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コネクト! ―地脈に纏わるエトセトラ―  作者: 綾部 響
地脈と地脈接続師 【第二幕 人喫の幽鬼】
35/51

凶報三連 第一弾

なんやねん、その理不尽な三択は!

「……は?」


「だ―――か―――ら―――。悪い話と―――かなり悪い話―――それから―――めっちゃ悪い話の―――どれから聞きたい―――?」


「……は?」


 俺の思考は再びフリーズして、アホみたいに(おんな)じ言葉しか口に出来んかった。

 普通三択と言ーたら、それぞれ違う物が用意されてる筈やんな!?

 リューヒの三択は、どれ選んでも碌なことないやんけ!


「……どれか選ばなあかんの?」


 危機回避の本能が、どれを選んでもアウトやと言ーてる!


「そやね―――どれも―――龍彦チンが―――関わってる事やからね―――」


 しかし逃げ場は無かった……。

 

 とりあえず、真ん中の「かなり悪い話」って奴を聞いてみて、「めっちゃ悪い話」から受けるダメージを予測しよか……。

 その下 (やと思われる)ただの(・・・)悪い話を最後に聞けば、ダメージも軽減されるやろし。


「……それやったら、『かなり悪い話』からお願いします……」


 俺はリューヒの反応を探るように、恐る恐るそう言ーた。

 

「え―――……。普通は―――一番低いほうから―――順番に―――聞いていく物やないかな―――?」


 しかしリューヒは俺の選択に不満そうや。

 っちゅーか、それやったら俺に選ばせんなよ。


「あ、じ……じゃあ『悪いはなし……」


「それでは―――『かなり悪い話』を―――発表します―――」


 ―――発表するんかい!


 「悪い話」をするっちゅーのに、リューヒは何でかパチパチと手を叩いて、一人キャッキャッと喜んでる。

 いや、俺にとって悪い話に喜ばれても……。


「それでは―――ここで―――特別ゲストでーす―――。みっちゃ―――ん」


 ゲ……ゲスト!?

 っちゅーか、ノリノリやな、リューヒ……。

 でも、みっちゃん……って……誰や……?

 疑問に思てる俺の目の前で、リューヒの呼び掛けに応じたんか小さい光が沸き起こって、それが徐々に大きくなった。

 光球は形を変えて人型を取り、色をつけて一人の人間に変化した。


「ば……ばあちゃん!?」


 そこに現れたんは間違いなく俺の祖父母、「不知火 (みそぎ)」やった。

 なるほど……「みそぎ」やから「みっちゃん」か……。


 しかし……俺の目の前には、齢90のばあちゃんと、億歳越えてるっちゅー、ある種化けもん染みたリューヒが、並んで立ってるっちゅーのに……えらい華やかやな!

 リューヒは勿論、ばあちゃんも見た目でリューヒに負けてへんからなー。

 もっとも着てる物は、リューヒに比べれば随分と地味な着物やけどな。


「龍彦―――青春の悩みっちゅーやつは―――もー解決したんか―――?」


 ……ぐっ……。

 痛いとこついてきおんな……。


 どことなくニヤニヤしてるよーに見えるばあちゃんが、全てを見透かした風に聞いてきた。

 まるでここでのやり取りを全部聞いてた見たいや。

 ……いや、多分聞いとったな……こりゃ……。

 

「まーな……それより何でばあちゃんが此処におんねん?」


 誤魔化してもしやーない。

 俺は素直に認めて、ばあちゃんに先を促した。

 もはや何でもアリなばあちゃんが此処に居る事自体、驚きはない。

 社殿から出られへんばあちゃんが、ちょくちょく(ひんぱんに)フリュークスへ出入りしてリューヒ相手に茶菓子食べてても、何も驚かへん。


「うちが此処に来たんはな―――あんたに幾つか―――伝える事があるからやで―――」


 まぁ、大体の見当はついてたけど、想像通りの答えやった。

 そもそもリューヒが話の流れでばあちゃんを呼んだのは、その「かなり悪い話」の説明をしてもらう為やろう。

 俺は沈黙と、真剣な眼差しでばあちゃんに話の続きを促した。


「あんたと出会って―――ビャクがうちんとこ連れてきた『(よもぎ)』っちゅー娘な―――ちょっと手の付けようがないんやわ―――」


「なっ……!」


 俺は言葉を失った。

 ビャクから、蓬の容態はあんまり良くないって聞いてたけど、まさかばあちゃんの口からもそう言われるとは思わんかった。


「長いこと―――(しゅ)の影響受けてたゆーんと―――その為に神饌(しんせん)として摂り続けてた物が―――霊気の隅々にまで根ー張ってるんや―――」


 ……「呪」? 「神饌」? 良ーわからん言葉が出てきたけど、何やヤバイ状況なんは理解でいた。


「ばあちゃん、どうにかならんのか!?」


 でも、ばあちゃんもリューヒも、(おんな)じ表情と雰囲気で、それが難儀やっちゅーのを物語ってた。


「うちとリューちゃんの見解は一致しとるんや―――……このまま消滅させるんが良ーおもとるんや―――」


 ―――し……消滅!?


 その不吉な言葉だけで、いちいち詳細を聞かんでも蓬がどうなるんかだけは解った……。

 そして、今はばあちゃんとリューヒが「みっちゃん」「リューちゃん」の仲やっちゅーことも、一先ず横へ置いとく。

 ばあちゃんとリューヒが(おんな)じ見解なんやったら、今更俺がどうこう言えることなんかあらへん。


「……ばあちゃん……蓬に……会わしてくれへんか?」


 俺は蓬と、特に親しい仲になったとか、うち解け合った訳や無い。

 出会った時間も、交わした言葉の数もほんのチョッとや……。

 けどこのまま、蓬が消えていくんを、知らんぷりして見てるだけなんて出来へん。


「わかった―――良えで―――。意識も(うっ)すらとはあるからな―――。話したい事あったら―――話したら良えよ―――」


「……ありがと……」


 自然としんみりした空気になった。

 例え化身やゆーても、一つの存在が消える……消されるんや。

 それが決して“悪”と感じられへん存在やったら、こういう空気になるんもしゃーないこっちゃ。


「さ―――さ―――! 気分変えて―――次―――いきましょか―――」


 そんな空気も何のその。

 リューヒは次の「悪い話」に進もうと、何故かその場を盛り上げようとする。


 ―――リューヒって実は、俺が不幸に会うんが楽しゅーてしゃーないんとちゃうか?


蓬の事も気がかりやけど、俺には後、二つも凶報が残ってる。先にそれを聞いてから、行動を決めるしかない……。

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