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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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31.二日目の夜。将来のこと

いつとお世話になってます!



 コレットたちが外出し、2日目が終了。


 その日の夜。


 子どもたちを寝かしつけた後、物置部屋へと戻る。


「ふぅ……」


 結構忙しかったな。


 なんか休む間もなくずっと動いていた気がする。


 掃除に洗濯、料理に子どもの面倒と……。


 コレットはひとりの時、よくこんな大仕事を、ひとりでこなせていたな。


 いなくなって初めて、コレットの偉大さに気づけたような気がする。


 まあいなくなったっていっても、明日帰ってくるんだけどな。


「今日はもう寝るか……」


 そう言えばと思い返す。


 子どもたちを風呂にいれた以降、アムと顔を合わせてない。


 最後に見たのは、風呂から帰ってきたときだ。


 彼女は意を決したような表情でうなずいていた。


 いったいどうしたと尋ねても、アムは何も答えてくれなかった。

 

 あれはなんだったんだろうか……?


 そうこうしている間に、俺たちの部屋である物置小屋へと到着した。


 この部屋ともあと明日でおさらばか。


 新しい孤児院では、大人の部屋もちゃんと作ってもらっている。


 なのでもうこの物置で寝ることはなくなるんだよなぁ……。


 そう思うと名残惜しさがこみ上げてくる。思い出も多い。思い人に告ったのもここだしな。


 ドアを開けると……そこには。


「じ、ジロ……おかえり……」


 顔を真っ赤にしたアムが、うつむき加減に、ベッドのそばに立っていた。


「お、おう……。どうしたんだよ、そのかっこ……?」


 夜なのでてっきりパジャマを着てるのかと思ったが……違った。


 コレットの着てた、スケスケのネグリジェを、アムが身につけていたのだ。


「へ、変……?」


「いいや、変じゃないけど」


 そのネグリジェはいつもコレットが着ていたものだった。


 紫色の布は、本来の局部を隠すという役割をいっさい放棄している。


 アムのおへその窪みや、腰のくびれ、そして手のひらに収まるほどの小ぶりで、真っ白なお椀。


 それらがくっきりと、しっかりと見える。

 女性にしては身長の高いコレットの来ていたネグリジェなので、アムが着ると少しぶかっとしている。


 ネグリジェの背面ややしたでは、しっぽは垂れ下がり、くねくねとせわしなく動いていた。


「変じゃない? ほんと? にあってる?」


 じっ……とアムの黄金の瞳が、うかがうように見つめてくる。


「ああ、似合ってるぞ」


「♡」


 アムは目をトロトロにすると、花が咲いたように笑う。しっぽがぴーんと斜め上を向いて立っていた。


「しかしどうしたんだ? それはコレットのじゃなかったのか?」


 俺はベッドに近づきながら問いかける。


「コレットが貸してくれたのよ。頑張ってって……」


 恥ずかしそうにアムがうつむいて、自分の体を隠すように、腕で抱く。


「わかってるわよ、こんな貧相なからだに、似合わないって……」


 ぺちょんと猫耳が垂れ下がる。


「そんなことないって」


 未成熟ながらアムの体は大人の女性になりかけている。


 腰のくびれから尻へのカーブなんて、目を見張る美とエロスがある。


「でも……胸はコレットより小さいし」


 アムが俺の身体に抱きついて、俺を見上げてくる。


 拗ねたように唇をとがらして、ぺしぺし、としっぽで俺の足を叩いてくる。


「……わかってるわよ。どうせお子ちゃま体型よ。あんたの好みじゃないもん」


「だからそんなことないって」


 俺はアムをひょいっと持ちあげる、そしてベッドまで移動し、彼女を下ろしてやる。

「んっ」


 アムが仰向けに寝て、両腕を俺に伸ばしてくる。


「んっ!」


 早くしろ、とアムが急かすので、俺はベッドに乗って、アムに覆いかぶさるようにして抱っこする。


 そしてそのまま仰向けになる。俺が下、アムが上という体勢になる。


「♡」


 アムは俺の腹の上で、子猫のように体を丸める。


 猫の血が混じっているからか、彼女はやたらと俺の上に乗りたがる。


「じろの、ばか」


 機嫌が良かったと思ったら、アムはまた、むーっとほおを膨らませた。


「バカってなんだよ」


「コレットがいなくて、せっかくふたりっきりなのに、いちゃついてくれなかった」


 む~っ、とアムがほおを膨らませながら、しっぽでペシペシと腹を叩いてくる。


「いや昼間は子供らの面倒があるから」


「それでもっ、お昼寝の時間とかで、少し一緒になれたでしょっ」


 子供らにお昼寝をさせた後、確かに俺とアムはふたりきりになった。


 だがそこに、今朝同様に、一花いちかたち鬼娘たちが乱入。


 またやろうだのやらないかだのと俺に迫ってきたのである。


「どうして俺には恋人がいるから無理って突っぱねてくれないのっ」


「突っぱねようにもあいつらすごい怪力持ちなんだよ」


 一花たちは鬼族だ。華奢に見えても、成人男性より腕力が強いのである。


「だったら桜華さんからもらったスキルを使えば良いじゃない」


「使ってるんだって。でもあれには制限時間があるんだよ」


 桜華からもらった指輪には、鬼の動きを制限する力が入ってた。


 ただこの力、制限時間があり、1分間だけしか、鬼に言うことを聞かせられないのである。


 1分過ぎると、あいつらまたすぐに、俺に迫ってくるのだ。


「だとしても……だとしてもさぁ」


 アムが子どものように拗ねながら、しっぽでぺしぺしと叩いてくる。


「……ねえジロ。アタシじゃ不満? アタシじゃジロのこと満足させられない?」


 アムは俺を見上げると、きゅーっと抱きついてくる。


 ……なるほど。


 俺が一花たちを強く突っぱねなかったから、アムは不安になってしまったのか。


 あっちの方がいいのかと。自分じゃ不足かと。


「そんなことないって」


 俺はアムを抱っこした状態で、横を向く。

 アムの小柄な体、くびれた腰に手を回し、引き寄せて体同士を密着させる。


 アムは自分のしっぽを俺の胴体に巻き付けてきくる。


 目を細めてうつむいて、俺の胸板に頬ずりする。


 眼下にアムの炎のような見事な赤髪があり、猫耳がさっきからぴくっ、ぴくっ、と嬉しそうに痙攣していた。


 頭に手を乗せてなでてやると、猫耳がぴーんと立ったり、ふにゃりと垂れ下がったりを繰り返す。


 パタパタと耳が動くたび、南国のフルーツのような甘酸っぱいにおいが鼻腔を突く。

 アムがつつ……と俺の腰をしっぽでなぞってくる。


「……なんでジロにはしっぽ無いの?」


 アムがしっぽで俺の腰をなで回しながら問うてくる。


「いや人間だからだけど」


「……しっぽないのほんと不便よね」


「どういうことだ?」


「……獣人同士はね、恋人どうしてくっついているときは、しっぽ同士を絡めさせるの」


 なるほど、だからさっきからやたらと、腰のあたりにしっぽを持ってきてるワケか。

「最中もなのか?」「…………」「なるほど……」


 アムが恋人になってからずっと疑問だったことが、今日解消した。やたらとしっぽをくっつけようとしてくるので謎だったのだ。


 アムは顔を真っ赤にして「ばか、ばか」とつぶやく。


 だがそこに俺を罵倒するニュアンスはなく、単に恥ずかしがって言っているだけであった。


 俺は左手をアムの体から離して、アムのしっぽを掴む。


アムの体が硬くなり、吐息を漏らす。


「しっぽはないけど、これはどうだ?」


 アムは答えない。ただ体を縮めているけだ。


 獣人にとってしっぽはデリケートな部分だ。何せ自分の意思で動かせるのだ。神経が通っているということだ。


 優しく、繊細なタッチでアムのしっぽに指を絡ませる。


「……ジロ」


 アムはガバっ、と俺の首に腕を回すと、そのままの勢いで、俺の唇を塞いだのだった。



    ☆



 アムと温泉で汗を流し、深夜、俺は子どもたちがちゃんと寝ているかを確認し、子ども部屋へと向かう。


「がー……ぐぐぅー……ですぅー……」


 部屋にはベッドがいくつか並んでいる。


 キャニスは寝相こそ悪いものの、ベッドから落ちてはいない。


 問題はコンだった。


「…………」


 コンはベッドの下に置いて、丸まっていた。しっぽを抱っこして丸々という、例の毛玉ポーズをとっている。


 銀の毛玉となったコンをもちあげて、ベッドの上に乗せてやる。


「てんきゅー……、にぃー……」


 寝ぼけたコンがしっぽの抱擁を解いて、すぴょすぴょとそう言うと、また寝息を立て始める。


 コンの他のこの様子を見る。


 レイアは意外にも夜は熟睡する。


 ベッドの上で微動だにせず、うつぶせに眠っていた。


「ん?」


 ベッドが2つ、カラになっている。


 ラビと、そして鬼姉妹のベッドだ。


「ここにいないとなると……」


 俺は部屋を出る。コンがまた転がり出そうとしていたので、ベッド中央の戻しておく。柵を作った方が良いかもしれないなと思った。


 部屋を出て廊下を歩き、奥まったそこ、トイレの前までやってくる。


 そこにはラビとあやねがいた。


【おねーちゃー……ん。いるー……】


 トイレ越しに、妹鬼のアカネの声が響く。

「いるよー……ぉ。ふー……ぁ。ねみゅい」


 あやねがウトウトと船を漕ぎながら、妹に返事をする。


「くぅー……」


 あやねの肩に頭を乗せて、ラビが寝息を立てていた。


「あやね」


「ふー……ぁ♡ にーちゃぁー……ん♡」


 あやねは俺を見やると、目をとろかせて、手をふりふりとふる。


「トイレか。ついてきてやって偉いな」


「んへー……ぇ♡ ほめられちったー……ぁ」


 ぽわぽわと笑うあやね。


 本来ならあやねは、夜にトイレに起きない。


 夜中起きるのはラビと、トイレの中にいるアカネだけだ。


 あやねはふたりの付き添いとして、ここに来てるのである。


「ラビはトイレ待ちか?」


「違うよー……ぉ。さきにラビちゃんが入って、今はアカネちゃん待ちー……ぃ」


 アカネがでてくるまでの間に、ラビが寝入ってしまったというわけか。


 俺はラビの脇の下に手を入れる。


「ラビをベッドに戻してくる。あやね、おまえも戻って良いぞ。俺がアカネのトイレ待ってるよ」


 ラビを抱っこすると、「にいーさぁーん……」と俺の首に、うさ耳娘がしがみついてくる。


 垂れ下がった長いうさ耳がぴくぴくと動き、赤子が母を求めるように、ラビがきゅっと力を入れてくる。


 あやねは「んー」と考えた後、


「いいよー……ぉ。アカネちゃん待ってるよー……ぉ」


 ぽわぽわと笑って姉鬼が首を振るう。


「いやでもおまえも眠いんだろ?」


 俺がそう言うと、あやねは笑みを保ったまま、何も言わなかった。


【おねーちゃー……ん、いるー……?】


「いないよ~……ぉ」【ふぇええ……】「うっそぴょー……ん」【姉貴ぃいいい!!】


 トイレ越しにアカネの怒声があがる。


「おいらいるから、あんしんしてしーしーすればいいよー……ぉ」


 あやねがポワポワ笑いながらそういうと、アカネは【……うん】と小さくそう言った。


 なるほど、俺がいるより、姉がいた方がアカネのためになるか。


「わかった。じゃああやね、後は任せる。暗いから帰るときコケないようにな」


「あー……い♡ わかったよにーちゃー……ぁん♡」


 俺はラビを抱えたまま、その場を後にする。


 あやねは「おやすみ~……ぃ」と言って手を振るうと、またアカネからいるかと問われて、いないと答えて一悶着起こす。


 ほんと、面倒見の良い姉ちゃんだな。


 子ども部屋へと戻り、ラビをベッドにおいてやる。


 ラビは「ありがとなのですー……」と起きてるのか寝てるのか判然としない声で、俺にそう言うと、眠りの世界へと落ちていった。


 あとはだいじょうぶだろう、と思い、俺は子ども部屋を後にする。


 また床に落ちそうだった銀の毛玉を布団の中に入れて、俺はその場を去ったのだった。



    ☆ 



 物置部屋へ戻ってくると、アムは眠っていた。


 風邪を引いてはいけないので、彼女に布団をかぶせる。


「じろぉ~……」


 もそもそと動いて、アムが眠たげな目を俺に向けてくる。


「どこいってたのよ~……」


 むー、とアムが子どもっぽくほおを膨らませる。


「子供らの様子を見てきたんだよ。特にコンは寝相が悪くてさ、いつも床に転がってんだ」


 俺はそう言ってアムの隣に座る。


 すぐさま彼女は俺に近づいてきて、しっぽを腕に絡めてくる。


 くいくい、と幼児のような弱い力で、俺の腕を引っ張っておねだりしてくる。


 俺は彼女の隣に仰向けに寝ると、アムは嬉々として、俺の腹の上に乗っかってきた。


 定位置に着いた猫の頭を、ゆっくりと撫でてやる。


 アムは気持ち良さそうにゴロゴロとのどをならす。


「本当に猫みたいだな」


「本当も何も猫なんだけど」


「そりゃそうか」


 まあこんなに可愛い猫がこの世にいるかは、定かではないが。


 しばらく頭を撫でていると、アムが唐突に「ごめんね」と謝ってきた。


「ごめん? なんだよいきなり」


「ん……なんかジロの役に、あんまりたててなかったなって思って」


 アムがくるっとうつぶせの体勢になって、俺を見て言う。


 眉が八の字になって、申し訳なさそうにしていた。


「コレットもピクシーもがいないんだから、アタシがジロの役に立たなきゃって思ってたの。……でも実際はジロひとりで全部なんとかしちゃうからさ」


「いやそんなことないだろ」


「そんなことあるもん……」


 拗ねたようにアムがつぶやく。


「掃除も洗濯も料理も、全部ジロがやってくれてさ」


「いや……俺がっていうか、俺は単に自動化を導入しただけで、別に洗濯も掃除も俺がやったわけがないんだが」


「でもジロがいなかったら自動化なんてできなかったし、やっぱりジロのおかげだもん。全部そう」


 ぷくっとアムがほおを膨らませて言う。


「……少しは、アタシにも手伝わせてよ。あんたの役に、立ちたいのっ」


 アムがやや不機嫌そうにそう言った。


 しっぽが電流を流したように、びーんと立っている。


「手伝い……か」


 思えばこの2日間、何でもひとりでやろうとしてた気がする。


 けどアムはどちらかというと職員じゃなくて、孤児院の子ども。庇護下におかれるべき存在だ。


 無論手つだってもらっていることには感謝しているし、申し出を断るつもりは毛頭無い。


 ただそれでも彼女はまだ子どもなのだ。職員でなく、ウチの大切な子どものひとりなのだ。


 子どもに大人の仕事を、完全に手伝ってもらうわけにはいかない。


「……子どもじゃないもん。もう15歳だもん。ここを卒業してもいいくらい年齢よ」


「そうなのか?」


 そう言ってアムがうなずく。


「ここの孤児院の子たちは、だいたい15歳で出て行くの」


 そして近隣の街なり遠くの街なりで、働き口を捜すのだそうだ。


「じゃあクゥって今30歳くらいなのか?」


 商人のクゥは、15年前にここを出て行った。


 ならば計算して、あの腹黒カラスは三十路であることになる。


「ううん。クゥはもっと早くて12歳のときに出て行ったみたい。いつまでもここにいたら経済的な負担になるからって。コレットから聞いたわ」


「そっか……。じゃあ27歳か」


 それでもあのロリ巨乳の体で、アラサーなんだな。


 しかし卒業の3年前に、自分からここを出て行ったのか。


 確かに子どもの数が多いと、それだけ経営に負担がかかるからな。

 

 あのゴリゴリの守銭奴も、結構気を使えるやつなんだなと思った。


「だからアタシも……本当は今年で卒業」


「そうか……。卒業後は、その、」


 するとアムがムッと不機嫌そうに顔をしかめる。


「どうするんだ、とか言ったら噛むわよ……」


 しゃー、とアムが歯を剥く。


「……卒業しても、アンタのそばにいるに決まってんじゃない」


「それは……ここで働きたいってことか?」


 俺の問いかけに、アムがうなずく。


「ダメ?」


「いや、まったくダメじゃない。ダメじゃないが……」


 考えてしまう。


 この子にも別の道があるんじゃないかと。


 アムはこう見えてかなり可愛い。


 最近は食糧事情が改善されたから、血色は良くなり、日に日にその美しさに磨きがかかってきている。


 街へ行きモデルや俳優になることもできるだろう。


 またその俊敏性をいかして、冒険者になることも可能かもしれない。


 何はともあれ、この子には、無限の可能性が広がっているのだ。


 ……それを果たして、この孤児院のなかに留めていいのだろうか。


「アム。やりたいことあんなら、言えよ。ここからズーミアやカミィーナの街は近い。ここに住みながら、別の職業についても良い」


「ジロ……」


「おまえが孤児院のことを大切に思ってくれて、役に立ちたいって気持ちはスゴくありがたいよ。けどそのせいでおまえの可能性を狭めるのは、嫌なんだ」


 子どもに家業を継ぎたいと言われるのは、親にとっては嬉しいことだ。


 親の姿を見てあこがれ、こうなりたいと思ってくれたのなら、冥利に尽きるというものだ。


 それでも子どもには、自由に仕事を選んでもらいたい。


 多くを見て、学び、知って、それから自分にあった道を選んで欲しい。


 いま目の前にある道だけを見て、これが自分の道だと、勘違いしてもらいたくないのだ。


「…………」


 アムは俺の言葉に、真剣に耳を傾けていた。


「とにかく……クシュッ!」


 俺が言い終わる前に、くしゃみが出てしまった。


「ジロ? だいじょうぶ、風邪?」


 アムが心配そうに俺から降りて言う。


「いや、大丈夫だよ」


 ちょっとくしゃみが出ただけだ。


「そう言えばジロ……。あんたコレットの外出が決まってから、下準備しまくってたわよね」


 家電の自動化のテストと実用に向けた調整。


 料理動画の撮影と練習。


 普段の仕事に加えて、それらの下準備を、外出が決まった先週くらいから、頑張っていた。


「ずっと疑問だったんだけど、いつ準備の作業やってたのよ。夜はアタシたちとその……してたじゃない。日中は職員の仕事があったわけだし」


 アムの言うとおりだ。


 だから俺は、


「アムたちが寝た後に、ちょこちょことな」


「……そうだったんだ」


 アムが真剣な表情でうつむく。


「それで毎朝6時には起きてたって……アンタ寝不足じゃないの?」


「いやそんなこと……クシュッ!」


 またくしゃみが出てしまった。


「……やっぱアンタ、疲れがたまってるんじゃないの?」


「んなことないって。竜の湯には入ってるわけだし、疲れは感じてないよ」


「体力が完全に回復したとしても寝不足がなおるわけじゃないでしょっ」


 アムがやや語気を荒げながら言う。


「アンタ明日は休んで。アタシが明日はジロの代わりやるから」


「いや大丈夫だって……気を遣ってくれて嬉しいけど、ほんと大丈夫だから。な?」


「でも……でもっ、アタシさっきもいったけど、あんたの役に立ちたいの。少しは、役に立たせてよ……」


 沈んだ表情でアムが言う。


「…………」


 アムは俺に背を向けて横になる。


 機嫌が悪そうだった。


 俺は彼女の身体を、後から抱きしめる。


「ごめんな、アム」


「……ジロの、とりあえず謝っとくみたいなくせ、きらい。あんたのことは、だいすきだけど」


 ぺちぺち、とアムが俺の腹をしっぽで叩いてきた。


 俺はアムという、温かくて柔らかな、最高の抱き枕を抱きしめながら、目を閉じたのだった。


「…………。体、熱いじゃん。やっぱり……」


 意識を失う間際、そんなアムの心配そうな声が聞こえた、気がしたのだった。


お疲れ様です!


次回でいちおう6章をしめる感じになりそうです。


最後の方でクシャミしていたジロの伏線の回収。ジロの代わりにアムが頑張って、そしてアムちゃんの将来の夢が固まって……みたいな感じになると思います。


6章後は少し短編を挟んで(3話くらいですかね)、7章へ……とする予定です。


以上です!

次回もよろしくお願いします!


また最後に、新連載、いまやってます。

下にリンクが貼ってますので、よろしければ是非!


ではまた!


追記)次回の更新で、ちょっとお知らせがあります。これがあれします。詳細は明日の更新で。

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