予告文 各社新聞折り込み記事より
――予告文――
拝啓
ミミル国民の皆様にとり、私の夜の名は、新聞やラジオなどでご存知の方も多いかと存じます。私は、怪盗・満月の夜と申します。このたび、各社新聞媒体にて、挨拶に伺いました。
さて、早速ですが、本題に入りたいと思います。
来たる満月が昇る晩、私、満月の夜は、私の映し身とも言える満月を頂戴致しに参ります。
もちろん、夜空に輝く星たちは、月も含め、皆様のものです。いえ、小さな人間には到底手の届かない、宇宙の一部です。
しかし、私はこの前、町でこんな言葉を耳にしました。近所の子どもたちの話し声です。
「満月の怪盗さんに、盗めないものなんて、この世界に何もないよ!」
「さすがに地球そのものは盗めないだろう。」
「いつかきっとできるよ!」
そんな子どもたちの言葉に、私は思わず、ほほ笑みました。そして、うれしくなりました。
では、そのありがたいお言葉に報いるべく、地球どころではない、それよりも大きなスケールのものを盗むことはできないか。
そこで考えたのが、月です。
ここまで大きなものを盗もうと挑戦するのは、私としても初めてのことです。なので、ひょっとしたら失敗するかもしれません。
ですが、もし私が月を皆様の目の前で盗むことができたとしたら、その時には、どうか矮小な盗賊たる私めのために、どうか、あたたかな拍手と大きな声援をお送りくださいますよう、お願い申し上げます。
それでは、また次の満月が輝く夜に、お会いいたしましょう。
追伸。
私に会いに来てくださるのであれば、私は当日、イクシス州の『州立戦争慰霊碑・絆の塔』に参ります。皆様にお会いできることを、心よりお待ち申し上げます。
敬具 怪盗・満月の夜