座学2 竜洞会
地脈を塞き止めているのは、禊達「封印師」だった。その真意は……?
「じゃーなんや? 世界中で景気が悪いんも、あちこちで争いが絶えへんのも、何やかんやの問題って……」
「そやね―――。殆どうち達の責任やね―――」
問題の規模が大きすぎて呆気にとられる俺と利伽を余所に、ばあちゃんはにこやかな表情一つ変えんとそう言い切った。
因みにビャクは、未だに動かない……いや、あれは寝てるんちゃうかな。
「それやったら、おばあちゃん。私等がコネクターになるのって、その片棒を担ぐって事……なん?」
世界規模の問題ともなったら、ちょっと前までただの高校生やった俺等には荷が重すぎる。
それに世界の情勢をコントロールしてるともなったら、到底手に余る。
利伽の不安も当然や。
「片棒担ぐっちゅーのは―――また偉い大袈裟な言い種やな―――。うち等は何も―――世界を滅ぼそうっちゅー理由で―――地脈を塞き止めてるんやないんやで―――」
ばあちゃんの言い方に、誤魔化そうって感じは見られへんかった。
もっとも、百戦錬磨なばあちゃんの心底を見抜くなんて、未熟な俺には不可能やけどな。
「利伽ちゃん―――あんたが思ってる事の逆や―――。今の世の中―――地脈が制御されんかったら―――世界はあっちゅー間に滅ぶんやで―――」
地脈の力があれば、その上にある街や村、国は繁栄する。
それのどこがまずいんや?
俺も利伽も意味が解らんと、互いに顔を見合わせるしかなかった。
「何でも“ほどほど”っちゅーのが一番なんやで―――。熟しすぎた果実は落ちるし―――繁栄しすぎた国は腐って滅ぶ―――……歴史が証明してるやろ―――?」
それは確かにその通りかもしれん。
それやったら世界と言わず、日本が不景気なんも地脈の影響なんか?
「日本かて高度成長期からバブルを経て―――その時点でもー腐ってたんやで―――。あの時点で止められたから―――これくらいの被害で済んだんやで―――」
バブル経済の崩壊で日本は大打撃を受けて、未だにその影響から抜け出せてないとも言われてる……らしい。
歴史で習った程度やけどな。
それでさえ、まだましやって言い切るばあちゃんと、地脈の力ってどんだけやねん……。
「本当は―――行き着くとこまで行かせたかった見たいやけどね―――……」
最後にわざとらしくポツリと呟いてみせるばあちゃん。
チラチラとこちらに視線向けて、表情にも珍しく不安めいた陰を落としてるけど……これはフェイクや。
俺等がその言葉に飛び付くんを待ってるんや!
その言い方から、多分すっげーややこしい奴等が背後にいそうやけど、それ知ったら俺等も巻き込まれるんや。
だがら俺は、聞こえんフリをした。
チラリと利伽の方を見ても、シレッと聞き流す構えや。
利伽も同じ意見みたいやった。
反応を見せへん俺等に、ばあちゃんは小さく溜め息をついて話を続けた。
「日本だけで言ーても―――今度あんな崩壊現象が起きたら―――とてもやないけど国として保ってられへんやろな―――。元々そーならんように―――うち達“竜洞会”は四苦八苦してきたんやけどな―――」
「……竜洞会?」「竜洞会って何なん?」
俺と利伽が同時にばあちゃんへ問う。
流石にここまでハッキリと気になるワードを口にされたら、悔しいけど聞かなしゃーない。
俺等の問いに、ばあちゃんは嬉しそうに口角を吊り上げた。
「竜洞会っちゅーんは―――日本での地脈接続師が作った集団の名称やで―――」
そんな胡散臭い名称の団体、初めて聞いたわ。
利伽を見ても、首を左右に振ってる。
「秘密結社やからな―――あんた等が知らんでもしゃーないで―――。でも世界中で―――こーゆー組織は幾つもあるんやで―――」
コネクターの所属するような組織が、日本だけやなくて世界中にあるっちゅー事には驚いた。
暗躍してる秘密の組織が世界中にあるっちゅーのに、よくもまあ都市伝説にさえその名前が上がらんこっちゃ。
「じゃあ、その竜洞会っちゅーんは世界のバランスを取ってるっちゅー事なん?」
「そやで―――。世界のバランスを崩そうって組織から―――必死で守ってんねんで―――」
あ、やりおった!
ばあちゃんは、利伽の問いかけに余計な言葉を入れて答えおった。
そこまで明言されたら、スルーするなんて出来へんやん。
「……その、対立組織っちゅーのは……世界の秩序を乱す事が目的の組織なん?」
「少し違うな―――。“聖洞の清き力を解放して―――世界に真の繁栄をもたらす会”―――略して“聖洞会”の建前は―――その名前の通りやからな―――」
略称「聖洞会」。竜洞会に対立していると思われるその組織とは……?




