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そろそろ俺も転生したい!

作者: ぺーた

「出来た……ついに完成したぞ! 転生マシーン6号が!」



 自分でも途中でわけがわからなくなって、多少のアドリブが入っているが、とりあえず完成した!



 唯一心配な点と言えば、バルブの代わりにシイタケを詰めている所ぐらいか。まぁ今のところ問題なく作動しているようだし。これは良しとしよう。



 さて、あとはテストあるのみだが。ここは、いつものように友人を騙して人体実験を行うとしよう。




 

「お、おい本当なんだろうな!? イベントCGの画面で裏技コマンド入力するとルルちゃんの水着が消えるって!」



「あぁ、本当だとも。念のため解析もしたが、どうやらバグの一種みたいだね」



「マジかー! うおー! こういう時、理系がいると助かるぜ!」



「ははは。さぁ、上がってくれ」



 僕は友人を先に玄関に上がらせた。



「うぃー、お邪魔しまーす!」



 そしてすぐさま、背後から手錠をかけた。



「お、お前! まさか、またか!? また俺を騙したのか! もうしないって言ってたのに!」



「すまない。これも科学の進歩の為なんだ。それに転生したいと言い出したのは、そもそも君じゃないか」



「では、早速この転生マシーン6号に……おっと、失礼。シイタケが取れてしまっているようだ。ちょっと待っててくれ」



「シイタケ!? 機械になんでシイタケ!?」



「ただの応急措置さ。よし、待たせたね。では早速……」



「いやいや! やらねーよ!」



 友人は首を激しく左右に振った。



「何故だ。あんなにも言ってたじゃないか。最近のラノベは、特にweb小説なんかは馬鹿の一つ覚えみたいに転生だらけだし、とりあえず俺も馬鹿みたいに転生したいって」



「やめろよ! そんな敵意剥き出しで言ってねーよ! 喧嘩売るのやめろよ!」



「ていうかな。俺はさ、勇者っつーかそういうのになりたいんだよ! ところがどうだ。お前のマシーンは今まで『物』にしか転生出来てないんだよ!」



「この前なんてあれだぞ! 麻雀牌だぞ! しかも赤ドラだしよ! 跳満だかなんだか知らないけど、ツモで叩きつけられた時、脳震盪起こしそうになったわ!」



 なるほど、赤ドラか。もしかしたらベアリングの代わりにプチトマトを詰めたのが原因かも知れないな。

 この6号の実験が終わったら研究せねばなるまい。



「そうか、それは悪かった。でも今回は、今回は大丈夫だから」



 とりあえず御託は聞きあきたので、転生カプセルに友人を詰め込む。



「や、やめろ! 嫌だ! 信用出来ない! た、助けて! うわぁー!」





 それから約1時間後。友人が帰ってきた。

 表情から察するに、どうやら今回も勇者にはなれなかったようだ。



「一応聞くけど、どうだった?」



「……傘だよ」



「傘?」



「台風で飛ばされる傘だ。全身の骨がバッキバキに折れたかと思ったぞ」



「ううむ。傘か。待てよ? 傘? そうか! わかったぞ!」



「わかったぞ! じゃねぇよ! 先に謝れよ!」



 前回のプチトマト、そして今回のシイタケ。



「確認しておく。前々回の転生は何だった?」



「全然悪びれる様子ないね、逆に清々しいわ。前々回は、えーと鍛冶屋で叩かれる刀だったかな」



「熱いし、痛いしであれも最悪だったな。思い出したら腹が立ってきたわ」



 やはりそうだ。前々回はピストンの調子が悪かったからタチウオを代わりに差し込んでいた。



 これはもう間違いない。転生が失敗した原因は、食べ物の存在感が強すぎて、転生内容にまで影響していたのだ!


 ということは逆もしかり。

 つまり、勇者っぽい『なにか』を部品に使えば彼の望んだ転生が果たせるかも知れない。



「喜べ、友よ。失敗の原因がわかった」



「そうか、まぁ遅いぐらいだけどな。もう6号だし」



「とにかく勇者っぽいなにかを集めるんだ! 早く!」





 こうして、僕と友人の前に、勇者っぽいなにかが集まった。



 1つずつ吟味していこう。まずはこの、一際大きな存在感を放つ『水晶玉』だ。ちなみに僕が用意した。



「なぁ、なんで水晶玉? 完全にあれだろ、これ。勇者っていうより占い師だろ」



「やれやれ。君は何もわかっていないな」



 友人の浅はかな発言に、思わず溜め息が漏れてしまう。ここは僕から説明するしかなさそうだな。



「では、この水晶玉に君の魂が閉じ込められている、と言ったら?」



「そ、それは……!」



「すごく中二っぽい!」



「だろう? 君はこの水晶玉に閉じこめられた自分の魂を取り戻す為に旅に出るのさ」



「うわ! ありそう! めっちゃありそうだわ! その設定!」



 どうやら納得してくれたようだな。友人は目を輝かせながら水晶玉を手に取って見つめている。



「では次だ、次はこの『山頂の写真』を見ていただこう。」



「あ、ごめん、さっきのはまだわかるんだけど。なにこれ、この、写真? 写真ってお前。さすがにこれはないわ」



「君は、まったく進歩がないな。これはただの写真じゃない。山頂の写真なんだぞ?」



 ここまでヒントを出しているのに、友人はまだわかっていない様子だ。全く世話が焼ける。



「ゲームのタイトル画面で、よく主人公が登っているだろうが。何故か断崖絶壁でキメているあれだ」



「あ、あぁ! あれか! ……いや、すまん。それはなんか微妙な気がする」



「そうだな。僕もそう思う。」



 しかし、そうなると残りは『ハチマキ』『穴開きグローブ』『ラッキースケベ習得術』か



「この中で勇者というか、主人公っぽいのはダントツでこの『ラッキースケベ習得術』だね」



「いやいや、この本なんだよ! 大体、習得しちまったら不可抗力じゃなくなるだろうが!」



「おやおや。まさか君は、あれを本当に偶然だと? あんなに都合よく重なる偶然が存在すると?」



「いや、すっげー説得力あるよ。これは悔しいけど、お前に分がある。でもそれ読んでる主人公たちを想像したくねぇよ!」



 僕の友人は、現実から目を背けているようだ。全くもってチキン野郎である。

 寝相に見せかけて胸を揉む秘術も、ちゃんと載っているというのに。



「しかし、参ったな。本はさすがに部品の代わりにはならないぞ」



「一般的に考えて、野菜とか魚の方が部品の代わりにはならないけどな」



「なにか、他に代わりになるものは……」



 辺りを見回した時、僕の目にある物が飛び込んできた。そうか、困った時こそ初心に帰れってやつだ。



「喜べ、友よ。これで君は勇者になれる。いや! 勇者以外になるはずがない!」



「もうお前の事はかけらも信じてないが、なんですか? それは」



「これだ!」



 そう言って、僕は友人の目の前に『なべのフタ』を叩きつけた。



「こ、これは……!」



「勇者と言えばこれだろう、このしょうもない盾もどきが、きっと君を勇者へと転生させてくれるに違いない!」



「こ、これは正直あるぞ……! 可能性……! う、うぉぉ! こんな身近にあったなんて!」



「この形状なら、エンジンカバーとして代用も出来る。君の嫌いな『野菜』ではなく、立派な部品としてね」



「ひ、皮肉はよせやい! 悪かったって」



「ははは。冗談だよ。よし、早速準備に取りかかろう!」





 こうして、およそ3時間後。転生マシーンとしては初の『ほぼ機械化式転生マシーン』が完成した!



 野菜も魚類も、植物すらも含んでいない最高傑作だ。



「ついに完成したな、転生マシーン7号」



「あぁ、しかしまさか君まで手伝ってくれるとはね。正直驚いたよ」



「いや、その。なんつーか、今まではお前のことただのマッドサイエンティストだと思ってたんだけどさ」



「こう……真剣に開発してるお前の姿を見てたら、なんか俺も燃えて来ちゃってさ」



 友人は照れくさそうに、頭をポリポリと掻いている。



「……科学はね。僕にとっての生き甲斐なんだ」



「誰しもが、頭の中でしか思い描けなかった、空想でしかないもの」



「それを実現化することが出来た時、僕はまるで魔法使いにでもなれたような気がするんだ。これが、たまらない。やめられないよ」



「ふふ。あぁ、そうだ。お前はマッドサイエンティストなんかじゃない。魔法使いだ」



「さて、と。じゃあ早速、その魔法使いさんの魔法を見せてもらおうかな。この縁起のいい7号で、さ」



「お安いご用さ、転生マシーン7号! 起動!」



 掛け声と同時にスイッチを入れる。

 エンジンは唸りを上げ、転生マシーンに命が灯った。



「じゃ、行ってくるぜ、魔法使い」



「あぁ。行ってらっしゃい、勇者」



 眩い光りに包まれた友人は、こうして勇者へと転生した。

ずっと研究詰めだったこともあり、僕はそのまま寝てしまった。体はクタクタだったけど、胸の中は充実感で満たされていたような気がする。





 翌朝、目を覚ますと実験室のテーブルに、殴り書きのメモが置かれていた。



 報告。



 おいこら、ボケナス。パラボラアンテナに転生したぞ。どうなってんだよ。めちゃくちゃ暇で、本当に地獄だった。頼むからさぁ。せめて生き物に転生させろよ。

 もうお前の言う事は絶対に信用しないし、お前の家にも絶対に行かない。それと借りパクしてるゲーム10本どこに隠した? 早く返せボケ



「パラボラアンテナだと? おかしいな……あっ」



 よく見ると、フタの取っ手が外れている。なるほどこれでは盾にはならない。友人には悪いことをしてしまった。



 しかし、取っ手の代わりになるようなものはない。とりあえず、適当にブロッコリーを加工して接着剤でつけておこう。



 さて、リベンジの準備は整った。あとは……



「あ、もしもし、僕だけど昨日は悪かったね。そこでお詫びといっちゃなんだけど、すごい裏技を発見したんだ」



「あぁ、そうだ。あれは完全にパンチラだね。完全に開発側は確信犯だよ。あぁわかった、じゃあ今からそっちに向かうよ」




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