凶報三連 第二弾(尸解仙)
尸解仙……って、何や?
「ゴメン……尸解仙って……何やねん?」
俺はばあちゃんに、度々話の腰を折った事に謝罪した。
けど、何となく解るとか、とりあえず聞き流す場合やったら気にならんけど、これだけ深刻な話になったら詳しく聞かんと把握出来へん。
「尸解仙っちゅーんはな―――仙人になりたての化身やで―――」
ばあちゃんは俺のちゃちゃいれに、嫌な顔せんと答えてくれた。
……けど……仙人?
仙人って、あの霞を食って生きてるって、あの仙人かいな?
俺の知る認識やと、仙人はどちらかっちゅーと、神聖な部類に入る気がするんやけど……。
「仙人の全てが―――神聖な者やないで―――。神仙っちゅわれる神のごとき仙人も居れば―――悪仙っちゅーて―――仙術を悪事やら欲望に使う仙人もおるんやで―――。尸解仙っちゅーんは―――仙人になりたてのひよっ子同然や―――。善にも悪にも染まりやすいんやで―――」
毎度お馴染み、ばあちゃんの「何故か俺の心を読む術」が発動して、俺が疑問に思た事をすぐに補足してくれた。
もはや気味が悪い云々やのーて、話が早く済んで有り難かったりする。
それは兎も角、蓬がその尸解仙で……つまりは仙人の卵!
今のばあちゃんの話やと、つまり蓬は悪の側に傾きかけてる……いや、殆ど悪に染まってるっちゅーことか。
「じゃあ、さっきの『しゅ』とか『しんせん』って言ーてたんも……」
「『呪』は呪いやら呪いやら―――呪詛の事やで―――。『神饌』ゆーんは―――神に近しい存在が食す供物―――つまりは食事の事やな―――。蓬はその人喫の化身に呪を掛けられて―――本来は体に合わん“供物”を食べさせられとったんやな―――」
ばあちゃんは供物……なんて言葉を濁したけど、つまりは人肉を食べさせられとったんやな!
呪との併用を考えたら、つまりは蓬を自分の思い通り操るため……自分達の側に引き込むためにそんなんしたんや!
「……で、蓬はもー、どうにもならんねんな……?」
そこでさっきの話に繋がる訳や。
ばあちゃんの話では、蓬にはもー、手の施しようがないって事やった。
「そうやな―――。今は社に張ってる結界で―――外部からの呼び掛けに答えんようにしてるけど―――もっと強い力で招聘されたり―――呪を掛けてる化身が近付いてきたら―――蓬も反応するやろな―――」
「……反応したら……また操られるんか?」
解りきったことを聞いてもーた。
呪に掛かってる限り、蓬は人喫の化身に逆らわれへんのや。
「もう―――操られてるとは言われへんな―――。呪は殆ど完成してるし―――蓬自身も堕ちかけてるしな―――。でもな―――……」
……でも? でも……何や?
何か希望的な事でもあるんか!? 俺に出来ることはあるんか!?
「堕ちかけてるっちゅーだけで―――まだ堕ちた訳やないんや―――。蓬の気持ち次第なんやけどな―――抗う心が残ってれば或いは―――……やな―――」
結局、蓬次第か……。
呼び掛ければ心を取り戻すーとか、そんな漫画みたいな事、起きる訳ないしな……。
もし人喫の化身に呼応して蓬が目覚めたら、敵対するんやろか……。
「ばあちゃんの感知を防ぎきる蓬はやっぱり……強い化身なんか?」
敵対したら戦うこともある。
蓬が強敵やったら、俺も覚悟を決めなあかん。
「強いか弱いかーゆーたら―――今のうちでも楽勝や―――。厄介なんは―――仙人が使う術―――仙術なんやで―――」
えっ!? そうなん?
まー考えてみれば、蓬をあっさり消滅させるとか言ーてるばあちゃんや。
蓬が万全でも、確かに圧勝してまいそーやな。
でも、そんなばあちゃんが「厄介」っちゅー仙術って一体……?
「仙術言ーんは―――その名の通り仙人が使う術やで―――。人間での徳を極めた者が仙人に―――仙人を登り詰めた者が神仙になるっちゅーんを考えたら―――仙術は限りなく人間の術と、神の御技に近いもんがあるんやで―――。そんな術で気配を隠されたら―――流石のうちでもすぐに見つけられんわ―――」
成る程……。
人外の化身が使う術やなくて、人間に近い存在の化身が人間の中に紛れるような術を使ったら、確かに見分けがつかんわなー。
今の蓬がどれ程の仙人なんか知らんけど、攻撃力は兎も角、目眩ましみたいな術は一級品っちゅーこっちゃな。
蓬が人喫の化身の気配を消して、そいつはそれで自由に行動出来て、人を襲ったり、勝人を操ったりしてるって事や。
―――つまり。
その親玉をなんとかせんと、蓬も、勝人も、助けられへんって事やな。
蓬と勝人を操る人喫の化身!俺に何が出来るかわからんけど、到底許されへんな!




