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最強の勇者と最弱の勇者の物語!!  作者: 双月キシト
第1章 異世界者、再来!?
7/33

親友との約束

メインヒロイン登場。

メインヒロインらしい可愛いキャラ出来て良かった。




 ◇ ◇ ◇



 出来事が起こる一ヶ月前



 トーライカ村



 “トーライカ村”


 エメライト王国に離れた山岳地帯の奥地にある辺境の村。ここは山岳の上にあるため、冒険者など旅人は通ることは少なく、俗世間から切り離された土地である。何か名産品があるわけでもなく、観光地などもない。だが、村の周囲には高地にしか咲かない白く綺麗な花がある。また、この花には魔物が嫌う匂いを発するため、魔物は村には近寄らないため、村の人達には重宝されていた。


 そんな村から少し離れた所にある小屋から一人の少女が出てくる。少女は若く17歳程に見える身長は同年代より少し低い。髪は白い髪に若干の桃色のグラレーションが入った綺麗な髪に、金色の瞳をしている。服装は白いカッターシャツに青いカーディガンを羽織り、胸元には紅いリボンを付けている。下は黒いミニスカートに可愛らしいフリルが付いていた。同じ女の子に比べてその姿は可愛らしく、スタイルのいい彼女は誰もが嫉妬しそうな美貌を持っていた。

 少女は一度だけ自分の住んでいた家を振り向き頭を下げる。


 「行ってきます。お父さん、お母さん…」


 すると彼女の手には大きい茶色の旅行用鞄を持っていた。彼女は重そうな鞄を両手に持ち、山を降りようとしていく。


 「ふぅ、さてと…?」


 そんな彼女に遠くから手を振りながら近寄ってくる人がいた。


 「………~…~~…ぇっ~す…」


 彼女はその声に気付き、同じく手を振りながら駆け寄ってくる。


 「こんにちは、ファロ。見送りに来てくれたの?」


 「当たり前じゃないの。てっ言うかあんたは別れの挨拶しないで行こうとしてたでしょ」


 「別れの挨拶なら、昨日村長さんや村の皆にしたから良いかなっと思って」


 「何言っているの。親友の顔も見ないで行くつもり? …だとしたら本気で怒るよ、イリス」


 緑色の髪を後ろで縛っている親友の顔がどんどん赤くなっていく。そんな様子を見てイリスは寂しげな様子で語る。


 「ごめんね、ファロ。ファロの顔見たら多分別れが悲しくなるから、また今度会えば良いかなと思っていたんだけど………やっぱり、ちゃんと挨拶して良かったと思ってる。ありがとう、ファロ」


 そう言うとファロの顔がさっきまでとは違う意味で赤くなり、目に涙を溜めていた。ファロはイリスを抱き締め泣きじゃくる。


 「バッカ、バッカ、バッカ。イリスのバッカ。こんな時にそんなの言われたら悲しくなるじゃん。そんなに悲しくなるなら、村から出ていくな。村の皆だってそう思っているんだぞ」


 ファロは力強くイリスを抱き締める。まるで親から離れたくない子供のように……。そんな大切な親友の頼みにイリスは困った顔した。


 「うん、私もそうしたいかなって思ってはいるんだけど……でも……」


 イリスは言葉を濁す。確かにこの村は何もないけど、大好きな村である。村の皆が助け合い、一緒に笑いあっていけるこの村をイリスは大好きだった。でも…それでも、彼女にはやりたいことがあった。

 

 「分かっているよ、イリス。それは私達のわがままだってことくらい…。イリスには夢があるんでしょう」


 「うん。私…立派な仕立て屋さんになりたいの」


 自分の作った服を誰かに着て貰いたい。

 そんな夢を幼い頃より抱き続けていた。最初はただ絵本に描かれている服を作りたいと思っていただけの話だった。

 「だったらさ…」とファロは涙を拭い、イリスから手を離す。


 「こんな所には要られないね。ここ人なんて滅多に来ないし、服屋なんてやってもお客が来ないから潰れちゃうよ」


  ファロは笑顔で親友に言う。何も心配するような感じを見せずに自分の親友を送らなけばならない。イリスはそんなファロの姿を見て、改めて自身の夢を追いかけたいと思った。


 「ファロ。私…頑張るね。ううん。頑張って、絶対に立派な仕立て屋さんになって、ファロに可愛い服を作ってあげる」


 「うん。ありがとう、イリス。楽しみにしてる…」


 二人は笑みを浮かべて、親友同士の約束をした。



――――――――――――――――――――――



 二人は山の下り始めた。どことなく世間話を続けながらいつも通りの会話をしていた。


 「そういえば、イリス。あんたのその服も自分で作ったの?」


 「そうだよ。可愛いでしょう。自信作なんだ、これ」


 イリスはクルリと回って、自分の仕上げた服を見せる。「どう、似合う?」と言いたげなイリスに対して、ファロは首を傾げる。


 「外ではそんなの流行っているの? 私はあんまり分からないなけど、似合っていると思うよ。誰かの作品を真似たの?」


 ファロが首を傾げるのも無理はない。今イリスが着ている服は普通の人なら見た事がないような斬新なデザインである。


 「ううん、全部オリジナルなの。でも、モデルはお伽噺話に出てくる勇者様の服を真似て作ったのだけど?」


 そう言うとイリスは鞄の中から一冊の本を取り出した。それは、この世界の人なら誰でも知って持っていると言われているお伽噺話の本。ファロはその本を見て呆れた。


 「イリス、まだあんたはその本を持っていたの…ってか旅に出る時まで持ち歩くの? どれだけ好きなのよ、あんたは!」


 「え、だって凄く面白いよ。私にもこんな勇者様が現れないかな~と思ってしまうもん」


 イリスは目を輝かせ、本を抱き締める。ファロは親友のそんな姿を見て思い出した。イリスは昔からこの物語が大好きで、字が読める私にいつもその本を読み聞かせていた。一日何度も読まされ、暫く本も見たくもなかった。最近はそんな様子がなかったから、飽きたのかな~と思っていたがイリスは本に出てくる勇者の服を真似て作るくらいまだ好きなんだなとファロは思った。

 

 (別に悪い訳じゃないから良いかな。昔から好きって言っていたし、私がどうこう言うことはない……ん?)


 ファロはイリスのお伽噺話好きに興味を無くし、本を大事そうに持っているイリスに注目していた。すると、本を持っている左手の指ににはめている指輪が気になった。


 (あれ? イリスってあんな指輪持ってたっけ?)


 イリスの左手の指に翠色に輝く宝石のついた指輪をはめていた。ファロから見たらかなり高価な指輪に見えて気になった。


 「ねぇ、イリス。その左手に付けている指輪ってどうしたの? そんなの前から持っていたっけ?」


 「ああ、これ?」


 イリスはファロに指摘された指輪を空に掲げる。そうすると指輪は光を受けて更に輝きを増していく。


 「これね、今日起きたら枕元にあったの。綺麗だし、服に合いそうだから付けて着ちゃった


 「えっ!? それって大丈夫なの? 盗品だったら危ないよ、イリス!」


 「多分大丈夫だよ」


 「…その根拠は?」


 「え~と、乙女の勘?」


 「何、疑問付きでふざけたこと言っているの! そんなの何一つ信用がないじゃない!!」


 本当にこの子は……。大丈夫かな、こんなんで旅が出来るのかな、とファロは親友に思う。すぐに人を信用して、手を貸してトラブルに巻き込まれるのが目に見えている。本当ならファロはイリスについていきたいがイリスの服の仕立てに何も出来ない。だからと言って魔物相手に戦うことも出来ない。

 一番の問題はファロの両親が旅など許してくれないということ。ファロの両親は町の町長であり、大事な跡取りを危険にさらすことはまずむりである。


 「イリス…。本っっっっ当に気をつけてね!!!」


 「大丈夫だよ、ファロ。じゃあ、見送りは此処までいいよ」


 イリスは歩き止め、ファロに向かい合って抱き締める。そして、数秒間抱き締めるとお互いを離した。


 「じゃあね、イリス。元気でね…。たまには手紙でも出しなさい」


 「うん。ファロも元気で……危ない!」


 そうイリスが言うとファロは振り返る。そこには狼型の魔物がいた。山を降りて行くと高地にある花の香りが消えるため、不用意に山を降りると魔物に襲われる危険性がある

 今にも飛び掛かりそうな魔物に対してファロはイリスを守ろうとするが、イリスはそれを止め、「大丈夫だよ」とファロに言いファロの前に立つ。

 そして、イリスは“言葉”を紡ぐ。この世界で使える者が少ない、神秘の力を行使する。


 【今この場にいる、精霊達よ】


 “言葉”を発するとイリスの体から魔力を消費して、魔術以外の奇跡を起こす。


 【加の者に精霊の遊びを教えて下さい】


 イリスの周りから光が現れ、それが魔物の周りに集まる。それが風を呼び竜巻となった。



 【精霊の悪戯イタズラ



 イリスが最後の“言葉”を紡ぐと竜巻は大きくなり、魔物は空高くまで舞い上がり見えなくなった。イリスはふぅ~と息を整え、ファロに「大丈夫?」と心配する。

 幸い傷一つが、ファロはいきなり起こった“現象”に動揺を隠せない。

 

 (今のって…魔術? いや、違う。イリスに魔術の才はないって言っていたし。まさか…)


 と、ファロが考えている隙に、イリスはファロに手を振り笑顔で別れを告げる。


 「バイバイ~ファローーー。必ず、帰って来るからねーーー」


 そう言ってイリスは山を降りて行く。ファロにはイリスに聞きたいことがあったが、親友の嬉しそうな笑顔にどうでもよくなった。


 「……イリス、頑張ってね……」


 親友の門出に喜びながらも、ファロの頬には涙が零れていた。







この子の外見に深く悩みましたが、何とか出来ました。


次から時間が遂に動きます。



七話にしてやっと主人公が登場です。

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