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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第二章 迷宮都市
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ぼっちはソロで神の試練に挑む

 ……ああもう、カッコつけるんじゃなかったな。


 ダンジョンへと挑んだ俺は、早速だがもっと確実な方法を取れば良かったと後悔していた。


「……はぁ……はぁ」


 神の試練自体はまだ苦戦するほどではない。というか俺が苦戦するなんて異常事態だ。『模倣』を持つ俺が勝てない敵が出たなら、それは圧倒的にステータスが高い相手に対して有利に働くスキルを持っているとか、そんな感じだろう。

 基本的に負けることはあり得ない、のだが。


「……疲れるな」


 休憩もせずダンジョンを踏破していたせいで身体に疲労が出てきた。

 ステータスが上がっているせいか、休まずに行動して五日間ぐらいなら寝ずにいけるのだが。


「……体内時計も働かないせいで、今何日経ってるのかすらわかんねぇ」


 とりあえず度重なる戦闘のせいで身体が重く感じている。眠気も催してきたので、そろそろどこかで休憩したい。

 というか俺がギルマスの前で「ダンジョンを一気に突破する」とか嘗めたことを言わなければ良かったのだ。


 何日経過したかはわからないが、何階層突破したかはわかる。報酬として貰えるアイテム類を数えれば何階層目かもわかるのだ。


「……あと六十七階層か」


 今いるのが三十五階層だとわかる。三十三個のアイテムを入手しているからだ。精神的に追い詰められたらそれまでに入手したレアアイテムの整理でもして心を落ち着けるとしよう。


「………そろそろ休むか」


 休みなしに行くわけにもいかない。最近は最初よりも一階層の踏破ペースが落ちてきている。体感の問題なのでわからないが、最初は学校の授業より早く一階層を突破できていた。もちろんつまらない授業とダンジョン踏破の体感時間を同列に考えるのは難しいが。大体一時間か二時間程度で一階層だったと思う。


「……ミスティ」


 俺は声に出して唯一いる精霊を呼んだ。


『なに?』

「……さっきの罠部屋に戻って寝る。一応防御とかは張っておくが、敵が来たら起こしてくれ」

『はいはい。あんまり無茶しちゃダメよ?』


 ミスティには用がなければ話しかけないように言ってある。……ずっと独りでいると精神に支障を来たすらしいが、俺にはそれがない。なにせきちんとした会話なんてほとんどしてこなかったぼっちだ。異世界に来てからは人と話す機会が増えたが、むしろ孤独な戦いこそ俺の本領発揮と言える。ミスティがいて良かったとは思わない。眠る時の見張りとしてならいいが。


 俺はそうと決めると来た道を引き返して先程大量のモンスターが出現してきた罠部屋に戻る。……罠があった部屋ならモンスターがポップする確率も低いと思ってのことだ。

 戻ってからスカーレットドラゴンから『模倣』した『魔力障壁』を展開し、外套を脱いで丸めると枕代わりにして固い地面に横たわる。


 完全に疲労回復とはいかないだろうが、少し寝るか。


 目を閉じてしばらくしていると、そのまま意識が暗転していった。


 ◇◆◇◆◇◆


 やがて、意識が浮上する。ぼーっとする頭で上体を起こし、飾り気のない土の部屋にいると認識した。


 ……そういや、ここはダンジョン内だったか。


 俺の今の状況を省みて目を擦り意識を覚醒させる。部屋の内外にはモンスターの気配がなかったので衣服を脱いで『聖泉魔法』のホリースプラッシュを使い全身を洗浄した。長い間風呂に入らないというのは若干気持ち悪いので、ダンジョン内とはいえこれくらいは許して欲しい。

 ついでに顔も洗えば完全に意識が目覚めてくる。濡れた身体は一旦『液体化』した後に人型へ戻ることで濡れていない状態にすることができた。魔力も少しだが還元するので丁度いい。


「……ふぅ」


 衣服を着直し少しストレッチをして身体を解す。流石に固い地面で寝ると身体が固まる。痛くならなかったのは高いステータスのおかげだろうか。

 外套を羽織り直し、部屋の入り口から左右を確認した。モンスターの影はない。確か左から進んできていたはずだ。右に進めば良かったと思う。


 そして今まで通りの戦法で突き進んでいく。


 まずダンジョン内の風景に『同化』してモンスターに察知されないようにする。そして“水銀の乙女(ワルキューレ)”のリエルから『模倣』した『索敵』と『罠探知』を発動する。そのまま通路内を駆ける。モンスターに遭遇したら『同化』したまま一気に奇襲をかける。

 以上だ。


 余計な魔力を消費しないためにも『同化』による奇襲はいい。モンスターが強くなってきたので真正面から戦うと何度か打ち合う必要が出てくるのだ。それなら奇襲して首を斬り落とした方が早い。


 と、『索敵』にモンスターが引っかかった。

 『索敵』の感覚とは敵がどこにいるかを感知できるのだが、脳内イメージのように壁などを擦り抜けて赤い影として認知できる。おそらくこれは『索敵』を使いこなしている証拠だろう、もちろんリエルがだが。前後左右など全方位の何メートル先にいるかを感知した上で、具合的な場所を脳内映像として出してくれるのだ。これはパーティとして挑んだ時に見ていたがとても便利だ。


 通路の先にモンスターがいる。この階層にいるのはモノオーガという単眼の鬼だ。体長二・五メートルほどと大きく、とても力が強い。視力がいいため未熟な『索敵』であったなら範囲外から投石されて壊滅、なんてこともあるかもしれない。俺は『同化』しているから見つからないかもしれないが。

 数は四。一体一体がベルゼドなど通常のSランク冒険者以上の強さを持っている。


 俺は駆けながらモノオーガに肉薄すると、左手で剣を抜き放って跳躍し、背後から剣を振るって首を斬り落とす。噴き出した鮮血に残り三体が気づくが、風景と化したままの俺に警戒を抱くことはない。一体目の死体を足場にして二体目へと跳びかかり、剣を喉元に刺して身体に足をかけると、左へと剣を払って切断し、後ろへ跳ぶように離れた。

 そこでモノオーガ達は動き始める。姿の見えない敵だと判断して、闇雲に持った武器を振り回し始めた。近くの一体が上段から地面へと棍棒を叩きつけたのを確認してから近づき、低い位置から横に剣を振るって喉元を掻き切る。残る一体は切り傷から俺の居場所を割り出し、的確に棍棒を振るってきた。しかし見えないし感知できない俺を捉えることはないので、三体目の死体の裏を回って背後を取り深く袈裟斬りしてやる。


 こうして敵を殺しても気づかれなくなったのはダンジョンに入ってから少ししての話だ。

 おそらくダンジョン内でずっと動き続けてきたので、ほぼダンジョンそのモノとして『同化』できるようになったのだろう。それなら休む時も『同化』でやり過ごせば良かったな、と思うが俺も疲れていたのだろう。

 兎も角『同化』によって俺は成功率百%の奇襲を行える。その上聖剣・レーヴァテインの力を得たミスティの切れ味が物凄く上がっていた。ちなみに聖剣を召喚してそこから力を得ることはできない。聖剣の力を得るには聖剣本体に触れる必要があるようだ。更に言えば魔剣もあるらしいので、魔剣でもいいらしい。伊達に剣の邪精霊を名乗ってはいない。

 このダンジョンでどちらかが報酬として現れるようなことがあれば褒美として与えてやろう。


 その後も俺は順調に進みボス部屋へと辿り着いた。


 部屋の中央に待ち構えるのは『鑑定』で見たところによると、オーガロード〈神至しんし〉というモンスターだ。〈神至〉というのがなんなのかはわからないが、字面としては“神に至る”。オーガロードというモンスターの中でも神に匹敵するほどの強さだということかもしれない。となると本当に神級クエストをクリアできるような強さがないと厳しいだろう。


 角の生えた鬼のような姿で、体長は五メートルほどあった。丸太のような腕が怪力を生むのだろう。手には巨大な両刃直剣を持っているが、その刃には小さな刃がついており斬られたら痛そうだ。人が造ったモノのように装飾はないが一目で上等とわかる金属鎧を身に着けていて、守りも万全といった風だった。


「……全ての体躯」


 『模倣』は使うだけなら魔力を消費しない。できるだけ温存するには純粋な身体能力のみで勝つといい。もちろん相手の出方によってはなにかしらのスキルを駆使する必要が出てくるので、そこは臨機応変に。死んだら終わりだからな。


「オアアァァ!」


 ボス部屋では『同化』が一旦無効化される。ダンジョン通路内とボス部屋では風景としての扱いが違うのが原因だろう。オーガロードが俺に肉薄して剣を振り下ろしてきた。しかし全ての体躯を発動した俺には脅威として映らない。小さな刃と刃の間へと剣を滑り込ませ、そのまま敵の剣を斬り飛ばした。

 切り取られた剣を呆然と眺めるオーガロード。おそらく今までは格上の相手に出会ったことがなかったのかもしれない。


 だがこれまでの階層にもいた〈神至〉のステータスさえ『模倣』している俺に敵うわけもなかった。こいつは今までのボスよりも強いのだろうが、三十二と三十三階層のボス二体の合計ステータスより高いわけはない。


「……どうした? この程度か?」


 俺は一気に倒さず悠々と構えてオーガロードを見上げる。目が合って青筋が浮かぶのが見えた。言葉は通じないが俺に嘗められていることは理解できたのだろう。

 本来ならわざわざ相手を生かす必要はない。突破するだけなら圧倒的ステータスで敵を斬って捨てればいいだけだ。しかしここから先まだまだ敵が強くなることを考えると、ボスの持つ有用なスキルは『観察』しておきたい。これまでも魔法しか効かない敵とか一つの属性しか効かない敵がいたので突破しづらい階層もあった。ボスなら強いスキルを持っているだろうし、是非『観察』しておきたい。

 手札が多いに越したことはないからな。


「オオオォォォォ!!」


 苛立ったように咆哮し、敵の身体が赤黒いオーラに包まれる。……これは見たことがないな。

 オーラを纏ったオーガロードが武器を振るってくる。先程よりもずっと速かった。おそらく身体能力強化のスキルなのだろう。ぶんぶんとでかい剣を振り回してくるのを軽くステップを踏みながら回避していく。先程剣を斬ったので間合いが短くなり避けやすくなった。

 オーラは武器にも纏わせることができるようだ。筋力と武器という攻撃力を上昇させることができるのだろう。


「ゴアアアアァァァァ!」


 スキルを使って尚攻撃が当たらないせいか、怒りを乗せて咆哮した。瞬間、敵の身体から赤い雷が放たれる。反射的に『液体化』して軽減したのでダメージはなかったが、まさか属性攻撃を使ってくるとは。しかも赤い雷とはな。通常の雷とはまた違うようだ。『融合魔法』などによる属性融合というわけでもなさそうだが。見ることができて良かった。

 雷は俺には通じなかったがあり得ないほど頑丈とされるダンジョンの地面を焼き焦がしている。かなりの威力だった。


 他にも奥の手があるかもしれない。少し傷を負わせてやるか。


 二十四階層のボス、月影武者とかいう刀を使ってくるモンスターから『模倣』した『月刃』を使い、振るった刃から三日月型の斬撃を放つ。強化されたオーガロードの左腕を肩口から切り飛ばした。しかしすぐに新たな腕が生えてくる。『再生』の類いだろう。類似スキルは今までも『観察』してきた。


 とはいえ傷をつけるという目的は達成している。敵は俺を自分の身体に傷をつけられる実力を持っていると判断しただろう。


 ならば今までのモンスターと同じように、


「ガアアアァァァァ!!」


 本気を出してくる。

 赤黒いオーラと赤い雷に加え、目が赤く輝き出した。なにかの強化スキルだろうか。動く度に光が尾を引いていて、少しカッコいい。

 しかし敵から感じる力に変わりはない。なにかの補助スキルと見るべきか。油断せず構えていると、しばらくしてオーガロードが目を見開き瞑目してがくりと膝を着いた。

 ……俺を油断させる作戦か? ならさっきのスキルはなんなんだという話になる。さっきの様子から考えると、「使用することで打つ手がないとわかるスキル」とかか? なんだその『未来予知』とかつきそうなスキルは。しかしもしそうならなぜ俺に首を差し出すような真似を?

 色々と考えてみたが、答えは出ない。反撃に出るにしても死を受け入れるにしても俺が攻撃しなければ動くことはない、か。正直相手の思惑に乗らなくても魔法ぶっぱで倒せるとは思うのだが。


「……」


 武器を捨てないなら反撃の手があると見るべきだ。せっかくなので乗ってみて、この状況を覆せるスキルがあるなら見せてもらいたい。

 俺は剣を一旦鞘に納めてから腰を屈めて柄に手をかけた。


 これも月影武者から『模倣』した『居合い』というスキルだ。構えてから抜き放つまでの時間の長さによって速度と威力が増す。ここに先程の『月刃』で抜き放った瞬間に斬撃を放つ。

 しかしそれは読まれているのだろう。であればその後に起こす行動を組み立てているはずだ。


 俺が集中してしばらく待ち、いざ『居合い』を放とうと柄を握る手に力を込めた瞬間にオーガロードが目を見開いた。反撃できるモノならしてみせろ、とばかりに剣を抜き放つ。今の俺の状態で『居合い』をすれば正直回避することなど不可能だ。

 それは敵もわかっているのだろうが、オーガロードは剣の軌道より上に腕を上げた。


 『居合い』から放たれる三日月型の斬撃によってオーガロードの上体が切り離された。それでも怯まない。切り飛ばされた中で剣を大上段で両手持ちしていた。

 かっ、と光が溢れオーガロードの上半身が深紅に覆われる。その状態で剣を振り下ろしてきた。感じ取れる力は今までの数倍だ。しかもなにかの技なのだろうか、斬撃というよりも破壊の衝撃波とも取れる一撃が地を抉って飛んできた。

 対して俺は剣を振り切った体勢だ。身体を犠牲にして一矢報いようというつもりらしい。


 俺は『疾風迅雷』を発動させ風と雷を纏う。速度上昇が著しいこのスキルならまだ間に合うだろう。俺は足の向きを変え返す剣で迎え撃つと決めた。

 レーヴァテインの能力を吸収した剣に元々持っている呪いのような力を融合させて、黒炎を刃から迸らせる。そのまま思い切り右へと振るった。


 剣速は『居合い』よりも遅かったが間に合っている。俺の剣とヤツの一撃がぶつかり合い衝撃が発生した。突風が吹き荒れて髪の毛や外套が風に晒される。ダンジョン天井と地面にもヒビが入っていた。


 俺が左手に来る重い手応えを無視して強引に剣を振り切ると相殺された。


 それを予期していたのだろう。オーガロードは剣を放り両腕を広げて仰向けに倒れていた。時間が経っているというのに『再生』していない。おそらく力の差を悟って俺に潔く殺されようというのだろう。……そういや月影武者なんかはお辞儀して切腹とかしてたな。実際の切腹と同じようにそれでも死ななかったから俺が首を刎ねたんだけど。

 通常の魔物よりも知能が高いだけに、ここから逃げられないことがわかってしまうのだろう。そして力を差を悟ると諦めるという選択肢が生まれてくると。


 ……いや、諦めてくれる分にはいいんだけどさ。


 こうもモンスターに誠意を見せられると狩りづらくなる人がいそうだ。俺は多分、大丈夫だが。


 とはいえ俺も踏破を目指して進んでいるのだから、容赦なく倒す必要がある。倒れるオーガロードに歩いて近づくと、その身体を真っ二つに両断した。今度は確実に絶命し、目から光が失われる。


 こういう閉鎖空間に閉じ込められたとして、正気を保ち続けるにはルーティーンを作るといいという説がある。あったような気がする。多分。

 要は決まったことを行うことで自分が正常である自覚を持つというモノだ。

 俺はそこまで精神的に追い詰められることがないだろうとは思うが、念のためルーティーンを作っていた。


 それがボス戦後のスキルチェックだ。

 後はボスを倒したらどこからか出現する宝箱を開けて中身を確認する。


 今回もオーガロードの死体を道具袋に突っ込んで、部屋の中央に出現していた宝箱を開けた。中には黒いズボンが入っている。手に取って『鑑定』を使うと疾黒のズボンというアイテムだった。『移動速度上昇』、『疾駆』、『神鋼硬度』、『自動洗浄』、『自動修繕』、『自動調整』、『不破の誓い』が付与されているスキルである。装備していると移動速度が上がり、速く駆けることができるようになる。また自動的に洗浄、修繕が行われ常に最善の状態を保つことができる。加えて獣人や悪魔など尻尾があったら出す穴を自動で作る。そして重要なのが『神鋼硬度』と『不破の誓い』。『神鋼硬度』が一見しても触ってみても布にしか思えないが実のところ鉱物のような硬度を誇るというスキルだ。神鋼とはこの世界においてオリハルコンの異名だ。それを使って製造した剣が神鋼の剣などとなることからそう呼ばれているのだが。……確かオリハルコンってこの世界では最も硬い鉱物とされてるんじゃなかったっけ。『不破の誓い』は破けないようにという作成者の願いが込められた代物ということらしい。どうやら破れそうになってもそれ自体が抵抗するとか。要は破けにくいということだ。深くは考えまい。

 流石は神の試練。大盤振る舞いである。

 せっかくなので履いていこう。ボスは俺がここから出るまでは復活しないので、のんびりできる。……ここで寝るという選択肢もあったか。まぁボスが復活するかもわからなかったので仕方がない。俺が復活しないと知ったのは『模倣』したいスキルがあったのでスキルを試しながら復活を待っていたからだ。ちゃんとそういう時にも休んでいれば良かったと切に思う。


 宝箱を開けて中のズボンを取り出してから、部屋の奥でごごごと物音がして次の階層への扉が開かれた。とはいえ俺が出なければボスは復活しない。

 ステータス画面を開き『模倣』できたスキルを確認する。

 スキルは次の五つだ。『鬼帝力皇』、『赤雷』、『未来予測』、『大刃剣技』、『逆境』。強化、赤い雷、目が赤く光る、でかい剣を振り回す、最後深紅に輝いたアレ、といった具合だろうか。『未来予測』がどれほどのモノかは使ってみないとわからない。もしかしたら敵がいるところでしか使えないかもしれない。発動しようと思っても一切反応がなかった。


 『赤雷』は念じるだけでばちばちと放電してくれた。『鬼帝力皇』も任意に発動可能だ。『大刃剣技』は俺には必要ないだろう。ミスティを手放さない限りは。『逆境』は瀕死の状態で使うとパワーアップ、とかだろうか。今は発動しなかった。


「……着替えたら次行くか」


 俺は貰ったズボンを履いてからボス部屋を出た。部屋を出ると右にワープできる魔方陣のようなモノが見えるが、それは今回使わないつもりだ。

 ぼっちに甘えは許されない。誰かに頼るなど以っての外だ。独りで踏破してやって、俺が宝を独り占めするのだ。


 必要のない宝もあるが、それもいつか役立つ時が来るかもしれない。


「……次はどんなステージだろうな」


 ボス部屋を出てから真っ直ぐに続く階段を下りていくと、吹雪が吹き荒ぶ雪原地帯が待ち受けていた。


「……寒っ。帰りたい」


 普通のダンジョンで環境が変わるなら十階層毎なのだが、毎回ボスと戦わされる神の試練では関係ないようだ。

 なにか暖かくなるスキルはなかったかな、と『模倣』してきたステータスの一覧を思い返すのだった。

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