正体不明のうさぎが現れた。どうしますか。
ピ、ピ、ピ、ピピピピーー
今日もうるさく目覚ましがなってまだまだ眠たいながらも布団からぬけだす。カーテンを開けるとまぶしい太陽の光が入ってきて部屋の中は急に明るくなる。
あれから昨日は夜3時ぐらいまでこのゲームについて研究していたが特に進展はなかった。いや、一つ分かったのはどうがんばってもこのゲームをやめることができないということだ。画面上のどこを探しても終了ボタンはないし、ゲームごと潰そうかとも考えたが買ってきたもとのゲーム自体跡形もなく消え去っていた。
とりあえず何も分からないものにあれこれ考えるのは時間の無駄と察したのでこのゲームをやり続けることにしたが、3時までやって流石に眠たい。必死に欠伸をこらえながら家をでたところで画面が切り替わった。
『バトル発生!後ろから敵の襲来、捕まらないように学校までつけ。』
その表示の後、それがCGなのかもはや見当のつかないうさぎのような形をした真っ黒で奇妙な怪物が現れた。
「……ぎゃーーー。」
数秒にして自分の置かれた状況を理解した。その直後兎の怪物は何かにプログラムされているかのように僕に向かってきた。
僕はなりふり構わず、自分の持つ全力をだしその場から逃げ出した。
あれから10分ぐらい走り続けた僕は細いわき道で身を潜めていた。
「やべえなぁ、遅刻するぞ。」
時間は8時18分で始業が8時30分。あいつから逃げ回っていたせいでだいぶ遠回りをしたのだ。ここから走って学校まで10分ほど。逃げる事を考えれば遅刻せずに学校に着くのは相当きびしかった。
どうする?このままここにいても埒があかない。息が整ったらまた走り出そうか。
「あれえ~大庭さんじゃないですかぁ。どうしたんですか?」
そうこう考えているといつのまにか僕と同じ2年の北条琉璃が目の前にいた。
なぜかよく僕の前に突然現れる奴だ。どうしてこいつはこうも神出鬼没なのだろうか。いまの僕にはあの怪物よりこっちの怪物のほうが恐ろしく見えてしまう。
「その・・・だな。ちょっと追われてるんだ。いきなりで悪いが助けてくれないか。」
あまり時間もないのでそれだけ伝える。
「本当にいきなりですね。まあいいです。なんで追われてるかは知りませんがうけてあげようではありませんか。」
おお、こっちの怪物が仲間になってくれるとはなんとも心強い。これなら遅刻回避も夢ではない。
「で、敵はどれですか?そいつから逃げればいいんですよね。」
「その…お前には見えないって言うか…。」
「なんですか、それ。からかってるんですか?」
当然の反応かもしれないし、助けてもらうところ悪いが見えない敵としかいいようがない。
「いや、決してそうではないのだぞ。うん。」
うまいいい訳も思いつかずとりあえず誤魔化した。
「まあ、いいですよ。そういうのなら信じましょう。じゃあ近づいてきたならいってくださいよ。」
なんと人がいいのだろう。この借りはまたいつか返さなければいけない。
「それでは私についてきてください。いきますよ。3,2,1ゴーー。」
北条のその合図とともに僕たちは走り出した。50m走ったところで後ろをふりむいたがやつらはまだおってきていない。
「よしっ、今のうちに進むぞ。」
しかしそこから少し進んだところにある交差点で学校への近道をしようと右の道に行こうとすると北条はそれを手で制した。
「待ってください。その道は待ち伏せされている可能性が高いうえにいざというときの逃げ場所に困ります。こちらから行きましょう。」
なるほど、ごもっともな意見だ。北条の助言の通り僕たちはその交差点を左に進んだ。僕の前に突然現れるときもこうして考えているのだろうか。彼女が僕の前にいきなり現れる理由の一端が見えた気がした。
その道は北条の予想通りやつらはいなかった。残り時間は4分、後は100メートルの一直線を進むだけ。この調子なら遅刻せずに間に合いそうだ。
一瞬、安堵しかけたそのときふと後ろを振り返るとやつらはいた。
「おい、やつらが来ている。逃げるぞ!」
「じゃあ、全力ダッシュしてください。あとはまっすぐだけですから。」
「うおおおおおーー。」
僕は彼女にいわれるがままに全力で走った。そう、前も見ず、ただひたすらに。
『ごーんっ』
僕はおもいっきり電信柱に頭をぶつけた。
その後はいうまでもないかもしれない。僕のHPは奴らに襲われ半分以上減っていた。
もっとも、頭にきた実際のダメージのほうがよっぽど痛かったのだが。