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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第一章 最初の街

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ぼっちは理由を考える

前話については色々批判があり、自分でも修正して方が良さそうだと思ったので修正するかもしれません

 結局その日、クリアは見つからなかった。


 夜になっても帰って来ない。流石にどこかに監禁されている可能性も考え始めた。……いや、最初からショックを受けて宿屋メナードから飛び出した瞬間に拉致された、と言う可能性はあった。俺が考えないようにしていただけで、そう言う可能性はあったのだ。

 だが俺かクリアに恨みを持つ、と言う事はあっただろうか。いや、ない。

 

 ……クリアはそんな怨恨等には縁のない気がする。どうせ俺の事だから誰かの恨みでも買って、クリアを拉致してやろう、とか思われているんだろう。つまり俺への私怨に巻き込まれた形になる訳だ。


「……まあ、良いか」


 クリアが俺の下から居なくなっても特に困らない。特に助ける気もないしな。理由が見つからないと助ける気力も起きない。


 ……兎に角そう言う方向で考えれば、誰がやったかなんて直ぐに分かる。


 クリアがどうなろうと知った事じゃないが、俺に不利益を齎すなら別だ。報復は受けてもらう。


 ……だが、俺が恨みを持たれるとしても、ナヴィが積み上げた死体の山を足蹴にしたとかしか……それも俺よりナヴィ本人に報復した方が良いだろう、違うな。

 じゃあ、クリアがどこでさらわれたかについて考察すると、やはり宿屋を出てから直ぐに、と言うのが有力だろう。たまたまクリアが来たから捕まえた、とかじゃない程周到な手回しが完了している。ギルドに全く情報が入って来ない程なのだ。第一、あのクリアを捕まえても拉致監禁出来るヤツが居るとは思えない。


 だが、それを可能にするアイテムならある。


 ナヴィの魔力を封じていた――ナヴィの膂力の前にはただの鉄クズだったが――魔力封じの枷。あれがあればクリアの大半の能力を封じる事が出来る。

 『実体化』には魔力を使わないが、『液体化』や『硬化』には魔力を使い、更に言えば精霊の姿――つまりは人の目に見えなくなるようにするにも、『精霊化』と言うスキルが必要で、精霊はそこに居るだけで魔力を使うため、実質魔力を封じられたクリアは無力な少女と化すのだ。


 だから、例えばどんな暴行を加えられても抵抗出来ない。


 クリアのあの美貌なら男が放っておく訳がないだろう。つまりは、もう手遅れかもしれないと言う事だ。既にかなりの時間が経っている。魔力封じの枷がどの程度の普及率かは知らないが、ここ最近で金貨五枚を四日連続で徴収しに来ている事から考えれば、資金は集め終わっている筈だ。


 宿屋メナードを潰そうと、週に一回(それ以上の頻度だが)金貨五枚を徴収してくるヤツら。


 あいつらが良いところを邪魔された事を逆恨みして俺に報復しようと、大抵は一緒に居るクリアを狙った、と言う可能性が一番高い。


 ここ最近で一番恨み買ったって思うのがあいつらだし。それにああ言うヤツなら魔力が高い奴隷を封じ込めるための魔力封じの枷を持っていたとしても、入手ルートを知っていたとしても不思議ではない。


 ……ってか、多分そうなんだろうな。めっちゃイラついてたし。


「クレト、助けて! こんなっ、こんなヤツらとなんて嫌! お願いクレト、お願いします! お願いだから私を助けて! もう必要以上にクレトに関わらないから! お願いクレト! 助けて、魔力封じの枷とかでもう時間がないから、お願いクレト! ……あっ」


 俺がベッドでそうやって思考を進めていると、下からクリアの悲痛な叫び声が聞こえてきた。……ビックリしたじゃねえかよ。

 俺は仕方なく起き上がってベッドの下を覗き込むと、そこには小さな水溜まりがあった。……クリアが出て行く時に残していったのかもしれない。


 ……タイミングが良すぎる。だが水を残していったのは確実にクリアの独断だ。それを相手側が知っている訳がない。だが今まではどうやってクリアをその場に留めておいた? 今から魔力封じの枷をするって事は、今まではしていないと言うことだ。なら今まではどうしていたのか。


 ……最悪の事態――つまりは既に事を終えている場合――は避けられたようだが、どこに居るのかが分からない。


「……」


 しかも、俺がクリアを助ける理由がない。助けを求められたから助けるってのは、バカな善人がする事だ。


「……」


 俺がクリアを必要としている――それはない。特に必要はない。だが、ただ一つだけ、拉致られたままだと困る事があった。


「……剣」


 これ以上俺の出費を増やさないためにも、それは必要な事だ。しかも俺はその剣の邪精霊とやらがどこに安置されているのか知らない。街中を探し回れば見つかるが、面倒だし同じ精霊のクリアが居た方が主と認めてくれる可能性が高いかもしれない。


 なら、助ける意味はあるんじゃないだろうか。


「……仕方がない」


 俺はそう呟いて、傍に居ても居なくても俺に迷惑をかけてくる厄介なヤツに説教でもしようかと、立ち上がり外套を羽織った。

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