白い悪魔は絶望を掘り起こす
今日で連続更新は終わります
何とか次は今月中にしたいですね
「お、おい! あれを見ろ!」
「あ、ああ! あれは外套の剣士だ!」
「勇者様と共闘してるのか? だったら勇者様じゃないのか。じゃああれは一体――?」
「そんな事は今どうでも良いだろ! あれが本物だってんなら、勇者様と組めば最強だ!」
最強、ね。
俺は次々とやってくる野次馬達の物言いに失笑する。大体俺は好きで勇者と組んでる訳じゃない。元々独りでやるつもりだった。
「やっぱり君だったか」
野次馬の出現で外套を被った俺に対し、勇者が言ってくる。……ま、俺が外套の剣士だなんて事は、勇者一行からすれば同時期に現れた謎の人物と言う大ヒントがある訳で。バレるに決まってる。
「……まあな。で、結構『観察』させてもらった訳だが、勝てるな、こりゃ」
俺が白い悪魔の膂力と能力を『模倣』し、その上で勇者やナヴィなどの力を上乗せしてやれば、勝てない事もない。寧ろそれで勝てなかったらヤバいヤツだと思う。
「そうか」
勇者はそれだけを言って頷き、しかし聖剣を構えた。……いや、俺独りで勝てるからもう良いぞって意味だったんだが。このとことん善人君は俺のぼっち思想を全く理解してない。紫園や緒沢ならぼっち思想を少しくらいでも理解してくれそうなのに。
「てめえ、ちょっとダメージくらわせたからって良い気になりやがって……!」
悪魔が憎々しげに俺を睨んで立ち上がる。……おぉ、何で俺? あっ、そういや俺が吹っ飛ばしたんだった。技パクって。
「……黒魔導と白魔球って何が違うか分かんねえんだけど、何か違うのか? ああ、色以外で」
「オレの黒魔導ってのは色魔人だけが使えるもんだから。もちろん師匠は除いてだが」
「白魔球は悪魔だからこそ使えるんだよ。てめえが何でパクれるのかは知らねえが」
俺が聞くと持ち主の二人が答えてくれた。……おぉ、まさか悪魔が空気を読むとは思わなかったぜ。ナイスナヴィ。俺は今、ナヴィを弟子にして初めて良かったと思いました。
「……もちろん俺のスキルが、パクるもんだからだ。さあ、てめえのスキルをてめえでくらいな」
俺は言って白魔球を無数に全身から放つ。
「あん?」
どうやらナヴィと一緒であまりどう使うかに重点を置いてないらしい。勿体ない話だ。勿体ないお化けが出ててめえの身体を食べ尽くすぐらい勿体ない。
「……まず第一射。えーっと? 何が良いかな。黒魔導っぽいので良いか。――白魔槍」
俺が思い描いた通り、浮遊する白魔球の一つから、白い槍を放った。
「チッ!」
悪魔は舌打ちしながら飛翔して回避する。
「……ビビってんじゃねえよ、悪魔野郎」
俺は挑発しながら白魔剣やら白魔矛やらを放つ。……白魔剣は兎も角、白魔矛って統一性を持たせると読み方が『しろまむ』になるんだけど。どうしたら良いんだろうか。やっぱりそのまま付けるべきじゃなかったんだろうか?
「クソッ……!」
悪魔は俺の白魔球乱れ撃ちを回避し続けながら自分も拳に白魔球を出して殴り付け、衝撃を放つ。残念ながら白魔球は消されてしまったので、白魔球パラダイスは終了だ。
「……そういや、紫園。あんまり『絶対零度の視線』は無駄遣いするもんじゃないぞ?」
俺は忠告しつつ、先程『観察』させてもらった『絶対零度の視線』を『模倣』する。手足に氷塊が付く様をイメージして発動させると、見事に悪魔の四肢が凍り付いた。
「……ふぅ、成功成功っと」
「どうやってやったのよ?」
俺が成功した事にホッとしていると、紫園が聞いてきた。
「……他のスキルも『観察』させてくれたら教えないでもない」
俺はそう言って拒否しつつ、
「……なかなか目立ったダメージがねえ、な」
氷をあっさり砕いた悪魔を『観察』して呟いた。……氷は無駄。聖剣も無駄。ミスティも無駄。もっと力を使わないといけないんかね。
「氷花」
冷たい声が聞こえ、氷で出来た花弁が悪魔の身体に刻まれた水色の魔方陣から咲いた。……えっ?
「白雪」
悪魔が鬱陶しそうに氷の花を殴り砕くその頭上に水色の魔方陣が展開され、白い雪が降る。シンシンと降っていた雪は悪魔に当たると凍り付き動きを封じる。……いやだから、えっ?
「見せられるのはこの二つよ。早く『絶対零度の視線』の使い方を教えなさい」
紫園は俺に教えを乞うのが恥ずかしいのか少し頬を染めて、髪を後ろに払って堂々と告げた。それに驚いていたのは俺だけではなく、勇者と緒沢もだった。……『雪咲魔法』と『白雪魔法』。確かに紫園が持つ戦闘スキルの二つだった。ここまでされると俺も教えるしかないんだが。
「……必要なのは詳細なイメージだ。例えば俺は今あの悪魔の頭に雫型の氷が付くイメージをしている。そこで発動してやると」
「……っ」
俺が説明しながら言う通りに発動させると、悪魔の頭に雫型の氷が出来てちょっと可愛さがアップした。紫園は納得したように目を閉じて明確なイメージをしているのだろう。……俺は対象がいた方がイメージしやすいから目は閉じないんだけどな。
「こうね」
紫園が呟くと、悪魔の足元から氷のトゲが無数に生えてきた。それらは悪魔を貫くには至らなかったが、動く氷をイメージ出来るとはかなり想像力が豊かなようだった。
「……そういう事。じゃあ俺はそろそろこいつ倒しておさらばするかな」
俺は言って、色々な体躯を発動しようとミスティの柄を握り締める。
「俺も戦うよ」
そんな俺の隣に勇者が並び、無言で緒沢と紫園が勇者側の隣に並ぶ。
「クレト」
俺の隣にもクリア、ナヴィ、メランティナ、ユニが並ぶ。……いつの間にユニがここに来たのか。
「悪いが、これで形勢逆転だな」
ギルドマスターも参上して、この街にいる強者が集った感じになっている。……俺は?
「形勢逆転? 何言ってやがる。本番はこれからだろ!」
野次馬達は避難したのか居ない。そのため俺が外套を脱いで怪訝な顔をしてみせる。
「メフィストフェレス様が何がお好きか、分かるか?」
「……人間の不幸と絶望だろ」
「そうだ! よく知ってるな! そして俺はメフィストフェレス様の部下! って事は、だ! 俺には人間を不幸か絶望に陥れる力があるとは考えねえのか!?」
俺がいきなりハイになった悪魔にドン引きしながら告げると、更にハイとなって決定的な事を告げてくる。
「…………トラウマを呼び起こす、とかじゃねえだろうな?」
俺は嫌な予感がして引き攣った顔になる。……それだけは何が何でも遠慮したい。
「その通りだ! さあ絶望に堕ちろ! 無限の絶望!!」
白い悪魔が嗤って、ドス黒い霧が辺りを覆う。次の瞬間、俺達は絶望の幻に包まれた。




