日曜日のデート
6月19日日曜日、場所は隣の駅にある大きなショッピングセンター「とこもっこ」の中の服屋。右手を握るのは妹の夢葉、左手を握るのは同じクラスの新田さん。どうしてこんなことになったのか。その経緯を説明するとしよう。
日が照って少し暑いぐらいの中、「とこもっこ」の噴水広場のベンチに夢葉と腰掛けていた。夢葉は僕が買ってあげたチョコバナナクレープをおいしそうに頬張っている。
そう、僕たちはこの前に夢葉を長らく待たせてしまったお詫びとして「デート」をしているのだ。(25話参照)
ピンク色のワンピースを身につけ、クレープのチョコを頬に付ける様子はわが妹ながら可愛いと思う。妹なので恋愛感情を抱くことはもちろんないが、時々こちらを向いて嬉しそうに笑ってくる顔を見るとドキッとしてしまうほどだった。
ただ、このベンチでクレープを食べさせているのは「デート」の一環ではあるが、もう一つの用件を兼ねている。時間的にはもうそろそろのはずなんだが。
「ごめーん、待った?」
走りながらこちらに向かってくるのは新田。そう夢葉との「デート」と同時に新田との例のショッピングを兼ねていたのだ。(24話参照)同じ日に2人からの用事が重なったので同時にこなすことにした。
夢葉との「デート」も名前はデートだが実際はただのショッピングだろうし、新田もただのショッピングなら1人増えても構わないだろうし、女子がいたほうが気が楽なのではないかと考えてのことなのだが。
「お兄ちゃん。今日はデートだよね。これはどういうことかな?」
「それはこっちのセリフよ。今日は私と2人だけのショッピングのはずなのにどうしてかな?」
「お兄ちゃん!!」
「大庭!!」
2人はこちらを恐ろしい目つきで睨んでくる。夢葉はともかく新田はただのショッピングのはずなのにどうしてメンバーが1人増えたぐらいでそんなに怒るのだろうか。
「その、2人に今日付き合って欲しいって言われたから同時にすればいいかなと。」
「はいはーい、質問があります。どうして彼女でもないその女と2人だけでショッピングとかいう話しになっているのですか?」
「はいはーい、質問があります。どうして妹のその子とデートとかいう話しになっているのですか?」
夢葉が手を挙げて質問したかと思えば、新田も負けじと同じく手を挙げて質問をする。直後2人は数秒間睨み合って、プイと同時に顔を背ける。喧嘩をしているのにこういうところは気があっているのだから面白い。
ともあれ、2人が何を喧嘩しているのかすら不明なのだが、こんな2人を僕が引っ張っていくしかない。
「ほら行くぞ。」
僕が先にショッピングセンターの中に入っていくと2人も慌ててついてきた。
ショッピングセンターの中には服屋、本屋、雑貨屋、スーパー、電気屋と様々な種類の店が入っている。まず、始めに服屋に行こうという新田の提案で2階の服屋「よぞら」に向かっていた。
「お兄ちゃん。」
右を歩く夢葉が急に僕の右手を取り、手を繋いだ。夢葉は勝ち誇ったかのような顔で新田のほうを見る。
「むっ。」
新田はそんな夢葉に怒ったようだ。彼女も右手を伸ばして僕の左手を取ろうとするが後もう少しのところで手は止まる。見ると彼女の顔は真っ赤になっている。
「おいおい、夢葉に付き合わなくてもいいんだぞ。嫌なことは無理にしなくても。」
「無理にじゃ・・・・ないもん」
彼女は心を決めたらしく僕の左手を遂に握った。
「むっ。」
夢葉は顔を真っ赤にして俯いている新田を睨んだ。
さて、というわけで今現在、服屋「よぞら」の中でも手を繋いで女物の服を2人と一緒に眺めているのだが、下手をすると2人一緒にデートをするハーレム野朗にも見られかねない。今更2人同時にショッピングに付き合おうとしたことを後悔する。
「ねぇこれはどう?」
気になったのがあったらしく夢葉は繋いでいた手を離し1着の服を見せてくる。それはクマの刺繍の入った黒のTシャツと白のスカートだった。
「いいんじゃないか。夢葉の着ているところを見てみたいよ。」
「分かった。」
夢葉は照れくさそうにしながら、急いで試着室に入っていく。
「なあ、大庭。これはどうかな?」
また夢葉を褒めたのが気に入らなかったのか負けじと新田も一着の服を取る。花柄の入った白い服にキュロットだ。
「いいんじゃないか。新田の着ているところを見てみたいよ。」
「さっきの妹さんと同じコメントじゃない。」
まったく注文の多い奴らだ。一体何が気に食わないというのだろう。
「まあ、いいわ。着替えてくるね。」
彼女も試着室へと入っていった。
待つこと1分ほど。さっきまでは女子2人がいたから僕がこの女物のところにいても問題は無かったのだが、1人になると居心地が悪い。たまに浴びせられる視線に落ち着かないでいると・・・・
1、2人を置いて静かに家に帰る。
2、夢葉の試着室に入る。
3、新田の試着室に入る。
来ました!恒例の選択肢。しかも今回のもどれを選んでも厳しいではないか。
期末があってしばらく書かないかもと書いたはずなのにいきなり31話書きました。
ここまでちょっとゆっくり進みすぎたのでもう少し展開を早くしていこうかなと思い、本来はパーティーの話をいれてもよかったのですが、省略しました。
さて、最後の選択肢。1から3のどれを選んでも一応後の展開は考えていますが、どれにするかは決まっていない状態で。どれにするか募集したいところですが、したところで集まらないんでやめときます。(笑)




