異世界者現る
やっと主人公が登場です。
ここまで来るのに長かった…( ´△`)
◇ ◇ ◇
出来事が起こる一週間前
キャラベット街道
ここは商人や旅人などがエメライト王都まで通るキャラベット街道。ここの街道は道が綺麗に整備され、警備態勢が万全のため魔物が出没することは稀で、出てきたとしてもEランク指定の魔物程度の旅人でも倒せる魔物しか出て来ないため、世界で一番安全な街道として有名な街道である。
その街道を長い白髪に薄い桃色が入った綺麗な髪の少女イリスが歩いていた。イリスは機嫌がいいのか歌を歌いながらエメライト王都までの道のりを歩いていた。
「♪~~♪~~♪♪~~♪~~」
その歌声を聴き、近くの森、草原、水辺から小さな光の玉がイリスの周りに集まってくる。光はイリスの歌に合わせて踊るように彼女の周りを回ったり、跳ねたりする。
「こんにちは、精霊さん。今日もお日様が温かく、風が気持ちいいね」
イリスはそう言うと精霊達は嬉しくなったのか更に彼女の周りを漂う。さっきまで余りいなかった精霊が、今では二十~三十までに増えていき、彼女の回りは光輝いていた。この光景を見た人は驚くだろうが、すれ違う旅人や商人はイリスに何も反応なく通り過ぎる。
『精霊を見ることが出来るのは純真な心を持つ者だけである』
普通の人は精霊の姿が見えない為である。人が子供の時は見えたりする人はもいるが、殆どの者は大人になるにつれて見えなくなってしまう。しかし、イリスは今年で17歳になるが未だに精霊が見える。
イリス・バーニタニアは“精霊に愛されている”
イリスは子供の時から精霊を見ることができ、精霊と共に生活をしていた。友達であるファロ達と遊ぶ以外は精霊と話をしたり、精霊のために歌を歌い絆を深めていた。
ちなみに精霊と話が出来ることを村の人達にも教えていない。小さい頃一回だけファロ達に話したが信じて貰えずにおバカの子と一時言われ、それから精霊のことは自分だけの秘密にした(ファロはバカにはしなかったが、自分で考えたお伽噺話の話をされていたと思っていた)
「私にしか見えない神秘の存在、私にしか使えない不思議な力……誰も共感出来ない物って少し寂しいな…」
イリスは少し悲しそうな顔をした。そんなイリスを精霊達は慰めるように、彼女に寄り添う。イリスはそんな精霊達の行動に嬉しく思い、精霊達を抱き締める。
「うん、ありがとう。そうだね、悲しいことばっかじゃないよね。あなた達会えて夜は寂しくないし、ひ弱は私に力を貸してくれて無事に旅をすることが出来るもんね」
端から見たら一人で喋っている怪しい人に見えるが、イリスにとっては精霊との大切なお話をしている。
「それじゃあ、少し休んで皆の為に歌を歌ってあげる」
――――――――――――――――――――――
イリスは、街道の横にある森の中に入る。そして、少し歩くと森の中で見晴らしのいい広場を見つける。イリスは切り株を見つけ、その上に立ち精霊の為に歌を歌う。
「いく~よ~~、みんな~~♪」
そして、イリスは精霊に歌を歌う。それを精霊が聞きイリスの周りに集まる。
[~~♪~~♪~~~~♪♪~~♪]
イリスは心を込めて歌を歌う。するとさっきまでいた数より更に精霊の数が増えていく。それ程までにイリスの歌は精霊達にとってかけがえのないものだと分かる。精霊はさっきのように、イリスの歌にリズムを合わせて周りを回ったり、跳ねたりする。
イリスも精霊達が喜んでいるのが分かると嬉しくなり更に歌に力を込める。
[♪~♪~♪~~~~♪♪~♪]
精霊もイリスに応えて更に輝きを増し、リズムをあげていく。まるで精霊達に送るコンサートの様だった。
しかし、そんなコンサートも突然終わりを告げる。いきなり精霊達がリズムに乗るを辞め、周りに散らばったからだ。
「あれ、皆どうしたの?」
イリスは精霊達がいきなりいなくなり戸惑った。歌の最中にいなくなることなど今まで無かったため、「どうしたんだろう?」とイリスは考えていた時に、上から何か音が聞こえた。
ピキィ パッキ ピキィピキ
「ん?」
上から何かガラスが割れる様な物音が聞こえる。イリスは上を見ると空に亀裂が入っていた。亀裂は徐々に広がり始め、その隙間から紫色の光を放っていた。
「えっ…何…これ? 空にヒビ!? ヒビが入って!!? えっ!?」
のんびり屋のイリスでも流石に動揺する。すぐにイリスは近くの木の影に隠れ、亀裂の入っている空を見ていた。イリスはその空を見ながら何かを思い出そうとしていた。
(あれ…? そう言えばこんな光景を何処かで本で見たような……あっ!)
イリスは鞄の中のある本を手に取り、あるページを開いた。
(あった! うん、間違いない。これだ!)
そこには女の人が天に手を掲げ、異世界の勇者を迎えるシーンだった。勇者の後ろには空間が割れ、中は混沌とした紫色の空間が広がっていた。
「と言うことは……あのヒビの入った空は…」
イリスはもう一度空の亀裂を見た。亀裂は更に広がり今にも割れそうに見える。するとある程度亀裂の広がると亀裂は進行は終わった。
何も知らない人が見れば、空の亀裂は余りにも不気味に見え、世界の終わりを予感させる存在だった。
しかし、すぐ側にいるイリスは違う期待を抱いていた。自分が昔から望んでいる“存在”が現れるのではないかと……
ピキィィ………パキィィィィン
ガラスが壊れるような甲高い音が聞こると共に亀裂の入った空が割れた。
イリスはそこから割れた空間の欠片と共に人が落ちて来るのを見えた。人は遠いため、顔は見えなかったが男のように見える。服は見たこと無い服装をしていたが、心なしか自分の来ている服装に似ていた。この服は絵本に出てくる勇者の服を真似て作った物であり、この服に似ているということはつまり別の世界の服ということになる。
「あれが……勇者…様?」
イリスはその光景を目に焼き付けていた。自分は今、絵本に書かれていた伝説を目撃しているのだと感じている。昔から憧れていた…あの伝説の人に会えるのを心から願っていた。それが今日叶うのだと思うと心臓が高鳴る。
イリスはあと少しで物語の人物に会えるのを手を合わせて待ち望んだ。
「ああ…」
空間から来た人は空から降りて。
「ああああ…」
イリスの立っている少し前に降りて。
「勇者様!」
……かなりの速度で、固い地面に落ちて来た。
ヒューードォォォォー「ぐぇォ!」ーン!!!
「……………………………あれ?」
イリスは地面にかなりの速度で落ちた人を見ていた…いや落ちてきた人が地面と衝突する瞬間を間近で見てしまった…。
更に地面に当たった瞬間、落ちて来た人の悲鳴を聞いた気がする。イリスは地面に叩きつけられた人を呆然と見ていると男の人は体をピクピクさせているのを見て、我に帰り落ちて来た人に駆け寄った。
「えっ、あのっ、すいません。大丈夫ですか!?」
イリスが駆け寄り、男の人の体を起こすと声を掛けた。
「うっ………、もう………ダ……メだ……ガク―――」
「えっぇぇぇぇー!? ちょっと、しっかりしてください。あの勇者様?……勇者様ーー!?」
異世界者は既に満身創痍だった。イリスは必死に声を掛けるが、異世界者は答えなかった……
主人公既に瀕死。
まあ、当然だよね(^_^;)
多分、生きてます。
次回をお楽しみに!!




