2滴目
7月3日〜7:52〜
「よいっ……しょっと!」
倒れたまま意識を失ってしまった少女を、なんとか家に運び終えた。まだ幼かったとはいえ、身体は華奢とは言えず、意外にもしっかりしていた。
さすがに、このままではマズイと思ったが、ここで下手に着替えさせて事件沙汰になるも避けたかった。けれど、血のついた服を来させたままのも、いかがなるものかとも思った。みたところ怪我もしてなさそうだし、新たな出血もなさそうだった。しかし……。仕事にも行かなければならないし、躊躇ってる暇などなかった。
「えーい、ままよ!」
と言って少女の腕を伸ばし、ワンピースを一気に脱がせた。
「ううっ……」
一瞬呻き声を上げたが、目覚める様子はなかった。少女は幸いにも下着を来ていたので、どうにか済んだ。俺の使い古しの大きなTシャツを代わりに着させ、ワンピース代わりにすることにした。箪笥の奥からクジラのシルエットのTシャツを持ってくると、少女は寝返りをしていた。動けることに一安心した俺は、そのまま着させようとした。その時、少女の肩の裏が露わになっていた。恐らく、普通の少女なら(普通の少女とあまり接したことがないので分からないが)無いと思われる小さな痣があった。もしかすると、少女は虐待から逃げてここまで来たのかもしれない。などと、いろんな事を模索していると、少女の目がパチクリと開いた。
「さっきのお兄さん……助けてくれたの?……ありが」
言い終わらないうちに少女は自分の身体を見渡した。勿論、ほぼ全裸である。
「きゃあああああ!エッチ!変態!そーゆー目的で連れ込んだのね!」
「違うって!本当に!」
「どーせスケベな事しか頭にないんだ!」
「服が汚れてたから!着替えさせようと!」
話が受け入れてもらえず、二分位少女の一方的な攻撃が続いた。近くにあるものを手当たり次第投げて来た。しかしその攻撃は少女が白いワンピースを手にとったと同時に終止符が打たれた。
「本当に、着替えさせてくれようとしただけ?」
「そうだって言ってるじゃん!」
「ごめんなさい。こんなになってるなんて思ってなかったから」
血塗れのそれを持ちながら少女は言った。
「やっと、落ち着いた。お腹減ってるんでしょ?サンドイッチ用意したから適当に食べて。珈琲飲める?ジュース無いから、飲めないなら水になるけど」
「あ、りがとう」
言い終わる頃には一口目が、運び込まれていた。シャキッと音をたてながら、美味しそうに食べている。ソースでテカっているハムも一口で消えてしまった。具材を挟むパンズは少女の手の形に変わってしまう程強く握られていた。
「これ美味しい!これあなたが作ったの!?」
「そうだよ。作るのは全然難しくないぞ。あと、俺の名前は慎太郎だ」
「ありがとうシンタロー!あたしはツイナ!」
お礼を言い終わると、次は珈琲を勢いよく口に注いだ。どうも珈琲と言うものを知らないらしく、ンベーと下を出している
「シンタロー!これは飲み物なの?苦いよ!」
「そういう飲み物なんだよ。待ってろ。水を持ってくる」
少女に夢中で、この時まで俺は大事な事を忘れていた。
「あっ……あああああああああ!」
「どうした、シンタロー」
「仕事忘れてたああああああ」