このゲームは一体何なのですか。
「あなたはなにものですか?」
僕は彼女に尋ねた。
「そうねえ、ここで天童莉亜と答えるのは反則かな。」
あまり答えたくないのか苦笑いをしながらそういってくるが、僕は現実ゲームにおいて彼女がなにものかを聞いているのに、すでに僕に紹介した名前をいわれても意味がない。
「もちろんです。」
だから当然こう答えるとしょうがない、といった感じで話し始めた。
「じゃあ、言わせてもらうね。私の名前はp39、呼ぶときは39とでも呼んでね。」
はじめに実際の自分の名前を言ったがそれは名前というのには程遠いものだった。いや、事実いうならば組織内で呼ばれているただのコードてきなものなのかもしれない。
「いえ、今までどおり天童先輩と呼ばせていただきます。」
なぜなら彼女のことを39と呼んでしまうとそれこそ商品のようになって彼女が人間でなくなってしまう気がしたから。
「その番号はいったい何の番号なんだ?」
「ただの処理番号です。プレイヤー様によって作られた私たちコンピューターの。」
思ったとおり処理番号だったが最後に言ったことの意味が分からない。コンピューター?そんなはずはない。どっからどう見たって人間ではないか。
「まったく理解できていないみたいですね。それでは順に説明します。まずこのゲームをやっているのはあなたのように見えて実は別人。ここではプレイヤーとしておきます。これはいいですか?」
はじめの時点で理解できない。こうして僕がやっているではないか。現に今目の前にもあのゲーム画面が出ている。
「もしあなたを例えるならゲームの中の主人公。あなたがやっているゲームだって主人公は自分の意志で動いていると思っていますが実際はあなたが動かしているじゃないですか。」
前にもまったく同じことを北条が言っていた。だがそのときも良く分からなかった。結局プレイヤーはどのように僕を動かしているのだ。北条は選択肢とか言っていたが。
天童先輩は続けて説明をする。
「そしてプレイヤーは選択肢やバトルなどによってあなたを動かしている。まあ、逆に言えば今こうして話しているのはあなたの意思といえます。」
「ちょっと待て。選択肢を選ぶときはすべて僕の意思じゃなかったというのか。」
「はい。プレイヤーはそんなこともできるかたなのです。」
ここまできたら理解できないとかはいってられないのかもしれない。どんなに非科学的で理不尽なことがあっても信じるしかないのだ。
僕はさっきの説明を聞いてここ数日間やっていたことに疑問が生じた。
「じゃあ、北条の言っていたプレイヤーに抗うとはどういうことだ?」
選択肢が自分の意思で選んでいないとするならば選択肢で意外なものを選んでも抗う事にはならない。それならばどのようにしてプレイヤーに抗えというのだろう。
「q72がそんな事をいったのですか。」
どうやらそんな事は初耳だったようだ。ところでq72とはおそらく北条のことを指しているのだろう。
「私にも真理は分かりかねます。q72はいったい何の情報を掴んでいるのでしょうか。」
どうやらこいつらどうしでの情報のやりとりとかはなく、あくまでプレイヤーに言われたことをやるだけのようだ。
「で、そのプレイヤーはだれなんだ?その目的は。」
「誰かは教える事はできませんが目的なら分かるのではないですか?あなたといっしょなので。」
なるほど確かにそうだ。ゲームをやる理由なんて決まっている。つまり楽しいからやる。あるいは楽しむためにやるということだ。
「それではこの辺で今日は失礼します。そうそう私は超方向音痴ですから。」
それだけいうとどこかに消え去った。上空にいったような気もしたが上を見上げてもあるのは雲ひとつない空とぎらぎら輝く太陽だけだ。もしかしたら今日と同じくマンホールの中にいったのかもしれない。そう思ってマンホールのふたを開けるがなにもない。
時刻は9時50分ちょうど。このまま行くと3時間目が始まるまでには着きそうだ。そういえば彼女が最後に言った超方向音痴とはどういうことだろう。もし困った事があって、あの辺を歩いていたら出会えるかもしれないということなのだろう。また彼女に会えると分かり僕の顔には笑みが浮かんだ。
学校に着くと2時間目が終わったところ。今度は特にいい訳もできなかったのでみっちり怒られたことはいうまでもない。




