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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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24/189

24.善人、赤ちゃん用品を届けに行き、長女と次女に出会う

いつもお世話になってます!




 鬼族たちの住む場所を用意した、その1時間後。


 夜も更けてきた、21時頃の話しだ。


 鬼族たちの孤児院を【複製】によって作った俺は、獣人孤児院へと戻っていた。


 そろそろ子どもたちを寝かしつける必要があった。


 普段は20時にはベッドにて寝かしつけているのだが、今日はアカネ、あやねの鬼姉妹がいるためか、キャニスたちはまだ起きていた。


 子ども部屋へいくと、そこには獣人4人+赤鬼姉妹がいた。


「くらいやがるですー! まくらぼんばーっ!」


 キャニスが手に持っていた枕を、赤鬼の妹・アカネに投げる。


「はっ! そんなもんくらうかっつーの! ………………へぶっ!」


 いぬっこの投げた枕が、アカネの顔面にもろで当たる。


「お、おねぇ……ちゃぁー……ん」


 さっきまでの勝ち気はなりをひそめ、アカネが姉に抱きつく。


「あー……ぁ、痛かったねー……ぇ」


 よしよし、と姉のあやねが、妹の頭を撫でる。


「よー……ぉし、アカネちゃんのかたきわー……ぁ、おいらがとるぞー……ぉ」


 そう言ってあやねは枕をふたつ手に持つ。


「やばし、キャニス。やつはにとうりゅうつかいだ。きりとさんや」


 キャニスの隣で枕を持っていたコンが、あやねを見て目を見開く。


「ならこっちは4とうりゅうでやがるですっ! レイアっ! がったいですー!」


「まかせてっ!」


 そう言って竜人のレイアが、キャニスの背後に回る。


 そして後から重なり、両手をひろげる。


「みたか、こっちはよんとうりゅーやで。かいりきーやでー」


 コンがきらん、と目を輝かせる。


「やるねぇー……ぃ、でも負けないよー……ぅ」


 手に持った枕をぐぐっ、と引くあかね。


「来やがれですっ!」「がったいのチカラ見せてやるわ!」


 キャニスたちが枕を投げようとしたところで、俺は彼女たちから枕を取り上げる。


「おにーちゃん、なにしやがるですー」


 勝負を中断されたからだろう、キャニスが不満げに唇をとがらす。レイアもぶーっとほおを膨らませる。


「にぃ、けーわい」


 コンがシッポで俺を指す。


「悪いな。だがもう夜だ。寝る時間だぞ」


「「「えー」」」


 獣人+鬼族の子どもたちが、いっせいに不満げに声を上げる。


「あそびたりねーですっ!」「てつやでからおけとかしたい」「アタシはこの犬っころをぶちのめすまで寝ないかんなっ!」


 ぶー、っとブーイングを送る子どもたち。


「あぅー……。うぅ~…………」


 その少し離れたところで、眠たげに顔を擦る子どもがひとりいた。


 俺は彼女に近づいて、持ちあげる。


「にぃー……さぁー……ん」


 ラビがすごく眠そうに、目を擦っていた。


「ほら、ラビが眠いってさ。おまえらが起きていると、いつまでもラビが寝れないだろ?」


 するとキャニスとコン、そしてレイアが、


「じゃーしゃーねーです」


「らびはおこちゃま、みーはおとなだから……ふぁぁ~…………」


「ちょっとコン、立ったままねないのっ。れいあによりかからないでっ!」


 と言う。コンも眠そうだった。いつもぴんと立っているしっぽが、くったりとしなびている。


 俺はコンを抱き上げて、コンのベッドに寝かせる。その隣にラビをおいて、ふたりに布団をかぶせる。


「あかねたちはこっちで寝たいのか?」


 俺は鬼の姉に尋ねる。


「んー……ぅ、というかー……ぁ、アカネちゃんがー……ぁ、もうねんねしてるからー……ぁ、あっちいくのは、むりー……ぃ」


「ぐー……………………」


 いつの間にかアカネは、姉に寄り添うようにして眠っていた。


 涎を垂らすアカネの、口元をぬぐってやるあやね。


「そっか。じゃあレイア。悪いがキャニスと今日は一緒に寝てくれ」


「ん、しょーがないわね、がまんしてあげるわ」「そりゃーこっちのせりふでやがるです」


 いーっ、と歯を剥くキャニスとレイア。


「ねるまえにしりとりするです」「いいわねっ、まけないわよっ」


 と楽しそうにベッドに登り、ふたりが横に寝る。


「いくでやがるです、りんごっ」「ぐー」「もう寝てやがるですー!」


 瞬殺だった。


 レイアはベッドに入った瞬間、電池が切れたように眠ってしまった。


「これじゃあー……………………しょーぶに………………ならねー………………ふ」


 キャニスもすぐさまうとうとしだし、結局レイアが寝て数秒後には、ぐーぐーといびきをたてていた。


「じゃああやねはアカネと一緒に、このベッドを使ってくれ」


 レイアが元々使っていたベッドを、鬼姉妹にあてがうことにする。


 あやねがアカネを背負うとしたので、妹を俺が持ちあげる。


 そしてベッドに寝かしつけて、布団を掛ける。


「ありがとー……ぉ」


 あやねはベッドによいしょっとのぼると、ふへーっと笑う。


「にーちゃん、にんげんなのにー……ぃ、とってもとってもー……ぉ、やさしー……ぃ♡」


 頬を少し赤らめながら、柔からそうな頬をたるませて笑う。


「おいらしょうらいー……ぃ、にーちゃんのー……ぉ、およめさんになるー……ぅ♡」


 両手を挙げてそう宣言する姉鬼あやね


「そっか、ありがとな。嬉しいよ」


 俺はあやねの赤髪を撫でてやった。


「じょーだんじゃー……ぁ、ないよー……ぉう、こっちはー……ぁ、ほんきだよー……ぉ?」


 ぽわぽわと笑うあやねがかわいらしくて、俺は「あんがとな」と言って頭を撫でる。


「ほんきにされてないかんじー……ぃ、はらたつー……ぅ」


 けらけら、とあやねが笑った。この子はいつも笑っているなと思った。


「じゃあ、あやね、おやすみ」


 俺は立ち上がり、あやねを見下ろして言う。


 彼女はアカネの布団に潜り込む。妹が足を布団からぴょこっと出していたので、姉がそれを中にしまう。


「にー……ちゃん」


 ふぁぁ……とあくびまじりに、あやねが言う。


「おいらー……ぁ、ここ、いっぱつで好きになったよー……ぉ」


 ふへっとあやねが笑う。


「おともだちいっぱいいてー……ぇ、やさしいにんげんがいっぱいいてー……ぇ、おなかもいっぱいになってー……ぇ、とってもすきになったよー……ぅ」


 そりゃ冥利につけるというものだ。


「ありがとな、あやね」


「んへー……ぇ♡ おやー……みぃー……」


 そう言ってあやねは目を閉じると、くーくーっとかわいらしい寝息を立て始める。


 俺は明かりを消して、子ども部屋を後にしたのだった。



    ☆



 子どもたちを寝かしつけた後、俺は鬼族孤児院へと向かった。


 彼女たちの寝る環境は整えたが、おそらく使い方がわからないものが多いだろう。


 というのと、さっき俺が作ったものを、桜華たちに手渡しに行こうと思ったのだ。


 孤児院を出て歩いて数分、竜の湯に到着した……そのときだった。


「んー? なんだい? 誰かそこにいるのかい?」


「え、だれ~?」


 温泉に誰かがいるようだった。


 湯気の向こうに、裸身の女性がふたり、立っている。


「誰かと思ったら院長のあんちゃんじゃねーか」


 ひとりは長身の女だ。


 毛の質感がごわごわとしている。長い髪を武士のようにひとつに束ねていた。


「あ~~♡ おにーさんだぁっ♡」


 ひとりは小柄な女の子。


 ミディアムの髪を頭の側面でふたつにしばって、短めのツインテールにしている。


 長身長髪、短躯短髪の少女には、見覚えがあった。


「えっと……たしか桜華の娘さんの」


 桜華の連れてきた5人の娘のなかに、彼女たちがいたのを、俺は思い出す。


「なんだいおぼえててくれたのかい。うれしーねぇ、な、弐鳥にとり


「うんっ、そうだねイッちゃん♡ あ~、でもおにーさん、のぞきはよくないと思うよ~♡」


 長身がイッちゃん(愛称だろう)で、短髪が弐鳥にとりというらしい。


「なんだい、弐鳥。別に見られてもへるもんじゃあないじゃないか。むしろ兄ちゃん、もっと見るかい? ほれほれ」


 長身の鬼がグラビアアイドルのような、扇情的なポーズを取る。


「べつにー、あたしべつにおにーさんになら見られてもいいもん♡ むしろ見てみて~♡」


 弐鳥も前屈みになって、胸を強調するようにして俺に言う。


 ……で、でかいな。


 桜華の血を引いてるからだろう、ふたりともかなり胸が大きかった。


 長身鬼はとくに大きく、桜華に匹敵する巨乳だ。


 一方で弐鳥にとりも小柄な体つきに似合わないほど、乳房のサイズが大きい。


「やっぱりあんちゃんは胸か。胸が好きなんだねぇい」


「もー♡ おにーさんのえっち♡ でもいーよ♡ もっとみて~。なんなら……きゃっ♡」


 長身鬼も弐鳥にも、男に裸を見られているというのに、恥じらう様子はまるで無かった。


 むしろ嬉々として俺に肌を見せてくる。


 さ、最近の女子高生ってそんな感じなのだろうか……。


「それより弐鳥……と、えっと……」


 そう言えば長身の鬼は【イッちゃん】という愛称しかしらなかった。


「ああ、一花いちか。アタシ一花っていうんだ。よろしくっ、あんちゃん♡」


 一花がニィッと笑う。どちらかというと上品さはなく、好戦的な性格が見て取れる表情だった。


「あたしは弐鳥にとり~♡」


 はいはい、と弐鳥が手を上げてアピールする。


「そりゃさっきあんた言ってたじゃあないかい」


「えへっ♡ おにーさんに早く覚えて欲しくって♡」


「はっ、弐鳥はほんと欲しがりだねぇい」


 一花が弐鳥を見下ろして、にやりと笑う。


「イッちゃんこそ〜♡」


 弐鳥もにやっと影のある感じで笑う。


「欲しい?」


 何の話をしているのだろうか。


「あー、うん。こっちのはなしさ」「そうそう、こっちのはなし~♡」


 ねー♡ と顔を見合わす一花と弐鳥。


「そう言えばおまえらは姉妹なんだよな」


 桜華の娘は、18歳がふたり、17歳がひとり、16歳がふたりという構成らしい。


 ふたりはどのポジションなんだろうか?


 見た目からして高身長の一花は18か。弐鳥は小柄だし、16だろうな。


「アタシらはふたりとも18だよ。このおちびさんとは二卵性の双子さ」


「も~、ちびとかひどい~。イッちゃんよりあたしくらいのほうが、後ろからハグしたときに、ちょうどいいんだってば~」


 そうなのか。一花はなんとなく18だと思っていたが、弐鳥までもとは。


「一花が長女で、弐鳥が次女か?」


「そうさ。あとは三女の美雪。四女の肆月しづ。五女の風伍ふうこ


 一花(1)に弐鳥(2)。


 美雪(3)に肆月しづ(4)。


 そして風伍ふうこ(5)か。


 まだ顔を見たことが無いので、名前を全部覚えるのは難しそうだ。


「ま、そーあせらなくてもいいさ。じっくり、アタシらの違いを覚えていけばいいよ。見た目とか、そのほかもろもろをね」


 ぺろり、と一花が舌なめずりする。


「ところでおにーさん。温泉に何の用事~? あたしたちに何かよう?」


 弐鳥にとりが俺に問うてくる。


「え、ああ。そっちの孤児院の様子が気になってな。ちゃんと上手くやれてるかって。それに渡したいものもあるし」


「「渡したいもの?」」


 一花と弐鳥が湯からあがり、裸のまま、俺のもとへと近づいてくる。


 ……近くで見ると、本当に美人だな。


 桜華もたいそうな美人だ。


 ツノを隠せば、どこのモデルですかといいたくなるほど、顔も体も抜群に良い。


 その娘たる長女いちか次女にとりも、負けず劣らずの超絶美少女だ。


 一花は長身でプロポーション抜群。切れ長の目と総髪が、女武者のような野性的な美を。


 弐鳥にとりは幼い見た目に反してその胸と尻は大きくぷりっとしていて、幼い中に妖艶な美を。


 2人ともが異なる美しさを内包した、美少女だ。


「あんちゃんどうしたんだい?」


「あ、すまん……」


 一花に声をかけられ、俺は正気に戻る。


「あ~、おにーさんあたしたちのおっぱいみてこーふんしてたんでしょ~♡ も~♡」


 ニコニコ笑顔で弐鳥がそう言う。


「そんじゃあ孤児院へ行くんだろ? ならアタシらもついてくよ」


 そう言うと、一花と弐鳥は脱衣所へと向かう。


 少しして、ふたりは肌着(麻の浴衣のようなものを着てる)に着替えて、こっちへとやってくる。


 一花からは南国を彷彿とさせる甘酸っぱいニオイが、弐鳥からは蜂蜜のようなあまったるい芳香が、それぞれ髪や肌から伝わってくる。


 弐鳥が俺の右腕を、そして逆側の腕を、一花が取る。


 両手に花状態で、俺は鬼族孤児院へと向かうのだった。



    ☆



 長女の一花と次女の弐鳥とともに、鬼族孤児院へと向かった。


 出入り口を開けて少し歩いて、リビングのドアを開く。


「……あっ! だ、だめですっ!」


 俺が入るとすぐ、桜華が悲鳴を上げる。


「な、なんだどうし」た、と言う前に、声を失う。


 ……………………でけえ。


 目の前に上着をはだけた桜華がいる。


 腕には乳児を抱いて、おそらく授乳をしている最中だったのだろう。


 それにしてもでかすぎる。でかすぎだ。でかすぎだろ……。


 抱っこしている子どもより、桜華の乳房は大きいのだ。どういうことだよ。


「……あ、あの」


 しかし柔らかそうだ。肌なんてぴっちぴちで、プリンのようである。


「……そ、その」


 右胸のあたりに、ほくろがひとつある。それがまた色っぽい。


「……じ、じろーさんっ」


 桜華が声を張る。俺はようやく正気に戻った。


 ……状況を考えろ。


 授乳中とはいえ、他人の女性の乳房を見てしまったんだぞ。


「す、すまんっ!」


 ばっ、と顔を背ける俺。


「随分と間があったじゃないか。もしかしてわざとかい?」


 一花がくすりと笑う。


「からかわないでくれよ……」


 いやしかし良い物を見れた……じゃなかった。悪いことをしてしまった。


「かーちゃん、良かったじゃん。あんちゃんめっちゃガン見してたさね」


 と一花がからかうように、桜華に報告する。


「……も、もうっ。一花っ。わたしはあなたをそんないじわるな子に、育てた覚えはありませんっ」


 桜華にしかられても、一花はかっかっと笑っていた。


 弐鳥にとりはトコトコと俺に近づいて、眼前でにっこりと笑って「触る♡」


 俺はたわけたことを言う、次女鬼の頭をぽかり、と軽く叩く。


 ややあって「……ど、どうぞっ」と桜華のうわずった声が背後からする。


 振り返ると桜華が、先ほどの赤ん坊を腕に抱えて立っていた。


 真っ赤になって、消え入りそうな声で、


「……さっきのは、忘れてくださいまし」と頼んできた。


 ……くっ、魔性の乳に目がいってしまう。


 いやあんなの反則だろ。あんな見事な乳を生で見せられて、正気でいられる男がいるとは思えない。


 いかん、ダメだ。邪念を捨てよう。


 嫁を脳裏に思い描きながら、俺は桜華に尋ねる。


「赤ん坊にはそうやって、母乳をあげてるのか?」


 というか子どもが大きいのに母乳ってでるんだな。


 鬼の体質だろうか。


 だとしたら一花や弐鳥も?


「でるさ」「でるよ~♡」


「……ば、ばかぁ。この子たちったら、もうっ、もうっ」


 赤ん坊を腕に抱きながら、桜華がぽかぽか、と一花と弐鳥をたたく。


「……母乳が出るのは、その、わたしだけです。経産した鬼は、そういう体質になるんです」


 つまり子どもを産んだことのある鬼だけ、桜華みたいに、出産後そこそこたつのに母乳が出るようになるのか。


「じゃあ4人の赤ん坊のご飯は、全部桜華があたえてるのか?」


「……はい」


 とこともなさげに桜華が答える。


「大変じゃないか?」


 ひとりひとりに授乳を行い、ゲップをださせて……それを4回繰り返すのは、非常に大変そうだった。


「……大変じゃないですよ」


 真顔でそう言う桜華。


 むしろなんでそんな、当たり前のことを聞くの?


 とでも言いたげな表情だった。これが母親ってやつか。


「……でも、時間はかかります」


 桜華の顔に影が落ちる。


 苦とは思ってないだろうけど、苦労はその表情からしっかり見て取れた。


 なら【これ】を作ってやっぱり良かった。


「だろうな。だからと思って、これを用意してきた」


 俺はそう言ってリビングのテーブルに、【無限収納アイテムボックス】が収納された革袋を置く。


 そして、中からドサドサドサっ、と作ってきたものを置く。


 なになに、と鬼たちがテーブルに集まってくる。


「まずはこれ。ほ乳瓶と粉ミルクだ」


 水筒ほどの大きさのビンと、そして円柱状の管を手に持って言う。


「「「?」」」


 案の定、鬼たちはそれを見ても何であるかをわかってないようだった。


 俺はリビングでお湯を沸かし、ビンにいれた粉ミルクを溶かす。


 流水をビンにさらしながら、温度が下がるのをまつ。


「なんだいそりゃ? 牛の乳みたいじゃないかい?」


 一花が俺の背後に立って、手元を見て言う。


「みたいなもんだ。ただ乳幼児が飲みやすいよう加工はされている」


 俺はほ乳瓶からミルクを数滴、手のひらに出す。


 流水で温度を調整し、ぬるいと冷たいの中間くらいになったのを確認する。


「食事がまだの赤ん坊は?」


「今ベッドにいるよ~。そろそろぐずりだすころだから、迎えにいってくるね~」


 弐鳥にとりがリビングを出て行き、すぐに戻ってくる。


 赤ん坊が「ふぇ……」っと泣きそうだったので、俺はその子を受け取り、抱っこする。


 ほ乳瓶の先を、赤ちゃんに近づける。


「……あの、じろーさん、いったい何を……?」


 オドオドとする桜華。


 そりゃそうだ、心配だよな。得体の知らないものを子どもに飲ませようとしているんだから。


「すまん、毒じゃ絶対にない。これはその……最先端の赤ちゃんのご飯なんだ」


 異世界のこととか説明しても、理解されないだろう。少なくとも今は。


 だから言葉を選んでそう言う。


「んー、どれどれ~?」


 弐鳥にとりが俺からほ乳瓶を「ちょっと貸してね♡」と言って受け取る。


 そして一口ぺろり、と舐めてる。


「うん、毒じゃ無いよ、おかーさん♡」


 にこーっと弐鳥が、母親を安心させるように言う。


 いやいくら子どもが毒味したって、それを真に受けるほど……。


「……そう、良かった」


 予想に反して、桜華は妙にあっさりと、ミルクを信用してくれた。


 もっと警戒されると思ったのだが。


 それにこの子はどうして、ひとくちなめただけで、ミルクが毒じゃないとわかったのか?


 まあもともと毒ではないんだが、それにしても未知ちきゅうのものを食べて、どうしてそれを安心だと判別できたのだろうか。


「それは~、ひ・み・つ♡」


 きゃっ♡ と弐鳥が恥ずかしそうに顔を手で隠す。


「別に【鬼術きじゅつ】のことはあんちゃんに教えてもいいんじゃないかねぇい」


 一花が弐鳥と桜華を見ていう。


 きじゅつ?


「ま、そのへんもあとで教えて上げるさ♡ じっくり……ね♡」


 一花が俺に寄り添って、つつつ、と首筋を指でなぞる。


「それでそのミルク、どうするんだい?」


 ぱっ、と一花が離れて言う。


「赤ん坊は母親の乳以外は飲まないさね」


「わかってる。だがこれはだいじょうぶなんだよ」


 そう言って俺は、ほ乳瓶を赤ん坊に近づける。


 桜華がはらはらと経過を見守っていた。


 果たしてーー


 ーーちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。


「わっ、すっご~。飲んでるよ~♡」


「ほー、こりゃまたすごい勢いさな。ごくごく飲んでるよ」


 一花と弐鳥が、感心したように声を上げる。


「……すごい、この子あんまり母乳を飲まない子なのに」


 桜華が驚きに目を剥いていた。


 その間にも赤ん坊が、美味しそうにミルクを飲んでいく。


 ややあってほ乳瓶の中身が、カラになってしまった。


「桜華、ゲップを頼む。一花、弐鳥、俺を手伝ってくれないか」


 俺は鬼の娘たちと協力して、赤ん坊用のミルクを作る。


 一花たちに水道や火の沸かし方を教えながら、準備を進める。


「ひねると水が流れるのかい? こりゃあ……、……すごいな」


「わっ、火がすっご、ひねるとぽんっでるよっ。便利~♡」


 娘たちは若いからだろうか、すぐにコンロや水道の使い方を覚えた。


 桜華が残りふたりの赤ん坊を連れてくる。

 俺と桜花とで手分けして、赤ん坊にミルクをあたえた。


「ほら、このほ乳瓶とミルクを使えば、ひとりずつじゃなく、子どもに食事をあたえられるだろ?」


「……ほんとうです。すごい、すごいです、じろーさん」


 きらきらと目を輝かせながら、桜華が言う。


「いやいやおかーちゃん、すごいのはそんだけじゃさいさね」


「そうだよ~♡」



 ひょいっ、と一花と弐鳥が会話に割って入る。


「水道ってのはすごいさね。いつでも飲みたいときに水が出る。しかも水流で洗い物までできるときた」


「このコンロってすごいんだよ~♡ 木でこすって火をつけなくても、かちっとひねってすぐに火がつくの♡ すっごい便利~♡」


 どうやら鬼たちは、すっかり地球の道具の便利さに驚いているようだった。


「いやぁ、改めてあんちゃん、あんたすさまじいな♡」


 赤ん坊にミルクをやっている俺に、一花がぐいっと腕を回してくる。


 一花は俺より背が高い。俺の頬に彼女のぱっつんぱっつの胸が当たって気持ちが良かった。


「こんなすごいもんまで作れるだなんて、ほんとスゴいオスだよ」


「ほんとほんとっ♡」


 弐鳥が同意して、俺の腰に抱きついてくる。


 張りのある乳房が腰に当たって、こっちも気持ちが良い。


「おにーさんはかっこよくって頼りになって、しかもこんなすごいものまで作れちゃうなんて♡ もうほんと、優良物件どころじゃないよ~♡」


 ぐりぐり、と一花と弐鳥がそれぞれ、胸を俺に押しつけてきた。


「い、一花。弐鳥、ちょっと離れろ。赤ちゃん抱いてんだぞ」


「おっとそうだね」「ごめ~ん♡」


 ふたりがパッと離れる。

 

 ……あぶない。


 桜華ほどじゃないにしても、ふたりはそうとうの巨乳だ。


 巨乳で、しかも18歳の女子高生たちに胸を押しつけられたら、そりゃどうにかなりそうになってしまうだろ。


「ねー、おかーさ~ん♡ 良いでしょ~♡」


「おかーちゃん、最高の相手さね。良いだろ?」


 娘たちが、桜華に尋ねる。


 ねだるように、確認するように言う。


「……ふ、ふたりとも自重なさいっ」


 めっ、と桜華がすごむ。


 まったく怖くなかった。むしろかわいい。


「ちぇっ」「む~、わかったよぅ」


 すごく不満そうに、一花と弐鳥が言う。


「……あの、よくわからないんだが」


 さっきから置いてけぼり感が半端ではない。


「まっ、そのうちそのうち♡」


 一花がニカッと笑う。夏の日のようにからっとした笑みだったが、目だけがじっとりと湿り気を帯びていた。


「そうそうっ、そのうちそのうち~♡」


 弐鳥がにこーっと子どものように純粋無垢な笑みを浮かべる。ただ隠しきれない色気のようなものが、醸しでていた。


 よくわからないが……ともあれ。


 こうして俺は地球の粉ミルクを、鬼たちに紹介したのだった。


 赤ん坊の食事はこれでいいとして、次は着るものだ。


 特に【あれ】は必要になってくるだろうから、作っておいて正解だろう。




お疲れ様です!


そんなわけで粉ミルク回と、桜華の娘さんその1とその2の紹介でした。


粉ミルクをどうして作れたのか、の説明は、すみません、次回になります。


ほんとは今回粉ミルク以外も出そうと思ったんですが、キャラ紹介に予想外に尺を取られてしまいまして、どうやって作ったかの説明ができませんでした。


次回冒頭にて解説が入ります。といってもさほどヒネらず、ストレートな作り方をしてます。

本編のヒント通りです。


次回は赤ちゃん用品を披露して驚く鬼たち……みたいな話になるかなと。あといちおう前回今回の複製も回収するつもりです。


あと5章ですが、いつもだとここで区切るのですが、次回で区切れるか微妙です。長くなるかもしれませんし、いつも通り区切るかもしれません。


そんな感じで次回もよろしくお願いします!


よろしければまた、下の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!


毎回毎回書いてすみません、でも、励みになるのは事実ですっ!


ので、今回も是非!


以上です!

ではまた!


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