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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第一章 最初の街
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聖泉の精霊は敗北する

感想でぼっちを冒涜する異世界ハーレムだと言われ、丁寧な対応を心がけていた返信で熱くなってしまいました

反省しております


……における会話の違和感など指摘された点は納得して返信していましが、修正は忙しくて出来ていません


GWは更新を休憩して修正する日々にしようかと思っています

更新が滞っている作品や「どくどく」の三章目を書いたりする期間にしようかと

「どくどく」は適当な略称です、気にしないで下さい

 約百年前、突如として現れた泥の巨人アンファルに精霊の憩いの場としても存在し自らも住んでいた泉を封じられた聖泉の精霊・クリアは、百年間ずっと水の結界を張り――水なのでアンファルに吸い取られてしまうため永遠と魔力を注入しなければならなかったが――精霊達を保護し森の聖性を守る泉のために自分の魔力を注ぎ続けた。

 百年経ちあともう少しで魔力が切れると言うところまで追い詰められ、やっとの事で救われた。


 救ってくれたのはクレトと言う濁った瞳をした少年だった。


 恩返しの一端として命を助けたものの、まだ恩を返し足りないと考えたクリアは、クレトについて行こうと決める。

 そしてクレトの命令に従い、近くの街で剣を探しているところだった。


「……」


 クリアは内心で驚きを隠せなかった。


「剣の邪精霊が、何でこんな場所に……」


 呆然と店に並べられた黒い剣を見つめる。


 邪精霊とは、クリア達普通の精霊とは違い自然に宿る存在ではなく、気紛れで存在する精霊の事で、強い憎悪を抱いた精霊がなるとも、自分達が暮らしていた自然が他の生物に荒らされてなるとも、他の精霊と喰らうと言う禁忌を犯した精霊がなるとも言われているが、詳しい事は分からない。だが、自らが治める森で邪精霊が出ないように最善の気遣いをした事だけは確かだった。そして、アンファルに支配された後も邪精霊は出ていなかった。


 その黒い剣は柄から刃まで全てが漆黒で、つばの部分が鳥の翼のような形をしている。鍔と鍔の間には血のように赤い菱形(ひしがた)の水晶が埋め込まれている。


「……」


 クリアには同じ精霊だからこそ、その剣に宿る邪精霊が視えていた。


 烏のような漆黒の翼を生やした、自分よりも小柄だが巨乳で漆黒のドレスに身を包み、夜空のような艶やかな漆黒の長髪に血のような赤い瞳をした美少女である。


 クリアは悩んでいた。


 邪精霊とは言え精霊が武器に宿っているのだ、クレトの要望には必ず応えられるだろう(この邪精霊がクレトと契約し主と認めてくれるかは兎も角)。だがこんな美少女をクレトの傍に置いておいたら自分は捨てられてしまうのではないかと言う不安もあった。


 結果、芽生え始めていた忠誠心がまさって、この剣を買おうと決める。


 そこで初めて、自分が金を持っていない事に気付く。


「くっ……」


 このままではクレトに剣を献上出来ないと思ったクリアは、とりあえず良い剣は見つけたと報告しにクレトを探して回った。


 しかしクレトは居なかった(クリアが葛藤している頃にはもう既に街を出てクエストに向かっていたからだ)。


 焦ったグルグル街中を探し回ったが、クレトは居ない。


 自分は見捨てられてしまったのかと途方に暮れていた時。


「あん? なかなか強そうな感じがするじゃねえかよ。誰だ、てめえ?」


 そこに、黒魔人赤種の女が現れた。しかし黒魔人赤種に構っている暇はないのだ。自分はクレトを探さなければならない。


「黒魔人に構っている暇はないのよ。邪魔しないでくれる?」


 クリアが素通りしようとすると、黒魔人の女は道に立ち塞がるように横にズレたので、クリアが我慢出来ずに言った。


「そう言うなよ。オレ今、ちょっと落ち込んでんだからよ。オレが目を付けた濁った眼をした人間が居んだが、当てが外れてそいつを一撃で殺っちまったんだ。だから他につええヤツが居ねえかと思って街をブラブラしてたんだが、相手してくれねえか?」


 黒魔人の女は戦闘狂丸出しの発言をする。だが、クリアにとってそれはどうでも良かった。


 ……濁った眼をした人間を、殺した……?


 クリアは自分の頭が急激に冷めていくのを感じていた。


「あなたが、黒魔人赤種(ごと)きがっ……! クレトを殺した……? 冗談にしては笑えないわ……!」


 クリアは怒りを露わにし、魔力を媒体に水を出現させる。今まで自分がした事がないような、冷めた眼をしているのが分かった。


「何だよ、てめえら知り合いだったのか。じゃあ、悪かったな、殺しちまって。つまんねえ相手だったぜ」


 黒魔人は怒りを露わにしたクリアを見て面白そうに口の端を吊り上げた。


「っ……!」


 クリアはそんな黒魔人の態度にキレて、水を一斉に黒魔人に向け放つ。

 クリアに勝算はあった。種族最強の黒魔人赤種だが、それはあくまでも人型の種族においてのみ。モンスター最強と言われるドラゴンには劣るし、してや生物ではない上に上位の精霊であるクリアが負ける事はないと高を括っていた。


「っ!?」


「……何だよ、強そうだから期待したってのに、イマイチじゃねえか」


 だがクリアの放った水は、黒魔人の横薙ぎに振るった拳によって四散してしまう。


 ……百年で消費した魔力が……!


 クリアは思い出した。百年前、聖泉の精霊として森を治めていた頃なら兎も角、百年も魔力を消費し続けたせいで今もまだ完全回復していないのだ。

 クリアは苦々しい顔をして後ろに跳躍し、距離を取る。


 全魔力の百分の一もない今では、黒魔人赤種には勝てないと理解したのだ。


「このっ……!」


 ジリ、と一歩を踏み出した黒魔人に向け、無駄と分かっていながらも自分の右手を水に変え伸ばす。


 精霊であるクリアは本来、実体の持たない。常に『実体化』のスキルによって実体を保っている。それを『液体化』して無敵を誇っているのだが、更に今は『硬化』によって一本の槍のように尖らせた元手先を、黒魔人の顔目掛けて伸ばしている。


 『実体化』、『液体化』、『硬化』の三連変化である。


 だが嬉しそうな笑みを浮かべた黒魔人はクリアの攻撃を頬に掠らせて一筋の赤い線を入れながら、右手に黒魔導を発動させ、クリアの水の身体を消滅させようと迫って来る。


「っ……」


 クリアはこのままではあっさり死んでしまってクレトに会えないと言う想いを抱き、何とか黒魔導が当たる直前で伸ばした右手の先を切り離し、地面に落とす。


 次の瞬間、直撃した黒魔導がクリアの身体全てを消滅させた。


「はっ。結構良いじゃねえか。オレに傷を付けたのはてめえが初めてだぜ。ま、もう聞こえちゃいねえだろうがよ」


 そう言って黒魔人は上機嫌に去って行く。


 ……あ、危なかったー!


 クリアは薄く地面に張った水の姿で思った。何とか黒魔導の消滅から逃れて、ホッと一息つく。


 ……ここから、どうすれば……。


 クリアは命が助かった事にホッとしつつ、こんな姿にまで追い詰められている事には変わりなかったので、考える。魔力もほとんど残っていないので、このまま『液体化』した状態を保ちつつ、水分と魔力を回復しなければならない。

 空気中の水分を吸収しつつ魔力回復を待っているしかない。


 ……それでも、クレトが全く探しに来るような気配がなく、もしかしたら本当に殺されてしまったのかと、夜中になると寂しさのあまり泣いてしまうのだった。

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