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現実ゲーム  作者: フリー88
生徒会長選挙編
24/43

はい、チーズ

 僕は5時間目の授業を使い、選挙の公約についてまとめていた。結論は1番の公約に球技大会の実施はいいとして、他の公約は新装検査の緩和を除いた、焼きそばパンについて、目安箱の設置にした。新装検査の緩和を除いたのは風紀が下がって逆に反感を買うと思ったからだ。


 放課後になった。実際の活動は明日からになるが今日準備すべきことはたくさんある。だが、石動だけでなく新田が手伝ってくれるらしいので心強い。

 まず始めにチラシ作りだ。コピーする前の原本を作ろうと僕たち以外誰もいなくなった教室で僕が公約3つを紙に書いているところだ。

「これでどうかな?」

一応できあがった奴をみんなに見せてみる。僕てきにはバランス良く書けたつもりだ。

「全然だめだわ。字は汚いし、ここの部分なんか右にいくにつれて文字が下に下がっていってるじゃない。書き直しよ!」

厳しいご指摘だ。その後2回ほど書き直し斜めっているのは改善できたが、字の汚さはどうしようもない。

「う~ん、私が書いてみるわ。」

僕の字にやはり不満を持つ新田は白紙を1枚手に取り公約を書き始めた。

「どうよ!」

 書き終わったのをどや顔で見せ付けてくる。確かに僕よりはきれいなのかもしれないが正直特別きれいというわけでもなかった。

「まぁいいんじゃねえか?」

「なによ、不満そうね。」

渋々の感じで了承した僕に新田は怒ってそう言う。たいしてきれいともいえない字に不満がないといったら嘘になるが、このメンバーできれさを追求しても仕方がない。そう考えての結論だった。


「なんだか寂しいチラシだな。」

 これまで自分にはやることがないと一人でスマホをいじっていた石動だったが、チラシの原本ができたとみて観想を言った。

 そして、この感想は僕も心の片隅で思っていたことだ。何かが足りないと。

「う~ん・・・・。」

3人で考え始めて30秒、パッと足りないものが何なのかひらめいた。

『写真!』

僕たち3人がそれを思いついたのはほぼ同時だったようだ。僕たちの声は見事に重なり合った。思いついてみればなぜこれを忘れていたのか不思議なほどだった。選挙のチラシで、立候者の顔が分からなければ効果は半減ではないか。気づいてよかったと思いつつも僕たちの頑張りが完全に水の泡になってしまったことに脱力感を覚えずにはいられなかった。


 場所は移って中庭に。ここで写真を撮ろうと言ったのは新田の案だ。僕が出した屋上は校則違反なので逆に悪い印象を与えると言う事で即却下。石動の出した校庭で撮るのとで迷ったが人が少ない中庭の方が写真を撮るにはいいということで新田の案が採用された。

「じゃあこの辺でいいかな。そこに立っててね。」

 中庭にある1本の桜の木(もちろん今は咲いていない)の下に僕を立たせて、新田がデジタルカメラを構える。なぜ新田がカメラを持っているかというと写真同好会に属しているからだ。何かあったときにはすぐに撮れるように常に常備しているらしい。


「じゃあ、いきます。はいチーズ。」

『カシャッ』

「ちょっと、なんでピースするの?チラシに使うんだから真面目な写真だよ。」

あっ、「はいチーズ」と言われたので思わずピースサインをしてしまった。昔からの癖だ。

「はいチーズとか言う新田が悪い。」

「へぇー逆切れですか。もう撮るのやめよっかなー。」

わざとらしく彼女はそう言う。

「すみませんでした。僕がすべて悪いです。お願いですから撮ってください。」

ここでやめられてはまずい。何としてでも阻止するべくプライドなどすべて捨てて土下座で頼み込んだ。


 さあ、気を取り直して写真撮影の再開だ。

「今度こそちゃんとしてよね、はいチーズ。」

「えっえーと・・・・。」

『カシャッ』

カメラのシャッター音が響いたとき僕の右手は・・・・ピースサインをしていた。し、しまった!どれだけ注意しても昔からの癖はなおらない。

「ちょっと、やる気あるの?」

新田は怒りを通り越してあきれていた。

「お前ほんとに馬鹿だな。」

さらにもう一人からもあきれられて言われるがお前だけには言われたくなかった、石動!

「ほんとにやめていい?」

1度目の「もう撮るのやめよっかなー。」は冗談ぎみだったが今回はまじだ。

「本当にすいません。何でもしますから撮ってください。」

もう最後の手段、何でもする発言。これに勝るものはないが逆にいえば後で何をされることやら。


「へえ~本当に何でもするんだ。じゃあー今度の日曜日ショッピングに行こ。買いたいものがあるの。」

あれ?意外にもあっさりしたものだ。というよりそんなショッピング、僕となんかでいいのだろうか。

「一生御奉仕しろとか言うのかと思った。」

てっきりそれに類似するものだと予想していたのだが。

「どんだけ私は極悪なのよ!とにかく時間とかはまた連絡するから絶対よ!」

「ああ、分かった。」

「ところで、もちろん俺も誘ってくれるよな。」

いかにも一緒にきたそうにする石動。よほど女の子とどこかに行きたいのだろう。

「なにいってんの。誘うはずないじゃない。」

あたかも当然という風にきっぱりと断る新田。もう石動がかわいそうになってくる。

 

 さて、3回目の撮影。またまたピースをしてしまう・・・・と期待したかもしれないがそうはいかない。僕にだって学習能力はある。今度こそはうまくいった。そう思って確認すると今度は目をつぶっていた。結局いい写真が取れたのは6回目だった。

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