3滴目
7月3日〜8:32〜
「______はい、はい、ごめん、今日有給使って休むわ。ごめんな」
平謝りをして、受話器を元に戻す。実際、仕事が始まる前に電話出来たし、どうってことない。問題なのはツイナの方だった。食うだけサンドイッチを平らげた後、クーカーと寝てしまった。俺が怪しいオジさんだったら、襲われてるぞ?と、ツイナに問いかける。よく見ると、ツイナの睫毛はとても長く、顔立ちもハッキリしていてた。大人になれば、良い女性になるかもしれないな。などと考えながら、洗面所に向かう。ワンピースに付いた血を洗い流すためだ。
ジャブジャブと冷水で洗っていると、ツイナから呻き声が聞こえた。裏路地で聞いたものと酷似していたので、保暖庫から軽いツマミを取り出してからベットへ向かうと。
「アッ、くうぅ。ま、まだダメっ……だからっ……」
ツイナがとても苦しそうにもがいていた。
「おい!どうした!」
みると、俺の貸したTシャツの肩の部分には大きな血の痕があった。
「またどっか出血したのか!?」
「うっ……くっう……」
苦しんで嗚咽を漏らしている。仕方なくTシャツ首の方から生地を無理矢理引っ張り、状況を確認した。
「な……なんなんだよこれ」
そこには、さっきの痣とは明らかに異なる、まるで紋章のようなマークが付いていた。紋章の周りからは、耐えられなくなった水道管のように血が吹き出していて、とても痛々しかった。
「っっっっっっっっ!!!」
大きくツイナがビクンと身体を反らせると、先程のような呻き声は発さなかった。しかし、そこにある恍惚とし、汗だくの顔はとても苦しそうだった。ハァハァと息を切らし、何かと戦った後のような疲れ切った雰囲気を漂わせた。
※※※
ツイナが目を覚ました。
「おう、もう落ち着いたか?」
「ごめんなさい、あたしまた暴れてた?」
「いや、暴れてはなかったけどよ……。どうして血が出るんだよ、それに肩のソレはなんなんだよ!」
ツイナは俯いて、答えようとしない。
「どうしてだよ、俺に力になれることがあれば治すことも出来るかもしれないぞ!」
「今は……言えないの」
気まずそうな顔を此方に向ける。いや、別に怒ってるわけではないのだが。という顔で返す。そこから暫く沈黙が続いてしまった。このままでも埒が明かないので、一つ提案をした。
「そうだ、ツイナ。俺の研究室に行かないか?面白い物が見れるぞ?」
躊躇ったようにも見えたが、案外快く返事をしてくれた。その後、俺たち2人は、職場へと足を運んだ。