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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第一章 最初の街

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ぼっちは動物好き

一話抜かしてました、すみません


割り込みです

 ……。

 …………。


 俺は身体が重い事に気付き、目を覚ます。……ふむ。差し込む光から考えて、昼前だな。


 寝たのが深夜だったから起きるのが遅くなるのは仕方がないだろう。


「……ぅん」


 俺の上ですやすやと眠る水のように透き通る肌を惜しげなく晒した美女――クリアが艶かしい声を上げた。……重いな。邪魔だし、服を着ろと言ったのに着ていないとはどう言う事だろうか。それに十代男子に対して警戒心が薄すぎる。朝起きたら全裸の美女が一緒に寝ている状況とか、心臓と相()に悪い。


「……邪魔だな」


 俺はゴロリとクリアを左に転がして退かす。クリアは眉をひそめるが、にへら、と頬を緩ませてムニャムニャと口元を動かす。……正直気持ち悪いが寝ているので放っておく。


 俺は昨夜寝る前に掻いた汗を洗い流すため、風呂には入らないが身体を洗うぐらいはしようと脱衣所に向かう。

 服を脱ぐとタオルは巻かずに風呂場に入り髪から身体へと洗っていきまとめて湯で流す。

 脱衣所でタオルを使い水滴を拭うと新しい服を着て脱いだ服を革袋に詰めて持ち脱衣所を出る。


「……えへへ」


 クリアは気持ちの悪くだらしない笑みを浮かべて俺が使っていた枕に抱き着いている。……クンカクンカしてないだけマシか。


 俺は今の状況よりも悪い事を思い浮かべて軽蔑した視線を緩め、棚の上に置いてある剥ぎ取りナイフと道具袋と鋼の剣を腰に提げ、クリアの事は放っておいて部屋を出る。


「あら。随分遅い朝ね」


 俺が一階の食堂へ下りていくと、カウンターにつまらなさそうに頬杖を着いたメランティナが皮肉たっぷりに言った。


「……ああ。飯は?」


「用意してあるわよ。――昨夜は随分とお楽しみでしたね」


 メランティナは素っ気なく言って椅子に座る俺に対し、更にムスッとして顔で言って、厨房へと消える。……どう言う意味だろうな。


「はい、どうぞ」


 メランティナは直ぐに戻って来ると盆ごと机に置く。……何故か怒っているように感じるのは、俺の気のせいではないだろう。


「……何か怒ってないか?」


 俺は聞く。


「別に、怒ってないわよ」


 ぷいっ、と唇を尖らせて拗ねたようにそっぽを向くメランティナ。……怒ってるじゃないか。まあ、きっとその原因は勘違いだろう。だって「昨夜はお楽しみでしたね」って言ってたし。


「……言っとくが、俺はクリアに手を出してないからな」


「………………えっ?」


 俺がお吸い物をすすった後、嘆息混じりに言うとメランティナは充分すぎる間を置いて驚いたように声を上げた。……ホントに勘違いしていたのか。


「……どうやったらそんな思考に至るのか聞きたいところだが、そんな事を思い付くメランティナの思考がおかしいんだろうな。きっと年がら年中そんなことばかり考えてるからそうなるんだ」


 俺はサラリと酷い事を言いながら、メランティナの手料理に舌鼓を打っていた。……今日も美味い。頭の中ピンクの癖して。


「っ……! ち、違うわよ! 別に私はずっとそんな事ばかり考えてる訳じゃなくて、別にそんな事考えてないんだから!」


 メランティナは顔を真っ赤にしてツンデレのように言った。……良い年してツンデレはダメじゃないか? 可愛いっちゃ可愛いが。


「……じゃあ、クリアが俺と相部屋をするために出されたって言う満月の時の件は嘘って事でスルーして良いんだな?」


 クリアとあの男の話を信じるなら、この条件はかなり重要だ。

 獣人全てがそうなのかは分からないが、満月に発情してしまうと言うその性質上、男が居ては抑え切れないのかもしれない。……満月の日に男達が来ていたらどうなるのかと思って聞いてみたが、来ていたと言う。だが鉄の精神で耐え切ったと言う。もし許してしまったら死んだ夫に顔向け出来ない、と。意地って事だな。


「うぅ。それはその……困ると言うか何と言うか……。多分理性失って襲っちゃうと思うし……」


 メランティナはうぅ、と俯いてもじもじと指を突き合わせる。……この人、ホントに年の割りに可愛い仕草が多いよな。


「……はぁ。分かった。だが、その時だけだからな」


「っ! ありがとっ!」


 俺が溜め息をついて言うと、メランティナはパァ、と顔を輝かせて俺に抱き着いてきた。そのおかげで可愛い耳と尻尾が現れ毛が豹柄になる。

 ……正直言って、ヤるとこまでヤる気はない。きっとメランティナも「……必要な事必要な事……」と言い訳していると思われるので、本番までヤる必要はないだろう。

 最悪な事に俺は本番の回数を減らすため、日々テクの勉強に走っていた時代がある。それを利用して一晩中相手してやれば大丈夫だろう、きっと。


「あぅ」


 メランティナは『人化』が解け顔を真っ赤にして離れようとするが、俺はそっと頭を撫でてやった。……純粋に猫科の可愛さにやられて愛でたくなっただけだ。深い意味はない。


「はふぅ……」


 メランティナは気持ち良さそうに俺に身を預け、離れる気が失せたのかキュッと抱き着いてくる。


「あーっ!」


 そこに、ドタドタと階段を下りてきたクリアが登場した。


「むぅ」


 クリアは拗ねたように頬を膨らませる。……また面倒な状況になった。


 俺は、そっと溜め息をついた。

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