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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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11.善人、スキルを混ぜ合わせ、電化製品を完全再現する

いつもお世話になっております!!




 クゥに王都に呼び出された。


 そこでコレットに贈る指輪を買って、彼女に贈った、その夜のこと。


 俺たちは王都からズーミアの近く、俺たちの孤児院のある森へと戻ってきた。


 俺たちを送り届けてくれたテンは、そのまま馬車に乗って、クゥのいる王都へと戻っていった。


【では社長、ご用の際はお気軽にお呼びください】


 ぺこり、とテンは頭を下げてそう言った。

 彼女は自分の分身を王都へ、そして本体をこの孤児院に残していくらしい。


 彼女はボディガードと言っていた。だから俺のみを近くで守るんだそうだ。


 普段は姿を消しているから、用事があるときだけ呼べば出てくる……とのこと。


 それってテンもここに住むってことなんじゃ……と思ったけど、テンは建物の外で周囲の監視をしているらしい。


 テンに送り届けてもらったら、すっかり暗くなっていた。


 子どもたちはクタクタで、食事もせずに眠ってしまった。


 よほど疲れたんだろう。


 俺とコレットは簡単な食事を済ませたあと、裏の竜の湯で体を清める。


 そのあと俺たちはコレットの寝室である、物置小屋へいく。


 複製スキルでベッド(前世の俺がひとり暮らししていたとき使っていたもの)を複製し、ふたりでそこに寝転ぶ。


「すごいわジロくん♡ とっても寝心地がいいわね、このベッド」


 ぽんぽん、とコレットがマットレスを叩いてそう言う。


 彼女は男物のパジャマを着ている。スキルで俺が作った。かつて俺が地球できていたやつだ。


「このパジャマも着心地がスゴくいいわ。柔らかくて肌触りも最高。地球の裁縫技術は本当にスゴいわね♡」


 そうは言っても男物のパジャマ。


 コレットにはもうちょっと可愛いパジャマとか着て欲しい。それかネグリジェとか着てもらいたい、と思う俺であった。


「こらっ、いま邪なこと考えてたでしょ? もー、女の子にそういう目を向けちゃだめって小さい頃に教えたでしょう?」


 コレットはうつぶせに寝て、俺を見ながら、きりっとした顔になる。


 胸がベッドにつぶれて、とんでもないことになっていた。


 す、すごい……。ボタンが飛びそう。


「ジーロくん?」


「あ、すまん。ついな」


 きゅっ、とコレットが俺の耳を摘まんでくる。


 コレットはころんと横に回転し、そのまま俺の胸の上に乗っかってくる。


 風呂上がりの彼女の髪から、甘い花のにおいが鼻腔をつく。


 コレットが「んっ」っと俺に顔を近づけてくる。


 俺はコレットのぷるんとした唇にキスをする。コレットは嬉しそうに目を細めて、舌を絡めてきた。


 ややあって口を離す。


 コレットがまたころんと転がり、俺の左腕を手に取り、自分の枕にして、頭を乗せる。


「ほほー。結構ジロくんって筋肉があるんですなー。ほどよい堅さがあって枕にはぴったりね」

 

 すぐ近くに、美しいエルフ少女の顔がある。


 コレットが俺の胸板に、左手を乗せてくる。


 その指には、俺が贈った指輪が、きらりと輝く。


「きれいな指輪。魔法がかかってるみたいにきれいね」


 コレットが自分のと、そして俺の指輪を見て感想を述べる。


「まあそうだな。かかってないけど」


「もう、ロマンがないぞ、ジロくんや。これは魔法道具マジックアイテムなんだぜ、きみという名の魔法が付与されてるんだぜ、くらい言ってほしかったなー」


 コレットの冗談を聞きながら、俺は考える。


 この世界には魔法の道具というものがある。


 たとえばマジックキャッシュカード。


 あれは普通のカードに、無属性魔法・【無限収納アイテムボックス】の魔法が付与されている。


 マジックカードのように、魔法が付与されているものは、この世には存在する。


 が、付与する技術が超高度であるらしく、おいそれとできるものではないそうだ。


 しかし。


 俺は、複製スキルがむせいげんに使えるようになってから、試してみたいものが実はあった。


 それは上手くいけば、超高度な技術である付与魔法、というか魔法の付与した物体を作れるかも知れない。


 それを作れれば、コレットたちの暮らしはもっと豊かになるはずだ。


 俺は美しい妻に腕枕しながら、改めて思う。


 俺はこの嫁と、そしてこの子の大切な子どもたちに、なに不自由ない暮らしを提供してやると。


 この子たちが幸せに、楽しく暮らせるようにしてやると。


 俺にこのスキルがあたえられ、再会したコレットが竜の湯を保有していたことは、きっと偶然じゃない。運命なのだ。


 神様的な何かは、俺に、特殊技能を使ってこの子たちを幸せにしなさいと。


 そう言っているようにしか、思えないのである。



    ☆



 翌日の午前中。


 俺は、孤児院の暮らしを豊かにするため、さっそく魔法道具の作成に取りかかることにした。


 まずは食べ物を保存する、あれを作る。


 俺は複製スキルを使うため、裏の竜の湯へとやってきていた。


 俺は温泉に脚だけ浸かる。


「ジロ、あんたなにやってるの?」


 温泉の縁の岩に座るアムが、俺に問うてくる。


 赤のくせっけ。ぴんととがった猫耳としっぽ。小柄かつスレンダーな体に、かっぱつそうな目。


 かわいらしい女の子であり、コレットと俺の子どもである。


「今から食べ物を冷たい状態で保つものを作る」


「スキルで? でもそれだったらジロがこの間作った、クーラーボックス? ってやつがあるじゃない」


 バーベキューをしたとき、食材を入れるのにクーラーボックスと保冷剤を作っている。

 

「あれだと長時間たべものを保存できないんだよ。保冷剤が溶けたら冷たくなくなるしな」


「ほれーざい? ああ、あの氷のことね」


 クーラーボックスはある程度長い時間、ものを保存できる。が、ある程度なのである。


「じゃあ何を作るの?」


「まあ見てろ」


 俺は竜の湯に足をつけた状態で、複製スキルを発動させる。


 これは複製コピペさせるものの1.名前、2.姿、3.使ったことがあるなどの経験、をしっているものなら、何でも作れるというスキル。


 それは今世だけじゃなく、前世も含まれる。


 俺は前世で冷蔵庫を、それこそ毎日のように使っていた。


 冷やした飲み物に食べ物が常にある。


 地球にいたときは気づかなかったけど、電化製品のないこの世界に来て、初めて地球のそれらがいかに便利かを痛感させられた。


 逆に言えば、それがあれば、かなり生活が便利になる。


 俺はスキルを立ち上げる。


 ひとり暮らししていた時に使っていた冷蔵庫を思い浮かべて……複製。


 大量の魔力が、手を通して放出される。


 複製には魔力が必要となる。作り出すものが複雑であればあるほど、消費魔力量も多くなる。


 特に地球の物品なんて、この世界のものとくらべたら、はるかに内部構造が複雑で精密だ。


 必然、魔力量は多くなる。


 かつては、保有する魔力量が少なかったので、地球の便利グッズを作りたくても作れなかった。


 でも今は違う。


 竜の湯に浸かっていれば、俺は無限の魔力を使用することができるのだ。


 膨大な魔力を消費して、俺は【冷蔵庫】の複製に成功する。


「なにこれ? でっかい箱?」


 アムが興味深そうに、中型冷蔵庫を見やる。


 色は黒。俺の胸下あたりまでの大きさの冷蔵庫だ。


「これが冷蔵庫。このなかは常に冷えてるんだ。だからここに食べ物を入れておけば」


「! すごい、魚とか腐らないじゃないっ! それに冷たい飲み物が飲めるっ!」


 ぴょんっ、とアムが嬉しそうに飛び跳ねる。


「ねっ、ねっ、どうやって使うの?」


「そこのとってがあるだろ。その戸を引っ張ればそれでいい」


「そんな単純で良いの?」


 と言って、アムが冷蔵庫のドアを開ける。

「常に冷えてる箱なんてすごいじゃない。これがあれば無敵ね!」


「まあ……そう上手くいかないんだがな」


 アムが開けっ放しにした扉の前に、わくわくとした表情でその場にたつ。


 ややあって、


「ジロ。おかしいわ。まったく涼しくも冷たくもない」


 ぶすーっとアムが不機嫌そうに唇をとがらす。


「だろうな」


 俺は一度温泉からあがり、冷蔵庫の裏側へ回る。


 冷蔵庫からはコンセントが伸びている。


 そして言うまでもなく、コンセントがあるだけで、どこにもつながっていない。


 つまりまあ、そういうこと。


 冷蔵庫は使ったことがあるので、複製できる。

 

 しかし冷蔵庫を動かすことはできない。


 なぜなら複製したのは【冷蔵庫本体】だけだからだ。


 家電に使う電気が、こっちには通ってないのである。


 孤児院に電源プラグなんてあるはずもない。


 また、この世界にはそもそも電化製品がないので、電源プラグは世界にそもそもない。


 電源プラグを作ることはできるだろう。


 だが実際に【みたことがある】のは、【電源を差し込む口】だけであり、バッテリーや電源の姿そのものを、見たことはないのだ。


 発電機も同様。


 よって電化製品そのものを作り出すのは容易いけど、それを動かすのに必要となる【電気】が、ないのだ。


「でんき? 雷魔法のこと?」


「まあそれよりもっと威力を落としたものだ」


 電源プラグを手に持ちながら、アムに言う。


「この箱電気で動かすんでしょ? なら雷魔法を、ジロのもってるそれに流せばいいんじゃないの?」


「ううーん……それがな、さっきもいったけど、雷だと強すぎるんだよ。まあ見せた方が早いか」


 複製スキルは、物体だけじゃなくて魔法も複製できる。


 魔法を複製するためには、1.その魔法を実際に見たことがある、2.魔法の名前を知っている。


 とここまでは物体と一緒だが、


 3の経験が違う。


 魔法の場合経験とは、【実体験(自分で使ってみる)】か、【魔法を熟知してるひとから、丁寧に使い方(上の1と2)を教えてもらう】のいずれかになる。


 俺には魔法使いの友人がいた。


 そいつに無属性魔法や、そのほか属性魔法をいくつか教えてもらった。だから魔法が使えるのだ。


『魔法を教えてもらう代わりに、一日アタシとデートしろっ!』


 ていつも言ってきたな、あの子。なつかしい。


 それはさておき。


「【複製】開始→魔法→風魔法【雷撃サンダーボルト】」


 雷魔法は風に分類される。


 俺は電源コードを持った状態で、雷魔法を使用する。


 手に電撃が発動する。


 コードを通して電気が伝わり……。


 バチッ……!!!


「みゃっ! 煙でてるっ!」


 アムが驚いて、冷蔵庫からピャッと逃げる。


 動きが猫っぽかった。かわいい。


「まあこのように、雷魔法を直接流し込むと、電化製品はその電気の量に耐えきれなくてぶっ壊れるんだ」


 俺は無属性魔法・【廃棄ディスポーサル】を発動させる。


 これは無機物限定だが、ゴミを分解してチリに変える魔法だ。


 粗大ゴミと化した冷蔵庫が、一瞬にして消え去る。


「さらっとすごい魔法使うわね……。ゴミが一瞬で消えたわ」


 アムが驚愕に目を見開いている。


「で、どうするの? この冷蔵庫、その電気とやらがないと動かないんでしょ? ならただの箱じゃない」


 さっきまで冷蔵庫のあった場所を見ながら、アムが言う。


「まあな。電気を外から流すとああなる。が、だから別のアプローチをする」


「別の、アプローチ?」


 俺はうなずく。


「ところでアム、魔法道具マジックアイテムってしってるか?」


「それくらいは。魔法が付与されている道具でしょ?」


 この世界の住民であるなら、その存在自体はしっている。


「けどあれって高いのよね。付与するのが難しいんだっけ」


「ああ。付与術士エンチャンターっていう、特別な職業の人間しか使えない技術なんだ」


 するとアムが「わかった!」と得心がいったようにうなずく。


「その付与術士に冷蔵庫に雷魔法を付与してもらうのねっ!」


 いいせんいっている。


 そう、外側からプラグを通して電気を流すのではなく、そもそも電気の魔法を付与すれば、動くかもしれない。


「確かに良い考えだと思う。悪くない」


「でしょっ?」


「だが、無理だ」


 俺は首を振って否定する。


「ど、どうして?」


「付与魔法ってな、無属性魔法しか付与できないんだよ」


 たとえばマジックキャッシュカード。


 あれは【無限収納アイテムボックス】という無属性魔法が付与されている。 

 かように、道具に付与できる魔法は、無属性魔法だけであり、属性魔法である火や水は付与できない。


 風魔法(雷魔法)も同じだ。


 それはこの世界での、付与術士のルールである。


 そう言うものだとしかいえない。


「残念。じゃあ雷魔法は付与できないのね。ますます冷蔵庫が使えないじゃない」


「いやいや、アム。実はさっきの発想は間違ってないんだ」


 電化製品に外から電気を流すのではなく、雷魔法を付与して動かそうとするという、発想自体悪くない。


 ただこの世界、付与術士が付与できるのは無属性魔法だけなのだ。


 しかし……俺は付与術士じゃない。


 けど、似たようなマネができる。


「じゃあ結局するの?」


「こうするんだよ」


 俺は温泉へ戻る。

 

 足をつけて、パンッ! と両手を打ち合わせる。


 俺の左手は物体を複製し、


 俺の右手は魔法を複製する。


 左手を前にして複製すれば物体ができる。

 右手を出せば魔法を生成する。

 

 ならーー


 両手を合わせて、右と左、物体と魔法を、同時に複製すればどうなるか……?


 左で【冷蔵庫】を。


 右で【風魔法・電撃】を。


 同時に作る。


 左から出た魔力と、右から出た魔力が……交わる。


 交わって混ざる。


 混ざり、ひとつになる。


 合わせた手を離して、両手を前方に突き出す。


 体からすさまじい量の魔力が吸い取られる。

 

 本来ならすぐに枯渇する魔力は、竜の湯に入っていれば無尽蔵だ。


「左手で作る物体と、右手で作る魔法。それを同時に発動させると……こうなる」


 そこにあったのは、さっきとまったく同じ形の冷蔵庫だ。


「…………。………………。おなじじゃない」


 アムの目に失望がありありと浮かんでいる。


「まあまあ。開けてみな」


「うん」と言って、アムが冷蔵庫の戸を開く。


 すると……。


「!?!?!? こ、これはっ!!」


 アムが驚愕に身を震わせながら、ドアの開いた冷蔵庫の前で棒立ちになる。


「つ、冷たいっ!!! すごいっっ!! あんたのいったとおり冷たい箱になってるっ!!!」


 アムの赤いシッポがぴーんとおったつ。


「ちゃんと【雷撃】が付与されたみたいだな」


 前々からこの、道具と魔法を混ぜるという手法を思いついてはいた。


 ただ魔力が足りなかった。


 複製した物体と魔法とをまぜあわせるこれを、俺は【複製合成】と呼んでいる。


 まんまだ。


 複製合成には、物体と魔法を個別に出すより、遙かに魔力を消費する。


 たぶん魔法を帯びた道具というのが、複雑な工程を踏まないと(それこそ付与術士しかしらないような技術)作れないから、


 魔力量も必然的に多くなるのだろう。


 現に今、動く冷蔵庫を複製合成したとき、尋常じゃない魔力を持って行かれた。


 ただ何度も繰り返すが、竜の湯のおかげで、その半端じゃない魔力を捻出できた。


 そして念願だった電化製品を、作ることができたのだった。



    ☆



 その30分後のこと。


 孤児院のリビングには、獣人幼女たちが集まっていた。


「これなんでやがるです?」「ちっこい、はこ?」「中でお皿がぐるぐるまわってるですっ」


 リビングのテーブルの上に乗っているのは、電子レンジだ。


 俺が複製合成して作った、動く電子レンジである。


「お兄ちゃんぶーんってへんなおとしてやがるです。壊れてるです?」「ばくはつ、するかも」「はわわっ、コンちゃんラビの後ろに隠れるのはやめてほしいのですー!」


 ぎゃあぎゃあと幼女たちが騒ぐ。


「でも良いにおいがしやがるです……?」

「とてもよき、かおり♡」

「なんでしょう……これ、鶏肉のにおいでしょうか、にーさん?」


 ラビが俺を見て聞いてくる。


「ああ。とりにくの美味い料理だ。それをこの電子レンジが作っている」


 俺が説明すると、キャニスたちは首をかしげる。


 おそらく俺が何を言ってるのかわからないのだろう。


 ややあってレンジが止まる。


 ドアを開けて、中から耐熱皿を取り出す。

 そしてテーブルの上に置く。


 皿の上には……冷凍のからあげが、なんこも乗っていた。


「これはなんなのです、にーさん?」


 ラビが俺に尋ねる。


 が、その間に、キャニスとコンは、からあげをひとくち、食べた。


 すると……。


「ばくばくばくばく」

「はふっ、あっふ。はふはふ、ふはふはっ」


 すさまじい勢いで、いぬっこときつね娘が、からあげを食べて行くではないか。


「ラビ。とりあえず1個食べてみろ」


「は、はいなのです……」


 ラビは唐揚げに手をつけようとする、が……。


「が、がーん。もうないのです~……」


 悲しそうに、ラビの長うさ耳がたれる。


 どうやらもたもたしている間に、キャニスたちが全部食べてしまったみたいだ。


「むぐむぅむぅ、むぐぐっ! むぐーぐ、むぐぐぐっぐっ!」「このりょーりをつくったやつは、だれだー」


 キャニスは頬をパンパンに膨らませながら目をきらきらさせる。


 コンはシッポをぐるんぐるんっと動かして、喜びを表現している。


 どうやら冷凍唐揚げは異世界の子どもにも人気らしい。


「はぅ……たべたかったですぅー……」


 友達ふたりが、あんまりにも美味そうに食べるものだから、ラビは食べられなくって悲しそうにうつむいた。


「だいじょうぶだ。まだお代わりがある」


「ほほほっ、ほんとうなのですー!?」


 ぴーんっ! とうさ耳がたつ。


「そうだ。そしてラビ、お代わりぶんはおまえが作るんだ」


 ラビをひょいっと抱っこしながら、俺は部屋の隅に置いた、冷蔵庫の前まで来る。


 さっき台車を複製し、温泉から孤児院の中まで運んできたのだ。


「はわわっ、らびが? らびにお料理なんてできないのですー……」


 自信なさげに、ラビの耳がぺちょんと垂れる。


 幼女たちの料理は、基本的にコレットが作る。


 コレットがいないときは、彼女が幼女たちの料理を作り置いて、アムがそれを食べさせる。


 今まではそうだった


 けど、今日からは違う。


 劇的に変化する。

 

「だいじょうぶだ。ほら、この箱のしたの段のふたを、後ろにひっぱってみろ」


 ラビを下ろす。


 彼女はおろおろしながら、俺の言われたとおりにする。


 この冷蔵庫は、上段が冷蔵庫、下段が冷凍庫になっている。


 幼女たちの背の高さでも、冷凍庫のドアを引くことができる。


「あいたのです……つ、つめたいのですー!!!」


 ひゃぁっ! と冷たさに驚くラビ。


「中に鶏の絵がかいてある袋が入ってるだろ? それをまずは外に出してみようか」


 ラビがうなずいて、よいしょっと取り出す。


 ラビは気弱だが素直だ。


 これならすぐに、やりかたを覚えるだろう。


「袋を開けて中身を出すんだ。その際はレンジの近くに置いてあるお皿の上に、中身をおくこと」


 ラビは俺の指示通り動く。


 まあ、中身の凍ったからあげをとりだし、皿に出すだけ。子どもでもできる。


 そう、この子どもでもできる、というのがミソなのだ。


「それで中身ののった皿を、このレンジの中にいれて、そうだ。で、このボタンを5になるまで押す。で、スタートを押す」


 レンジが起動する。

 

 からあげをのせた皿を、キャニスたちが食い入るように見ている後ろで、思う。


 幼女たちにとって、今までコレットがいなければ料理を食べることができなかった。

 しかしコレットが外出して不在の時、この子たちはいったいどうやって腹を満たすというのか?


 これまでと違って、これからは、この子たちが自分で、空腹を満たせるようになれる。


 ややあってレンジがちん、となる。


 ドアをラビが開ける。


 するとーーー


「はわわっ! さっきのがっ! からーげがっ! できてるのですー!!」


 ラビは唐揚げののった皿を見て、驚愕に目を見開く。


「おーっ!!! らびすげーですっ! りょーりっ、らびがりょーりできてるですー!!」


「しぇふが、いた」


 おーっ、とキャニスとコンが、ラビを賞賛する。


「はわわ……すごい……。ほんとうにらびにもできたのです……」


 感極まったように、ラビが唐揚げを凝視しながら言う。


「さっ、熱いうちに食べるんだぞ」

「はいなのですっ!!」


 ラビはできたての唐揚げをハフハフと美味しそうに食べる。


「あつあつでっ、じゅわじゅわでっ、やわらかくって、さいこなのですっ!!」


 ラビの耳がそのまま飛んでくんじゃないか、ってくらいぴんと立っている。


「おにいちゃん、ぼくもっ。ぼくもりょーりをつくらせろやですっ!」


「みーも、みーも」


 ぴょんぴょんっと飛び跳ねるキャニスとコン。


「あせるなって。唐揚げ以外にもあるぞ?」


 冷凍食品。俺はひとり暮らしが長かったので、よくお世話になった。


 冷凍チャーハン。冷凍餃子。ハンバーグにピラフ。


 どれもこの世界にはない料理だ。


 子どもたちは地球の料理に驚愕し、またこれが自分たちにも作れるという事実に驚き、


 そしてーー


「ねえふたりとも!これなららびたちがママに料理つくってあげられるのですっ!」


「たしかにいわれてみりゃー、そうでやがるです!」


「うでがなる、みーのでんしれんじさばきのうでが」


 何より、コレットに料理を作ってやれると言うことに、みんな喜んでいるみたいだった。


 その日の夕食は、幼女たちがコレットに料理を振る舞った。


 全部冷凍食品だったけど、コレットは泣いて喜んでいたのだった。


 うん、電化製品作って良かった。



お疲れ様です!


そんな感じで家電を再現する回でした。家電を使えるようになる理由づけを頑張ってみたんですが、どうでしょうか。(製品自体は使ったことあるけど、電源そのものはない)


3章はこんな感じで生活を向上させてく感じになるかなと思います。


次回は車の再現に着手します。ガワは複製できますが(運転できますが)、燃料が複製できなくて、さてどうしようと色々模索する感じになるかなと思います。


予定だと今回ちらっと触れた、魔法使いさんのところへヒントをもらいにいく展開になるかなと。


以上です!


次回もできればお昼くらいに投稿しようと思ってます。かけなくても夕方にはなんとか投稿できるよう、頑張ります!


よろしければ下の評価ボタンを押してくださると嬉しいです!励みになります!


あと同時進行で別の連載してます。下にリンク貼ってありますので、ぜひ!タイトルを押せば飛びます



長々とすみません!ではまた!

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