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エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
古龍の森

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魔王軍新幹部はダンジョンゴーレムの仕様を理解する

 魔王から任務という名の仕事を貰い、元冒険者の無職を脱却することになった。

 任務の詳細がアンから届くはずなので、それまでに移動手段として使うように言われた巨大ゴーレムを完成させておかなければならない。完成というか、内部の拠点化だな。


 巨大ゴーレムは作り終えたところまでで管理室のような部屋以外になにもない。

 折角なのでネオンも呼ぶか。

 アンに巨大ゴーレムが出せそうな場所を聞くと、魔王城の右にあるなにもない地面がいいんじゃないかと言われた。


 行ってみると確かになにもない。ここなら近くに人目があるわけでもないので、魔王様がなんかしていると思ってくれるかもしれない。

 大きさ自体は変えられると思うが、突然呼び出して混乱させるのも良くない。きちんと魔王軍のなにかであると思わせてから移動に使うべきだろう。


 というわけで巨大ゴーレムを顕現させ中へ入る。


 ネオンにだけ声をかけたのだが、今回ついてきたのはほぼ全員だった。おそらくなにもすることがなくて暇だったのだろう。いないのはナヴィだけ。あいつは多分訓練場とかそういうところにいるのだろう。


 コアの真ん前に立ち、なにから始めようか考えてみる。とりあえずは拠点として必要な部屋を創っていくべきだろう。


 ゲーム画面のようなモノを眺めながら、部屋を創れないか確認してみると、部屋を創るにはポイントが必要なようだった。部屋自体を創るのにポイントが必要で、内装を変えたり家具を生成したりするにもポイントが必要らしい。

 で、このポイントというのがどうやって手に入るのか、今何ポイントあるのかというのが重要だ。


 入手方法その一。ダンジョンに来た敵を倒す。

 入手方法そのニ。ダンジョンコアに魔力を注ぐ。


 以上だ。細かく言えばいらない装備をコアに還元したり、創ったモノを消すことで還元されたりするようだが、貰えるポイントがモノによるので今回は除外しておく。神のダンジョンで神々から得た装備は高いポイントだと思うが、一応使うことがあるかもしれないので勿体ない気持ちが強い。あれらは二度と手に入るかわからないからな。


 入手方法その一に関しては、今回は除外される。拠点として使うつもりで創ったので、外敵を入れる気がないからだ。

 となると必然的に残る一つの方法、魔力を注ぐに絞られるわけだった。


 こっちは理屈が簡単で、注いだ魔力の数値がそのままポイントに換算される。


 今の俺の魔力は一千万程度だが、全ての魔力を『模倣』することで一億を超えると思われる。と言うのも、元々神のダンジョンコアが所持しているポイントが一億だったからだ。桁が大きすぎないかと思って何度か数え直してみても答えは変わらない。ポイントがイコールで魔力だと考えるなら、俺がこいつを入手できたのは魔力が一億以上あったからだと推測できる。

 加えて今は強い魔王軍の力を目にしている。バカ強い妹は俺の性質上『模倣』できないが、足止めをしてくれた『憤怒』のバルメイザの強さは全力の俺から考えても異常だ。魔王もおそらく魔力が高いタイプなので『観察』できた今となっては一億よりも高くなっているだろう。


 ちょっと試してみて、余裕があったら一億分ポイントにしてみるか。


 というわけで早速試してみた。


「……全ての魔力」


 『模倣』してからステータスを確認。……二億くらいか。神々との戦いを経たせいで桁がおかしくなっているが、おそらく神のダンジョンコアを手にした時点で一億五千万くらいはあったんじゃないかと思う。魔王が推定一千万くらい魔力を持っていて、他の幹部は基本的に全力を見たことがない。唯一見たことがあるのは『憤怒』のバルメイザだが、あいつは魔力寄りではなさそうなので解放した状態でも魔王に匹敵するかしないかの予想だ。個別に『模倣』すればわかるだろうが。

 今の魔王は完全体ではないとはいえ、神々に匹敵するだけの魔力を持っている。もちろん魔王だけに魔力が高いのだろうが、完全に復活を遂げたらどんな強さなのか想像もつかない。魔力なんて数千万もあれば強力なスキルを常時発動していても尽きないってのに。


 二億を少し超えているだけなので、一気に二億を注ぐのはやめておいた方がいいか? 魔力がなくなった後になにかあったら困る。今回は半分の一億をポイントとして変換しよう。

 俺の『模倣』は解除した後にもう一度発動しても満タンで追加されるわけではない。詳しい仕組みはあまり考えていないが、魔力は使ったら自動で回復していくモノなので『模倣』する元になっている個別の魔力毎に回復しているのではないかと思う。


 ステータスで『模倣』した魔力を見ればわかるのだが、これまで『観察』してきた個々の魔力が一覧で記載されており、「〇〇/〇〇」という形で数値がある。右が上限値らしく使っても減らない。使った魔力は一定時間毎に少しずつ回復していくが、回復する時間には差があるので元の魔力をそっくりそのまま『模倣』しているのだと思う。


 全体で二億だから俺の魔力回復速度で二億溜まるまで満タンになりません、だったら使い勝手悪かっただろうな。個別に回復していくからまだマシだ。


 で、神のダンジョンコアにあるポイントが二億になったわけだが。そもそも億単位のポイントとか使うのかと思わなくもない。


 『模倣』を解除して、今度はポイントにも着目しながら創れるモノを見ていく。

 十メートル四方の部屋が百ポイントだ。長方形の部屋もあるが面積が同じなら同じポイント数を使う。一平方メートルが一ポイントという換算なのだろうか。広い部屋であればあるほど消費するポイント数も増えるわけだ。


 とりあえず一部屋創ってみた。創る場所も選べるようだが、隣接していないとダメなようだ。ここはダンジョンで言うと最奥に当たるので、隣接させた部屋の方へ伸ばしていくようにしか創れないらしい。

 まぁ空間が歪んでいるような形で創られるので大して気にする必要もないだろう。一応ここを頭側と考えて下に伸ばしていこうと思う。部屋と部屋を繋ぐ方法も選べるようだ。階段やワープなど様々だが、ワープにしておく。ワープならポイントを消費しないが、階段などモノを創る場合はポイントを使う。ワープの方が便利ではと思ってしまうが、ダンジョンであることを考えると階段の方が風情がある。やたら長い螺旋階段にしたり、手前の部屋に隠し階段を用意したりした方がそれっぽい。


 俺は別に建築の設計とかやっていたわけではないので、綺麗な間取りとかよくわからない。古龍の森での拠点も『全知全能』さんに任せ切りだったし。


 とりあえず一番近い部屋は大広間としよう。そこから全ての部屋に繋がるようにすればいいか。


 そう思って百ポイント分の部屋を四つ分に拡張しようとしたのだが。


『対象の部屋に生物がいるため拡張できません』


 と出てきてしまった。……いや、まだなにも置いてないんだが?


 首を傾げてから他のヤツらも連れてきていたことを思い出す。振り返ってみると誰もいなくなっていた。


「……」


 どうやら創った部屋に移動したらしい。強制移動とかできないんだろうか。と思って色々画面を触っていたらアナウンスという機能があった。もちろん『全知全能』が翻訳した俺にわかりやすい言葉なのだろうが、要は場所を選んでそこに音声を届けられるようだ。


「……悪いが、部屋広げるから戻ってきてくれるか」


 俺はあまり自分の声を聞くのが好きではない。アナウンスに使われているとか考えただけでも嫌になってくるが、声を届けるだけなら自分は聞かないので問題ない。部屋の様子を映し出す画面もあったが、ワープを使って戻ってくる。

 全員が戻ってきたことを確認してから部屋を四つ分にまで広げた。縦横二十メートルもあれば一旦は大丈夫だろう。


 それから大広間の周囲に人数分の部屋を創っていく。広さは縦に部屋を並べた二つ分だ。ポイントには余裕があるのでもっと広くてもいいが、広すぎても使うに困る。要望があれば聞くとしよう。

 大広間と各部屋を繋ぐ方法は扉だ。猫型ロボットが出すドアのように直接部屋に繋がる扉を大広間の壁に設置していく。ワープみたいなモノだ。扉をつけたのは最終的に誰がどの部屋を使っているかわかるようにするためだ。この部屋でならどことどこが繋がっているかわかるが、俺も実際使う時に部屋を間違えそうだからな。


 人数分創ってしまったが、ニアとミアは同じ部屋がいいかもしれない。細かいところは後で本人に聞こう。


 合計十三部屋創ったので二千六百ポイントの消費だ。部屋を創るだけなら大した消費じゃないな。でなければ広大なフィールドなんて創れやしないか。

 ただデフォルトでは土の部屋だ。ダンジョンならいいかもしれないが、拠点にするとなると材質も変えた方がいい。拠点を建てる時にも使っていた木造に変更するか。材質変更は人のいない時にしかできないようだ。木製にするのに部屋のマス×五十ポイントが消費されていく。


 試しに誰もいなかった部屋で家具を置いてみる。ベッド毎にランクづけされていたので、良質なベッドにしておいた。その上には豪華なベッドやら天蓋つきベッドなどがあったが、そこまで奮発する気はない。有り余るほどあるからと言って使いすぎればすぐになくなってしまうのだ。金と一緒。

 適度な妥協も交えつつ、タンスやら絨毯やらを設置してみた。因みに人がいる時でもモノの設置はできるようだ。人がいるところには置けないが、いないところには置けるようだ。


 ニアとミアの目の前でサプライズ的にベッドを出現させ、嬉しそうにぽんぽん跳ねる二人を見たかったからでは決してない。


 良質なベッドが百、タンスが五十、絨毯も五十だ。こうして見ると土とはいえ部屋一マスが百ポイントって安いんだな。部屋がないとなにもできないからか。


 部屋への通り道には制限をかけられるらしく、誰も部屋に入ってきて欲しくなければ所有者だけを許可するように設定できるようだった。


 ダンジョンと言えば、ということで魔物を設置してみたい。魔王様からの依頼でもあるしな。

 とりあえず部屋を創ってから、俺のみ入室可としておく。魔物を置いた部屋に誰かが入ってきたら困るからな。


 魔物を置くにしても、さっきまで設置できる画面はなかった。なので他にもなにかする必要があるのだろう。と思って色々探っていたら、個別で魔物用の画面があった。魔物毎に生成するポイントが決まっていて、生成してから部屋のところで配置できるようになる、という感じみたいだ。

 一覧を眺めていたが、俺がダンジョンで戦った神々は千万単位を超えている。数千万の魔物を十体以上って、やっぱあのダンジョンヤバかったんだな。それ以上の存在もいるようで、下の方に億超えの化け物共が並んでいた。俺が戦った神々はあくまで神々を魔物に落とし込めた模造品、ということなのかもしれない。……因みに下から三番目にザレの名前があった。こっちも間違いなく模造品だろうが。ということはあいつ、魔物という括りだけなら史上三番目に強いってことか? ヤバいな。


 だが俺が聞いた話だと神が創ったという最初の生物は人、鳥、蛇、狼、龍のはずだ。ザレの下にいるヌタという蛇が二番目だとして、一番下のヤツはなんだろうな。本来文字が書かれている部分が黒く塗り潰されている。……こいつとだけは関わりたくねぇ。いや正体知らんのだけど。人は魔物に該当しないだろうから一覧にないのは当然として。


 この一番下にある魔物は意図的に翻訳しなかったのか?


 ないとは思うが一応『全知全能』に尋ねてみる。


 ――否。現状では生成不可能と推測される。


 やはり最初からこうだったようだ。……一応神のダンジョンを攻略した報酬として拡張してあるはずなんだけどなぁ。


 生成に必要なポイントだけは書かれているが、数えてみたら一兆ポイントだった。今の俺でも五千日かかるんだが。しかも俺は一応この世界においてステータスだけなら結構強いはずなので、このダンジョンコアを設計? したヤツはこいつを生成させる気なんてないだろう。あとポイントを仮に集めることができたとしても、おそらく今のダンジョンコアでは生成する機能かなにかが足りない。まぁ生成する気はないが。


 因みにザレ達始祖皆さんは一律で十五億で生成できるようだ。模造生物だと思うので、ポイントが余ってきたらザレの仮面を被ってザレを生成して戦闘してみるのもありかもしれない。暇を持て余した神々の遊び。


 閑話休題が長すぎる。


 さて、本題のダンジョンで生成した魔物を倒して神器レベルの装備品を獲得する方法が使えるかどうか、だが。

 使えるというのが答えだった。魔物を生成する時にドロップ品とでも言うのか、それを設定できるので生成して倒して獲得、を繰り返せば同じ装備品を何個も獲得することができる。


 例えばゼウスを十体生成して倒せば十個ずつ報酬が得られるというわけだ。まぁ普通はそんな風にできないと思うので、神のダンジョンコアを手に入れることは結構チートなんじゃないだろうか。……それを移動用拠点ゴーレムにするとか、俺の使い方勿体ないな。


 まぁ本格的なダンジョン経営なんかする気はないので、俺の使いたいように使うつもりだが。


 一旦魔物の生成はやめておいて、他の機能も色々と眺めていたら一つ気になる使い道を見つけた。


 それが、ガイド兼守護者の生成だ。

 ダンジョンコアの管理と守護などを担ってくれる存在を創れるらしい。ただし十億ポイント必要なのですぐにはできないが。

 これのいいところは、所有者が要望を伝えると自動で要望に合致したことをやってくれるところだ。要するにダンジョン限定の『全知全能』さんみたいな存在である。正直項目というか、やれることが多すぎて自分だと面倒そうだなと思っていた。なのでこういう機能は有り難い。


 大体の拠点が出来上がったら、次はガイドを生成しよう。魔王軍には悪いが、装備品は後回しだ。


 ……あと結構重要な項目に、操縦というのがある。ダンジョンはそもそも移動することがないので、無理矢理創ったわけだが。ゴーレムとなったからには動かす必要がある。普通のゴーレムは勝手に動くが、こいつは違う。これは完璧な制御室が備わっている欠点とも言えるが、制御室があるが故に制御室でコントロールしなければならない。で、そうなると操縦するわけだが突貫で造られたゴーレムに自動操縦機能なんてあるはずもなく、誰かが動かさないといけない。だが思っているよりも難しいようで、ロボットアニメのようにきちんとした装置があるわけでもなく。という感じで手動操縦しかまだできない状態なのだが、一から訓練するのは長く時間がかかる。そこでダンジョンから生まれた存在に操縦してもらおうというわけだ。俺、誰かの真似をすることはできるがゼロからなにかを始めるのって物凄く苦手なんだよな。ロボットアニメでも一々ボタン操作だとか説明しないし。


 そんな諸々の事情を汲んで、俺はまず五日かけてガイドを生成することに決めたのだった。

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