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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第一章 最初の街

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33/104

黒魔人はぼっちと戦う

※本日二話目です


何で二話更新したかというと、更新停止するので忘れてた


長野県善光寺の御開帳の、宣伝をしたいと思ったからです(笑)


自分は長野育ちなんで、市長が北陸新幹線の開通に伴い通過駅になってしまうことを懸念しております

人めっちゃ多いですよ、マジで並びます

半端ないです


七年に一度なんで、是非いってあげて下さい

あと長野は蕎麦が美味いです

信州蕎麦とか戸隠蕎麦とか


私情を挟んですみません(笑)

 俺がユニの角を触ってしまった事で作った、気まずい空気から逃げ出そうとギルドを出ようと歩いていると、ナヴィがギルドに入って来た。


 ナヴィは朝から晩までクエストに出掛けると、帰って来てから暴飲暴食をして朝までギルドで寝ているらしい。なのでここで寝泊りしている訳だ。……ギルドを宿屋のような使い方をするとは流石だが、昨日ミリカがボヤいていたな。「……ナヴィさんは確かに優秀な冒険者ではありますが、どうしてああも無頓着なんでしょう。昨日も風呂に入らないとか服を着替えないとか……はぁ」って。まあファッションとかに興味があるような性格はしてないだろうし、今はタンクトップに短パンと言う格好だ。武器は持たず左腰に剥ぎ取りナイフ、右腰に道具袋、右手首に記録の腕輪をしている。


 ……そう言えば、クリアの件、こいつが全ての元凶だったな。


 だからどうすると言う訳でもないが、落とし前ぐらいは付けさせてやりたい。俺も一発殴られた分があるし。ちょっと古いが、やられたらやり返す、倍返しだ。


 俺は別に負けず嫌いと言う事はない。だって既に人生の敗北者であり、負け続けているからだ。寧ろ勝ちたいとかさえ思わない。人生負けが続くと勝つ気が失せてくるもんだ。


「おう、クレト。これからクエストか?」


 ナヴィはそんな俺の心境は露知らず、ニカッと笑いかけてくる。


「……ああ。だがその前に、やる事が出来た」


 俺はナヴィの前に立ち塞がるようにして立ち止まる。


「ん? ――って、あん時のヤツ!?」


 ナヴィはそんな俺の態度を怪訝に思ったらしいが、Gランククエストを受注したらしいクリアが俺の後ろに歩み寄って来ているのを見て目を見開いた。


「……ウチのヤツが世話になったらしいな。って事で、ちょっとお礼参りしてやるよ」


 俺は驚くナヴィを他所に言った。


「クレト……?」


 クリアが少し驚いたように声を掛けてくるが、無視。別に俺が殴られたのを倍返しするだけだから、こいつの件はついでだ。


「あ? まあ良いけどよ、オレに勝てると思ってんのか?」


 ちょっと上から目線だった俺の態度が気に食わなかったのか、挑発的な笑みを浮かべる。


「……勝てるとは思ってない。だが、ボコボコにはしてやるさ」


 俺はいつもの無表情で言った。……ナヴィはこのギルドでも目立つから、ナヴィが地味な冒険者と言い争いをしていると思われているのだろう、注目を集めた。


「……へぇ? 良い度胸じゃねえかよ。表へ出ろ。相手してやるよ」


「……いや、俺はお前と戦った後そのままクエストに行くんだ。草原でやろうか」


「ああ? オレと戦った後で生きていられると思ってんのかよ?」


「……勿論だが?」


「っ……! 良いぜ、オレもクエストを受けるからちょっと待ってろ」


 ナヴィはニヤリと笑い、受付に向かった。「あいつ、死んだな」みたいな目で見られつつ、俺はいつもの無表情のまま佇んでいた。


 と言う事で、泉の森前の草原で対峙する俺とナヴィ。


「ホントに良いんだな? 手加減しねえぞ?」


 ナヴィはそう言いつつも準備運動を欠かさない。……やる気満々じゃねえかよ。


「……手加減なんて要らねえよ。だって俺は――」


 それだけを言って言葉を途切れさせる。その先は言う必要がないからだ。


 俺は道具袋から念じて黒の外套を取り出すと、慣れた手つきで羽織り右腰から左手で鋼の剣を抜く。いつも通り、頭から足元まですっぽり覆って。


「てめえが、外套の剣士……っ!」


 ナヴィは驚愕と歓喜が合わさった表情で笑みを浮かべる。


「はっ! 良いじゃねえかよ! 本物かどうか、確かめてやる!」


 ナヴィはそう言うと、思いっきり地面を蹴って一跳びで俺まで突っ込んでくる。……速いな。だが、見える。


「おらぁ!」


 ナヴィはあっと言う間に俺の目の前に来ると、右拳を振り上げ、俺の頭に向けて振り下ろしてくる。


「……黒魔人のかいな


 俺は静かに呟くと、ナヴィの手首を掴んで拳を止める。


「なっ!?」


「……黒魔導」


 俺はわざわざ呟いて、黒魔導を左手に発動させると、ナヴィの腹を黒魔導を纏った拳で殴った。殴った瞬間に左手を放してやる。


「がっ!?」


 困惑の混じった呻き声を漏らし、ナヴィは吹っ飛んでいく。……吐血しなかったのは、流石としか言いようがないな。


「どう言う……事、だ……? 何で人間のてめえが黒魔導を……!」


 吹っ飛んだナヴィはどうにか体勢を立て直すと俺を睨み上げ、どこか怒ったように言う。


「……俺の固有スキルだ。『観察』した対象を『模倣』する事が出来る。今のはお前の腕と黒魔導を『模倣』しただけの事だ。この前俺を殴った時、黒魔導を使ったからだな。無闇やたらと人前で能力を使うからだ。俺みたいに隠さないとな」


 ……まあ俺もこうしてバラしてる訳だが。公の場でバラすのとこうして個人的にバラすのでは、状況が違う。一部の者相手と多数の者相手じゃあ、思慮深さに差が出る。つまり、俺はこいつをバカだと思ってる。

 俺はそう説教じみたことを言いつつ、


「……黒魔人の体躯、足す、豹獣人の体躯……!」


 俺は初めて、『模倣』体躯の重ね掛けをしてみる。いや、出来る事には出来るが、負担が大きいのだ。それは直感的に分かっている。だが、黒魔人の体躯だけではいつになっても黒魔人であるナヴィには勝てない。だから、メランティナを『観察』して手に入れた豹の獣人、そのしなやか且つ強靭な体躯を『模倣』したのだ。


「嘗めんなっ!」


 二つの『模倣』体躯を発動させた俺に対し、ナヴィはただ直線的に突っ込んでくるのみだ。格下の相手ならばそれだけでも脅威だが。

 ……『観察』に加え豹獣人の体躯を発動させた事により五感が鋭敏になっているため、はっきりとした予知のようにナヴィの取る行動が予測出来た。


 こう言う自分に自信を持っているヤツには、一回敗北と言うモノを味あわせてやった方が良い。


「……嘗めてるのは、どっちだろうな」


 俺は静かに呟いてナヴィの拳を紙一重で避けると、右足の回し蹴りをナヴィの脇腹に叩き込む。


 地球において哺乳類最速はチーターだが、豹もそれに近いため、脚力は高い。豹は木登りが得意なことで有名だろうか? 一番は柄だろうが。


「ぐっ……!」


「……終わりにしてやる」


 俺は横に吹っ飛んでいくナヴィの腕を掴むと、自分が作った流れに逆らってナヴィを地面に引き倒す。


「がっ!」


 地面に背中から叩き付けられたナヴィが苦悶の表情を浮かべるが、俺は構わず拳を振り上げ黒魔導を発動させる。


「……黒魔人赤種が地面に這いつくばるとは良い眺めだな」


 俺は立ち上がろうと腕に力を込めるナヴィに言い、拳を躊躇なく振り下ろした。

 拳は直接当てていないものの、黒魔導を拡散させたので、衝撃が巻き起こり、地面を丸く陥没させる。勿論その中心がナヴィだ。


「がふっ……!」


 ナヴィは今度こそ吐血し、バタリと力なく地面に横たわる。


「……さて。クエストに行くか」


 俺は独り呟いて、泉の森へ入ろうと向かう。


「クレト、ありがとうございました。でも何で殺さないんですか?」


 少し離れた場所から俺とナヴィの戦いを見ていたクリアが尋ねてきた。……そう。ナヴィは気絶しただけで、生きている。別に情けを掛けた訳じゃない。今後のギルドへの貢献度や冒険者からの注目について色々損害があると思ったし、それに最初から殺そうなんて思っちゃいない。そして俺は、ナヴィの一ヶ所にダメージが蓄積しないように、黒魔導を拡散させてダメージが薄くなるようにした。まあ、後頭部に衝撃を受ければ流石の黒魔人も無事では済まないって事だ。


「……別に最初から殺す気はなかった。ああ、俺はこれからクエストに行ってくるから、お前はそいつの治療よろしく」


「えっ……? ……はあ、はい」


 俺が肩越しに手を振って森の中に入ると、クリアは渋々と言った風に頷いた。


 光と水を操る聖泉の精霊・クリアなら、回復も使える。


 よって俺はクリアにナヴィの面倒を任し、独り泉の森を探索し始めた。

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