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コネクト! ―地脈に纏わるエトセトラ―  作者: 綾部 響
地脈と地脈接続師 【第二幕 人喫の幽鬼】
30/51

蓬(よもぎ)

蓬に「何故?」と問われて答えられへん俺。……ほんま、何でやろ?

 ―――なんで? なんでやろ……?


 此処に来た理由を(よもぎ)に問われて、俺は直ぐに答えられへんかった。


 好奇心? 使命感? それとも何かに惹かれたから? どれも違うな(ちゃうな)……。


 あの時感じたんは焦り、焦燥感やった。

 何に対して焦ってたんか、今になってもわからへん。

 それに今はその焦燥感すらない。


「……何でやろ?」


 だから俺は、素直にそう言い返した。

 ほんま、なんで俺、此処に居るんやろ?

 再び起こる沈黙。

 もしかしたら蓬を怒らせてもーたか?


「……ぷっ……ふふふ……ふふふふ……」


 でも予想に反して、蓬は可笑しそうに笑いだした。

 今やったら蓬の表情も「笑ってる」って解る。

 こうやって見ると、蓬も可愛らしい、年相応なただの女の子に見える。


 ……まー多分、見た目以上に歳取ってるんやろうけどな……。


 彼女が吹き出した事で、この場の空気が一気に和んだ。

 ビャクも何処(どっ)か、毒気を抜かれたみたいや。


「蓬……こそ、なんで此処に居んねん?」


 当然の疑問。

 それを俺は口にした。

 全くの勘で言えば、此処に蓬が居ったから俺は此処に来たんちゃうやろか……そう思え出してきたんや。


「……私……? ……私は……もうずっと……具合が悪くて……人の来ない……静かな……場所を探したら……此処が良い……らしくって……」


 その言葉に、俺は少しの違和感を感じた。

「此処が良かった」やなくて、「此処が良いらしい」。

 誰かに言われて来たんか?


「なぁ……らしくってって、誰かから聞いて来たんか?」


 思ったことは、直ぐに口にしてまう。俺の悪い癖……なんやろなー……。


「……いえ……何となく……でしょうか……。此方だと……何か……良いことが……あると……そう……感じたのです……」


 所謂“勘”ってやつか?

 まー確かに人間、殆どが勘で動いてるよーなもんや。

 それに経験が色付けされて、行動に確実性を増してるんやけどな。


「……卜仙術(ぼくせんじゅつ)……」


 と、ずーっと黙り込んでたビャクが、呟くよーに何かを口にした。

 ボク……何やて?


「ビャク、今何て……」


「タっちゃん、悪い事は言わんから、今すぐ此処から立ち去るニャ」


 俺の疑問を遮って、ビャクが言葉を被せてきた。


「おま……何やねん、いきなり……」


「良ーから! これ以上関わったら、絶対碌なことにニャらんから!」


 珍しく語気を荒げて、ビャクがこの場を離れるように提案してきた。

 いや、提案やないな。

 指示? 命令? 兎に角必死や。


「ちょ……ビャク、ちょー落ち着け……」


 ―――パサッ……。


 俺とビャクが言い争ってたその時、蓬の方から、何か軽い物が床に落ちるような音がした。

 俺とビャクが同時に目を向けると、蓬がその場で倒れてた。


「お……おい……蓬? 蓬!?」


 俺とビャクは、慌てて蓬の元へと駆け寄った。

 蓬の呼吸は荒く、心なしか顔色も悪く見えた。

 まー化身に顔色があればの話なんやけどな。


「ビ……ビャク……蓬は一体……?」


 蓬を抱えながら彼女の顔を覗き込んで、俺はビャクに問いかけた。

 残念ながら、化身の体調やら病気に俺は全く詳しくない。


「……侵食が進み過ぎてるんニャ。このままやと、この子は……堕ちるニャ……」


 堕ちる……っちゅー言葉の意味は解らんかったけど、何やら不吉な響きだけは感じ取れた。


「ど……どないしたら良ーねん!?」


 全くもって情けない話、俺にはこの場でどーするんが最良なんか見当もつかんかった。


「……(みそぎ)様にお願いするしかニャいニャー……禊様かリューヒ様やったら、この子を何とかしてくれるーおもうニャ」


 ばあちゃんか! それにあのリューヒって神様の姉ちゃん。

 確かにあの二人が揃ったら、何でもアリの様な気がするわ!


「よっしゃ! それやったらとっとといこか!」


 俺は蓬を両手で抱えて立ち上がった。

 思った以上に軽い蓬に、ちょっとビックリした。

 まー、化身に見た目通りの体重が当てはまるんやったら……やけどな。


「ちょー、ちょー! タっちゃん! 学校どないするんニャ?」


 何や知らんけど妙に切羽詰まってる俺は、直ぐにも駆け出そうとしてビャクに止められた。


「どないもこないも、人命救助が優先やろ!」


 まー、化身は人や……以下略。

 けど、中身はしらんけど、見た目が可愛い女の子……しかも神流(かんな)とかビャクと同世代なんやったら、放っとく訳にもいかんやろ。

 答えた俺に、ビャクは溜め息をわざとらしく、大きく、深ーくついた。


「わかったニャー……ウチが禊様んとこへ連れていくニャー……」


 断腸の思いで決断! っちゅーくらいの声音で、不承不承(ふしょうぶしょう)ビャクが引き受けてくれる。


本当か(ほんまか)!? 助かるわー! 流石ビャクやな! 頼りになるわ!」


 まさかビャクが、そんな事に骨を折ってくれるなんて思わんかった。

 俺がビャクを誉めそやす言葉と同時に、ビャクは本来の姿に変化した。


「タっちゃん、ちょー誉め過ぎニャて。こ、これくらいお安いご用ニャんニャから……」


 人の姿になったビャクは、すでに耳まで真っ赤になってる。

 誉められるんに、実は慣れてないんかもしれんな。


「俺も学校終わったら、ダッシュで帰るから! 頼んだで!」


 蓬を背負ったビャクが地下倉庫を出る。

 俺もその後に続いた。


「じ、じゃータっちゃん、先行ってるわ」


 最後まで照れ通しやったビャクは、そう言って、俺の前から大きく跳躍した。


後の事はビャクに任した。ビャクが向かった先、ばあちゃんとリューヒなら何とかしてくれる筈や。俺は兎に角、午後の授業を受ける為に、教室へと戻った。

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