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東の主婦が最強  作者: くりはら檸檬・蜂須賀こぐま
第5章 迷宮の主婦
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エピローグのアイテム選び

 「うわあ! これ,黄金のスカラベだ!」

 大量に積み上げられ,山となったアイテムの一つを昆虫博士ユータが拾い上げた.

 財宝の最も多くを占めるのは,彼が今持っている甲虫型の黄金の塊である.

 

 「スカラベってなあに?」

 シノノメはユータに尋ねた.

 「フンコロガシだよ」

 「……それあげるね」

 「これ,カブトムシの甲殻で出来た鎧だ!」

 カズマがはしゃぐ.

 「……それもあげるね」

 「この虫の脚の形の刀は? あと,団子虫の盾も貰っていいんですか?」

 コーセイが訊く.

 「……あげる,っていうか,虫グッズとお金はみんなあげる! またいつか,マグナ・スフィアに戻って来た時に三人で遊ぶのに使って!」

 「うわぁ! ありがとうございます!」

 三人は飛び上がって喜ぶと,声をそろえてお礼を言った.


 グリシャムとアイエルは二人で珍しいアイテムを物色していた.

 花の蜜の回復ポーション.

 瓶以外何でも溶かす虫の酸.

 つけると短距離だが空が飛べる,甲虫の羽根のケープ.

 遠くが見えるトンボの目のメガネ.

 糸でぶら下がれる蓑虫の寝袋(ドラ○もんか).

 虫の特性を持った,不思議な道具がたくさんある.


 「あ,シノノメさん,これはどうですか?」

 グリシャムが拾い上げたのは,カブトムシの形をした笛だった.

 「これ,虫呼びの笛です.すごいレアアイテム.呼ぶとカブトムシたちがシノノメさんを助けてくれますよ」

 虫が大量に飛んでくるところを想像してシノノメは勢いよく首を振った.


 「このショールはいいんじゃないですか? シルクかな? 綺麗だな.大きいから結婚式のベールみたいだけど」

 アイエルが引っ張り出して来たのは薄い布だった.縁が丁寧にかがってあり,小さなボンボンがたくさんついている.

 

 薄緑色の半透明で,光沢があり美しい.天蚕と呼ばれるヤママユの絹糸を使っているようだ.

 着物にも合いそうだったので,シノノメは受け取って被ってみた.

 「あ,花嫁さんみたい!」

 グリシャムが褒めたので,シノノメはちょっと赤くなった.

 「て,言うか,透けてる?」

 被ったシノノメの姿が消えている.科学的に言えば,一種の光学迷彩のようなものらしい.

 「ははあ,リバーシブルで,ひっくり返すと普通のショールになるんだ! じゃあ,私はこれをもらうね!」

 こうして,アイテム‘透明肩掛け’をシノノメは手に入れた.



 「しかし,シノノメ,結局レベルはいくつになったんだ? ……これで本当にクリアしたことになるんだろうか?」

 セキシュウが訊いた.

 彼はアイテムにあまり興味がなかった.

 大したダメージがあったわけではないのだが,岩に腰掛けて蟲の回復ポーション‘露御野竜施莉威ろーやるぜりい’とやらを貰って健康ドリンクのように飲んでいた.滝と池,綺麗な風景を眺めながら一休み,というところだ.


 シノノメはラストボスを倒したという意味では,ユルピルパをクリアしたと言えないことはない.しかし,実際に戦ったのは二十五層のうちたったの三階層にすぎないのである.

 何せ,シノノメは迷宮ごと吹き飛ばしてしまったのだ.

 本当に全階層通して制覇していれば,九十二から九十五へのアップは間違いないはずだった.


 「うーん,そう言えばそうだね,見てみるね」

 シノノメはステイタスウィンドウを立ち上げた.


 シノノメ.

 職業ジョブ主婦.

 レベル94.2


 「何だ? 端数がついたレベルなんて初めて見たぞ」

 「本当だ,運営の人がきっとすごく困ってつけたのかな」

 「……で,でも,これもアリだと思います」

 皆に爆笑され,シノノメは真っ赤になった.


 なお,ユルピルパ跡に出来たクレーターは後に湖となり,東雲湖しののめこと呼ばれるようになった.

 だが,それはまた別の物語である.


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