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滅亡フラグへし折ります!

 さて、お父様が屋敷にいらっしゃる時を見計らってこれからの提案とお願いをしに行きましょう。

 家という言葉の概念に全く当てはまらない我が家の、ながーい廊下をもはや散歩といってもいいぐらいの距離を歩き、ようやくお父様の書斎の前の扉にたどり着くと少々の緊張感をもってノックします。


「はいりなさい。」

「失礼いたします、お父様。」

「おお、イリーナ。今日はどうしたんだい? 体はもういいのか? この間倒れたばかりだし、あまり無茶をしてはいけないぞ。」


 そう優しく甘やかすのはデフォルトのようです。だからこそ、これからお願いする内容が通りやすいのですが。


「今日は、お父様におりいってお願いをしにきましたの。お忙しい中申し訳ないとは思ったのですが、だからこそお父様がおうちにいらっしゃる時で無いとお話ができないと思ったので。」

「そんなに遠慮する事はない!可愛いイリーナの為とあらばどんな事でも叶えてやろう! パパに任せないさい!! パパに不可能な事はないんだぞ!」


 うん、言っている事がイタいのと将来の片鱗がチラ見していたので、そこから矯正に入りましょう。


「ありがとうございます。それではこれからは遠慮なくお父様にお会いしに参りますわ。つきましては早速お願い事になってしまうのですが、私に家庭教師をつけてくださいませ。イリーナも今年で6歳になります。将来このメルティウス家を守っていく為には愚か者ではいられません。勉強は開始時期が早ければ早いほど身となり糧となり、将来の大きな味方となると思います。権力を笠に着て横暴を働いたり、悪事に手を染めたり、人を陥れたりて人を傷つけてでも財や力を成したいと思う愚か者にはイリーナはなりたくございません。それに私の敬愛しあこがれるお父様はそのような後ろ暗い事もなくこのメルティウス家を守ってこられました。イリーナはお父様のような清廉高潔な人間になりたいと思っているのです。どうかイリーナの願い聞き届けていただけませんか。」


 お伺いという立場を保ちつつ、既に決定事項だ、と言わんばかりの語気の強さと若干お父様への脅しを織り込み一気にまくし立てノーとは言わせないようにもってゆく。

 第一の人生の際にわたしが得意としてきた交渉力が少しでも生かされたらいいのですが、お父様の顔色を窺う限り脅しは有功だったようですね。

 権力を楯にしている自覚なのか、他者を傷つけている自覚なのかは分かりませんが、少なくともお父様にそれなりのダメージは与えられた事でしょう。


「この世界は魔法が物を言うのでしょう?ましてやこの国は世界最高峰の魔術学校を有する魔法大国ですわ。そのネブラワレースの中でも指折りの名家と誉れ高いメルティウス家直系の者が魔法もろくに仕えず、増えるのは体重と宝石と重圧だけではお話にならないと思いますの。ですから、魔法を重点的に語学、計算、歴史にマナーあと身を守る術を身につけたく思います。お父様お願いできますよね?」


 そうなんです!

 なんとこの世界は魔法魔術に精霊とファンタジックかつロマンティック設定がオプションされている異世界きゃっほうなのです!


 私に魔法は使えるのかって?

 過去四回の転生人生ではそれなりに使えておりましたので、今回も使えるはずです!

 いいえ、むしろ使えなければもったいないです。私が個人的に魔法を使いたいです。

 とはいえ転生人生の中での私という存在は、気位ばかりが高い侯爵家のわがまま令嬢を地でいく金髪縦ロールでオーッホッホッホと高笑いしてしまう程度にイタい少女だったので、潜在能力が如何ほどなのかは分かりませんが。

 ともかく魔法を使いたい一身で、じいやから教わったお父様を100パーセントいう事を聞かせる魔法の仕草言葉集からいくつかピックアップして攻撃してみました。

 上目遣いで見上げ、少し目を潤ませ、お父様の腕か手を取り、拝み祈るような体勢でおねだりする。とのことでしたので実行してみたら驚くほど効果覿面でしたわね。


「イリーナちゃんのためならなんでもしてあげるよ! 超一流の、それこそ王族が用意する以上の優秀な人間を揃えてあげよう!」


 ちょろい。ちょろすぎですわお父様。攻略のし甲斐もありません。

 ですが扱いやすいのは好都合です、大歓迎です。

 うっかり騙されないかだけは心配ですがお金と権力にがめつい様子なので、まぁ見守りましょう。

 それと家庭教師を雇っていただけるのは嬉しいですが、ひとつだけ釘をさしておかなければなりませんわね。


「ありがとうございます、お父様大好き!!でも、王族を超えてしまうのはダメだと思いますの。私たちは王様にお仕えする家の人間でございましょう?それが王族以上の知識や能力を身につけることは王制軽視と取られかねませんわ。我が家が、どの身分の、どの人間よりも上に立つ、という考えは危険だと思いますの。私の大切なお父様がそのような危険思想の輩と同じだと思いたくございませんわ。どうか他のお家と同等か少し優秀ぐらいに留めておいてくださいませ。あとは私の努力で差をつけたいですわ!」


 お父様の行き過ぎを止めつつ、お父様の自尊心を少しくすぐっておけばそんな大それた事にはならないでしょう。そう信じていましてよお父様。

 うんうん、私の娘は既に優秀で美しい!と誉めたてますが、身内びいきの親ばか具合から二掛けくらいで聞いておきますわね。

 さて、そんなこんなで家庭教師を迎え入れることができるようになった私はウキウキと準備をしておりました。

 お父様が息巻いていましたので、かなり優秀な先生に師事できると思いますので今から準備に勤しんでおります!


  先生方がいらっしゃるまであと三時間ほどですので、最終確認をいたします!




「お初にお目にかかります、レディイリーナ。畏れ多くもレディに魔法魔術のほかそれに必要な語学や計算、歴史など学力知識に関する全般的なことをお教えさせていただきます、クロエ・ヌークス・ボルドーと申します。どうぞクロエとお呼びください。」


 あらまぁ、家庭教師としてきたのは将来イケメンズたちの担当教官となる方でした。

 授業内容はわかりませんが、少なくとも魔法学校一の人気を誇っていた先生ですね。

 特殊クラスの担任でしたし間違いなく実力者でしょうね。


「マナーは僭越ながら私と、シェルティが担当させていただきます。若い頃は王宮で二代の王妃様専属侍女を勤めておりましたので、淑女としての立居振舞は申し分ないかと存じます。」

「まあ、そうだったの。」


 びっくりです。うちで働いてくれている者達はそのへんの子女より余程美しく、よく礼儀作法の勉強に来るご令嬢の話を聞いていていましたが、権力云々だけでなく本当にレベルが高かったのですね。

 それを徹底したのがじいやとばあやだなんて。ならマナーも問題もなく学べますわね。


「それとお嬢様、本日はもう一人紹介させたい者が控えております。こちらへ」


 じいやに促されて私の前で跪いたのは、私よりも少し年上と見受けられる年齢の少年でした。


「お初にお目にかかります、アルフレッド・オルソ・ゲイトルードと申します。このたびお嬢様の従僕の命を頂戴いたします事になりました。まだまだ至らぬ事が多いかと存じますが精一杯努めさせていただきます。」


 一言一言確認しながら、一生懸命間違わないように丁寧に口上し顔を上げる少年の顔を見て一人の青年の顔が思い浮かびました。

 この子、将来放火して出て行く護衛さんじゃないですか。

 過去の人生はもう少し出てくるのが遅かったような気がいたしますが、私が勉強したいと言い出したからその時期が早まったのでしょうね。


「お嬢様に従僕は早いのではないかと悩んでいらっしゃいましたが、お嬢様が勉学に励まれるというこの時期にお決めになったとのことです。お嬢様にはご不便をおかけするかとは思いますが、なるべくお手を煩わせないようにこちらで教育いたしますので、どうぞご容赦いただければと思います。」


 じいやとばあやは心底申し訳ない、という感情をありありと映しましたが私は逆に嬉しくなりました。

 まさかこんなにも早くチャンスが訪れるなんて!

 過去で彼が暴走したのも、彼の身分や身のこなしが十分じゃなかったり、成長できていないお嬢様根性の染み付いた私がいろいろとコントロールできなかったために深まった溝ですから、それを解消させる為には、幼いうちからのコミュニケーションだと思いますの!


「あら、どうしてじいやとばあやが個別に彼を教育いたしますの?私にも教育を施して下さる先生がいらっしゃるのに、非効率だわ。ねぇアルフレッド、私と一緒に勉強しましょう!!そうよ名案だわ。それなら私の側にいられるしマナーも知識も一緒に吸収できるわ。」


 子供らしく無邪気に、がポイントです。

 子供のわがままに見せながら、じいやとばあや、クロエ先生への決定事項を宣言します。

 身分から言ったら、たぶん私が一番うえのポジションにおりますし子供のわがままで済ませられる年齢と内容です。

 じいや、おねがい。と懇願すると、じいやは諦めた様子でため息と一緒に仕方ないですな、と許可を出してくれました。



 さぁ、がんばりますわよ!!




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