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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第一章 最初の街
34/104

エセ勇者は黒い突然変異と邂逅す

更新再開します


あと一ヶ月は毎日更新出来るかと


「……」は極力減らし、修正をやや加えました

読み返さなくても大丈夫だと思います

ストーリーは変わってません

 ……何だ、こいつ?


 俺は旧アンファルの森、現泉の森の奥にて、ヤバいヤツと出会っていた。


 ……マズいな。クリアを連れて来なかったのは良かったと言えるが、俺の命が危ない。


 『鑑定』で見てみると、ブラックゴブリンキングと表示された。……だが、ゴブリン種にしては嫌な感じがする。


 そいつは頭から爪先まで真っ黒で、目も口も分かったもんじゃないが、何となくで見えている。全身に影を纏ったようなそいつは、黒魔人さえ退けた俺が畏怖するような雰囲気を持っていて、ただ、立っている。全長は二メートルとゴブリン種では人間で言う職業を持つ上位ゴブリンと同程度だが、身に纏う異様な雰囲気が通常のゴブリンキング以上のモノを感じさせる。魔人もそうだが、黒が一番強い。次は赤なんだが、こいつは真っ黒だ。要するに、突然変異の中でも最も異様且つ強いヤツと言う訳だ。……しかし、上位ゴブリンで突然変異は見かけたが、まさかジェネラル飛ばして一気に黒のキングまで来るとはな。まさか、何者かが無理矢理上げさせたとか、面倒な事はしてないだろうな?


 俺にはそんな推測が頭をぎったが、今はまだ考えても仕方がないので後回しだ。


 それよりも先に、俺はこいつから逃げるか、こいつを倒すかしなければならない。


「ギ」


 ゴブリン特有の濁った金切り声は健在だが、どこか背筋を這うような悪寒がある。


「ッ」


 そいつはいきなり、棒立ちの状態から跳んで来る。


「くっ!」


 俺は身構えるが、あっさりと、


「……っ!?」


 右腕をぎ取られた。……くそっ。痛いのは無視出来るレベルじゃねえが、『観察』でも霞むような速さだったぞ? ブラックゴブリンキングがやった事は、簡単に言えば剣に添えていた右手を掴み、すれ違い様にグルリと肩を無理矢理回させて引き千切ったってとこだな。

 ……不幸中の幸いと言うべきか、一瞬だったせいで千切られた痛みが熱さに感じられたので良かったと言えば、良かったのかもしれない。


「……チッ」


 俺はチラリと後ろを見やると、俺の右腕を掴んだブラックゴブリンキングが残虐な笑みを浮かべているのを見た。……良い顔しやがる。


 俺は舌打ちしつつ、右腕を『液体化』させる。勿論奪われた腕を、だ。


「……水縄」


 俺はほぼ全てを『観察』し『模倣』したクリアのスキルの内、『液体化』から派生した技を使う。本来の使い方は、倒したと思ったら水の分身で、分身が水の縄となり相手を捕らえると言うモノなので、このレベルの相手には足止めの時間稼ぎ程度にしかならない。俺はその間にステータスを念じて出現させると『模倣』の欄を見る。……黒小鬼王の体躯シリーズ、ゲットか。


 俺はそれを確認するとステータスを閉じる。……俺の『観察』と『模倣』を以ってして負けるのは、ステータスを確認させる暇もなく倒してくるヤツだ。だからナヴィとの初戦で負けたのは頷ける。あれは一撃で決められたから負けた。初撃を凌がなければ、俺は生き残れない。


「……黒小鬼王の体躯」


 俺は直ぐにそれを発動させ、脚に力を込め水の縄に捕らわれたそいつに突っ込み、意趣返しとして右腕を捥ぎ取った。ついでに水の縄として絡み付いている俺の右腕も回収する。


「ギッ!」


 そいつは呻くが、俺と同じように腕は再生しない。……このまま『液体化』したまま戦うか。このままじゃ俺の命が危ない。


 俺はそう考えながら、奪ってピクリとも動かなくなったそいつの右腕を道具袋の収納する。


「ギッガァ!」


 そいつが森がざわめく程の大きな咆哮を放つ。……煩いな。耳がキーンってなったじゃねえかよ。


 だが、俺には聞こえていた。『観察』は俺の五感全てを使うモノだし、敵の能力を『模倣』しているので五感は鋭くなっている。

 ドドドド……、と言う大勢の足音が。


「……面倒だな」


 俺は呟く。地響きのような足音は段々と近付いてきて、遂に俺にも視認出来る範囲まで来た。……総勢千体ぐらいのゴブリン軍団。キング率いる、ジェネラル率いる等様々だが、いくつものゴブリンの群れが一斉に、俺の方へ向かって突っ込んで来ているのだ。

 ……見たところ、ただのゴブリンでさえ黒いヤツは居ない。ジェネラルは勿論キングも突然変異は居ない事から、目の前に居るこいつがどれ程異常なのか分かると言うものだ。


「……消し飛べよ」


 俺は迫り来るゴブリン軍隊に向け、視えないミサイルを放って三十体程度を、爆発と爆風によって吹き飛ばす。


「……風神雷神剣」


 俺は牽制に使った視えないミサイルが敵の特攻を遅らせている間に、鋼の剣にそよ風と微弱の雷を纏わせ、構える。


 俺が鋼の剣を横薙ぎに振るって更に腰を回し回転させ、何とか一周させる。そよ風と微弱な雷は一瞬にして巨大なモノに変わり、避けた数十対のゴブリンを残し、壊滅状態に陥った。雷と風によって蹂躙され、跡形もなく消し飛ぶヤツ、両断されたヤツ等、様々な被害を受けて尚、生き残ったゴブリン達は俺に向かって突っ込んで来る。


 生き残ったのはゴブリンアーチャー、ゴブリンシーフ、ゴブリンキング、、ゴブリンジェネラル、ゴブリンカーディアンの五種だ。……ゴブリンガーディアンってのは初めて見たが、何十体ものゴブリンに当たっていたとは言え、正面から風神雷神剣を受け切ったのは凄まじいまでの防御力にあるんだろう。そいつが居たせいでジェネラルを一体、仕留め損なってしまった。ゴブリンガーディアンは金属鎧を着て両手に大きな盾を持っている。他は射手、盗賊だ。


「……――っ」


 俺は大きく息を吸って、一気に『疾風迅雷』を使って弓矢をつがえたゴブリンアーチャーの下へと突っ込み、矢を放たれる前に、弓矢は上手く避けて首をねる。続いて一番近かったゴブリンジェネラルに向かって突っ込むが、速くても道は塞ぐ、と言うスタンスでゴブリンガーディアンが大きな盾を構えて立ち塞がった。


 ……忠誠心が高くて立派な事で……っ。


 俺は心で面倒に思いつつ、盾の前でギリギリ立ち止まり、盾の下に右足の爪先つまさきを引っ掛けて、黒小鬼王の脚力で蹴り上げる。

 勿論ただの上位ゴブリンがゴブリン種最強の突然変異最強に勝てる筈もなく、大きな盾、空高く放り投げられる。俺は盾を失ったゴブリンガーディアンの首を素早く刎ねると、次の標的――後ろから俺の首を短剣で狙って来ているゴブリンシーフに対し、剣を振るって短剣を斬る。……チッ。装備は売るつもりだったのにな。力加減を誤って、短剣を弾く、ではなく斬ってしまった。

 驚くゴブリンシーフの首も刎ねると、残るゴブリンキングが俺に対し、手元にあったへし折った木を投げ付けてきた。……微妙なとこで怪力アピールしてんじゃ、ねえよっ!


 俺は心の中で悪態をつきつつ木を真っ二つにして道を切り開くと、『疾風迅雷』の効果で速度の上がった俺は突っ込み、頭から尻までを真っ二つに剣で引き裂いた。


「……」


 さて、残るはブラックゴブリンキングただ一体のみ。援軍に呼んだつもり――いや違うか。恐らく俺に獲物を献上しろと、命令したんだろう。


「ギ……」


 そいつはゴブリン千体軍団の死骸の中からゴブリンナイトが持っていた剣を手に取る。すると鉄の騎士剣と言うそれが、黒く変色していく。まるで、そいつが持つ黒い影に侵蝕されていくようだった。

 ……魔剣の誕生、とか言わないでくれよ。流石に俺も面倒になる。


 少しくらいの無茶をする必要が出てしまう。だがそれは面倒且つ危険だ。魔力が尽き果てる事になる。


 ……だが、こいつはここで俺が倒さないといけない気がする。


「……と言う訳で、死ね」


 俺はと言う訳もどう言う訳も知らないそいつに向けて、視えない刃を放つ。だがそいつは恐らく視えない攻撃が来ると分かっていながら、真っ直ぐに突っ込んで来た。……そして、視えない刃は当たったが、傷一つ付けることなく弾かれる。

 ……避ける必要すらねえってかよ。


 頑丈な身体をしてやがる。


 『模倣』した今となってはお互い様だが、やっぱり使うしかない。二重『模倣』をな。


「……足す、豹獣人の体躯」


 俺は身体に負担がかかるのを感じながら、しかし力が溢れてくるのも感じる。……メランティナと知り合っておいて良かった。獣人の『模倣』は五感を高める意味もあって、かなり重宝する。しかも体躯としてはかなり強い豹の獣人だ。有り難い。


「ギガアアアァァァァァ!!」


 さっきまで物凄い速度だったが、豹の獣人を『模倣』した今となっては速く突っ込んで来る程度にしか見えないそいつの首を、


「ア……?」


 すれ違い様にねじり取った。


 ……さて。この事をギルドに報告するためにも、一旦戻るとするか。


 俺はブラックゴブリンキングの死骸を全て道具袋に収納しつつ、これからの行動方針を決めた。

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