プロローグ 強欲の塔
第五章が始まります.
続けて読んで頂いている方,ありがとうございます.
強欲の塔――タワー・オブ・グリードは,雷鳴轟く雨雲を突きぬけ天に繋がっているという.
第百層目に到達した者は,全ての望みが叶うと言われているが,確かめた者はいない.
第五十六層目で,その戦いは繰り広げられていた.
上下左右機械で埋め尽くされた回廊に,粒子ビームの光跡が飛び交う.
時折それは彼に命中するが,彼には効かない.
得られた装備のほとんどをその暗黒の装甲に変えたため,防御力はほぼ無敵である.
固形弾での攻撃がわずかに有効だ.
最強の防御力を生かし,敵に突撃して殲滅する.
手持ちの武器は光剣.杖程の棒の両端から赤い光の剣が突きだした超接近戦兵器である.
今日は五体の機械人を両断した.
スクラップとなった機械人間の体を踏み越え,蹂躙して彼は進む.
ふと,目元のウィンドウが立ちあがり,警告を告げる.
――電子戦兵器による干渉あり――
白兵戦では敵わないと考えた敵が,電子頭脳にハッキングをしかけているのだ.
敵は天井のダクトか,近くの空き部屋に潜んでいる.
関係ない.
彼は,全身のミサイルポッドを展開した.
全方位攻撃!
数百のミサイルが彼を中心に放出される.
敵の亡骸に誘爆しても,自分が激しい爆風にさらされても,何も感じない.
無敵の装甲とともに,皮膚表面の知覚すら捨て去ったから.
壁が崩れ,塔の外壁に穴が開く.
瓦礫となった天井の一部とともに敵は崩れ落ちてきた.
電子戦用に改造された機械人だ.
頭の半分が吹き飛ばされている.
彼はその頭を踏みつぶす.
「お前……その装甲に,装備……こんなの,チートなんてもんじゃねぇ……悪魔だ」
彼は断末魔の声を気にもかけず,前に進む.
次は五十七階層だ.
彼の目的はただ一つ.
彼女にもう一度会うこと.
狂おしい衝動を胸に,彼は進む.