座学4 双子霊穴
聖洞会の話は一旦終え、禊の座学は、再び地脈の話へと戻った
「なんや、話が逸れてもうたな―――。何の話やったっけ―――?」
白々しくばあちゃんが、惚けた口調で話を戻そうとした。
嘘つけ! 最初っからこの話持ち出す気ーやったクセに!
でもまー、早めに聞ーといて良かったかも知れんな。
「そや―――地脈に霊気が通ってないって話やったな―――。うち等は自分達の信念に基づいて―――霊穴の封印っちゅー事をしてるのは―――解ったと思うねんけど―――……龍彦―――」
急に名前を呼ばれて、俺はドキッとした。
さっきまでの話の影響がまだ残ってるんかも知れん。
やましい事なんか何もないのに、どうも心が落ち着かんかった。
俺は返事もせず、視線だけをばあちゃんに向けて答えた。
「あんたが地脈と接続した時―――どうやった―――? 地脈の力が枯渇してるって感じやったか―――?」
「……いや、そんな風には感じんかった。膨大な力の流れっちゅーんかな? とにかく凄いエネルギーが溢れてる感じやった」
あれこそ正しく地脈の息吹きやと、俺なんかでも感じる事が出来た。
不知火山に脈々と流れる霊気を、俺は確かに強く感じたんや。
「そやで―――。それが地脈の霊気っちゅー奴やで―――。あれでも微々たるもんなんや―――。この二子山からは―――一流の封印師でも―――どーしても抑えきらん地脈の霊気が漏れだしてるんやで―――……八代山の霊穴からな―――」
「……は?」
「だから―――あんたが接続したんは―――不知火山の地脈やのーて―――八代山から流れてる地脈と接続したんやでって言ーてんねんで―――」
「……は?」
俺はアホみたいに「……は?」としか返せんかった。
いや、だって俺、不知火一族やし……。
普通、不知火山の地脈に接続するって思うやん!?
「……ちょ、ちょー待ってーや! 俺、確かに不知火山の地脈に接続したつもりで……いや、あの時間違いなく不知火山に俺の霊体刺さってたやんな!?」
「あ―――……あれな―――。龍彦の霊体は不知火山に刺さって―――地面の下で八代山の方へ向き変えたんやで―――。大体、不知火山の霊穴はうちが封印してるんやで―――。ただの一滴でも―――うちが霊気を漏らすー思てんのか―――?」
……まじか……。
俺はてっきり……って、あん時俺「不知火山に流れる……」みたいな事、思いっきり叫んでたやん!
恥ずっ! なんかすっげー恥ずいわ!
利伽は一人で身悶えてた俺を半ば憐れみを込めた目で見てたけど、視線をばあちゃんに戻した。
そこで変に気ー使って声掛けへんとかやめてー! 放置やめてー!
「おばあちゃん、不知火山と八代山の地脈って……ひょっとしてこの山には、霊穴が二つあんの?」
利伽のばあちゃんへの言葉で、俺も漸く平静を取り戻せた。
俺も今まで、この二子山で一つの霊穴を保有してるんやと思とったんや。
「あれ―――? 言ーてへんかったっけ―――? ここの霊穴は―――世界でも珍しい“双子霊穴”なんやで―――。それぞれの御山に―――一つずつ霊穴が存在してるんやで―――」
強力な霊気を湧き出すような霊穴は、普通隣接するように存在せーへん。
弱く小さい物やったら在るかも知れんけど、それかて聞いたことないわ。
まー、そう言い切る以前に、そこまで地脈に詳しいって訳やないけどな。
「じゃ……じゃあ、八代山の霊穴を封印してるのって……」
「そやで―――。あんたのお父さんが―――八代山の封印師してるんやで―――」
ばあちゃんの言葉で、利伽は絶句して固まってしまった。
双子霊穴の一方を封印しているのは、利伽の父親だった。複雑な気持ちを抱く利伽だったが……。




