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コネクト! ―地脈に纏わるエトセトラ―  作者: 綾部 響
地脈と地脈接続師 【第二幕 人喫の幽鬼】
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異層世界決戦 ―本性―

ビャクと蓬は無事や!残るは人喫の化身のみやな!

 俺は僅かの間、ビャクと(よもぎ)の戦いに魅入ってた。

 そして、その結果に安堵した。

 けどその間、人喫の化身から目を離してもーたんや。


「タッちゃーんっ!」


 俺が人喫の化身の動きに気付いたんと、ビャクの声がしたのは同時やった。

 瞬時に振り返ったけど、奴のスピードは想像以上で既に奴の間合いに入ってもーてた!

 さっきよりも強い殺意!

 しかも全然今の方が速い!

 そして狙いはまた、利伽(りか)やった!

 俺は瞬時に間に合わん事を理解して、今度は声も出せんかった。

 まるで首を差し出すように項垂れてる細く綺麗な利伽の(うなじ)に向けて、鬼の様な一撃が放たれ瞬間……俺は最悪の事態を想像した!


 ―――ギュガギンッ!


 奴の手刀が利伽の首を切り落としたと錯覚した瞬間、今までに聞いたこともない音が周囲に鳴り響いて、人喫の化身は体ごと大きく後方に弾かれて体勢を崩した。

 半分涙目やった俺は、利伽の体と奴の姿を交互に見合わせた。

 良く見ると、利伽の体を薄すらと光るガラスが何枚も組合わさり、まるで亀の甲羅を思わせる様に展開し彼女を包んでいた。


「よーもーぎぃーっ!」


 人喫の化身は暫く弾き飛ばされた自分の手を見つめてたかと思ったら、地獄の底から絞り出すような叫び声を上げた。

 俺が蓬の方に目をやると、彼女はビャクに支えられてこっちに掌を向けた姿勢やった。

 明らかに利伽を守ったんは蓬の力やと解った。


「あんたも無理するニャー。でもウチ、防御系の術は苦手やから、正直助かったニャ」


 呆れながらも柔らかい笑みを蓬に向けるビャク。


「……何かと……御迷惑を……お掛けしましたので……。それに……根性……ですか? ……少しは……見せないと……」


 疲労困憊で笑顔を作り僅かにビャクへ顔を向けた蓬の言葉に、ビャクは少し照れたようにそっぽを向いた。


「タ、タッちゃーん! 利伽様の事はウチと蓬に任して、タッちゃんはそいつの相手頼むニャー!」


 蓬はビャクに任しとけば大丈夫みたいやな。

 利伽も蓬が守ってくれてる。

 後は俺が人喫の化身を倒せば、全て解決や!


 俺が奴を倒せば……。


 奴を倒せば……。


 倒せば……。


 倒す……って……どーやって?


 さっき俺が繰り出した正拳突きも、その後の回し蹴りも、本気やなかったゆーてもかなりの威力があった。

 化身っちゅーても、人が吹っ飛んだんや。

 しかも尋常やないくらい。

 普通やったらあれで終わってる筈や。

 突っ込んだ家もぶっ壊す程やってんから。

 けど奴は何のダメージも無かったように、ケロッとしとる。

 もう少し威力があっても変わらんやろ……。

 奴と正対しながら、俺は打つ手が無いことに気ーついて、まだ何もしてないのに焦りに追い込まれる様なもんを感じてた。


 ―――このまま闇雲に、奴に攻撃仕掛けるか!?


 ―――けど、どー考えても効くとは思えへん。


 ―――やからって、ずーっとこのままっちゅーわけにもいかん。


 答えが出ん問答に悩んでると、先に動き出したのは奴の方やった。


「お前等……蓬に長年掛けてた“呪”を台無しにしやがって……。それに蓬の意識まで取り戻しやがった……。あいつはそれなりに便利(・・)だったってのによー……」


 蓬が便利って……蓬を物扱いか……。

 まー確かに、世の中には便利な奴もおれば使えん奴もおる。

 相手にしてみれば自分にとって使える能力を持ってるかどうか、それによって付き合い方を変える奴もおるくらいやからな。


「蓬は俺が拾って、俺が育てた、俺の物だ……返して貰うぞ! ……そのついでに、お前達も殺しておこう! 今後邪魔されない為にもなー!」


 急激に奴の殺意が高まり、それがどす黒い霊気となって吹き出した!

 さっきの蓬と同じくらい強くて、遥かにえげつない雰囲気を纏ってる!

 全体的には蓬の力を越えてると、俺は直感的に感じた。

 奴の変化は、霊気の質が変わっただけやなかった!

 奴のひょろ長い体が、どんどんと膨れ上がっていく!

 それに合わせて、吹き出す霊気の量もその多さを増していく!


 ―――どんどん膨れて、


 ―――次々と湧き出し、


 俺の目の前で、奴は3メートル位の巨大な筋骨隆々大男に変化しおったんや!


 ―――鬼……?


 第一印象は正に大鬼!

 黒い巨体の黒鬼やった!

 俺が呆気に取られて見てると奴は右手に何かの力を溜め込んで、見えない何かを握るような素振りをした。

 すると奴の右手に集まった黒い霊気が、たちまち黒く凶悪な棍棒の様になったんや!

 無造作にそれを掴んだ黒鬼は、それを頭上に大きく振りかぶった。


「タッちゃん!」


 その光景を魅入ってた俺は、奴の行動が全て他人事の様に映ってたんや。

 奴の狙いは俺やっちゅーのに!


「おわっ!」


 ―――ドゴンッ!


 躊躇なく降り下ろされた棍棒は、さっきまでの俺がおったとこの地面に、巨大な穴を作り出してた!


 ビャクの声で我に返らんかったら、今頃俺は……。


 その威力も大問題やけど、それより何より今の奴は正に“鬼に金棒”!

 素手の俺では到底太刀打ち出来ん……。

 打つ手の無い俺に、奴の二撃、三撃が繰り出される。

 俺はかわすだけで精一杯や!


(龍彦―――苦戦してるみたいやね―――)


 そんな俺の頭に、またばあちゃんの声が響いたんや。

今の俺には、奴を倒す手段がない!え!?ばあちゃん!?

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