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  二次元って楽だったのですね。

 むしろ二次元って恐ろしいと思う今日この頃です。


 ご機嫌よう皆様、イリーナ・ローサ・メルティウス8歳でございます。


 二次元の場合は章が変わると急に数年の月日が経っているなど一年以上の経過がありますが、現実は当然そんなに簡単には進みません。

 この世界の暦は366日で一年が巡る世界ですので、その日一日一日に生活の積み重ねで年数経過をして行くものですよね。これ常識。

 もっとも、その常識は中二的ステキ思考の方以外の常識です、と捕捉させていただきます。


 今日は何やら突然お父様とお母様に呼ばれました。


 家の事業が軌道に乗り、実はお母様が経営の才覚があったことが発覚し事業のほとんどをお母様の手腕で大きくなりました。

 その反動で両親が忙しく最近全く会わなかったのですが、今日突然じいやを介して呼ばれました。


「失礼いたしますお父様、お母様。イリーナですわ。」

「入りなさい。」


 書斎に入ると、ソファーにはお母様が座り、誰かを抱きしめていました。

 ・・・不倫は隠れたところでやるべきだと思いますの。


「イリーナ、よく聞きなさい。アッシェンクラン伯爵夫婦が事故によって亡くなった。」

「・・・確か叔母さまの嫁がれたお家でしたよね。お母様の妹様と聞き及んでおりましたので、まだお若いですわよね。心よりお悔やみ申し上げます。ご葬儀は?」

「王都近郊だったし社交シーズンだったこともありあちらで済ませてきたよ。」

「そうでしたの。確かに叔母様にお子様がいらっしゃったとか。残念ながらお目にかかったことはありませんが、その方はどうなさったのですか?」


 そう聞くと、お母様が体をビクッとわななかせました。すすり泣きも聞こえてきます。

 叔母様には私の3歳年下の子供がいると聞いていました。

 会ったことはありませんが、まさか、そんな小さな子まで犠牲になってしまったのでしょうか。


「いや、奇跡的にもセルアは助かったよ。マリーア。」


 お父様がお母様を促し、お母様は身を起こし私の方を向きました。


「そちらの方が叔母さまのお子様ですのね。」

「ああ、そうだ。セルアという。事故に遭遇したが彼だけ奇跡的に怪我だけですんだ。」

「事故の瞬間アマーリエがセルアに覆いかぶさって、セルアは助かったのよ。けれど、アマーリエたちは亡くなってしまったの。」

「そういうことで怪我自体はそこまで重傷ではなかったんだが、目の前で両親が死んでしまったことの衝撃で言葉と感情を無くしてしまってね。」


 ・・・あら?なんだか過去の経験と食い違っているのですが、どういうことかしら?

 私も知識の中にあるセルアという人物は、セルア・ティーノ・メルティウスといって、父であるディーノ・ジェクス・メルティウス侯爵と愛人の子供で異母弟にあたり、貴族の血にプライドを持つイリーナ・ローサ・メルティウスとその取り巻きに虐め抜かれて精神を歪ませてしまい、最後には家の悪事を暴露し一家処刑の引き金となる少年です。

 そして彼はイリーナが9歳の時にメルティウス家に引き取られるはずだったのですが、現在8歳です。

 今までの改革が功を奏してきているという現れなのでしょうか。

 そうだと思うようにしましょう。


「こんにちはセルア様。イリーナ・ローサ・メルティウスでございます。よろしくお願いしますね。」


 怖がらせてはいけないと思い一定の距離を開けて挨拶をしました。

 彼はなんのアクションを見せることなく前をじっと見ているだけ。

 それも見るというより今の彼には何も映してはいないでしょう。


「ずっとこのままで、この子ったら涙も流さないのよ。それが余計傷の深さを感じてしまって、見ていて痛々しくて。」


 お母様が彼の頭を撫でながら涙をハンカチで拭いていう。


「そうですの。セルア様はこの家で引き取ることにしまして?」

「そうしようと思っている。幸いうちはイリーナのおかげで持ち直しことができて余裕がある。マナーハウスは田舎だから都会のスキャンダラスなことは耳に入ってきにくいし、逆に自然豊かな土地だ。体の傷はもちろんだが、心の傷も癒してくれることを信じているよ。」

「そうですね。アッシェンクラン伯爵家といえば、王城に近い一等地に居を構える上流貴族のお家柄。その当主と夫人が亡くなっては口さがないものが騒ぎ立てましょう。この領地だったら静かだし自然と動物がたくさんですので、セルア様も気が紛れてくださるといいのですが。」

「そうだね。私たちは忙しくてなかなかこちらに帰って来られないことも多いから、イリーナよろしく頼むよ。」

「はい、かしこまりました。アルフレッドもオーラクルム・アルカに入学してしまって私自身も寂しいのでセルア様と一緒にいられるのであれば安心しますわ。」


 なるべく怖がらせないようにゆっくりと静かに、はっきりとセルア様の前にしゃがみセルア様の頬に触れます。


「改めてよろしくお願いしますね、セルア様。どうぞゆっくりなさってください。」


 やはりなんの反応もありませんね。

 まぁ十分予測範囲内ですので、気にしたら話が始まらないですものね。



 それからの彼はというと、予想通りどんなに話しかけても反応を返してくれることはなく、私が一方的にペラペラと話すだけでした。

 それでもくじけずに話しかけ続けたは、私自身が寂しかったからにほかならないんですけどね。

 アルフレッドが魔法学校に入学して不在なので対等に話せる話し相手が欲しかったというのが最大理由。

 結局なんだかんだ言っても人間ですので、自己中心的なのですよ。

 なので、今日も今日とてガンガン話しかけまくりますわよ!

 待っていてくださいませねセルア様!




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