凶報三連 第一弾
なんやねん、その理不尽な三択は!
「……は?」
「だ―――か―――ら―――。悪い話と―――かなり悪い話―――それから―――めっちゃ悪い話の―――どれから聞きたい―――?」
「……は?」
俺の思考は再びフリーズして、アホみたいに同じ言葉しか口に出来んかった。
普通三択と言ーたら、それぞれ違う物が用意されてる筈やんな!?
リューヒの三択は、どれ選んでも碌なことないやんけ!
「……どれか選ばなあかんの?」
危機回避の本能が、どれを選んでもアウトやと言ーてる!
「そやね―――どれも―――龍彦チンが―――関わってる事やからね―――」
しかし逃げ場は無かった……。
とりあえず、真ん中の「かなり悪い話」って奴を聞いてみて、「めっちゃ悪い話」から受けるダメージを予測しよか……。
その下 (やと思われる)ただの悪い話を最後に聞けば、ダメージも軽減されるやろし。
「……それやったら、『かなり悪い話』からお願いします……」
俺はリューヒの反応を探るように、恐る恐るそう言ーた。
「え―――……。普通は―――一番低いほうから―――順番に―――聞いていく物やないかな―――?」
しかしリューヒは俺の選択に不満そうや。
っちゅーか、それやったら俺に選ばせんなよ。
「あ、じ……じゃあ『悪いはなし……」
「それでは―――『かなり悪い話』を―――発表します―――」
―――発表するんかい!
「悪い話」をするっちゅーのに、リューヒは何でかパチパチと手を叩いて、一人キャッキャッと喜んでる。
いや、俺にとって悪い話に喜ばれても……。
「それでは―――ここで―――特別ゲストでーす―――。みっちゃ―――ん」
ゲ……ゲスト!?
っちゅーか、ノリノリやな、リューヒ……。
でも、みっちゃん……って……誰や……?
疑問に思てる俺の目の前で、リューヒの呼び掛けに応じたんか小さい光が沸き起こって、それが徐々に大きくなった。
光球は形を変えて人型を取り、色をつけて一人の人間に変化した。
「ば……ばあちゃん!?」
そこに現れたんは間違いなく俺の祖父母、「不知火 禊」やった。
なるほど……「みそぎ」やから「みっちゃん」か……。
しかし……俺の目の前には、齢90のばあちゃんと、億歳越えてるっちゅー、ある種化けもん染みたリューヒが、並んで立ってるっちゅーのに……えらい華やかやな!
リューヒは勿論、ばあちゃんも見た目でリューヒに負けてへんからなー。
もっとも着てる物は、リューヒに比べれば随分と地味な着物やけどな。
「龍彦―――青春の悩みっちゅーやつは―――もー解決したんか―――?」
……ぐっ……。
痛いとこついてきおんな……。
どことなくニヤニヤしてるよーに見えるばあちゃんが、全てを見透かした風に聞いてきた。
まるでここでのやり取りを全部聞いてた見たいや。
……いや、多分聞いとったな……こりゃ……。
「まーな……それより何でばあちゃんが此処におんねん?」
誤魔化してもしやーない。
俺は素直に認めて、ばあちゃんに先を促した。
もはや何でもアリなばあちゃんが此処に居る事自体、驚きはない。
社殿から出られへんばあちゃんが、ちょくちょくフリュークスへ出入りしてリューヒ相手に茶菓子食べてても、何も驚かへん。
「うちが此処に来たんはな―――あんたに幾つか―――伝える事があるからやで―――」
まぁ、大体の見当はついてたけど、想像通りの答えやった。
そもそもリューヒが話の流れでばあちゃんを呼んだのは、その「かなり悪い話」の説明をしてもらう為やろう。
俺は沈黙と、真剣な眼差しでばあちゃんに話の続きを促した。
「あんたと出会って―――ビャクがうちんとこ連れてきた『蓬』っちゅー娘な―――ちょっと手の付けようがないんやわ―――」
「なっ……!」
俺は言葉を失った。
ビャクから、蓬の容態はあんまり良くないって聞いてたけど、まさかばあちゃんの口からもそう言われるとは思わんかった。
「長いこと―――呪の影響受けてたゆーんと―――その為に神饌として摂り続けてた物が―――霊気の隅々にまで根ー張ってるんや―――」
……「呪」? 「神饌」? 良ーわからん言葉が出てきたけど、何やヤバイ状況なんは理解でいた。
「ばあちゃん、どうにかならんのか!?」
でも、ばあちゃんもリューヒも、同じ表情と雰囲気で、それが難儀やっちゅーのを物語ってた。
「うちとリューちゃんの見解は一致しとるんや―――……このまま消滅させるんが良ーおもとるんや―――」
―――し……消滅!?
その不吉な言葉だけで、いちいち詳細を聞かんでも蓬がどうなるんかだけは解った……。
そして、今はばあちゃんとリューヒが「みっちゃん」「リューちゃん」の仲やっちゅーことも、一先ず横へ置いとく。
ばあちゃんとリューヒが同じ見解なんやったら、今更俺がどうこう言えることなんかあらへん。
「……ばあちゃん……蓬に……会わしてくれへんか?」
俺は蓬と、特に親しい仲になったとか、うち解け合った訳や無い。
出会った時間も、交わした言葉の数もほんのチョッとや……。
けどこのまま、蓬が消えていくんを、知らんぷりして見てるだけなんて出来へん。
「わかった―――良えで―――。意識も薄すらとはあるからな―――。話したい事あったら―――話したら良えよ―――」
「……ありがと……」
自然としんみりした空気になった。
例え化身やゆーても、一つの存在が消える……消されるんや。
それが決して“悪”と感じられへん存在やったら、こういう空気になるんもしゃーないこっちゃ。
「さ―――さ―――! 気分変えて―――次―――いきましょか―――」
そんな空気も何のその。
リューヒは次の「悪い話」に進もうと、何故かその場を盛り上げようとする。
―――リューヒって実は、俺が不幸に会うんが楽しゅーてしゃーないんとちゃうか?
蓬の事も気がかりやけど、俺には後、二つも凶報が残ってる。先にそれを聞いてから、行動を決めるしかない……。




