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「おう、先週の課題は終わったか?終わらねぇとか言った時点で私刑な。」

「もちろんこなしました。そして召喚に成功しましたわ!」


 ええ、あれからもう一度召喚術を試しました。

 反対属性や相性の悪い属性を召喚して補強するのはやめました。

 またあんな面倒な事態に遭遇するのはごめん被ります。

 アルフレッドに危険な選択はもうおやめください!って泣いて止められました、まる。


「出て来て下さいな、私のお友達さん!」


 第一人生の住んでいた日本で流行っていた、某ゲームのキャラ呼び出しの掛け声みたいですが、ゲーム主人公願望はございませんので誤解なきよう。

 ポポポポン!と可愛らしい破裂音を立てて、差し出した両手の上や頭上や肩の上に多少の重みを感じると、そこにはちょこんとお座りしてくれている契約獣が四匹います。

 キラキラと深紅に輝く鱗を持ったドラゴン、漆黒の毛並みに緋い瞳の子犬、鮮やかな瑠璃色の羽が美しい鳥さん、真っ白の子猫です。


「っはあぁぁぁ!?」


 素っ頓狂な声をあげた先生にドヤ顔をしました。

 ふふん、どうですか希少価値の高い召喚魔法の素質がありましてよ、どうぞご存分に驚いてくださいませ。


「ちょ、ま、マジかよ!?それ本物かよ!」

「こんなに可愛らしいコが作り物なわけ無いですわ。失礼な先生ですわよね〜。みんな」

「なんでそんなにミニマムなんだよ!本来もっと凶暴でプライドが高くて人間に使役されるのを最も嫌ってる聖獣が、なんで四体もいるんだよ!イリーナ嬢この精霊がどんな存在かわかってんのか!?」

「もちろん、私の可愛い召喚獣ちゃんですわ。戦いも補助も愛玩としてもマルチに活躍できる有能な相方でしてよ。」

「アホか、んなこと聞いてねぇ!むしろこの方達の強さでマルチに使えねぇ訳ねぇだろうが!てか、聖獣を愛玩動物呼ばわりするな!俺が聞いてんのはこの方達の存在そのものだ!精霊界ひいてはこの人間界にどんな影響があるかわかってるのか!?」

「先生、お嬢様へのその発言は不敬罪ともとられかねない暴言ですよ。」

「やかましい、このボケ従僕!」

「何をそんなに慌てていらっしゃいますの?いつもの面倒臭ぇ発言を連発する気怠げな雰囲気が無くなってますよ。」

「誰がこんなに面倒臭ぇ状況にしたんだ!俺は言ったよなぁ、身の丈にあった召喚獣を喚べと。それが何がどうなって炎に風に水に大地の神が四体勢ぞろいで契約獣になったんだよ!」


 だってノーマルな無属性の召喚術を使ったらみんな仲良く出てきてしまったんだもの。

 そう言ったら拳骨が落ちました。


「アホかぁ!可愛らしく言ってもやってる内容がエグいわ!」

「クロエ殿・・・いくら先生といえどもいい加減見過ごせません。」

「だー待て待て。そんなにすぐカッカするな・・・って、おい。嘘だろ?」


 今まで静かにしていたアルフレッドですが、冗談半分に脅しを含めて剣を抜こうと鞘から少し剣を出したのですが、クロエ先生の顔色がサァッと青ざめていきます。


「アルフレッド、お前確か召喚術のセンス残念なくらい皆無だったよな。なんでお前の剣から途轍もないハイレベルな精霊の気配がプンプンするんだ?」


 聞きたくないがまさか、いや、そんなことあるはずがない。しかし可能性がないわけじゃねぇが、でもなぁ、などブツブツ呟いているのですがそんな姿をみてしまった世の淑女達はがっかり残念がりましてよ。

 せっかくのイケメンさんが台無しですわね。


「お嬢様が呼び出した雷神トールが宿っておりますが、それが?」


 あ、ダメージが計り知れないものになったみたいですわね。

 ズドーンという言葉が似合うぐらい打ちひしがれています。大丈夫かしら?


「ほんっとに良くも悪くも、この場合は最悪な方向にだが期待を裏切らねぇなぁ、イリーナ嬢とその愉快な仲間はよぉ。まぁいい。とりあえず何の問題もなく契約は済んでんだな。」

「ええ、まぁ。」

「歯切れ悪ぃな。」

「喚び出した時に雷神とは一悶着ありましたが、契約そのものは恙無く完了しておりますわ。」

「・・・一悶着が気になるところだが聞かなかったことにしといてやる。聞いたら最後さらに面倒臭ぇ事に巻き込まれるに決まってる。とにかく、イリーナ嬢はこれ以上契約獣を増やすな。召喚術も使用禁止だ。」

「えぇ、そんな!」


 酷過ぎます。せっかく魅惑のファンタスティックワンダーランドの扉が開いたと言うのに、それを禁止だなんて!

 やはり鬼畜教師でいらっしゃいますわね。


「鬼畜っつったのはこの口か。ええ?」

「いひゃい、いひゃいですわ。ひょんにゃひょひょいっひぇまひぇんわ。」

「嘘付け、痛いほど抓んでねぇよ。それと言わなくても顔に出てるって言ったよな?アルてめぇもいちいち剣を抜くんじゃねぇ、お前の剣技とあいまって更に物騒極まりねぇだろうが。ったくいいか、俺は何も意地悪とか嫉妬心とかで禁止って言ってるわけじゃねぇんだよ。まぁ座れ。」


 今までの軽い雰囲気を纏っていた先生のそれが急に緊張感を帯びたものに変わり、私たちもいつもと違う雰囲気に呑まれてします。


「真剣に話すぞ。召喚師の希少価値が高いのは知ってるよな。俺を含めて資格を持っているのは両手で収まるほどしかいねぇ。それは召喚術を扱うにはセンスと言うか素養みたいのが必要だからだ。召喚獣との契約はその素養の質でレベルが決まる。その素養は突発的に身分に関係なく極稀に生じるイレギュラーみたいなもんだ。それを魔法従事者はギフトと呼んでいる。かつては神々に近い存在だった者は多く、魔法と言ったら召喚術を駆使したものがほとんどだったが、今はそのギフトを持つものは非常に少なくなり、ギフトを持って生まれた人間をどれだけ多く確保する事ができるかでその国の魔法事情も左右される。課題をこなしてあるなら常識的な話だよな。」


 先生が真剣な顔で話し始めたのは、課題だと投げつけられた教本の初期段階で書かれていた、謂わば常識、という内容でした。



 その後先生はおチャラけることなく分かりやすく召喚術と召喚師、召喚獣と契約獣のことを教えてくださいました。

 ちょっと長くて難しかったので割愛します。

 まぁ、分かりやすく要約して説明致しますわね。



 召喚術を使える人間は各国に二、三人いるかいないかなので、どの国も一人でも多くの召喚師を確保したいと言うのが本音です。

 ですが、あまりにも多くの召喚師を囲うと、余計な戦いの火種になってしまうのでそうならないように均衡を保っているらしいのです。

 そしてその召喚師一人につき一頭と契約を結び、使役が可能になります。

 そのレベルは高くてもレベル(スリー)と分類されている中級レベルのモノがほとんどで、『双頭の賢者』の二つ名を冠する最強の召喚師と誉れ高いクロエ先生ですらレベルⅢの頂点である双頭の鷲だそうです。

 それにしても『双頭の賢者』ってなんだか厨二病みたいな二つ名ですわよね。ぷぷ。



 話がずれてしまいましたが、そのような召喚師のレベルの中、私が喚び出したのは超最強レベル(ゼロ)の精霊で、しかも五体ともなると私一人で国家転覆が狙えるそうです。

 そんな事やりませんとももちろん。面倒ですし。


「イリーナ嬢はレベル(ゼロ)が何体いるか知ってるか?」

「え、読んだ本には書いてありませんでしたが。」

「普通は知らねぇよ。知ってしまったらいろいろ都合が悪いからな、通常なら極限られた人間しか知る事ができない。知ったら面倒事に巻き込まれ知らなきゃ平穏無事。当然後者を取るだろうし、それを知る事ができるのはまず召喚師の前提が合ってのことだ。」

「先生は知ってるご様子ですが。」

「聞くな言うな触れるな。俺だってこんな史上最低レベルで面倒くせぇ事に巻き込まれたくなかったっつーの。俺の場合は悪ふざけが得意な性質(たち)の悪ぃ知り合いに無理やり引きずり込まれたんだよ。召喚師になんざなりたくもなかったよ。今思い出しても腸が煮えくり返る思いだ。」

「はぁ、分かりましたわ。」

「天、地、水、火、風、雷。それがこの世界を取り巻く魔法の根源だ。それをレベル(ゼロ)と称している。この五つだけで世界が精製されたと知ったら非難囂々(ひなんごうごう)喧々諤々(けんけんがくがく)になるに決まってる。そうなりゃますます面倒くせぇだろ。だから、あえて言わないってのもあるが意図してる面もあるってこった。で、その五つの要素全てがイリーナ嬢一人に召喚されたあげく契約しちまったってバレたらその場で拉致監禁されてどこぞの王宮に連れ込まれて、腕ずくで孕まされて立后決定。一生不自由どころの騒ぎじゃねぇ。閉じ込められて陽の光を見ることも出来なくなるだろうな。あるいは世界を舞台にしたイリーナ嬢をめぐる世界戦争勃発だ。どうだ、面倒じゃ収まりつかねぇぐらい面倒くせぇじゃねぇか。で、召喚師の俺は洩れなく巻き添え決定だ。見ろ尚更面倒くせぇ。」


 あ、やっぱり面倒臭ぇはデフォなのですね。

 ですが、先生のおっしゃることも最もです。


「・・・確かに面倒くせぇ、な事態に直面してしまいそうですわね。」

「お嬢様には似つかわしくないお言葉遣いですよ。お嬢様の事はこのアルフレッド、命を賭けてもお守りいたします故ご安心下さい。」

「アルフ・・・。ありがとうございます。ですが、命をかけては欲しくありません。戦う時は供に生き残らないと許しませんわよ。」

「はっ!」

「最初に言うべきことはそこかよ、おい。そしてどこまでいってもブレねぇ奴らだなあ。安心の安定感だわ。」

「当然でしょう。アルフと私は一蓮托生ですの。アルフが私を守るのは当然ですし、アルフを危険な目に合わせないように危機回避をするのもまた当然ですわ。」

「なんかもう。お前らはそれでいいよ。ただ、もう少し視野は広げとけよお前ら。二人だけの世界に完結しちまったら良くも悪くも正しい判断をつけられなくなるからな。ま、どうせお前らの能力ならオーラクルム・アルカ(魔法学校)に入学することは間違いないから、そこで友達関係を構築できるだろうけどな。 」

「そうですね、先生のおっしゃる通りだと思います。私たちは視野を広く持たないといけませんわね。それに大切なものを守るためでしたら手段をいといません。」

「そのためにも友人関係すらも作り上げて己の利益を守るってか。その冷静さといい大人顔負けの思考といい末恐ろしい女だな。イリーナ嬢あんた本当に7歳かよ、あんたと話しておると40歳過ぎていろいろ熟れた女性と話しているような気分になる。」

「どうとでも。褒めていただいてありがとうございます。」


 クロエ先生の観察眼と直感には驚きます。

 前世の記憶も年齢に計算するとアラフォーですしね。

 あまり細かい年齢は計算しないでくださいませね。凹みますので。


「とりあえず、ばれないように生活しますわ。ですが、この子達は外で遊びたいみたいなので積極的に隠すことはしたくないのです。」

「おい、俺の言ってたこと分かってるか?」

「それは理解してますわ。危機感を持って対処します。けれどそれ如きで怯えて、私を選んでくれた彼らの思いをないがしろには出来ません。それに、彼らはこの世界の根源の存在です。その彼らが普通の人間に気どられるとお思いですか?それは彼らの力を侮っていると言われてもしょうがありませんよね。それに、これまでご教示頂いて感じたことですが、先生は宮廷魔術師の方以上の能力をお持ちですわね。それを巧みに隠していらっしゃいますが、わかる人間には分かってしまいましてよ?」

「・・・はぁ。ほんとわっかんねぇなぁ。本当に7歳のガキかよ?あ〜あ〜ほんと末恐ろしいぜ。」


 ガシガシと頭を掻きながら呆れつつも面白がっているような口調で言いながら苦笑いを浮かべます。

 そんな先生に私はにっこりと微笑むのでした。




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