イベントは大切にしましょう。
「ここです、ここのケーキ屋です!おいしいんですよ、ここ。知ってましたか?」
「いや、はじめてだよ。」
ただのゲーマーがケーキ屋なんて知っているはずがない。逆に驚くのは神春がここを知ってたことのほうだ。神春には失礼だが、正直友達の少ない彼女がこんな店にくることはほぼないだろうに。いや、いざというときのために調べていたのだろうか。
「いらっしゃいませ。」
店内には甘い香りが漂っており、意外と甘党の僕は食欲がそそられるのだが、一方で客は若い女の子たちがほとんどでなんとも居心地が悪い。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
入って早々店員さんにそう聞かれるがたくさんあって何を頼めばいいのか分からない。
「私はいちごのショートケーキをお願いします。」
「え~っと僕は・・・春の特性モンブランをお願いします。」
早く選ばなければいけないとあせって目に付いたものを注文したが春の特性とはいったいなんなのだろう。
「いちごのショートケーキに春の特性モンブランですね。少々お待ちください。」
5分ぐらい待つとケーキが運ばれてきた。
「うわー、大庭くんの大きいね。」
そう、それは想像以上に大きかった。大きさにして通常の約2.5倍ぐらいだろうか。特性と書いていたのでゴージャスなのだろうとは思っていたがまさかここまでとは。
「うん、おいしい~。」
彼女のいかにも幸福な笑顔に少し胸がどきんとしたのは気のせいだろう。
「じゃあ、僕もいただきます。」
これだけの量なのでさっさと食べてしまわなけれならない。僕はモンブランを口に含んだ。
「おいしい!すごくおいしいよ。」
今までにケーキは誕生日に何度か食べた事はあったが、これは今までで一番おいしい。僕の手はどんどん進みあっというまになくなった。
「ご来店ありがとうございました。」
二人とも食べ終えて僕たちは店を出た。
「神春さんは駅の方だよね。」
「はい、それではまた明日。」
「あ、ちょっと待って。」
別れの挨拶を言って帰ろうとする神春さんを呼び止めるときょとんとした顔でこちらに振り向いた。
「その、メアド交換しない。ほら友達だし。」
「はい、そうですね。」
そして僕らはメアドを交換したが、ひそかに初めての女子のメアドを喜んでいたのは気のせいだ。