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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第一章 最初の街

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32/104

ユニコーンの獣人は受付嬢になった

いつから更新しないでおきましょうか

修正期間を決めておきたいですね


まあ、GWは土曜からってことで、批判があればGW中にバンバン送って下さい

既出はなしだと助かります

しばらく更新停止しますが、ストックがあるので五月は再開から毎日更新出来ると思います

 今日もメランティナの作る美味い朝食に舌鼓したつづみを打ってから、いつものようにギルド集会所に向かった。


 今日は、俺はいつも通りクエストを受けまくるだけだが、クリアの冒険者登録もする気でいる。……種族についてはここのギルドで働いている三人の受付嬢は全員持っている『鑑定』のスキルがあるため偽る事が出来ない。俺が『鑑定』でクリアを見ても、聖泉の精霊と出てしまう。

 ……『鑑定』を偽るスキルとかがあれば良いんだが。そう都合良くもいかないか。


「……まずお前は冒険者になり、クエストを受けてまくって自分の宿泊費を稼げるようにする事」


「はい! いつまでもクレトの世話になっていては失格ですから!」


 俺がクリアと腕を組まず横に並んで歩きながら今後の方針を話し始めると、クリアは意気揚々として言った。……何が失格なのは分からないが。


「……次に、自分の武器は要らないとしても、魔力をかなり消費してるので勝手に道具屋を見つけて魔力回復アイテム買う事。後は好きに使っても良いが」


「はい! 早く魔力を回復してクレトの役に立ちます!」


 これまた意気揚々として言った。……そこまで頑張らなくても良いと思うが。現段階でも俺の方が弱いのに、魔力が全回復したら俺の立場がなくなる。


「……ただし、お前が見つけた剣の邪精霊。あれはお前の金で買うからな」


「ええっ!? クレトの剣ですよ?」


 クリアは驚いたようにする。……いや、何を驚いているのやら。


「……回想で献上とか言ってやがったヤツが今更何を」


「それはその、そうですが……」


 俺の指摘にクリアは気まずそうに視線を泳がせる。


「……買えるようになったら俺も行くから一人で買いに行ったりはするなよ」


「はい」


 クリアは少し拗ねたようにしながら、頷いた。


「……それと、クエスト受注中は別行動だ」


「な、何でですか!? 二人で一緒にやった方が効率が良いんじゃ……」


 再び驚くクリア。……昨日も言ったような気がするんだが……。


「……俺は俺のやりたいようにやる。ただそれだけだ」


「じゃ、邪魔って事ですか?」


 クリアは瞳を潤ませて上目遣いで見つめてくる。


「……それに、ランクは一人でやった方が上がり易い」


「……邪魔って事は否定しないんですね」


 クリアはションボリと肩を落とす。


「……邪魔と言われるのが嫌なら俺とは別々の生活で生きていけば良い。基本邪魔だし」


「酷い!?」


 ふえぇ、とクリアは泣きそうな顔をする。


 ……こうして見ると付き合ってるとか絶対思われないよな。だってクリアは俺の言葉に喜怒哀楽をコロコロ変えていくが、俺は勿論いつも通りの無表情。しかもクリアが俺の方を見ても俺はクリアの方を見ずに真っ直ぐ前を向いて歩いている。

 ……しかし、俺の歩行速度について来られるとは、意外だったな。ついて来られないならさっさと置いて行ってしまおうかと思っていたんだが。


 俺の長年のぼっち生活で培った技術の一つが、あっさりと破られた。……結構ショック。


「わ、私はクレトとずっと一緒に居ますからね?」


 クリアはしかし、どこか何かを決意したような感じを醸し出す表情で言った。……結局よく分からないって事だが。


「……出来ればクエストの途中で死んでくれれば……この先は言わないでおこう」


「もう大半言っちゃってますけどね!?」


 俺は出来るだけ小声で呟いたが、隣を歩くクリアには聞こえたようで、ツッコまれた。……別にボケちゃいないんだが。


「うぅ。クレトはそんなに私が邪魔ですか」


 クリアはショックを受けたようで、落ち込んだ様子で聞いてきた。……普通のヤツならここで「……別にそんなんじゃねえよ……」とかカッコ付けた感じで言うのかもしれないが、否定して謝るのかもしれないが、俺の答えは変わらない。


「……ああ。正直言って邪魔。だってお前のせいで、一緒に居るだけで注目集めるし」


「あぅ」


 クリアは俺が正直に言った事でガックリと肩を落とす。……俺に慰めを期待するようじゃダメだな。俺は事実しか言わない。世辞や嘘は必要に応じて使うが、表面だけの慰めなんて、余計に虚しくなるだけだ。俺が言うんだから、間違いない。


「……」


 俺はギルドのドアを開け中に入って行き、早速掲示板でCランクのクエストをいくつか適当に接がして、三人並んだ受付嬢の真ん中に居るミリカのところへ歩いて行く。


 ……両端に列が出来てるのは、珍しい事じゃない。


 秘書っぽい右側に居る受付嬢は、キツい感じが癖になるとかで人気があり。

 ドジっ娘の左側に居る受付嬢は、この中で唯一優秀ではなくドジを見せるところがほんわかとさせられるとかで人気があり。


 必然的に、人気がないと言う訳ではないが普通に仕事をこなすミリカには人が集まらない。本人に聞いてみたところ、担当冒険者の割合が4:4:2なんだそうだ。


 ……たまに急ぎでクエストを受けたいのに、テキパキと仕事をこなす二人とは違い、ドジやって遅くなる左側の受付嬢で並んでいる暇がなくて受けさせてくれ、と頼んでくる人が居るそうだが。


 そんなこんなで、俺が来る時は多く冒険者が居る時間帯でも空いていて、直ぐにクエストを受けられる。


「あっ。クレトさん、クエストお疲れ様でした。昨夜突然泣き声が止んだと言うことでお礼にアルクブル貨幣一枚追加していただいたので、報酬に付け足しておきますね。こんなによく眠れた夜は久し振りだと、朝早くから連絡を下さいました」


 ……それで隈が出来ているのか。


 俺はいつも作り笑いを振り撒くミリカではなく、眠そうに目を擦り欠伸をすると言うだらしないミリカだったのが、合点がいったのだ。


 受付嬢は仕事上、夜中に帰って来る冒険者が居たりするので夜遅くまで仕事をしている。そこで僅かな睡眠時間を削られて連絡をくれたとあっては、堪らないだろう。


「……今日は昨日の報酬を貰うのと換金と午前中の受注と、あとこいつの冒険者登録も頼む」


 俺は用件を簡潔に伝える。後ろに控えているクリアを親指で差すと、ミリカはピクリと眉をひそめた。


「誰ですか?」


「……『鑑定』すれば分かる。拾っただけだしな」


 俺は詰問するようなミリカの視線に適当に答える。


「私は犬や猫じゃありませんが」


 クリアは俺の言葉に不満そうに頬を膨らませる。……止めろ。お前がやると可愛いんだよ、そう言うの。更に注目を集めるから止めてくれ。


「っ……!?」


 眼を光らせたミリカは、俺の言いたい事が分かったのか目を見開いて驚愕する。


「……そう言う事、ですか。分かりました。とりあえず記録の腕輪を――はい、完了していますね。ではこれが報酬です。換金は――ユニ?」


 ミリカは、最近は慣れてきたのか無理に俺に対して作り笑いを浮かべずに、普通に接するようになったのだが、呆れて溜め息をつくと俺が掲げた記録の腕輪を見てクエストが達成しているかを確認し、予め用意してあったのかジャラジャラと硬貨が入った巾着を渡される。


 換金をするかどうかで、クリアの冒険者登録をしたい事もあってか昨日まで居た受付嬢とは違う、小柄な少女に声を掛ける。


「は、はいっ!」


 書類整理をせっせとしていた小柄な少女は名前を呼ばれ、慌てた様子で振り返った。……その反動で小柄な体躯には不釣り合いな胸が跳ねる。


「ユニ、落ち着いて。この人の換金をして欲しいの。出来るわね?」


 ミリカは慣れてきたとは言え、丁寧に対応すべき冒険者である俺と話す時とは違い、恐らく普段の口調だろうそれで慌てて振り返った少女に言い聞かせる。


 ミリカも俺から見ればかなりの美少女だが、この世界にブスとブサイクは居ないんじゃないかってくらいに美男美女が揃っている中なので、どうしても普通レベルまで下がってしまう。スタイルが突出していると言う訳でもなく均整の取れた感じなので(服の上からでもスリーサイズが分かるような眼はしていない。大体俺、スリーサイズとかどうやって計るのかさえも曖昧だってのに)、普通、と言う事になる。……何度も言うが俺からしてみれば美少女なので話す時はなるべく目を合わせないようにしているが。


 だがそのユニと言う少女は背丈こそロリなものの、スタイルは抜群だった。特に胸。胸が大きい。ブラがないので上に着るモノを重ねたりしているのだろうが(クリアは意図的に隠せるので一枚だ)、この少女の胸の形は服を押し上げるようにくっきりと浮かんでいる。流石に先端が浮き出るような事態は避けているようだが、これはかなり目を惹く。身長は低く濃い青の瞳は垂れ目で顔もあどけなさが残っている。瞳と同じ濃い青の髪はショートヘアだ。

 更に、目を惹く特徴がある。濃い青をした髪の中、前頭部に前に突き出た純白の角が生えていた。まるでその真っ直ぐで滑らかな角自体が光っているような錯覚さえ覚える。頭の後ろからなのか、純白の小さな鳥のような翼が生えていた。


 ……『鑑定』してみるか。


 ミリカに指示され俺をオロオロと見上げてくるユニに対し、俺は正面から『鑑定』を使った。ユニは俺の眼が光って自分が『鑑定』されたと分かったのか、ビクッと怯えたように肩を震わせる。そんな俺とユニを見てミリカは眉を寄せて、俺に非難の視線を向けてくる。


 ……神格と守護の聖獣・ユニコーンか。だから角が生えているんだな。この世界のユニコーンは翼も生えているんだろうか。だが、おかしいな。普通種族は一つなのに、一角獣の獣人、神格と守護の聖獣・ユニコーン、聖獣の契約者とある。どう言う事だ? まあ良いや。どうせ俺には関係のない事だ。備考には角が弱点と書かれている。角を握られると力が抜け、角を折られると死に至る事もあるのか。だが力の軸も角なんだから、大変だ。


「……で、換金してくれるんだよな?」


 俺はビクビクと怯えながら、恐る恐ると言った感じで俺の顔を窺ってくるユニに向かって聞いた。いつになっても換金所の方へ移動しないからだ。


「ふえっ!? は、はい。こちらにどうぞ……」


 ユニは何故か驚いたような声を上げ、手で換金所の方を示し、俺を誘導する。


 俺は換金所の方に歩き、カウンターに道具袋を逆さにして念じ、モンスターから剥ぎ取ったアイテムを全て出す。


「……ふぁ。凄い量ですね」


 ユニは山のように積まれた素材を見上げて感心したように言い、眼を光らせる。……『鑑定』のスキルは持っているようだな。


「はい、えーっと……」


 『鑑定』し終えたのだが、表に出て来てまだ日が浅いからか素材一つの値段が分からなかったのか、右腰のポケットから四つ折りになった紙を取り出し、目を上下に動かして読んでいく。「……え~っと、あれがこれで、これがあれだから……」とブツブツ呟きながら精算していく。


「合計アルクブル貨幣七枚になります」


 ミリカのように丁寧に小計を言う事なく、いきなり合計を言った。……別に俺は指摘したりしない。それは隣で聞いていたキツそうな受付嬢のする事であって、俺の仕事ではない。


「はい、どうぞ」


 ユニはアルクブル貨幣七枚を巾着に入れると、縛った口と下を手で持って渡して来た。……俺はそれをユニの口を持った手の下からつまむようにして受け取る。


「ぁ……」


 僅かにユニのスベスベした手に触れる。だからと言ってどうと言う訳でもないが、その瞬間ユニはピクリと身体を震わせ頬を赤らめてウットリとしたような表情を浮かべた。……何だ?


「……はぁ。ユニ?」


「ふあっ! す、すみません私、ボーッとしてしまって……!」


 手早くクリアの冒険者登録を終えたミリカがジト目で言うと、我に返ったユニが慌てた様子でペコペコと俺に向かって頭を下げた。


「全く。すみません、クレトさん。クエストの受注は承っていますので、どうぞご武運を」


 ミリカは呆れたように言ってから、困ったような笑顔で俺に小さく手を振った。


「ま、待って下さい!」


 俺が立ち去ろうとすると、ユニが俺の右手の袖を掴んで引き止めた。


「ユニ、そう言う軽弾みな行動は……」


「すみません、ミリカさん。でも……」


 ミリカはそんなユニの行動を注意するが、ユニは謝りつつも俺の袖を離してはくれないようだった。


「はぁ、仕方ないわね。すみません、クレトさん。少し付き合ってやって下さい」


 ミリカは溜め息をつくと、理解のある顔で仄かに笑った。


「……あの、私の種族を見て、どう思いましたか?」


 ユニは少し躊躇いがちに不安の色を瞳に表しながら、必然的になった上目遣いで聞いてくる。……そうか。種族がバレてどう思われるかで、怯えていたのか。なんて下らない。亜人差別は禁じられているんじゃないのか? いや、ユニの種族には獣人だけじゃなくユニコーンとしての記載もあった。そこに怯えの原因があるのかもしれない。モンスターにユニコーンが居てモンスターと同類視されるとか。

 ……きっと、軽蔑したとかじゃなければ何でも良いんだろう。ここまで読み取れているなら好感度を上げる事も可能かもしれないが、俺にそんな気はないのでいつも通り事実だけを述べる事にしよう。


「……別に、何も」


「な、何もですか……?」


 ユニはキョトンとした顔で聞き返してくる。


「……ああ。珍しい獣人が居たもんだ、とは思ったが。別に何も」


 ユニコーンの獣人なんて珍しいだろうに。ゾオン系幻獣種ぐらいに珍しいんじゃないかと思う。


「そ、そうですか」


 ユニはホッとしたように息を吐く。……ふむ。このままでは好感度が上がってしまいそうだ。いや、そんな事にはならないかもしれないが。念には念を、これ以上『美』が付く女性達と関わりたくない。


「……」


 俺はガシッ、とユニの角を握った。


「っぅ……!?」


 ユニが驚いたように目を見開き、顔を真っ赤にするが、今は無視。初対面で嫌われる事が重要なのだ。

 初対面で異性の身体に触れる。それは嫌われる第一歩としては、かなり良い手だろう。


 俺は左手の指で角をなぞるが、驚く程に滑らかな肌触りだ。これを武器にしたら良いモノが作れそうだが、そうやって乱獲が始まると絶滅危惧種になってしまうのだ。全ては人間のせい。自分勝手な人間のせいなのだ。


「……んっ、ふ……ぁ……」


 ユニはどこか恍惚とした表情を浮かべ始める。……ふむ。どうやら触ってはいけない場所だったらしい。ミリカは絶句している。


「……感覚があるのか。珍しいもんだな」


 俺は一言それだけを言い、ユニの角から手を放すとそのままギルドを去ろうと踵を返した。


「……あっ」


 後ろからユニの残念そうな(?)声が聞こえたが、無視。


「あん? 何かその辺が妙な空気じゃねえか?」


 その時、今巷を騒がせている黒魔人――ナヴィがギルドに入って来た。

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