魔法をかけて、水道管を作る。
そして地中を掘ってここまで水道管をもってきて、竜の湯がここにももってこれるようにしたのだ。
これで雨の日とかに、外に出ることなく、家の中で作業ができるようになった。
作業場は足湯しかないので、他に隠れるスペースはない。
「となると……最期は倉庫か」
作業場を出て隣の部屋は倉庫になっている。
作業場で作った試作品が、ごろごろとおかれている。
作りは棚が四方の壁におかれて、そこにがらくたが乱雑に置いてある。
そのがらくたの中に、紛れるように……。
「ぐー……。ぐー……」
「レイア……みっけ」
竜人の少女が、丸まって眠っていた。
「風邪引くぞ」
「ぐー……」
こいつはどんなとこでも寝れるよな、と苦笑しながら、俺はレイアを抱き上げて、1階へと戻る。
するとちょうどホールに、子どもたちが集まっていた。
「おーい、レイアみっけたぞ」
すると子どもたちがいっせいに、わっ! とよってくる。
「おにーちゃんのかちでやがるです!」
「にぃ、みつけるのうますぎ。こくさいけーさつか。ぱとれんやな」
「にーさんにはかなわないのですっ!」
「おねーちゃん……ごめんね……。アタシのせいで見つかって……」
「いやいやちがうよー……ぉ。にーちゃんが見つけるのがうまかったからだよー……ぉ。アカネちゃんのせいじゃあない。相手が悪かったー……ぁね」
わいわいと子どもたちが楽しそうにしている。まあいろいろ歩き回ってちょっと疲れたが、かくれんぼが楽しかったみたいで良かった良かった。
とそのときだった。
「みんなー♡ おやつよー♡」
ちょうど午後のおやつの時間になったようだ。コレットが子どもたちを呼ぶ。
1階ホールには、大きな振り子時計があり、遠くからでも時間がわかるようになっている。
獣人の子どもたちのしっぽがいっせいにたち、鬼族姉妹は両手を大きく挙げて、
「「「あいすだー!!!」」」
と食堂へとまっすぐに、子どもたちが吸い込まれていく。
腕の中で眠っていたレイアも、「あいすね!」と言って翼を広げて、食堂へと飛んでいってしまった。
「ほんと、みんなアイス好きだよなー」
と苦笑しながら、俺も食堂へと向かったのだった。
お疲れさまです!
そんな感じでかくれんぼ回であり、新孤児院の紹介でした。
次回は引っ越し回。まだ作ったばかりで、もといた孤児院の荷物とかがほとんど手つかず。
そこにやって来るのが引っ越しバイトのあの人で……という感じになります。
以上です!
ではまた!




