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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
古龍の森

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85/104

古龍は鷹揚に許可する

昨日更新するのを忘れていました。

なんなら先週もサブタイトルの統一性を無視していました。


すみません。

 好き勝手やっていた二人だが、やっと協力するようだ。


 俺としてはさっさと目的を達成したいので、こんな下らないことで時間を使いたくはないのだが。


「ゆくぞ、ゴーレムパレードじゃ!」


 ネオンが意気揚々と告げて大きく虚空からなにかを引っ張り出す。引っ張り出されたモノ達がずずんと重々しい音を立てて地を足で踏み締めた。彼女が取り出したのは総勢十体のゴーレム達だ。さっき出していた三十何号君は五メートルくらいあったが、それ以上のヤツもいる。最大が十メートルとかなり大きいが最小は逆に三十センチ程度だ。どいつもこいつも岩を組み合わせて作ったような姿をしている。岩の色が違うのは区別と性能のせいか。


 ゴーレムを虚空から取り出すのに必要なスキルは『虚空収納』と言うらしい。きっちり『観察』させてもらった。道具なら道具袋で事足りるかもしれないが、道具と言えないモノは別の収納があった方がいい。


「片方は任せたのじゃ!」

「おう!」


 どうやら互いに協調性がなく初めて共闘する相手だからか、二対二で戦うのではなく一対一を二つ作る形で戦うようだ。まぁ元々が一人で突っ込んで二体を相手取るという構図だったのでそれよりは多少マシだろう。

 そもそも共闘すらできないのに二人で向かわせたのが間違いか。


 赤い仮面をつけた方へとネオンが引っ張り出したゴーレム達が殺到する。多少小回りの利く敵と同じくらいの大きさのゴーレム三体が囲むように前に出た。しかし相手の方が素早さが高いために巧くかわされゴーレムの一体が拳で背面まで貫かれてしまう。だが攻撃されたゴーレムががっしりと敵の獣を掴み、離れようとする前に他二体が片側ずつ手足を拘束した。かと思うと敵の身体を取り込むように形を変える。なるほど、拘束用のゴーレムだったようだ。

 そこに一番大きなゴーレムが拳を振り下ろす。ぺしゃんこになってもおかしくない一撃を、敵は頭突きだけで相殺どころか拳を打ち砕いてしまった。それから他五体のゴーレムが襲いかかってくる途中で拘束を力尽くで壊し迎撃する。


 ゴーレム達も強いのだろうが、残念ながら敵の方が基本性能が高いらしい。その間にナヴィが相手を倒すことが狙いだろうか、と思ったのだがナヴィはナヴィで青い仮面をつけた敵といい勝負を繰り広げている。一対一になったことで敵にも攻撃は当たっているが、ほぼ互角に近い。早々に決着はつかなさそうだ。


 そうこうしている内に、襲いかかっていた五体のゴーレムが全て粉砕されてしまう。残ったのは一番小さなゴーレムただ一体。


 敵がネオンへと視線を合わせ、歩み寄っていく。そこへ小さなゴーレムがとてとてと駆け寄り、足に殴りつけていたが一切効いていない様子だ。一瞥して軽く蹴飛ばし、そのままネオンへと歩みを進める――その途中で。


「ッ――!!?」


 めき、という骨にダメージがいったとわかるほどの衝撃で、敵の身体が腹部からくの字に折れた。無様に転がり仮面の奥から血反吐を吐く敵を殴り飛ばしたのは、当然ナヴィではない。となると一人、いや一体しかいなかった。


 どん、と小さな身体で腰に手を当て仁王立ちするは、先程蹴飛ばされたゴーレムだ。


 傍から見ていたからわかったが、ゴーレムは蹴飛ばされた直後空中で華麗に体勢を立て直し着地と同時に地面を強く蹴ってそのままの勢いを使い殴りつけていた。いくら勢いをつけたと言っても敵に大きくダメージを与えるような一撃は出せないと思わせてからの奇襲。ネオンはにやりと笑って理由を語った。


「そのゴーレムは、そのゴーレムがいる内に他のゴーレムが倒されるほどステータスが上がっていくように創っておる。小さく愛らしい見た目とは裏腹に、一番最後に残してはいけないのじゃよ。抜かったな」


 なるほど、そういうことらしい。ゴーレムをよく見れば『屍を越えて』というスキルがある。所謂「俺の屍を越えていけ!」というやり取りを経た後はなんかよくわからんけど普段より力が出る、みたいなスキルなのだろう。


 血反吐を吐きながら、しかし敵は立ち上がった。小さなゴーレムを強敵と見て襲いかかるも、ひょいと軽くかわされて蹴りを食らわされ、完全に沈黙する。生きてはいるようだが意識を失ったようだ。

 このままゴーレムに加勢させれば勝ち――


「おらぁ!!」


 というところでナヴィが特大の『黒魔導』を纏わせて敵を思い切り殴りつけていた。


 『黒魔導』によって生み出された衝撃波が体内を滅茶苦茶に襲ったのだろう。相手は仮面の間から血を流し、ばたりと仰向けに倒れていく。そのまま動かなくなったが生きてはいるようだ。……いや、普通に黒魔人赤種の一撃食らっておいて死なないってタフすぎるだろ。


「ふむ。勝負ありのようだ」


 古龍は大して驚いた風もなく結果だけを告げた。


「どうだ、師匠!? オレの活躍見てたか!?」

「待て待て、わしのゴーレムの方が凄かったぞ」

「なんだと?」

「やってみるかの?」


 二人揃って得意気な顔をしたかと思えば、顔を突き合わせてばちばちと睨み合う。……やっぱ仲いいだろこいつら。


「……いや、最初不甲斐なかったしどっちもどっちだろ」

「「……っ!?」」


 率直な感想を口にすると、二人揃って落ち込んでしまった。だが俺の周りにいた大半のヤツもうんうんと頷いていたので第三者から見た時の客観的な評価にはなっていたのだろう。


「それで、次は誰が出る?」


 こういう時、仕切りに慣れているセレナが進めてくれるのは正直有り難い。先程代表、と言われて俺がなし崩し的いされてしまったが、本来の代表とは彼女のようなヤツのことを言うはずだ。このまま代わって欲しい。


「いや、もう必要ない」


 今度はせめて共闘できる組み合わせにしようかと思っていたところだったが、他でもない古龍が引き止めた。俺達は揃ってどういうことだと真意を問いかけるように巨大な古龍の頭を見上げる。


「どういうことでしょう」

「なに、簡単なことよ。先程戦いに出したサルガとデルガは我が森でも屈指の強さを誇る魔物。こやつらより強い者は――例外を除けば儂のみよ」


 セレナが丁寧に尋ね返すと、古龍は少し笑いを含んだ声で応えた。要は先の二体以上の戦力がないため、もうこれ以上の戦いをしても意味がないということか。……それなら最初から俺達の勝ちでいいじゃん。なんで試練とか言って戦わされたの。


「理由は至極単純。……汝らは世間一般において多種多様に過ぎる。故に、一部が不当な扱いを受けていないか見る必要があった」

「そのための共闘なのね。それで、結果はどうだったの?」


 クリアは古龍に対しても敬語を使わなかった。精霊からも崇められていそうなモノなんだが。


「問題ない。多少の諍いはあったが、概ね対等と見える。……それに、あのまま戦い儂が出て不用意に力を見せるのは良くないようだ」


 古龍の評価に、ほっと一息つくのも束の間。明らかに俺をちらりと見てつけ加えていた。ぼっち特有の「自分に声をかけてきたかと思ったら後ろにいるヤツだった」のパターンでもない。後ろに誰もいないし。……こいつ、俺の能力を暴いたのか? 暴かれても別に支障はないと思うんだが、底知れないなこの古龍。

 なんにせよ、これでこの古龍の森での滞在が認められる、ということでいいのだろうか。


「うむ。汝らの滞在を認めよう」


 古龍は俺の心の声に応えるように告げた。……心が読めるのか。厄介だな。いや、むしろ助かるかもしれない。だって声を出さなくても会話できるわけだろ? 超楽。


「助かります、古龍様」

「代わりと言ってはなんだが、もしこの森に災厄が訪れた時には対処に協力してくれぬか? 汝らにとっても、ここが危険に晒されるのは困るであろう?」

「それくらいなら構いません。どちらにしても、振りかかる火の粉は払いますので」

「うむ」


 古龍の追加提案を、セレナは相談もなしに請け負ってしまった。……まぁ反対意見が出なかったからいいんだけど。厄介事には巻き込まれないのが一番だが、もし巻き込まれてしまったら下手に逃げるよりその場で始末してしまった方がいい気もしている。後顧の憂いを断つ、と言うか。幸いにも偽物とはいえ俺の能力はかなり高くなっている。大抵の火の粉なら払えるだろうとは思っている。もちろん、油断や慢心だけはしないが。


「クレト。ではまず拠点の場所を決めよう」


 セレナは古龍から俺に向き直って提案した。確かに、生活する上で拠点は必要だ。


「……そうだな」


 俺は頷いてから、古龍へと顔を向ける。


「……木々の伐採をしたい。構わないか?」

「多少であれば構わんとも」


 これで一応の許しは得た。あまりにも酷かったら流石に警告されるだろう。ある程度目途がつくまで追い出されたくはないので、できる限り大人しくはしていたい。創るモノが創るモノなので多少の森林破壊はしてしまうだろうが。


「……なら、今日は拠点の場所を決めるところから始めるか」


 とりあえず、誰にともなく決定を下す。方針さえ決めれば後は適当にやってくれるだろうと思ってのことだ。


「森の中の拠点なら、やっぱり木造建築とか、ツリーハウスとかいいわよね」

「……ツリーハウス、憧れる。ハンモックもいい」

「やっぱり地下に研究施設が欲しいわね」


 方針が決まればやいのやいのと拠点について思いを馳せ始める。……いや、そんなに長く滞在するわけじゃないんだからそれなりの出来がいいんじゃないか? 凝ったモノを作ってもどうせしばらくしたら出立して別の場所に行くんだし。と思わないでもない。


「……クレト、ゆうぐほしい」

「遊具!」


 俺の両側で手を握っていたニアとミアが揃って言い出すので、そんなことも言っていられなくなった。


「……仕方ない。遊び場は作るか」

「……あそびば、つくる」

「おっきいの作る!」


 仕方ない、俺も持てる力の全てを使って遊び場を作るしかないな。


「もう、クレトったら二人には甘いんだから」


 メランティナがその後からついてくる。


「……とりあえず、森を回ってみようか。後でここ集合で」


 最後に一声だけかけて、バラバラに森の中を散策することになった。同じような目的を持った者は俺達のようにグループになって行動していたが、一部単独で回る者達もいる。まぁそこを縛る気はない。独りはいいモノだからな。


 それからニアとミアが気に入る遊び場になりそうな場所を探して歩き回っていたのだが、やはり森だけあって多少伐採して開けた場所を作る必要はありそうだった。木々を活かしたまま遊具にすることもできるのだが。ブランコとかは木を活かせる遊具の代表的なモノだと思う。切った木は有効活用すればいいわけだし。

 遊び場を作る場所の目星をつけて、メランティナの知恵を借り目印をつけておく。


「私達獣人にだけ使える道具だけど、匂いつけの札がいいと思う。札を貼った箇所から独特な匂いを発するお札なの。これを一定間隔で貼っていけば、匂いを辿って戻ってこれると思うよ」

「……そうか」


 間隔の目安は獣人の嗅覚によって異なるが、匂いがはっきりと感じ取れるくらいの距離がいいそうだ。風向きによって左右されやすいため多少流れても感じ取れるくらいの匂いだといいらしい。まぁその辺りは冒険者として経験豊富なメランティナに任せる他ない。そもそも俺は獣人じゃないし。

 帰りは二人共メランティナと手を繋いで歩いていた。そのため匂いつけの札とやらをメランティナの指示で貼りつけたのは俺ということになる。少し寂しいでもないが、一番はニアとミアのことなので仕方ないのである。


 古龍のいた場所へ戻ると、もう日が暮れていたからかほとんどが集まっていた。しかも肉や魚、野菜といった食糧を大量に積んで、である。


「……森の食糧を無作為に奪って古龍に注意されないか?」

「師匠、いくらオレがバカだからってんなことするわけねぇだろ」


 俺が尋ねると、ナヴィがやれやれといった風に応える。……妙にイラつく態度だな。というかバカの自覚はあったのか。


「ちゃんと古龍様の許可は取ってありますよ。肉や魚は古龍様の開いてくださった転移門、ゲートの先にあった別の地から獲ってきたモノです」

「……森内だけが縄張りで、他は関与しないってことか」

「身の丈以上に守護しようとはせんよ。分不相応の願いを抱いた者は破滅するのみ」


 古龍が俺達の会話に入ってきた。“古”龍と呼ばれているくらいだから、人間で言うところの老人に当たるのだろう。年老いて衰えることを考えればある程度規模を決めてしまった方が守りやすいのかもしれない。

 というかこの古龍もおそらく相当に強いのだが、それでも守り切れないようなヤツがこの世界には存在しているのだろうか。まぁメランティナもかなり強いがそれでも出回っているクエストですらクリアできないモノが存在しているらしい。世に出回っている依頼だけが全てではないだろうしな。


「とりあえず、ご飯にしましょうか。その間他の皆は拠点について話し合ってて」


 メランティナがやる気満々に腕捲りをして、どこからともなく取り出したエプロンを身に着ける。持ってきていた調理器具を準備して、山と積まれた食材達を吟味していた。おそらく今ある食材でどんな料理が作れるか考えているのだろう。

 夕食の献立は彼女に任せていれば間違いないので、俺は話し合いを眺めていようと思う。焚火を囲んでいる空いた場所に胡坐を掻いて座ると、ミアが俺の足の上に座った。ニアはメランティナを手伝うようだ。


「では、皆の意見を聞かせてもらおうか」


 こういう場合でもセレナが仕切ってくれるので非常に助かる。俺はミアの毛並みを撫でつつ、ヤバい場所に拠点を作るようなことにならないことだけ注意しながら話を聞いていった。

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