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小悪魔たちの謀議?

 その夜、生徒会室では実行委員会のメンバーが出たり入ったりしていた。

 夕方に会議が行われ、今日の状況把握と明日の予定確認がなされた。アクシデントはボランティア部の展示物破損事件だけで、その他の企画は特別問題はなかった。

 実は文化祭が始まった時点で実行委員会としてやるべきことはあまりない。だけど実行委員会のメンバーは、仕事がなくてもすぐ帰宅する人間はいなかった。高校生というものは、意味もなくダラダラと友だちと同じ空間にいたがる種族なのだ。

 ただし僕と君は会場係として、今日のボランティア部のような事件が起こらないように監視を続けていた。宮田さんや諸星さん、それに他の実行委員もそういった意識を持って動いてくれている。

 だけど大野や小杉、藤本たちは明日のステージ出演の最終チェックだと言って、体育館でバンドのリハーサルをしている。僕としては勝手にやってくれと思うが、諸星さんなどは奴らのそんな行動がかなり癪に触るらしい。彼女はコンビ二で買ってきたクリームパスタを食べながら「大野君たちは自分たちの責任がまったく分かってない!」と怒っていた。

 僕たち会場係は午後七時頃に各会場を巡回した。しかしその頃はまだ多くの生徒が残っていて、僕たちの見回りはあまり意味をなさなかった。もっともこんな風に「怪しい奴はいないか?」と目を光らせてウロウロしても犯人は見つかるわけはない。まあ僕たち二人にとってはアリバイ的な行動だ。(こんなことでもしていないと、大野や小杉たちがグチグチと嫌味を言うに決まっている)

「お疲れ様」

 午後八時過ぎに生徒会室へ戻った僕ら二人のために、諸星さんが熱いコーヒーを入れてくれた。

「ふうー」君はコーヒーを一口飲むと、お腹の底から息を吐き出した。

「河村君、葵、変わったことはなかった?」諸星さんはマイカップにコーヒーを入れながら訊いてきた。

「うん、今のところは変化なし。どこの会場も大丈夫。でもね、雪乃。私は絶対犯人は動くと思うよ、今夜」

 諸星さんの問いかけに対し、君はまたもや背中を丸め声をひそめて答えた。

「うんうん、私もそう思う。とくに理由はわからないけど、何となくそんな気がするよね」

 諸星さんもなぜか声をひそめて答えた。二人はまるで秘密のアジトでヒソヒソと謀議をはかっているようだ。

「河村君はどう思う?」君はまだミステリーモードで声をひそめている。

「確かにその可能性は高いと思う。でも」

「でも、何?」諸星さんの黒い瞳がクリクリと動く。

「これだけ対象範囲が広いと犯人を見つけるのは困難だ」

「うーん」君と諸星さんは同時に同じ声を上げた。

「だけど犯人像っていうか、こいつは怪しいっていう人間はいないの? 二人はこの事件に関して一番情報を持ってるでしょ」

 諸星さんは核心を突いてくる。僕は一瞬隣の君を見た。

「それがなかなか思い浮かばないのよ。二人であれこれ考えているのだけど」

 君もさすがにここで『大野犯人説』を披露するわけにはいかなかった。やはり推理小説マニアは簡単にネタばらしはしないようだ。

「雪乃、ちょっとこっちに来てくれる?」

 メインステージの進行をチェックしていた宮田さんが諸星さんを呼んだ。諸星さんはメインステージの司会者なので、二人で進行の打ち合わせをしている。その休憩中に彼女は僕らのコーヒーをつくってくれたわけだ。彼女たちは台本や進行表を見ながら黄緑色の蛍光ペンと黒のボールペンでチェックを入れながら、打ち合わせ作業を再開した。

 諸星さんが宮田さんの隣に戻ったあと、僕は君に声をひそめて秘密の案を伝えた。それは友人の石川達也と会ってから僕の頭の隅に引っかかっていたことに対する作戦だった。



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