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イリーナの年齢設定を間違っていたので修正しました。

「というわけでこの場所を少し貸してくださいな。」

「は?」


 アルフレッドが自主練習を終えて着替えている最中に突撃してしまった模様です。さすが鍛えている男性の筋肉は美しいですわね。

 無駄な贅肉も筋肉もなく、体を動かす為に付いた筋肉は芸術品だと思いますの!

 鎖骨や二の腕、背筋に胸筋にシックスブロックの腹筋が美味しそうですわね!


「お嬢様、いくらなんでも無防備すぎます。」

「あら、アルフは絶対に私の意に反する事はしないわ。なので大丈夫です!」

「そんなに全力で断言されるのもなにやら悲しいものがございますね。」

「そうかしら?信頼の証ではありませんの?」


 はて、と首をかしげて訊ねてしまいましたがアルフレッドは大きなため息をついて項垂れてしまいました。


「ところで、先ほどのお話はなんでしょうか?」

「そうそう、クロエ先生の課題をするので鍛錬場を貸してくださいな。」

 

 何が起きるか分からない召喚術なので、安全を期したいところです。

 召喚術とは、精霊界にいる精霊や神霊を召喚術という魔法陣と呪文唱和によって精霊界と現実世界を結び、喚び出し契約を結ぶ事で己の戦力、補助、愛玩として側に置くという、ファンタジーキター!というヒャッハーな魔法なのです。

 コレを望んでいました!精霊とか妖精とか神々とかまさにファンタジーの王道!!

 この魔法は様々な制約があって、誰もが使えるという魔法ではないのです。

 ひとつは年齢。7歳以上でないとその適性が現れません。なぜその年齢なのか分かりませんが、7歳以上の人間が始めて使える様になるのです。

 もう一つは、召喚術には適性があります。血筋や身分など関係なく、その人物個人の魔力に宿る素質によって召喚術が扱えるかが分かれます。

 その適性が分かるのは初めて召喚術を使った際で、どんな小さい召喚獣でもいいので喚ぶことが出来たら適性があると分かるのです。

 それまでは一切分からないと言うデッド・オア・ライブな魔法なのです。

 過去の人生では召喚術を使えた様子はないので、どうなるかは不安なのですが、転生チートと言う事で奇跡が起きる事を祈っております!

 そうでないと、私のこれからの人生楽しみが半減してしまうと言うものですわ!


 召喚術は初めてなので、どのような規模なのかわからないので、とりあえず屋外でなるべく強度の高い広い場所を探したら、この修練場に思い至ったというわけです。


「というわけですわ。」

「いやいやいや、全然話が繋がりません。なにが、というわけなのですか。」

「私の中では繋がっていましてよ。とにかく召喚術をするので、修練場を貸してくださいな。」

「どんな大きい召喚術をしようとしているんですか!?危険なことする気満々じゃないですか!?駄目ですよ!」

「だって、初めての召喚術なんんですもの。何があっても対処できるように不測の事態に備えて大きな平場がいいじゃありませんの。クロエ先生の課題もあることですし、ね、お願い!」

「そう申されましても。」


もう一押し!アルフレッドは真面目なのが長所ですが、少々頭が固いのですよね。もっと柔らかくなってくださってもいいのに。


「不測の事態に備えてアルフレッドが側にいて下さるのですから、安心ですし!ね、お願いですわ。」


そう言ってアルフレッドに拝み倒します。その様子に諦めてくれたようで大きなため息を吐きながら項垂れました。


「あまり無茶なことはなさらないで下さいね。」

「善処しますわ。」





 とりあえず私の得意属性が水系でアルフレッドが火炎系なので、雷系にしましょうか。

 召喚用の魔法陣に雷系のスペルの書き込みと呪文詠唱をします。


「我が名はイリーナ・ローサ・メルティウス。契約を望む者、使役を望む者、向上を望む者。我が呼び声に応えたる存在(お方)よ姿を現しませ雷電に包まれし選ばれし存在(お方)。インウォカーティオー・リートゥス!」


 教本通りに召喚術の呪文を唱えてみたのですが、どうでしょう?覚悟していた爆発的事象や気象変動諸々は起きる気配がありません。


「素質無し、なのかしら・・・」


 やはり現実は優しくないですわよね。魔法陣を消しましすか。


「イリーナ!!!」


 突然後ろから引っ張られ、体勢を崩したもののがっしりとした腕と胸板に包まれると同時に視界が暗くなりました。


「くあぁっ!」


 がぎいぃぃんっ、バチバチバチ!とアルフレッドの苦しそうな声と金属のぶつかる音、放電の音が間近で聞こえ、そのあまりの大きさに体を竦ませました。

 私の体を包むアルフレッドの力がグッと強くなり、その体温と腕の逞しさと先ほど咄嗟の呼び捨てを思い出して若干キュンとしたのは言わないでおきましょう。

 空気ぐらいは読める子です。


『俺様を呼び出した人間は貴様か小僧。』


 内蔵に響く、超重低音の美声が注がれました。


「・・・・・。」

『いや、違うな。貴様には召喚を許された素質が皆無。なればそこの小娘かっ!』


 バヂィッ、キィンッ、と強い放電音がして、アルフレッドが剣で防いだのか金属音が真上からしました。


『小僧、何故邪魔をする!邪魔をすれば貴様とて容赦せぬぞ!』

「お嬢様に何をするつもりだ!返答次第では神といえど叩き斬る!」

『フアッハッハッハ!そのような脆弱な人間如きの肉体と貧弱な刃で我が体にかすらせることすら不可能ぞ。いい気になるな小僧!』


 ブアッと抑えられていた殺気が襲いかかりました。

 私はとんでもない大物を召喚してしまったようです。


「だからどうした!どんなに不可能と言われようともお嬢様を守れるならば刺し違えてもやってみせる!!」


 アルフレッドからも今まで感じたこともない怒気とも覇気とも殺気とも言える気迫を感じました。


『片腹痛いわ。その言葉後悔させてやるわ!!』

「こっちのセリフだ!吼え面かかせてやる!」

「きゃぁっ!」


 お互いの力がぶつかり合い余裕がないのか、保護結界魔法を施されて横に半ば突き飛ばされました。

 地面に倒れこみましたがアルフレッドが風魔法で体を覆ってくれたおかげで傷一つないのは、やはり流石は私の従僕ですよね。


「くぁっ!」

「アルフレッド、血が!」

「大丈夫、かすり傷です。」


 そう言いますが、アルフレッドの肩からは血が流れ出ています。それも大量に。

 ザッと血の気が引くのがわかりました。

 この怪我の程度だと命にも関わる深さです。

 命に関わらなくても確実に体に傷が残ってしまいます。


『ほう・・・。』


 ようやく召喚した存在を目にすることができ愕然としました。

 雷を身に纏い放電させながら威圧感を放つ金色の体に紅の瞳を持ち、鋭い牙を剥き出しにした獅子のようなその姿は正に伝説の精霊、無敗の帝王と呼ばれている雷の神でした。

 その雷の神の左前足に小さく傷がつけられているのが見て取れました。

 雷の神からもやはり驚きと喜びを含んだ声が聞こえます。

 え、喜びって被虐の気でもあるのかしら。


『主を守るためだけの意志しで我に傷を負わせたか。ふ、ふふふ、ははは!これは意なこと!げに愉快!脆弱な人間が我に一太刀いれたと!愉快愉快。小僧名は何と言う。』

「アルフレッド・オルソ・ゲイトルード」

『ふん、人間にしてはずいぶんご大層な名前だな。契約できる素養はからきしだがその意志と剣技を認めてやらなくもない。我が名はトール・フロールリジ・ヴェオール・ムジョルニア。契約を成さん。』


 えぇっ!?

 展開が速すぎてついていけずに目を白黒させてしまいましたが、私の召喚術で呼び出した雷の神が剣を交えただけで素質なしのアルフレッドを契約者として選んだって事ですわよね。

 え、アリなんですかこういうイレギュラー。

 しかもツンデレの神様とかワラワラって感じです。

 なんかアルフレッドの愛剣が光り輝いておりますが、まさか・・・。


『その剣に宿ろうか。我が必要な際は剣を持て我に呼びかけよ、さすれば姿現さん。』

「は、はぁ。」

『なんじゃ覇気がないのぉ。先ほどの心地のよい殺気はどうした。』

「いえ、なんというか、驚きすぎて。お嬢様の召喚獣と契約を結んでいいものか思案しております。」

『・・・そうじゃったの。まぁよい小娘。どうしても我の力を貸して欲しゅうてたまらんときは我が名を呼べ。聞いておったのだろう、特別に契約者意外でも呼び声に応えてやってもよかろう。』


 あ、うん。やっぱり剣に宿りますよね、この話の流れ的に。

 しかもツンデレ神様の、なんかその上から目線の物言い、腹が立ってしょうがないので、本当に雷の神を喚ばなければならない危機的状況だった時にだけ最終手段で喚ぶことにいたします。

 とにかく雷の神とアルフレッドの契約が終わり、姿が消えてからようやく気づいたの事がありまして。


「・・・私の召喚術、どうすればいいのかしら」


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