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コネクト! ―地脈に纏わるエトセトラ―  作者: 綾部 響
地脈と地脈接続師 【第二幕 人喫の幽鬼】
32/51

軟弱者(へたれ)

俺はショックがでかすぎて、兎に角この場から、学校から早く帰りたかった……。

 ―――放課後。


 授業が終わると、俺はそそくさと帰り支度を済ませ、いつもよりかなり早いタイミングで校門を出た。

 走ってないだけで、まるで逃げるように下校してるんは、


 ―――これ以上、吉田勝人の顔をみたくない。


 ―――今、利伽に会いたくない。


 この二つの理由からやった。

 出来るだけ自然に振る舞って、不審がられんように学校を出たつもりやった。


「ちょー! タツー! タツってー!」


 でも、自然と早足になってたみたいや。

 でもまーそれはしゃーない。

 達観やら、しったかぶりしてるように見えるけど、実際はただの小賢しい(こざかしい)16才や。

 動揺すれば不自然な行動を取ってしまうんもしゃーない話や。


「ちょー! タツ! 聞こえへんかったん!?」


 俺の隣に追い付いてきた利伽が、俺の顔を覗き込みながら不満げな声で聞いて来た。


 ―――聞こえてた……。


 十分聞こえてたけど、足止められへんかったんや。


「……ああ、悪い。考え事しとってん」


「……ふーん……」


 俺のぶっきらぼうな物言いに、利伽は怪訝な顔で相槌を打つ。

 明らかに俺の態度がいつもと違う(ちゃう)ちゅーのはバレとんな……。


「そうや! それより、昼間タツが連れてきた吉田君やねんけど……」


 利伽が、殊更声を大きくして、俺に話題を振ってきた。

 多分そんな事はないんやろーけど、俺には利伽が嬉しそうに話してる様に見えた。

 俺は徐々に歩く速度を上げていった。


「今日、吉田君に初めて会った時な……」


「……たない……」


「……え?」


「……聞きたない……勝人の話も、お前の話も、今は聞きたないんや!」


 女々しいゆーんは十分解っとる。

 自分が情けないだけやなくて、利伽へ八つ当たり気味になっとるんも、重々承知の上や。


 ―――ただ……。


 ―――少し気持ちを整理する時間が欲しかっただけや……。


「ちょ……何なん、それ? 吉田君に会った時……」


「だから聞ききたない言ーてるやんけ!」


 つい……語気が荒くなってもーた…。

 ここまで来れば最低や……。


「……ちょー……タツ……あんた何を……」


「……すまん。先行くで……」


「あっ! ちょ、タツ!」


 背中から掛けられた声を無視して、俺は早足から駆け足になった。

 まだ利伽が俺の名を呼んでたけど、俺は立ち止まりも、振り返りもせんかった。


 利伽の話を聞くくらいやったら、今の俺にも出来るかも知れん。

 けど何か言う事になった時、俺は感情的になって思ってもない事を言ーかも知れん。

 それが俺には、ものごっつー(たまらなく)嫌やったんや……。


 一気に走って、毎朝神流(かんな)達と別れるT字路まで来た。

 そこでは、いつもの様に神流が俺を待ってた。

 ここは朝、神流と別れる所であり、夕方、神流と再会する所でもある。


「あ、お兄ちゃん、お疲れー」


 いつもの様に、神流は俺に声を掛けた。

 けど今の俺は、真っ直ぐ神流の顔を見られへん。


「……悪ー(わりー)……先帰るわ……もうすぐ利伽が来るから……」


 神流と視線を合わせること無く俯いたまま、俺は不知火神社の方へと再び駆け出した。


「お、お兄ちゃん!?」


 最愛の妹が驚き、俺を呼び止める声が聞こえた……。

 けど、今の俺は誰とも話す気分や無かったんや……。


 何もかも考えられへんよーになるまで、俺は走る速度を上げていった……。


 ―――自分でも、もーちょっとしっかりしてると思てた。

 

 ―――もーちょっと、現実を冷静に受け止められると思てた。


 ―――まさか自分が、こんなに軟弱者(へたれ)やとは、思いもよらんかったわ……。

情けない限りや……。でも、今はどーしょーもないんや……。

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