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コネクト! ―地脈に纏わるエトセトラ―  作者: 綾部 響
地脈と地脈接続師 【第二幕 人喫の幽鬼】
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人拒む暗室

緊張感を高めながら、俺とビャクは地下倉庫の入り口へと進む……。

 ふと気付いたけど、昼休み半ばやーゆーのに、ここには全く人が通らへん。

 どー考えてもおかしかった。

 冷静な部分では、ビャクの言ー通り余計な事に首を突っ込むんは得策やない。

 ビャクの証言があるんや。

 ばあちゃんに相談して、何か手配なり指示なりをしてもらった方が良ーって解ってる。


 けど、俺は足を止められへんかった。

 それは好奇心とか、無謀とか、若気の至りに、「俺だけは危機に陥っても助かる」なんて根拠のない自信からでもない。


 ―――焦りや。


 何か得体の知れん、急がなあかんっちゅー焦燥感に駆られてのもんやった。


 地下に続く階段……ちゅーても5段くらいやけど、そこまで後数メートルって所で、俺は何か(・・)の中に侵入(・・)した。


 「……ビャク!?」


 自然になった小声で、俺はビャクに確認した。


「……結界……ってゆーか、呪い(まじない)の類いニャ。人の侵入を拒むんやニャくて、人を遠ざける為のものニャねー」


「……そうか」


 ビャクの言葉で、俺の感覚が間違ってなかったって事は確認出来た。


 ゆっくりやった足取りを更に忍び足に変えて、階段までの距離を詰める。

 まるで隠密行動みたいに階段を下りた。

 上履きが鳴らす砂を噛む音も、今は大きい音に聞こえた。

 ゆっくりとドアノブを掴む。

 いつの間にか掌は汗だくや。

 右にノブを回してドアを引いた。

 鍵に当たる抵抗がない。


 ―――開いてる!


 もし扉の奥に何か居ったら俺の姿なんか中から丸見えのはずや。

 今更コソコソしてもしゃーないのに、俺はユックリ、ソーッと扉を開けた。


 開けた瞬間まず鼻を突いたのが、埃とカビの混じった()えた臭いってやつやった。

 窓はない。

 光は俺が開けた扉から射し込んでる分だけや。

 その光が、舞い上がる埃の粒子をキラキラと反射してる。

 中は意外に奥行と高さがあるみたいやけど、影になってもーてて光の届いてる足元周辺位しか良ーわからん。

 それ以前に、外と中との明暗差で視界がブラックアウトしてもーて、全く見えへん。


「タっちゃん、目やのーて、霊気を視るんニャでー」


 小さく、低く抑えられたビャクの声が耳に届いた。

 ビャクの声は若干緊張感を増してる。

 何か居る証拠や。

 まだ「霊体を視る」って感覚に慣れてなかった俺は、ビャクの言葉で意識を集中して中に視線を向けた。


 ―――確かに……何か……居る……。


 黒……やない、グレーの人型をした霊体が、今まで横になってたんかユックリと、ムクリと起き上がってるんが俺にも見えた。


「……誰や!?」


 こんなとこに結界だか呪いだかを張り巡らせてまで居てる「何か」が、人間や無い事は解ってる。

 けど、他に問いかける言葉が浮かばんかったんや。


「……あなた達こそ……誰?」


 静かに、ユックリと……でも確かな威圧をもって、それ(・・)は俺に問い返してきた。

 標準語……か?


 それよりも、はてさて、どう答えたもんやろ?

 『人に名前を尋ねるなら、先ずは自分から』なんてのは人間の理屈やしな。

 馬鹿正直に答えて良ーもんかどーか……。


「……ここには……誰も……来ないように……“人払いの呪い”を……施しておいたのだけれど……」


 俺が答えを聞く前に、それ(・・)の方が先に呟きだした。

 そして漸く、俺の目も中が見えるように慣れてきた。


 ―――女の子やった。


 そこに居るんは、神流(かんな)やビャクよりも更に幼く見える女の子やったんや。

 闇の中でも燃えるように光って見える紅い髪が印象的や。

 直感で“幼く”と思ったけど、顔立ちは恐ろしいほどに綺麗や。

 整った輪郭、スッと通った鼻筋、細く美しい眉、そして……切れ長で琥珀色の瞳を湛える双桙(そうぼう)

 やけど、その美しい顔には表情がない。

 彼女は、まるで感情の籠らん目でこっちを見てる。

 小首を(かし)げてるんは、質問した直後やからか?

 自分では感情が表情に現れてないっちゅーんに気付いてない感じやった。


「……お、俺は不知火 龍彦。人間や」


 悩んだ挙げ句に、俺は自分の名前を言ー事にした。

 多分そーせんと向こうも名乗らん気がしたし、何より彼女に敵意はない思たんや。


「……ふー……ん……不知火……龍彦……。私は……(よもぎ)って……言うの……」


 よもぎ……変わった名前やな。

 まー人間の尺度で考えてもしゃーないけど。

 “よもぎ”っちゅーたら真っ先に浮かぶんは「よもぎ餅」やな。あらー旨い!


「……そっちの……ネコは……ネコ? ……少し違う……のかな? ……なんて言うの……?」


 (よまぎ)はビャクの正体にも気づいてるみたいで、見た目と違う違和感にどこか訝しんでるみたいやった。

 けど表情からは読み取れへん。

 問い掛けられたビャクやけど、緊張を解こうとせんビャクは、一向に答える気ーないらしい。

 僅かな沈黙の後、先に口を開いたんは蓬やった。


「……それで……龍彦達は……何故、此処に……きたの……?」


地下の暗室で出会った少女「蓬」。彼女は一体何者……?

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