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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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28.善人、作業の自動化を導入する

いつもお世話になってます!




 コレットたちを送り出した、その1時間後。


 と言ってもまだ早朝、夜明けまではそこそこある。


 俺が孤児院のリビングへ行くと、アムがそこにいた。


 いたというか、イスの上で丸くなって眠っていた。


「すぅー……」


 小柄で赤毛の少女が、イスの上でとぐろを巻いている。


 くせのある短髪の上に、赤い猫耳が生えている。その耳はぺちょんと垂れていた。


 シッポはイスからだらりと垂れ下がり、ときおりぴくっぴくっ、と微細に動く。


「丸まって寝てるところみると、本当に猫みたいだよな」


 パジャマ姿のアムを見下ろしながら、ふと疑問に思う。


 どうしてアムがここにいるのかと。


「アム、こんなところで寝るな。風邪引くぞー」


 アムのほっぺをつんつんとつつきながら俺が言う。


「ぬ……?」


 アムが眠たげに黄金の目を半開きにして、俺を見やると、


「ぐぅ……」


 とまた目を閉じて、すぅすぅとかわいらしい寝息を立て始めるではないか。


「なんなんだ?」


 どうして物置部屋で寝ていたはずの彼女が……?


 まあ起きたときにでも聞けば良いか。


 俺はそう思って、その場を離れようとする。


 しかし、


「やぁー…………」


 とアムが眠ったままぐずってくる。


 垂れ下がったシッポがにゅっと伸びてきて、俺の腕に巻き付く。


「んぅー……」


 また気持ち良さそうにくぅくぅとねいきを立て始めるアム。


 どうやら俺が離れるのが嫌みたいだ。


 その後も俺がシッポを払ってその場を離れようとすると、そのたびにアムのしっぽに捕縛される。


 そんなことを繰り返していると、7時に近づいてくる。


 リビングの壁に掛けてあった時計が、そろそろ7時になりかけた、そのときだった


「あれー……じろー……?」


 アムの意識がどうやら覚醒したらしい。


 とろんとした目で俺を見上げながら、


「えへぇー……♡ おはよー……♡」


 んー、っとアムがふせの体勢のまま、顔をちょっとあげて、唇を突き出してくる。


 寝起き時のアムは普段よりも甘えん坊なのだ。


 俺はこの可愛い猫娘にキスをすると、アムは幸せそうに目を細める。


 唇を話すと、「やぁ……」とアムがぐずってきた。


「あたまなでてぇー……♡ もっとちゅーしてぇー……♡」


「アム……。そろそろ起きてくれ。子どもたち起こさないといけないんだよ」


「やー……」


 とぐずるアムの頭を、よしよしと撫でてやる。


 壁の時計がもうあと少しで7時になりそうだ。


 本来ならここで朝食を作ってないとアウトである。


 7時には子どもたちを起こしに行くからな。


 起こす前に朝食を作っておく必要があった。


 だが、まあいちおう手は打ってあるので、俺はアムの猫耳をふかふかとなで回し、その唇にキスをしてやる。


 ややあって、アムが完全に目を覚ます。


「おはよ、ジロ」


 ん~~~~~…………っと伸びをするアム。


 よいしょっと、とアムがイスから降りて、くわっとあくびをする。 


「アム、俺ちょっと子どもたち起こしてくるな」


「うん。……って、たいへんっ!」


 アムが壁掛け時計を見て目を見開く。


「ど、どうしよっ! 朝食っ! ぜんぜん準備してないっ!」


 アムが時計を見て顔を青くする。


「ご、ごめんジロっ! 早起きして手伝うつもりだったのに……」


「あー、うん。あんま気にすんな。いちおう朝食は手を打ってある」


「どういう?」


 と、ちょうど壁の時計が、7時ジャストを示した。


 そのときだった。


 ーーがちゃっ。


 と冷蔵庫のドアが、自動的に開いたのである。


「へっ!? ええっ!?」


 冷蔵庫を見てアムが驚愕する。しっぽがびーんっ! と立って、俺にパッっとしがみつく。


「なになに、なんなの!?」


 冷蔵庫が開くと、中においてあった卵のパックが、ふよふよと中を浮いて、台所に移動する。


「飛んでる!? なんで!?」



 パックが台所に無事おくと、それがきっかけとなって戸棚が開く。


「今度は戸棚!? もうどうなってんのよ!?」


 きゅーっとアムが俺に抱きついてくる。ぷりっとした乳房が腰のあたりに当たって気持ちが良かった。


 戸棚が空くと中からお皿と、そして食パンの袋が出てくる。


 食パンの袋はふよふよと浮いてテーブルの上に着地。それがきっかけとなりパンが袋の中から出て、トースターに入る。


 トースターに入ると電源が入り、パンが焼き始める。


 それがきっかけとなってお皿が人数分でてくる。


 お皿が人数分テーブルにでてくると、今度はフライパンと油がコンロの上に乗っかり、火がつく。


 火がつくと卵がひとりでに浮いて、ちょうどフライパンの真上で割れる。


「ジロぉ……幽霊屋敷になっちゃったのぉ……?」


「いや、違うぞ。あれは事前に俺が【動作入力プログラミング】の魔法を使っておいたんだ」


「プログラミング……?」


 無属性魔法【動作入力プログラミング】は無機物に命令を入力して動かすことができる魔法。


 動作には条件を色々と加えることができるのだ。


 どんなふうに動くのか、どこまで移動するのか。


 なにをやったら動作が開始されるのか。どうすると動作が終了するのか。


 といった条件を指定できるのだ。


「これって結構応用が利いてさ、色々とものを自動化することができるんだよ」


「自動化って? 勝手に動くようになるってこと?」


 俺はうなずいて言う。


「時計が朝の7時になると冷蔵庫が開く、ようにプログラムを組んでおく。で、【冷蔵庫が空く】って動作がトリガーとなって、卵のパックにかけていた【冷蔵庫の中から出て台所へ向かう】っていうプログラムを組む。あとは全部ドミノ倒し的にことが進むよう、プログラムを入力しておいたんだ」


 ピタゴラスイッチみたいな感じで、ある動作が行われたら、別の動作が起こる。


 冷蔵庫が開いたらパックがでてくる。


パックが出てきたら卵とフライパンと油がでてくる……みたいな。


 そんなふうに、物体や食べ物に、動作命令プログラムを書いていったのだ。


「こうすることで朝食を作る程度の簡単な料理なら、全自動でできるようになったってわけだ」


 目玉焼きが焼き上がると、それがトリガーとなって、目玉焼きがお皿に移動。


 トーストが焼き上がると入れ代わるように新しいトーストが入ってくる。


 みたいな感じで、同じ作業が自動的に行われる。


 朝食の準備は自動で行われるので、俺は子どもたちを起こしに行く。


「でもジロ。あんたって魔法は温泉の外じゃあんまり使えないんでしょ? 温泉で作るときにこれ入力したの?」


 アムが後からトコトコと着いてくる。


「いや、あとから【動作命令プログラム】をパンやらトースターやらに書き込んだんだ」


「どうやって?」


 俺は懐からボールペンを取り出す。


「それは?」


「ペンだよ。これと無属性魔法【動作入力】とを複製合成して作った、魔法ペンだ」


 複製合成とは、物体と魔法とを同時に複製することを指す。


 たとえば雷魔法と電化製品とを一緒に複製することで、電源がなくても動く魔法電化製品が作れる。


 この原理を使って、俺はボールペンに【動作入力】の魔法を付与した。


「このペンを使ってものに動作命令を書き込むんだよ」


「書く? ペンで?」


 そう、と俺はうなずく。


 たとえば冷蔵庫に7時になったら開く、と書き込むと、文章が魔法の光りとなって冷蔵庫にふりそそぐ。


 それにより【7時になったら冷蔵庫のふたは開く】という動作命令プログラムが、冷蔵庫に付与されたのだ。


「すごいジロっ! 魔法使いみたいっ!」


 ぴーんっ、とアムのしっぽが立つ。


 キラキラとした目でアムが見てくる。若い子に褒められると、ちょっと照れくさくなるな。


 とにかく。


 このペンがあれば、いちいち無属性魔法を物体にかける必要は無くなる。


 これによって温泉以外では並の魔力しか無い俺でも、魔力を無視して、物体に【動作入力】の魔法をかけることができるようになったのである。


「特に今はコレットたちがいないからな。自動化できるものは自動化しておかないと。まあでもまだ試作段階で、全部が上手くいくかは不明だがな。そもそも実用化の前段階からめちゃくちゃ失敗してるし」


 もう少し早くから導入したかったのだが、いかんせんこのプログラムってやつが難しい。移動距離、出力など、すべて細かく設定してやらないと、スムーズに動かない。


 その上に間違えを修正するのは全部自分なので、手間がかかることこの上ないのだ。


 ほんとはもう少し実用化レベルまで調整してから導入しようと思ってたんだが(失敗してコレットに火傷とか怪我とか負わせるわけにもいかないし)


 今は手が足りないし、それにデータ収集もかねて、こうして実践での試験をかねた運用をしているわけである。


 俺は子どもたちの部屋に到着する。


 ドアを開け、キャニスやコンたちを揺さぶって起こす。


 キャニスを抱っこし、床で丸まって毛玉になっているコンも抱き起こし、リビングへ移動。


 アムと一緒にラビとレイアがやってくる。

 俺はキャニスたちをイスに座らせて、子ども部屋へともどる。


 すると、


「あー……にーちゃー……ぁん、ぐっもーにーぃー……ん」


「…………」


 姉鬼のあやねが、妹のアカネと一緒に、リビングへとやってくる。


 あやねが妹の手を引いて、一緒に歩いてきたのだ。妹は眠そうに目を擦りながら、姉にくっついてくる。


「おはようさん。ひとりで起きてこられて、偉いぞ」


 俺は姉鬼の赤髪を、くしゃくしゃとなでる。


「えへー……ぇ♡ もっとなでてー……ぇ♡」


 ぽわぽわと笑いながら、俺にされるがママになるあやね。


「んー」


 アカネが眠そうな顔のまま、ぐっ、と頭を突き出してくる。


「おはよ、アカネ」


 姉にしたように頭を撫でてやると、アカネは満足そうに鼻を鳴らす。


 俺はアカネを抱っこして、リビングへと向かう。


 ちょうど全員分のパンと目玉焼き、そしてソーセージがやけて、朝食の準備が整っていた。


 やっぱり焼く程度の単純作業は、魔法で自動化させた方が効率が良いな。


 まあもっとも、これでなんとかなるのは、作業が単純である朝食の時だけなのだが。


「んじゃみんなそろったし、いただきますするか」


 テーブルにみんなが着席したのを確認した、俺が言う。


 すると、


「にぃ、すっとぷなう」


 びしっ、とコンが手を上げて言う。


「まみーが、いなっしんぐ。まさかいえで?」


 すると獣人たちがピーン! としっぽを立たせる。


「ほ、ほんとーでやがるですー!」「これっと、どこいったのよー!」「はわわ、まま、ままー!「コレットおねーちゃぁああああああん!!!」


 ぎゃあぎゃあぎゃあ、と子どもたちが騒ぎ出す。


 騒いでないのはコンとそして姉鬼のあやねだけだった。


「コン、昨日言ったろ?出かけるって」


「そうだった。わすれてた」


 コンがペチョンと耳を垂らす。わしゃわしゃとその頭を撫でながら言う。


「みんな落ち着け。昨日コレット言ってたろ? 出かけるって」


 すると子どもたちの騒ぎが、ぴたり、ととまる。


「そ、そーいえばそうでやがったです……」「はわわ、わすれてたのですっ」「なんだびっくりさせないでよね……」


 ほぉーっと安堵の吐息をはく獣人たち。


 姉鬼が「アカネちゃん、昨日ママ言ってたでしょ?」と妹をさとしていた。


 まあとにかく混乱は収まった。飯だ飯。


 俺はコレットがいつもやっているように、立ちあがって言う。

 

「そんじゃみんな、いただきます」


「「「「いただきまーす!!」」」」



    ☆



 朝食を食べさせた後、俺は子どもたちのパジャマやら洗濯物やらを回収する。


 子ども部屋に脱ぎ散らかされた衣服を手に取り部屋を回る。


「あのさ、ジロ」


 背後でアムの声がする。


 アムも手伝ってくれているのだ。


「なんだ?」


「そう言えばさ、コレットってなんででかけたの?」


 アムがシーツを回収しながら言う。


 最近はおねしょでシーツが汚れることは減った。


「今日もおねしょしなかったのですー!」


「ちーむおねしょのー……ぉ、しょーりだねー……ぇ」


「あんまさわぐなし、おねしょしないのなんて、あ、あたりまえだろうよ」



 とドアの向こうでラビと鬼姉妹の歓喜の声が上がる。


 ラビたちは夜中一緒にトイレに起きるようになったおかげで、漏らすことが少なくなったのだ。


「コレットはザクディラっていう東の端っこの町に、お墓参りにいってるんだよ」


「お墓参り?」


 俺はうなずく。脱ぎ散らかされたパジャマやらシーツやらを、腰につけたマジック袋(【無限収納】が付与された革袋)に入れて、部屋を後にする。


 後からトコトコ着いてくるアムに言う。


「なんかここで昔働いていた先生の、今日は命日なんだってさ」


「昔働いていた先生……?」


 アムたちが来る前、ここにはコレット以外にも職員がいた。


 その人は大先生と呼ばれており、桜華やクゥといったOGたちが孤児院にいたときに、孤児院で働いていた人物だそうだ。


 ちなみに人間ではなかったらしい。


「大先生の命日には、年に1回、孤児院のOGやOBがみんな大先生の実家があるザクディラに集まるんだそうだ」


 ちなみに去年まではコレットも桜華もその会には参加できてなかったらしい。


 まあ孤児院を開けて、遠出はできないだろうからな。


 しかし今年からは俺という新しい職員が孤児院にいるため、ふたりともが参加できるようになったという次第。


「お墓参りしたあとに、OGOBたちで同窓会みたいな会合が行われるんだってさ。そこで近況を報告し合うんだと」


「はー、そんな会があったのね」


 アムと一緒に洗濯機の前までやってくる。

 俺が洗濯機に衣類を突っ込むと、その動作がトリガーとなって、洗剤と柔軟剤が自動で注がれる。


 動作入力の魔法を洗剤にかけておいたのだ。


 洗剤が投入されると、洗濯機のふたが自動でしまり、自動的に動き出す。これも全部動作命令を書き込んでおいたのだ。


「お墓参りは明日で、午後は会合、夜は飲み会。で明後日帰ってくるっていう日程なんだってさ」


 俺たちは洗濯物を入れた後、その場を後にする。


 リビングへ戻ってくると、台所では空いた食器が自動的に水で流され、洗われている。


 カラになった食器が台所に積まれると、それがトリガーとなって蛇口が捻られ、皿が移動し、スポンジが皿の表面をなぞって……と。


 皿洗いの動作を全部魔法ペンで入力済みなので、実に作業が楽だ。


「そう言えばピクシーってどこいってるの? 最近見ないけど」


 全自動で皿が洗われてる様を見ながら、アムが聞いてくる。


「先輩は王都で開かれてる学会に参加しているんだよ」


 魔法大学の論文発表会に、審査員として参加してるらしい。大賢者としての仕事の一環なんだとさ。


「そっか……。ふーん。ふぅ~ん♪」


 アムの顔が喜色に染まる。


 にへーっとだらしのない笑みを浮かべ、しっぽがぶんぶんぶん、と激しく動く。


「つまりさ……コレットが帰ってくるまで、アタシたちふたりきりってことだよね♡」


 アムがにこっと笑って、俺の腕にしがみつく。


 瞳に♡を浮かべながら、すりすりと頬ずりしてきた。


「まあそうなるな。アムにはなるべく負担がかからないよう努力するつもりだ」


 アムはいつも何くれとなく、俺たち職員の手伝いをしてもらっている。


 コレットと桜華がいなくなったぶん、手伝いの量も増えてしまうだろう。


 そうならないために、自動化を考案して実行に移したのだ。


「~~~~~///」


 なんか知らないが、アムが顔を真っ赤にしていた。


「やだ……負担にならないようにって……どんだけするつもりなのよ……もうっ」


 ぺしぺし、とアムがしっぽで俺の足を叩いてくる。


「そ、そりゃあね、コレットもピクシーもいないから、その……アタシしか相手がいないからってさ。あ、でもっ、別に嫌じゃないからっ。ほんと嫌じゃないからほんと!」


 よくわかんないが、顔を真っ赤にしたアムが、ぺしぺしぺし、としっぽで俺を叩いてくる。


「何の話ししてるんだ……?」


 と首をかしげたそのときだった。



「そりゃああんちゃん、ナニの話しをしてるんだろうさね」


「それ以外にないもんね~♡」



 と鬼族の娘たちが、俺たち獣人孤児院のリビングへとやってきたのだ。


 長身の一花、小柄な弐鳥にとり、その後には四女の肆月しづと五女の風伍ふうこもいる。


「おじさま♡ おはようございますわ♡」


「うぃーっす、おっちゃんおはよー!」


 おしとやかに肆月しづが笑い、元気よく風伍があいさつする。


「おう。朝食の準備出来てたか?」


「もうばっちりですわ♡」「すっげーよなー、ものがフワフワ浮いて、勝手に朝飯の準備できてるんだもん」


 肆月と風伍が俺に感嘆の声を漏らす。


 獣人孤児院で起きている朝の準備は、鬼族孤児院でも同じことが起きるよう、向こうの物品にもプログラムを入力していたのだ。


 ちなみに赤ちゃん用のミルクも自動的に作られるようになっている。全部俺が事前にプログラムを組んでいたのだ。


「な、ななっ、ナニってなによ……」


 アムが顔を真っ赤にしながら、うつむいて一花に言う。


「ンなもん言わなくてもわかるだろう、おまえさんも、兄ちゃんもさ♡」


 すすす、と一花が俺に近づいてくる。


 彼女の背中には、鬼族の赤ん坊が、ベビーキャリー(赤ちゃんヒモ)によって背負われている。


 よく見ると4人全員の背中に、赤ちゃんが背負われていた。


 ……三女の美雪は、あいからわずか。


「なぁコレット姐さんとおかーちゃんがいないんだ、どうだい、みんなで一緒に楽しくよろしくやらないかい?」


 一花が俺とアムにニヤリと笑ってそういう。


「だからそう言うのは段階踏んでからっつたろ」


 ぐいっ、と一花を押しのける。


「真面目だねぇい。まっ、そういうきまじめなところ、アタシ好きだよ、兄ちゃん♡」


「あ~ずるいよぅイッちゃん。あたしもおにーさんの変にまじめなところだーいすき♡」


 一花と弐鳥が俺にしがみついて、ぎゅっと胸を押しつけてくる。


「お姉さま、ずるいです。しづもおじさまとくっつきたいです♡ えーい♡」


「ずりーぜ。私もっ!」


 そう言って肆月しづも風伍も俺にくっついてきた。


「む~~~~~~~~~~~~~」


 アムが不機嫌そうに柳眉を逆立てる。


「どきなさいよアンタたちっ!」


 アムがカーッと歯を剥いて、ぐいっと鬼娘たちを押しのける。


「アンタたちジロの恋人でもないんでもないくせに、べたべたくっつきすぎなのよっ!」


 ふんっ、とアムが瞳に炎を浮かべながら言う。


「ほー、そういうアムちゃんはジロのなんなのさ」


 一花が目を細めてアムに言う。


 鬼娘たちはアムと俺との関係性を知らない。


「あ、アタシは……ジロの……」


 もにゃもにゃ、と恥ずかしそうに口ごもる。


 俺はアムの隣に移動し、彼女の肩を抱いて言う。


「アムは俺の恋人だよ」


「じ、ジロ……♡」


 とろんとアムが目を細めて言う。


「ほー、そうなのかい」「へ~、意外」「ほんとう、意外ですわ」「うん、マジ意外」


 鬼娘全員が、意外意外と目を丸くしてた。


「なんで意外なのよっ」


 アムがやや語調を荒げて言う。


「いや兄ちゃんの好みに、アムちゃんがあってないような気がしてね」


「ジロの……好み?」


 アムは鬼娘たちの胸部を見て、自分の胸を見て、


「…………」


 と目を大きく見開き、そしてうつむく。


「胸なの、胸なのね……」


 わなわな、と肩をふるわせながらアムが言う。


「いや胸とかあんまり関係ないから、気にすんなって」


 俺はアムの肩をぽんぽん、と叩いて言う。

「ジロ……。じゃあ……、じゃあどうしてアタシと……」


 とそのときだった。


「おにーちゃーんっ! ヒマでやがるですー!」


 でででーっと、キャニスがリビングにやってきて、俺の腕を引く。


「いっしょにあそべやです!」


「あ、ああそうだな。悪い。今行くよ」


 あんまり彼女たちと雑談ばかりしてられない。


 子どもたちの面倒を見るのも、俺の仕事なのだ。


 アムが何かを言いかけていたので、あとで何を言いたかったのか、聞くことにしよう。


 今はこの子たちの相手をする時だ。



お疲れ様です!


そんな感じで6章本格スタートです。


三日間コレットがいない間の出来事を書いてく感じになります。


獣人ちゃんたちの出番が今回少なかったので、次回は多めに取ります。


雨で外で遊べないから、娯楽作品を作ってみせる……みたいな感じになるかと思います。


次回もよろしくお願いします!


また今回も下の評価ボタンを押していただけると幸いです。励みになります。


ではまた!

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