異世界者が見たもの
今回は少し短いです。(>_<)
異世界から来た彼が気を失ってから約1時間くらいたった。
空間から落ちて来た彼は、かなりの速度で地面に叩きつけられたが、幸いなことに軽い擦り傷程度の怪我しかなく、大きな怪我は無かった。軽い擦り傷はイリスの精霊術で癒して傷を治すと大きな樹の影に入り男を寝かせている(運ぶ時は精霊にお願いして樹の影まで運んでもらった)
水辺で濡らしたタオルを額に当て、彼が目覚めるのを待つ。その間イリスは、彼の容姿や服装を観察していた。
容姿は髪は短く黒色、顔立ちはわりと整っていて、肌の色は白く過ぎず黒過ぎない色をしていた。種族は人間で間違いないが私達の容貌とは少し違う様にも見える。
次に服装だがこれは明らかにイリス達が着ている服と違った。上は白いカッターシャツに藍色のネクタイを付け、その上から黒いブレザーを着ている。下はネズミ色のズボン、黒い靴下、茶色のスニーカーを身に付けている。イリスの服は見た目だけ彼の服のデザインに似ているが材料、作り、装飾品などはまるで違う。仕立て屋の勉強をしているイリスだからこそ分かる。
服に使っている材料はイリス達が使っている材料よりも高価で見たことがない物であること。
作りは最新の服を作る道具でもここまできめ細かく、触り心地の良い生地を作ることは出来ないこと。
使っている装飾品(ボタン、ベルト)なども精巧に作られ、まるで芸術品を見ている程、綺麗な装飾品であること。
以下の三点からこの服はこの世界ではない別の世界で作られた服だと分かる。
そして、さっきの容姿のことだがこの世界では黒髪は珍しく、自分で染める以外ではまずいない。更に、お伽噺話で出てくる勇者以外に黒髪黒眼の人などここ千年以上の間見た者はいないと言われている。もし、彼のその眼が黒ければ間違いなくこの世界ではない別の世界の住人である証明になる。
「…早く目が覚めると良いな……」
イリスは目の前で寝ている彼が目覚めるの心待ちにして待っていた。勿論、ケガをしている彼が心配で早く意識が回復するのもある。しかし、イリスは彼が本当に異世界の住人なのか気になって仕方がなかった。
「目が覚めたら、何て言えばいいんだろう? 普通に挨拶をするべきかな? それともいきなり異世界の人か聞くべきかな? そもそも言葉が通じるのかさえ分からないし、どうしたらいいんだろう~?」
イリスは目の前の彼に対して何て言えばいいか分からなかった。そんな時、近くにいた精霊が話しかけて来る。イリスはその精霊の話しを聞いた。
「…うん…うん、そうだね。まずはお名前を聞かないとね。その後からゆっくり聴いていければいいよね。ありがとう…精霊さん」
イリスは寝ている彼の髪を触りながら優しい笑顔で彼が起きるのを待っていた。
すると、彼の顔が少し動いた気がした。
――――――――――――――――――――
(あれ、俺……どうしたんだっけ?)
ぼんやりとする意識の中で彼は自分の身に何が起こったのか思い出している。
(確か…道を歩いていて……信号を待っていた。…そしたら、車が飛び出して来て、横から来たトラックに衝突したんだ…。その後は……車がぶつかった衝撃でトラックが横転…。そして、倒れて来たトラックの下敷きになったんだ……)
彼は自分に起きた出来事を思い出した。あの日、彼は買い物に歩くと車の衝突事故に巻き込まれた。重さ数㌧以上ある大型トラックが横に倒れて下敷きなったハズだった。
(でも…あの時、下敷きなる瞬間…地面が崩れて…いやあれは突然地面に穴が出来て…俺はそこに落ちたんだ……)
地面に出来た穴に落ちた彼はそのまま気を失っていた。気を失ってからどれだけ時間が経ったか分からなかった。
(俺は死んで地獄にでも落ちたのか? …それにしても、トラックに潰されて死ぬとかあんまりだな……短い17年だったな…)
彼は自分の人生を走馬灯のように思い出していた。“人生は辛いことばかりじゃない”と言う人がいるが彼の人生を聞けばあまりにも悲惨なものだったと思いたくなる。不思議と涙は出ないが胸が締め付けられるように苦しくなるので思い出すのを止めた……
『……っ…し…―』
(あれ…誰か、呼んでいるような…?)
何処からか声が聞こえた気がした。誰か分からないが声のする方に手を伸ばそうとする。声は大きくなり、誰かの声が耳に届く。
「だい……じ…ょ…で……ゆ…しゃ……ま」
(確かに呼んでる。これは…女性……声?)
彼は女性の声に頼りながら手を探り寄せていく。まるで何も見えない世界から一筋の光を求めるようにその手を伸ばす。
すると手を伸ばした先に何か柔らかいものに触った。
「はうぅ!」
何か驚くような声と同時に彼の意識が覚醒していく。
彼のまぶたが動いた。ゆっくりと、ゆっくりと、まぶた細く開く。まぶたを開くと光が入り一瞬、眩しかったが徐々になれた。視界が揺らぐのが収まると目の前に誰かがいた。更に視界が定まってくるとその人は女性だった。その女性は普通ではあり得ないような髪の色と外国人のような綺麗な顔立ちをしていた。
しかし、彼女は何故か涙目になって彼を見ていた。何故かは直ぐにわかった。彼女の下に目をやると誰かの手が彼女の大きな胸を触っていたからだ。無論、その手が一体誰のものなのかも直ぐにわかった……。
その瞬間、彼は突然冷や汗が滝のように出てきた
「………わわっわざっとじゃないんですよ! ちょっとした事故ですよ、事故!」
だが彼は手に握っているものを離さない…いや、体が硬直しているせいかまるで動けなかった。
「い……」
「い?」
「…いっややぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
彼女は右手をおもいっきりフルスイングし、平手打ちした時の音は森中に響き渡った。その衝撃のお陰で彼の意識は完全に覚醒した。
あんまり進まないな~f(^_^;
次回はもっと進めたいけど無理かな~