見合い話やったんか……
目の前で起こった悲劇!当然、龍彦の機嫌は悪かった……。
俺はすこぶる、機嫌が悪かった。
理由は明白、今朝いきなり聞かされた、利伽の見合い話の原因や。
俺の前で着々と進んだ見合い話。
これ程色んな物が打ち砕かれた事なんか、今までに無かったわ。
―――幼馴染みで、夜の見廻りをいつも一緒にしてた俺に、全く一言の相談もないし。
―――いや、今思えば何回か言い出そうとしてたみたいやけど、結局話してもらえんかったし。
―――今朝の一件以来なんや利伽と話難くて、結局利伽の考えは聞けてないし!
大体、利伽は俺の事どう考えてるんやろ?
見合いって、まじで受けるんか?
まー、俺の事をどう思ってるかなんて、告白も出来へん俺にそんなこと言ー資格なんてないんやけどな。
結局このイライラは、自分自身の不甲斐なさに向けられてるっちゅーことも、俺には何となくわかっとったんや。
十メートル程前を行く三人、利伽、神流、そして真夏は、何やらヒソヒソと話ながら時折後方の俺に視線を向ける。
明らかに気ー使われてるんが解るだけに、余計にイライラが募る。
話しかけへん俺も悪いねんけどな。
「しかし、利伽様があの“浅間家”御長男と御結婚とは、驚きですニャ」
そして、そんな俺の近くにおるんは、猫の姿で極限まで霊気と存在感を抑えてるビャクやった。
ここまで全ての気配を抑え込むと、霊気を見ることの出来へん人間には、見えてないのと同じ事や。
当然、まだ能力の解放が済んでない神流と真夏には、ビャクの姿も見えへんし、声も聞こえへん。
「……結婚違う。お見合いや……」
言ーてて情けなくなる。
見合いの延長には、限りなく近くに結婚があるちゅーのに。
普通に付き合うよりも、遥かに結婚が見えてる位置やっちゅーのに。
「ウチが聞いた話ニャと、浅間家の御長男は、容姿、気立て、学力、性格から霊力まで、非の打ち所がニャい、ニャイスガイって事ですニャ」
そんな余計なインフォメーションは要らんっちゅーねん!
後から聞いた話やと、「浅間家」ってのは日本三大霊峰の一つであり、日本一の標高を誇るあの富士山にある霊穴を守護する一族や。
日本最大の霊穴を有する山でもある富士山。
その山を守護し、その霊穴を封じている浅間一族は、当然日本の地脈接続師協会であるところの「竜洞会」でも筆頭であり、その発言力は計り知れん……らしい。
そんな遥か雲の上に居る存在が、なんでこんな小さい山を守護する一族と縁談なんてするんか知らんけど、利伽にとっては悪い話やないはずや。
所謂“玉の輿”なんやからな。
しかしお見合い相手にしても、そんな非の打ち所もないような人物、何も利伽やのーても引く手あまたやろうに。
「もー、龍彦様ー。ブツブツと、男らしく無いですニャー」
「……その“様”って止めーや。呼び捨てで良ーから」
ビャクに図星を指されて、俺はビャクの言葉には答えんと、全く違う事を返した。
しかしビャクの指摘ももっともや。
いつまでもグジグジ考えててもしゃーない。
「本当? |いやー、ほんまは堅苦しい言い方って、苦手ニャってん。じゃーこれからは“タっちゃん”って呼ぶニャ」
いきなりタメ口かい!
それに近い! 距離感が一気に近なってる!
でもそれにツッコム気力は、流石にまだ湧かんかった。
俺が呆れ顔でビャクを見てると、それをどー勘違いしたのかビャクが体を俺の足元に刷り寄せてきた。
「それにー、タっちゃんにはウチがいてるニャん」
ゴロゴロと喉でも鳴らしそうな猫撫で声で、ビャクが意味不明な事を言い出した。
ってゆーか、タっちゃん確定か……。
「……は? 何言ーてんねん?」
ますます呆れ顔になった俺は、声まで呆けた物になってた。
話の前後で、繋がりが見えへん。
「あれ? こっちもまだ聞いてニャいん? ウチがわざわざここに来たんは、タっちゃんの花嫁候補ニャからなんニャで?」
…………………はあ!?
何と龍彦にも縁談の話!しかも相手は化身のビャクだった!




